きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2006.5.6
群馬県榛東村にて
 

2006.5.22(月)

 書斎の目の前は近所の農家の蜜柑畑で、白い花が満開です。頭休めに撮ってみました。

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 満開とは言っても木によって違いがあります。文字通り満開の木もあれば全く花をつけていないものもあります。写真は、その中では中途半端な部類です。実は満開では絵になりません。遠くで眺める分には綺麗なのですが、写真にすると野暮ったくなります。同じものがたくさんあると食傷気味になるという人間の我儘なのかもしれませんね。

 ところで頭休め≠ニ書きましたが、自問自答しています。仕事を離れて早や4週間近く。今では仕事のことはすっかり忘れていますけど、変って毎日眼にしている詩に疲れているようです。昼間は理系の頭で考えて、夜は文系に切り替える。そんな生活を38年続けて来て、この4週間は文系の頭ばっかり…。それが疲れる元ではないかと思っています。で、頭休めに写真。もうひとつはエッセイなどの散文です。根を詰めて詩を読んだあとに軽いエッセイを読むと、頭がほぐれていくのが判ります。詩とはそれほど読者に対する要求が強い文学なのかもしれないなぁ、と気付いてきました。

 しかし、ここのところ、いただいた本はほとんどがその日のうちに読了でき、それはそれで満足しています。借金の無い生活と謂うのでしょうか、多いときは2ケ月も積みっ放しだった本が、今はきれいに片付いて、ひとりほくそ笑んでいます。願って、願って手に入れた生活を楽しんでいます。




詩誌『コウホネ』19号
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2006.5.20 栃木県宇都宮市
コウホネの会・高田太郎氏発行 500円

<目次>
作品
たまごの海       星野由美子…2   喝             相馬 梅子…4
姫人形         片股 喜陽…14   少年動物図鑑        高田 太郎…18
エッセイ
極楽蜻蛉の私の反省   相馬 梅子…6   職場交遊の思い出      小林 信子…8
なりわい        星野由美子…9   東部ニューギニア巡拝記(続) 高田 太郎…11
連載 私の一冊一誌
水上文雄詩集『若い夏』 高田 太郎…16
話の屑籠 同人住所録 後記         表紙 平松洋子



 
かつ
 喝/相馬梅子

読経につづき
棺の中に語りかけるようなご詠歌
高く低く 美しいテノール
経とはちがう トーン
思いがけぬ通夜経
にじむ涙を何回もハンカチでおさえた

教会では讃美歌
仏教でも経よりご詠歌が心にしみる
 告別式
チィーン 静かな鐘の音 澄んだ高音の読経
ヂャーン 強い銅鑼の音 重い低音の読経
二人の僧の唱和
告別式のセレモニー

意味のわからぬ経
二人の僧の見事なハーモニー
しんみりと聴きほれる

落語が上手で人々を笑わせていた彼
(ひつぎ)の中で「いいぞ いいぞ」と
にんまりしているかもしれない

御導師様 すっく、と立ち
白い払子
(ほっす) 何回も左右に振り
ぴたり中央に正眼の構え
一声 大きく喝
(かつ)

 どこの宗派か忘れました。ことによったら当家もお世話になっている曹洞宗だったかもしれません。確かに最後に「ぴたり中央に正眼の構え/一声 大きく喝」という場面がありましたね。最初は驚いたのですが、慣れるとすがすがしい気分になります。
 肉親に限らず親しい人が亡くなると喪失感を伴うものなのですが、ここでは「彼」の人間性が第4連のたった3行に良く現れていて喪失感を感じさせません。それだけ作者の胸の中に生き続けているということなのかもしれませんね。自分の最期もこうありたいと願った作品です。




詩誌『青衣』122号
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2006.4.20 東京都練馬区
青衣社・比留間一成氏発行 非売品

 目次
<表紙>………………伊勢山 峻 頁
青い影…………………布川  鴇 2  冬に近く……………上平紗恵子 4
原の凹地………………上平紗恵子 6  ルーアッハ…………井上喜美子 9
クリスマスの寒い朝…表  孝子 12  あのとき……………表  孝子 14
<平仄>…………………………… 16
天国への廊下…………伊勢山 峻 18  初音…………………河合智恵子 22
ベンチ…………………比留間一成 24  辞世練習帳(2)…比留間一成 26
<あとがき>    目次



 辞世練習帳(2)/比留間一成

目を開くと
大きなヘソ やや青味がかった
初毛が黴のように生えている
満員電車の老人席 見上げると外国産の大女
 無礼者奴
(め) 余の面前にむさいものを
 見せつけるとは
ボールペンで つっつこうとすれば
後に窮屈そうに 日本の娘
小さな色白の臍
(へそ)を恥ずかしそうに
これはこれ悲しやな
腰を冷やすなと母も祖母もいった
生れ出るもののために
 余は眼科医にいくところ
 眼瞼内反 月一回睫毛20本ほど抜かれる
 ヘソ出しが流行してからだ
まこと臍
(ほぞ)を噛む思い

娘たちよ腰を冷やすな

 ホントに何時から「ヘソ出しが流行し」たのか判りませんが、よくあんな格好が出来るものだ、、、、と、実はあまり強く言えないのです。うちの娘もときどきそんな格好をしています。厭味で近寄ってジッと見てやります。そんな嫌なオヤヂを演出しても平気な顔をしていますね。嘆かわしい、、、。
 「辞世練習帳」とは面白いタイトルですけど、辞世の句が「娘たちよ腰を冷やすな」になるかもしれないと思うと、ちょっと情けなくなりますね。作者にとって孫のようなそんな娘たちを育ててしまったのは、実は私たちの世代。叱られているのは私たちなのかもしれません。




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