きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2006.5.6
群馬県榛東村にて
 

2006.5.27(土)

 札幌の北海道立文学館で開催された「日本詩人クラブ札幌イベント」に出席しました。北海道詩人協会の創立50周年記念に協賛したイベントで、100人以上集まっていたと思います。本州からも中村会長・北岡理事長をはじめ10人ほどが参加、今まで以上の盛り上がりを見せていました。講演は日本詩人クラブから石原武氏と清水茂氏。内容は簡単な報告だけですが日本詩人クラブのHPにも書いておきましたので、そちらをご参照ください。

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 写真は懇親会場にて。10年前の「日本詩人クラブ北海道大会」以来の人とも会えて懐かしかったですね。今回の訪札で一番会いたかった人は、札幌で発行している詩誌の主宰者です。メールや電話でのやりとりだけでしたので、実際にお会いできて本当に良かったと思っています。昔、パソコン通信をやっていた時代にも感じたことなのですが、メールのやりとりをしていると、そのうちに会いたくなるものですね。インターネットでメールが始まった頃に、無機質で人間性が薄い媒体などとの非難がありましたが、それはモノを知らない人の言い分だなと思っていました。決してそんなことはありません。いずれ会いたくなるものなのです。メールなんて道具に過ぎません。道具を使う人間の対象はあくまでも人間なのです。
 で、その主宰者は、村山のことだからどうせ女性だろうとお思いでしょうが、残念ながら同世代の男です(^^; 二次会では隣の席に座ることが出来、ずっと話していました。ありがとうございました。いい夜でした。



季刊文芸同人誌『青娥』119号
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2006.5.25 大分県大分市 河野俊一氏発行 500円

<目次>
詩  春             河野俊一 2
   さくら           多田祐子 5
連載 音符は舞うよ
    英語のお勉強/「シェルブールの雨傘」
                 河野俊一 8
詩  尻切れトンボ        林  舜 10
   花見            河野俊一 13
   春宵            多田祐子 16
   夜の声(愛読者作品)    宮本早苗 18
連載 ことばはごちそう・第十六回
    抱きしめてやりたいことば 河野俊一 21
青蛾のうごき                24
編集後記                  24
表紙(柿本神社の石段・島根県益田市)写真 河野俊一



 花見/河野俊一

職場
では吸えない

でも吸えない

でも吸えない

仕事の帰りに
誰も立ち止まってまで見ない
道路ぎわの
桜の木の下に車を止めて
携帯灰皿を左手に
右手で
散る花びらにまみれて
煙草を吸う
ひとつ
色のくすんだひらひらが
目の前をよぎる
どこか
違う世界から
やってきたような
なつかしい
昔のひとときから
やってきたような
色合いを
置き去りにした
はなびら
かと思ったが
自分の
煙草の
灰だった

 これって切ないよなぁ、と思わずつぶやいてしまった作品です。何処「でも吸えない」状態は異常としか思えませんが、まあ、それも仕方ないかと諦め半分です。そんな愛煙家と「誰も立ち止まってまで見ない」「桜の木」が妙にマッチしていて、さらに切なくなります。しかも「花見」は花見でも「自分の/煙草の/灰」を見る始末。私も含めて煙草好きは「どこか/違う世界から/やってきたような」人種になってしまうのかもしれませんね。



詩誌『驅動』48号
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2006.5.31 東京都大田区
驅動社・飯島幸子氏発行 350円

<目次>
池端一江詩集『黄葉期T』書評
 気取らない生が視えて
 池端一江詩集『黄菓期T』を推す 千葉  龍38
たにみちおさん追悼
 「駆動」同人としての足跡    飯島 幸子44
 たにさんの詩について      星   肇46
現代詩と「笑い」(三)      周田 幹雄41
鎌倉の夜             山田野理夫1
白と黄色の二本線         長島 三芳2
けものたちの庭          舘内 尚子4
わが街 逗子 他一編       星   肇6
オオサカベン西鶴(2)
 日本永代蔵巻之一        桝井 寿郎10
初夢               飯島 幸子12
赤毛の柴犬<ゲン> 他一編    忍城 春宣14
見張り番             内藤喜美子18
三日限りの獅子          中込 英次20
断片詩
詩人・求道の画家 松本竣介 他一編 飯坂 慶一22
カチカン 他一編         周田 幹雄27
おだまき 他一編         小山田弘子30
夢                金井 光子32
吉野川宮滝へ           三沢 学人34
名残雪              池端 一江36
同人氏名・住所52 寄贈詩集等・詩誌52 編集後記
表紙絵 伊藤邦英



 名残雪/池端一江

店を開けると はつ子姐さんが入って来た
如月の風と牡丹雪をコートに付けて
いきなり別れを告げられた
老人施設に入るから
もうあんたには会えないよって
母親の三回忌が済んでやっと決心がついたから
大阪の実家は甥の代になってしもうた
帰る家はもうあらへん

かたちあるものいつか壊れるって本当や
大阪大空襲でわたしらの家
燃えてちぎれて吹き飛んだ
焼け跡にバラック立てて 家建てて
北陸の温泉街に出稼ぎして
長いこと旅館の仲居してな
家のため親のため思うてせっせと働いて
家に仕送りしたもんや
月に一度の休みの他は働き通し
そんなに働いて何のためやったろか
きっと あんたのお陰とお母はんが喜ぶ
その顔見たかったからなんや

十貫そこそこの小柄な身体は母親ゆずり
達者で働けたのは丈夫に生んでくれた親のお陰や
お母はん九十六歳まで長生きしはったけど
わたしの許嫁はたった二十六歳で戦死やって
遺骨も遺髪ものうてよう信じられんかった
還って来るかと待って待っているうちに
女ひとり戦後を生きて来てしもうた
戦争ってほんまに薄情なもんや
人のいちばん大事なものを奪いよる

雪は止んだが わたしの心に名残の雪が降り続いた

 第1連の「如月の風と牡丹雪をコートに付けて」というフレーズに魅了されました。「はつ子姐さん」という名詞とともに風情を感じます。しかし内容はそんなヤワなものではありません。「もうあんたには会えないよ」という「別れ」の言葉から始まる「女ひとり戦後を生きて来てしもうた」話でした。それは決して愚痴ではありませんけど「戦争ってほんまに薄情なもんや/人のいちばん大事なものを奪いよる」という深いところから発せられた言葉に居住まいを正された思いをしました。「名残の雪」という「北陸の温泉街」に似合いのタイトルながら、深みのある作品だと思いました。



詩誌『花』36号
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2006.5.20 埼玉県八潮市
呉美代氏方・花社発行

<目次>
地に在る者は 鷹取美保子 4     にじりぐち 篠崎道子 6
鶴 原田暎子 7           原市沼 峯尾博子 8
ぼたん雪 湯村倭文子 9       馬――昇仙峡にて 佐久間隆史 10
窓のむこうの黒い翼 鈴切幸子 11   見えない空 林 壌 12
入間川の朔風他一篇 天路悠一郎 14  ある行旅 柏木義雄 16
さぶしい人格 田村雅之 18      十三病棟 平野光子 20
メタセコイアの樹の下で 飯島正治 26 午睡の続き 都築紀子 27
散策のみち 小笠原 勇 28      椿 水木 澪 29
都会に雪が積もった日 川上美智 30  我が友 虫 菅沼一夫 31
糸屋のおじさん 佐々木登美子 32   母の旅 青木美保子 33
ことぶき 中村吾郎 34        春雷 高田太郎 35
待合室 坂口優子 36         青島再訪 酒井佳子 38
拙を守って籠居せむ 馬場正人 40   わけっこ 和田文雄 41
深い眼差し 山嵜庸子 44       高橋(たかばし)−橋のなまえ 坂東寿子 45
疑(魏)史倭人伝(中) 山田賢二 46 器 石井藤雄 47
はぐれ雲に 宮崎 亨 48       黄昏 山田隆昭 49
いよよ無念にて候 狩野敏也 50    夜行性 秋元 炯 52
白梅の花 呉 美代 53        春の恵み 宮沢 肇 54
りんご舟(ぶね) 菊田 守 56     遅日 丸山勝久 58
ヴィルベルフォース記念碑のありか(2) 鈴木 俊 21
訳詩 わが死・わが生3 ドリン・ポパ 宮沢 肇 訳 24
私の詩法 詩の母胎は、人為(はからい)の遙るか彼方に 佐久間隆史 42
松本隆晴丸逢悼 60
乾杯の音頭をもう一度−松本隆晴氏に  山嵜庸子 62
「花」35号同人会報告 宮崎亨 63   エッセイ 落穂拾い(2) 高田太郎 64
書評 仮装する裸形の身・その沈黙の言葉−坂口優子詩集『沈黙の泉』小島きみ子 65
   佐々木登美子詩集『風景の覗き窓』について 山田賢二 66
第十三回『風忌』のご案内 68     「花」名古屋・詩の集いのご案内 69
編集後記 70



 夜行性/秋元 炯

うちの親父は 夜行性だ
朝から寝床でごろごろして
うたた寝しながら酒を飲んでいる
時間帯がちょうど合うので
いつも猫が 寝床のわきに寝っ転がっている
夜になると
起きだして
どこかへ 車で出かけてしまう
何かしらの仕事は しているらしいのだ
稼ぎがいい時には
明け方 肉を買って帰ってくる
それも 決まって味噌漬けだ
この肉も
猫以外は誰も相伴にあずかったことがない
やたらと焦げ臭いにおいを
家じゅうにたちこめさせては
みんなが起き出す前に寝てしまう
朝 私が
出がけに声をかけると
おう と生返事が返ってくる
それが 家族とのほとんど唯一の会話である
夜は 起きると
顔も洗わず そそくさと出かけてしまう
同じ頃
猫も
目を金色に光らせて
家を飛び出していく
夜の街で
親父と猫が 何をしているかは分からないが
いつも 何だか とんでもない
大活劇に巻き込まれているのにちがいない

 秋元詩のおもしろ味が如実に表出した作品だと思います。ヘンな可笑しさがあって、ついつい惹き込まれてしまいます。「夜の街で/親父と猫が 何をしているかは分からない」状態など普通ではあり得ないのですけど、現実味があって納得してしまいます。そういうあり得ない世界が秋元詩の特徴だと思うのですが、下手をすると読者の不評を買ってしまうでしょう。そうならないのは文体であり筆力だと思います。この詩は何の喩か、などとも考える必要はなく、素直に楽しめば良いのだと思っています。そしてある時、あっ、これは秋元炯詩の世界だ!と思う光景が出現したら、その時にもう一度思い出すと最高でしょうね。




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