きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2005.6.29 山形県戸沢村より 月山

2006.4.15(土)

 東京・銀座の地球堂ギャラリーに行ってきました。7月31日から8月6日まで日本詩人クラブの詩書画展が予定されています。私は担当理事として運営委員長を務めますので、下見がてら挨拶しておこうと思ったのです。実は私、この分野はまったくの素人ですので、グループ展ですが展覧会を何度も開いている理事仲間に同行をお願いしました。一緒に行ってもらって正解でした。「手土産は買った?」と聞かれて、「えっ?何、それ!」。画廊を借りる際の常識なんだそうです。「こっちは客だろ!?」と抗議しましたが受け入れてもらえませんでした。私ひとりが恥を掻くのはどうってことないんですけど、日本詩人クラブを代表しての訪問ですからね、素直に従いました。

 会場は銀座8丁目、博品館のそばです。新橋からの方が近いですね。中央通り沿いの絶好のロケーション。一般のお客さんも多くなりそうです。近くなったら拙HPでも詩人クラブのHPでもお知らせしますから是非おいでください。8月5日は朗読会も予定していて、終ったら簡単な呑み会を計画しています。絵やオブジェを眺めながら呑むというのはなかなか経験できないと思いますよ。仕入れ先の酒屋さんも見つけておきました。事務能力はともかく、そういう点は抜かりありません(^^;



詩誌『弦』35号
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2006.4.3 札幌市白石区
渡辺宗子氏発行 非売品

<目次>
論理と情緒1/畑野信太郎
水琴の邑/渡辺宗子
鍵老人のマザーグース(十)/渡辺宗子
佐藤道子詩考U/渡辺宗子



 水琴の邑/渡辺宗子

どこかで呻く声がする
遺跡という錆びた時間の亡霊
つぼの欠片 文字の腐蝕と地の声
洞窟の文明は
地に浸みる主体のない肉声
重なる地層の時代から
少しつつ瀝れたしずく
水脈とともにあった
襲撃のおたけび
虐殺の悲鳴 凱旋の歓声
生々しい熱い血の哮りを
残さずにはおくまい
この集落の荒くれた地面に流れ
草履か いや素足で
幾層にも踏み固め 固めた
洞穴の歴史
いま資り出して聞こう
「水琴」の弦で
どこかで呻く肉声のあれだ
悠久の時の濾過にさえ
怨念がそのまま瀝れるのを
わたしは何度も確かめた
くぐもった幽
(くら)い声を

街の喧騒を離れ
天然林に囲まれた公園
四つ目垣を廻して
水琴の井戸が遺されている
呻きは結界の井戸を昇ってくる
内乱の頃であろうか
息絶え絶えの血みどろの終焉
いま その悔恨を
伝言のようにわたしに手渡す

水琴の通い路は
アスファルトの割れ目を潜って
ボーリングの傷あと
ビル街の鉄骨に沿っているのか
音の雫
(しずく)する異空間の村郷
祭りの囃子に沸いた
氏神の舞楽の音曲まで
地底の洞に溜めていようものを

 現在でも「水琴」はありますが、時代を遡った作品かと思って読んできたところ「アスファルトの割れ目を潜って」というフレーズでハッとしました。現代の「水琴」なんですね。それも「アスファルトの割れ目を潜って/ボーリングの傷あと」を伝い「ビル街の鉄骨に沿って」「雫する」という、並の想像力では出てこないものでした。
 この作品の喩は歴史の「悔恨」だろうと思います。「襲撃」「虐殺」「怨念」「内乱」の人類史。それと凝視する「音の雫する異空間の村郷」が作者自身なのかもしれません。硬質な精神性の高さを感じる作品です。



児童文芸誌『こだま』28号
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2006.3.30 千葉県流山市
保坂登志子氏方・東葛文化社発行 非売品

<目次>
あさ ひる ばん/中島梨紗 2
雪/岡嶋 萌 3
モザイク/チエ クンミ 4
人/清水思歩 6
もういいかい/前田裕子 8
れんしゅう/青山かつ子 9
きらきらぼし/ささい みつよ 9
たんぽぽさん/徳沢愛子 10
おりがみ/大石親子 11 犬/よしかわつねこ 12
どうしよう/江島その美 14
ゆうくんの春/尾崎昭代 15
クロちやんのプレゼント/三本康子 16
猫の小太郎は/牧 陽子 17
おじいさんと花/天彦五男 18
リハビリ/国吉節子 19
花暦 春 −母子草−/神崎 崇 20
イチゴのお話/大石玉子 21
徐正子 訳 22
韓国の詩/高敬子 訳 28
どきどき/冨村郁斗 32
おばあちゃん/百済天斗 32
さようならキアゲハさん/横山菜々 33
一日/渡辺亜紀 33
本と心/安道礼実 34
流れ星/松田菜未 34
心のにじ/今枝あかり 35
アリ/平田祐希 35
死/並河晶子 36
雪/田村舞幸 36
ハーモニー/三浦由佳 37
WINGS/藤田里帆 37
バトン/金野玖瑠実 38
雪/福田知美 38
夕日/大谷奈央 39
ガードレールの下で/菅原 唯 39
フランスの詩/比留間恭子 訳 40
大熊座と小熊座 クロード・ロワ/水谷 清 訳 46
道と空/小高一輝 48
回想/尾崎一斗 48
朝日/松尾智久 49
矢印/永渕 傑 49
一年経歌ほか/玉置尚也 50
勇気/谷田俊一 51
風の音/高島清子 52
蚕/渡邊京子 53
豆凧/菊田 守 54
いろんな色を/小林明代 55
みんなそれぞれ/江部俊夫 56
わからないこと−自閉症とぼく−(5)/土田明子 57
鐘の雪/武石 剛 58
桜ゴロンダ/多田ひと瀬 59
宗教/絹川早苗 60
朝/小沢千恵 61
ネパールの詩/崎間弘美 訳 62
磯村桂子 訳 68
みんな だれかのおかあさん/島田陽子 70
指の家族/水谷 清 71
虹/飛田隆正 71
新しい空/岡島弘子 72
かぜ/市川満智子 73
おなかのなるひみつ/久野美惠 74
にゃんにゃんの日/佐伯多美子 75
秘密(2)/柳生じゅん子 76
同じように/神山暁美 77
かざはな/道草人 78
びわの葉 一枚/名古きよえ 78
ジャスミンの花/保坂登志子 79
二年生/原田 慶 80
おひさまのてのひら/品田美恵子 81
たけのこ 一本/宮入れい子 82
指揮者−リスト交響詩「レ・プレリュード」の鑑賞の後に−/佐野琴音 83
台湾の詩/保坂登志子訳 84
ぼくの路地/小島禄琅 90
降る/田中眞由美 91
炭/佐野千穂子 92
雪の朝/中村洋子 93
好きだった/卜部昭二 93
白魚/志村宣子 94
ぬくもりの日/村田 譲 95
ラッシュ/佐野なほみ 96
お手紙/市川つた 97
歳月/伊藤ふみ 98
マフラーのうた/江口あけみ 98
涙と窓と空と/松下和夫 99
いつくしきもの/清野公彦 99
ヒポクラテスの木/滝 和子
 100
さがしもの/高木総子
 101
オーストリア
 子どもの作文/松尾直美訳
 102
 詩/高橋あかね 訳
 104
もし、わたしがこう言っても(おばあちゃんへ)−英文対訳− 星 梨津子 
.112
中国の詩/小沢千恵訳
 116
中国の詩/保坂登志子訳
 120
お話「短編ユーモア話」より 『よく見ないでやたらと珍しがる』鄭理 作/小沢千恵訳
 122
ペルシャの古典詩「バラとナイチンゲール」より/松尾直美訳
 124
インドのお話「アマゾンのジャングルで」4 アマレンドラ・チャクラヴォルティ作/谷口ちかえ訳
 130
編集後記 140
表紙絵 内山 懋
(つとむ)



 良い忠告

あなたが来たときのことを覚えていますか
あなたが泣き みんなが笑ったのを

いつかあなたが行くときは
あなたが笑って みんなが泣くような人生を歩みなさい

 ペルシャの古典詩「バラとナイチンゲール」(2001)には4編の短詩が載っていましたが、そのうちの1編を紹介してみました。「あなたが来たとき」は誕生、「あなたが行くとき」は死ぬときでしょう。泣くと笑うの対比が絶妙な効果を与えています。「笑って」逝くようになりたいですね。本当に「良い忠告」です。




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