きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2006.5.6
群馬県榛東村にて
 

2006.5.25(木)

 夕方から原宿の「南国酒家」という広東料理の店へ行って、第17回南国酒家「四季の口福(グルメ)の会」という呑み会に参加してきました。狩野敏也さんを中心とする会ですから、呑み会というよりは食事会ですね。10品も出てきて、さすがに最後は残してしまいました。一枚の皿から皆で取る形式のものは少なく取ればいいんですが、ひとり一皿の料理は残したのが一目瞭然。ちょっとみっともなかったですね。おいしかったけど、量が多いのは困惑します。

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 私たちのテーブルは詩人が4人、俳人が3人。写真は俳人のお三人です。詩人のうちのお一人は俳句も創るそうで、この3人のお仲間です。みんな短詩系という面では一緒なので、すっかり打ち解けて、半蔵門のグランドアークホテルでの二次会にも連れて行ってもらいました。
 二次会で初めて連句を体験しました。連句の話になったので、つい、じゃあやってみて、と言ってしまったのです。さすがですね、すぐに出来てしまいました。
 一句できたところで、残念ながら予約した小田急特急の時間が来て、私だけ退散。ちょっと悔しかったですね。詩人で俳人でもあるお人は海老名に帰るそうで、一緒に帰ろうと言われたのですが、私の最寄駅・新松田まで急行で帰るには遠すぎます。一人さみしく特急に乗って、帰宅は0時を過ぎていました。でも、楽しかったなぁ。俳句にも手が出そうな気がしています。

 これからはまったく別件のお話です。携帯電話を替えました。パソコンで作ったHPを見られる携帯です。WINとか言うようですね。さっそく拙HPを見ましたらテキストはちゃんと見られましたが、表を使った写真は位置によっては画面が極端に小さくなります。テキストでも詩は左に全角3個の空文字を入れていますので、これは非常に見難いことなどが判りました。よって、今後は携帯でも見やすい割付に変えます。逆にパソコンでは見にくくなるかもしれませんがご容赦ください。出先でのチェックなどを考えると携帯での利用は増えていくと予想されますので、今のうちから対応させておきます。過去ログも時間を見ては直していくつもりです。



会報「詩人の輪」通信11号
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2006.6.23 東京都豊島区 九条の会・詩人の輪事務局 発行 非売品

<目次>
・法律三分人間七分/有馬敲
・詩 印章記/加賀谷春雄
・「海行かば」寸感/鈴木俊
・詩 桜の花の下で 今のままでええやんか/奥村和子
・戦争と殺人/千早耿一郎
・報道記事から
・関西初のつどい「ごくあたりまえの九条」を掲げ 満員一〇五名の参加で開かれる!/佐古祐二
・詩 「第九」の鍵/川原よしひさ
・詩 地球に平和を――言いたいのは今はそれだけ/森田孝子
・憲法九条への思い/森智広
*「詩人の輪・通信」の作品が日本山妙法寺刊『天鼓』に紹介されました。
・ハガキより
・詩 教育基本法/佐藤文夫
・詩 後日――再び睦美に/扶川茂
・詩 国防色/丈六友子
・詩 BSアンテナ/中原道夫
・詩 場外ホームランを放ちたがる覆面打者たち/岡本清周(再録)
・九条の会 詩人の輪 福岡の集いに向けて/坂田トヨ子



 印章記/加賀谷春雄

ハンコ屋さんのあいだでは
もうずっと前からいわれていたかしら
多くの国民は
とっくに気付いていたかしら

私いま見ながら
つくづく思ったのです
日章旗だ日の丸だと
それは
まだ彫られていないハンコ

彫ろうぜ
九を彫刻しようぜ
私たち日本の総意の
印章旗
太陽を背に
憲法九条が誇りの
私たちの国旗だ

 「日章旗だ日の丸だと」呼ばれている旗の赤丸は、実は「まだ彫られていないハンコ」なのだという発想に驚きました。その赤丸に「九を彫刻」すると「私たち日本の総意の/印章旗」になる。なるほど、これなら「私たちの国旗」になりますね。ようやく「気付」きました。何かと物議をかもす日の丸ですが、自分たちの手元に引き寄せる方法もあるのだと納得した作品です。



詩誌ぶらんこのり創刊号
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2006.5.17 横浜市金沢区 中井ひさ子氏 坂多瑩子氏 編集・発行 300円

<目次>
坂田Y子  となりのおくさん 2/かなちゃんとばあちゃん 5
中井ひさ子 ふらりと 8/川にそって12
坂多瑩子  待つ 14/キャシー 16



 ふらりと/中井ひさ子

銀座三丁目通り一つ入る
少し姿勢を崩し寡黙に建っている
平家のカレー屋

「ニューキャッスル」と書かれた
看板は風が吹くたび
気持ちだけ揺れる

熟れすぎた土壁に貼られた
七種類のメニュー
ドアのノブは光に鈍く反射し
待っている

木枠の窓は
口を左に曲げ街の匂いを
吸い込んでいく

窓の下には
タヌキが一匹ゆるりと坐っていて
行き来する人を
しみじみ眺めている

時々
仁義を切りたがると
人はあわてて目をそらす

つつましい思いの増殖や
口をぬぐったあの時
を 閉じ込め

ふらりと通り過ぎる

ドアのノブをにぎったことはない

 いま注目されている女性3人による新詩誌です。創刊おめでとうございます。ぜひ長く続けて、読者を楽しませてください。
 紹介した作品には「タヌキ」が突然現れますけど、実際に「銀座三丁目通り一つ入る」で「一匹ゆるりと坐っていて」いることを想像しても良いし、作者の精神がそこに座っていると採っても良いでしょう。実物の狸が「行き来する人を/しみじみ眺めている」なんて想像すると楽しくなりますね。もちろん狸の置物でも同じことです。作者の精神≠ニすると、「仁義を切りたがる」がポイントになるかなと思います。その狸をおいて「ふらりと通り過ぎる」。結局「平家のカレー屋」の「ドアのノブをにぎったことはない」。「口をぬぐったあの時/を 閉じ込め」たように…。と、私は受け止めました。中井ひさ子詩の世界を楽しませてもらった作品です。



詩誌『左庭』6号
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2006.5.10 京都市右京区 山口賀代子氏 編集・発行 500円

<目次>

ひとつしかない地図       崔  龍源…2
閉鎖病棟の少年たち「強迫性障害」掘江沙オリ…6
桜の園             山口賀代子…12
「老いる」ということ      山口賀代子…14
散文
私とは疎遠だったある友人の肖像 江里 昭彦…16
【さていのうと】
不思議なご縁          山口賀代子…20
ユダの末裔           堀江沙オリ…21
あとがき            ………………22
表紙画…森田道子「花束」



 「老いる」ということ/山口賀代子

ひさしぶりに出会ったひとは別れぎわに
「電話してね」と言った

いつも仕立てのよい服をきて
ひとよりはやく出勤し
無駄なく仕事をこなし
無益な残業はしない
仕事を終え家にかえるとバケツに汲みおいた冷たい水で
足をすすぎ
その水で廊下を拭き
汚れた水は最後に植木の注ぎ水になり
そんなつましく合理的な生き方のできるひとだった

気丈なひとだった
休みにはひとりで山へのぼり
海外へもひとり
時には姉妹や姪との温泉旅行も楽しいけれど
ひとりが気楽でいい
そういって一人ぐらしのわたしに
相槌を求めるでもなく笑いかけるひとだった

そんなあなたと偶然コンサート会場で出会った
退職してからもう七年
あと三年で七十歳になるとあなたは言い
毎日が退屈ですることもないので
チケットをくれるひとがあってのコンサート
あなたに出会えてよかったと懐かしげに言う

最近根気がなくなり体力も落ち
海外旅行もつらくなった
昔の同僚たちはどうしているのかしらねとあなたは言い
よもやま話をいっぱいして
別れぎわに「電話してね かならずかならず よ」と
ふりかえり ふりかえりしながらバス停にむかうあなたを
私は見送る
この春定年をむかえる私の未来かもしれないあなたを 見送る

 「この春」早期「定年をむかえ」た私の「未来かもしれない」なぁと共感した作品です。「毎日が退屈ですることもない」というのは今の私には考えもつかない事態ですけど、「あと三年で七十歳になる」頃にはどうなっているか判りません。肝に銘じておこうと思いました。
 作品は「あなた」という人間が良く描けていると思います。「私」と一緒に仕事をしていたようですから当然かもしれませんけど、私などは意外と人間を見ていなかったことに気付いたりします。そういう不安定な要素がない作品です。「『老いる』ということ」は、多少は人間が見えるようになることなのかもしれませんね。



月刊詩誌『柵』234号
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2006.5.20 大阪府箕面市 詩画工房・志賀英夫氏 発行 572円+税

<目次>
現代詩展望 新たなる詩誌の時代への夢      … 中村不二夫 82
 二〇〇六年初頭創刊の詩誌
少年詩メモ(6) こころ・言葉・くらし      … 津坂 治男 86
奥田博之論(4) 真理の知慧           … 森  徳治 90
流動する世界の中で日本の詩とは 20       … 水崎野里子 94
 日本の現代詩における定型と五七調の問題
風見鶏・北原みさ子 中村信顕 森口祥子 汀さらら 壷阪輝代   100
「戦後詩誌の系譜」32昭和52年62誌追補6誌…中村不二夫 志賀英夫 108

中原 道夫 誓いの言葉 4     小島 禄琅 巨樹のふところ 28
進  一男 独り言 6       織田美沙子 スイッチ 30
肌勢とみ子 旅 2 8       大貫 裕司 老兵たち 32
宗   昇 蛍 10         小沢 千恵 苔売り男 34
伍東 ちか 白い絵 12       南  邦和 彩雲 36
柳原 省三 リンゴの乳房 14    水崎野里子 老 39
北村 愛子 ハンチング帽子 16   忍城 春宣 藤原光親卿 42
立原 昌保 遠いいのちの果の果て18 山口 格郎 兆し 44
松田 悦子 萎れたタンポポ 20   川端 律子 一日のはじまり 46
佐藤 勝太 目醒めの朝 22     平野 秀哉 飛蚊症 48
西森美智子 子供 24        岩本  健 俳諧詩 即
丸山 全友 さなぎ虫 26      江艮亜来子 梅雨空 52

小城江壮智 蜘蛛の死 54      野老比左子 花と雪と地球鳥 68
高橋サブローモネの睡蓮 56     若狭 雅裕 風青く 70
安森ソノ子 越冬後の桜 58     今泉 協子 志津というひと 72
鈴木 一成 都々逸もどき 60    前田 孝一 大地が欲しい 74
小野  肇 無邪気な時間 62    山南 律子 閉じられて 76
名古きよえ 三角形 64       山崎  森 寸劇、GASE-NETA 78
門林 岩雄 花束 66        徐 柄 鎮 みどりの風 80

現代情況論ノート(1)               …石原  武 102
インド詩人アフターブ・セットの詩9 ハノイでひとり…水崎野里子 99
コクトオ覚書
.209 コクトオ自画像[知られざる男]29…三木 英治 104
天神さんのオペラ                 …野老比左子 120
巨大な歯車と愛しい命 前田孝一詩集『ばねとピン』 …菊田  守 122
東日本・三冊の詩集 山本聖子『三年微笑』     …中原 道夫 124
 熊沢加代子『子供の情景』 金子たんま『犀の角のように』
西日本・三冊の詩集 谷本州子『綾取り』      …佐藤 勝太 128
 蔵薗治己『お静さん』 高橋博子『時の公園』
受贈詩誌 131  柵通信 132  身辺雑記 135
表批絵・申錫弼/扉絵・中島由夫/カット・野口晋 申錫弼 中島由夫



 子供/西森美智子

さみしさを
口いっぱいに
ほおばって
泣いている

仏様が
母親や
子犬なんかになって
涙をぬぐって下さるのだけれど
なかなか
泣き止まない

いつか
さみしさを
のみ込んで
ひとり
歩き出さなければ

 作者は巻末の「身辺雑記」によると4月入会の新同人だそうです。第1連の「さみしさを/口いっぱいに/ほおばって/泣いている」というフレーズを見て、表現のおもしろさだけでなく対象を観察する眼力のある詩人だなと思いました。続く第2連も「仏様が/母親や/子犬なんかになって」慰めているという視点にも驚かされました。「母親や/子犬」が仏の成り代りだとはちょっと考えつかないし、そういう発想というのは良いですね。最終連も生きることの厳しさをちゃんと伝えていて、この詩人の姿勢を見せられた思いです。今後のご活躍を期待しています。



詩誌『烈風圏』第二期9号
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2006.4.20 栃木県下都賀郡藤岡町 本郷武夫氏方・烈風圏の会 発行 非売品

<目次>
冬の底 たのしずえ 3
蟋蟀がなく/柚子 三本木昇 4
時報前/流れ/昆虫の歩み/しみ/時空 瀧葉子 7
若い父 白沢英子 10
暮れる 金子一癖斎 12
行住坐臥 山形照美 14
二月の雨/初春の宴 出井栄 20
痛み 坂本久子 24
三尸虫 石神かよ子 26
旅/わき道 都留さちこ 28
臼(一)(臼辺鳥) 深津朝雄 32
ハイキング 立原エツ子 35
汚名/薔薇日記 水無月ようこ 38
冬ほたる 高津朝子 42
記憶(散文) 高津朝子 45
古澤履物店 九 古沢克元 46
冬桜 柳沢幸雄 48
中国青島から高速道路で(散文) 本郷武夫 51
文字の姿 本郷武夫 52



 柚子/三本木 昇

十八年目に初めて大きな柚子が三個実(みの)った
三年後には枝がしなり数えきれない
けれど 柚子の表面は切り傷の痕

風がやってくると
柚子は自分で自分の皮膚を傷つける
その頃 私も私の皮膚を傷つけていた

 「十八年」という言葉に反応してしまいますが、「柚子」も人間もその年代は同じなんだなと考え込んでしまいました。「風がやってくると/柚子は自分で自分の皮膚を傷つける」し、人間も傷つきやすい年頃。いろいろな風≠ノ晒されて傷ついてしまう人間の若さと柚子を重ね合せてしまいました。もちろん作者もそのうちの一人だったわけです。短詩ですが、それだけに様々なことを考えさせられた作品です。




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