きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2005.6.29 山形県戸沢村より 月山 |
2006.4.17(月)
明日は退職の説明を聞きに午前中は労働組合へ、午後は会社の勤労課に行くことになっていますので、ほとんど仕事になりませんから休暇を取ることにしました。で、今日は休日前ということになって呑み会(^^; 珍しく小田原の「澤亭」に行って肉料理。お酒は秋田の「刈穂」と地元・山北町の川西屋酒造「隆」。「刈穂」は何度か呑んでいますが「隆」は初めてだと思ったのですけど、すでに拙HPに載っていましたね。2004年4月2日に職場の懇親会が秦野市であって、そこで呑んでいます。いずれも口当たりの良い、私好みの日本酒です。
それにしても、他のことはともかく酒の検索となると我ながらすごいなと思います。「隆」を呑んだことは偶然発見したんですけど、酒の方が私に擦り寄ってきているのではないかと思ってしまいました。酒よりも女性が来てほしいですけどね(^^;
○詩誌『』21号 |
2006.4.12 埼玉県所沢市 書肆芳芬舎・中原道夫氏発行 700円 |
<目次>
詩作品
韓国詩人特輯 (河 五 明・王 秀 英・崔 泳 美 作品) 4
横浜事件再審結果 ………… 小島 禄琅 15 はためくもの …………… 中原 道夫 18
春あらし …………………… 青野 三男 20 みちわけの碑 …………… 忍城 春宣 22
ボールあそび・ヤドリギ … 門林 岩雄 24 供養 ……………………… 平野 秀哉 26
訃報 ………………………… 竹下 義雄 34 再生 ……………………… 肌勢とみ子 36
川床の錘 …………………… 香野 広一 38 深川・冬木町あたり …… 長谷川昭子 40
12月23日 …………………… 北野 明治 42 い ・…………………… 江口あけみ 44
濡れた微笑 ………………… 小野 正和 46 南天の実 ………………… 浅井たけの 48
もどかしさ ………………… 二瓶 徹 50 駅をすてる ……………… 月谷小夜子 52
首都 ………………………… 浅野 浩 54 聞こえる ………………… 北村 朱美 56
眠り姫十五 ………………… 斎藤 幸雄 58 円空さん ………………… 吉見 みち 60
街角で ……………………… みせ けい 62
エッセー
詩誌「」創刊十周年を祝う会に出席して ・…………………………………… 平野 敏 1
現実のゆらめきの中から …………………………………………………………… 中原 道夫 28
淋しい動物・人間への応援歌 ……………………………………………………… 山本みち子 30
書評『雪明りの夜道』 『川の畔りで』 ………………………………………… 倉本侑未子 32
たまにはお酒を …………… 北村 朱美 34 雨 ………………………… 浅野 浩 36
ガンとの共生を始める …… 月谷小夜子 38 頑迷と傲慢 ……………… 二瓶 徹 40
仔猫のいる風景 …………… 浅井たけの 42 判官びいき ……………… 竹下 義雄 44
『ゆきのひ』 ……………… みせ けい 46 性善説と性悪説 ………… 斎藤 幸雄 48
喜怒子さん、その六 ……… 吉見 みち 50 怠け者の節句働き ……… 小野 正和 52
いい一日 …………………… 長谷川昭子 54 いま殺してあげます …… 北野 明治 56
陰の援護者 ………………… 肌勢とみ子 58 白鳥だけが知っている … 香野 広一 60
平和なればこそ …………… 江口あけみ 62
の本棚(書評)・…………………………………………………………………… 平野 秀哉 64
諧謔とペーソスが潜んでいる作品群(詩誌評)…………………………………… 香野 広一 66
の窓 ・……………………………………………………………………………………………… 68
題字・表紙目次装画 … 中原 道夫
駅を捨てる/月谷小夜子
その駅は自動改札もなく
エスカレーターもない
田舎の小さな駅だ
建売を買って
子供たちのふるさとの駅になるはずだった
そこで見送った母の眠る土地
青田を渡る風はやさしく
木にびっしりと白い花が咲くように
しらさぎの寝床があった
この駅から夕方都会へ仕事に向かい
早朝に帰宅するという
常ならない生活を七年も続ける
家の中からひんぱんに消える金品に
「泥棒じゃないのか」としらとぼける夫
だがこの土地の人たちはとても純朴だ
結局は家と夫を捨てて駅を捨てたが
年に一度はここに降り立つことになる
母の墓参りをするために
ホームからホームへと
やわらかな風が吹き抜ける中
片隅で私は見知らぬ旅人のふりをする
あの自動販売機の前が
乗り換えにちょうど良い扉であることを
知っているのに
家を捨てる、夫を捨てるというのはよくある言葉ですが同義語に「駅を捨てる」を持ってきたところが見事だと思います。故郷を捨てる、とも違ってこの場合はやはり「駅」ですね。駅は永住する場所でもなく生地でもありません。通過する場所です。単に通過するだけの場所を捨てるという意味の軽さ、そして重さの二重構造がこの作品を面白くしていると云えるでしょう。「乗り換えにちょうど良い扉」の位置まで「知っているのに」「見知らぬ旅人のふりをする」。この心理もよく伝わってきます。現代人にとっては欠くことの出来ない駅を素材にした佳品と思いました。
○詩誌『青い階段』80号 |
2006.4.20 横浜市西区 浅野章子氏発行 500円 |
<目次>
知覧/荒船健次 2 ファンタジア/鈴木どるかす 4
水仙/森口祥子 6 妹/坂多瑩子 8
足/福井すみ代 10 霧笛橋/小沢千恵 12
添い寝/廣野弘子 14 猫のいた頃の日記帳/野村玉江 16
ひとりで/浅野章子18
ピロティ 野村玉江 坂多瑩子 浅野章子
編集後記
青い階段(70号〜79号)の歩み
表紙 水橋 晋
霧笛橋/小沢千恵
芳しい香りが漂うガラス窓の向こうは
高い木々がゴウゴウと風にゆれ
近くの大樹は太った梟のように
胎内にゆれる新しい生命体をかかえて
この瞬間の時間帯にもてあそばれている
木々の間をすかして
白い尖鋭の三角形の橋はベイブリッジ
その前を地球の循環路が走り
今でも果てること無く走りまわる車群の流れは
日々ひたすら求める生活観と
偉大な文化の躍動と浪漫
ペーリーの来航とオランダ語
かさもりお仙が居て 洋装婦人の華やぐ文化
目の前にまっすぐ伸びている長いレンガの橋
ふいに
こんな遠くへ来てしまった という想いが
脳裏をかすめた
ここから遥かに遠い郷土から
一粒の実が流れに流れて
三島由紀夫も吉川英治も数多くの文豪達が
情熱と生命力の成果をめざして
苦悶した日々の横浜に
今この地に同じく立てることに心が熱く燃えてくる
横浜コーヒー店のオヤジさんが教えてくれた霧笛橋
橋の下から下校する子ども達のかん声が聞こえる
長い橋の向こうに広がっている白い空間に
マリンタワーが見えて
私の前を霧笛のような寒風が通り過ぎていく
霧笛橋のたもとに深紅の梅の蕾がふくらんで
横浜・港の見える丘公園にある「霧笛橋」を素材にした作品です。「今この地に同じく立てることに心が熱く燃えてくる」というフレーズがよく伝わってきます。「ベイブリッジ」「マリンタワー」を「三島由紀夫も吉川英治も」見てはいないでしょうが「地球の循環路」は見ているはず。その同じ港を見ているというだけで「心が熱く燃えてくる」と云えましょう。
作者の詩集を紐解いてみますと、中国黒龍江省生まれとありました。「ふいに//こんな遠くへ来てしまった という想いが/脳裏をかすめた」というフレーズの重みを知ったように思います。作者と「文豪達」の人生が時空を越えて「霧笛橋」で出会った「瞬間の時間帯」を描いたとも読み取れます。静かなタッチの中にも「情熱と生命力」が感じられる作品だと思いました。
○詩誌『錨地』45号 |
2006.4.10 北海道苫小牧市 入谷寿一氏方・錨地詩会発行 500円 |
目次
<作品>
木のある風景………………………新井章夫 1 地の声…………………………遠藤 整 5
舌を遊ばせて………………………宮脇惇子 7 国を持つ者の陸のために……尾形俊雄 9
二十年目のウィンドウ……………笹原実穂子11 ココアマリー…………………関知恵子 13
柘榴…………………………………菊谷芙美子15 さくら貝………………………山岸 久 17
一生…………………………………入谷寿一 19 一人目の私……………………浅野初子 21
太陽がつくった憲法・平成………あさの蒼 23 全部、君にあげよう……サワダヒカル 25
エア・レジスタンス………………新井章夫 26
<エッセー>
年月日の記憶………………………中原順子 39 うそぶいて……………………岡 巴里 41
佐藤しげ詩集『風鳥』を読んで…入谷寿一 43 途上にて………………………菊池一豊 45
<風鐸>『錨地44号』に寄せて…………… 47 受贈詩誌・詩集紹介…………………… 46
あとがき……………………………………… 49 同人名簿………………………………… 50
表 紙………………………………工藤 裕司 カット…………………………坂井伸一
二十年目のウィンドウ/笹原実穂子
駅からの道は
右と左に分かれていた
なにも躊躇することはない
私の赤いハイヒールも嬉々としている
店のウィンドウには 弾力のある若い顔
ミニスカート 笑っている
遠くの花屋のシクラメンも
明るく私を手招きしていた
あの角を曲がると
ほら
色とりどりの鉢に囲まれた
喫茶店
あの日から
ほんとうに二十年もたったのだろうか
せかされて 顔を上げると
ミニスカートがひるがえって
道に消えた
あのとき泣きながら入った
喫茶店の木の椅子
黒く光って
床に崩れていた
駅の店のウィンドウには
赤いハイヒールを胸に抱え
ただつっ立っている
私が映しだされていた
「なにも躊躇することはな」かった「弾力のある若い顔」から「二十年」。「あの日から/ほんとうに二十年もたったのだろうか」とは誰もが感じることでしょう。共感が持てる作品です。青春を描くのに「駅からの道は/右と左に分かれていた」が「なにも躊躇することはない」とする比喩は上手いと云えましょう。その対として「赤いハイヒールを胸に抱え/ただつっ立っている/私」とするところも巧みだと思います。時空を越えたものを映し出す「駅の店のウィンドウには」鏡としての魔力もあるのかもしれません。素直に胸に届いた作品でした。
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