きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2006.5.6
群馬県榛東村にて
 

2006.5.29(月)

 昨夜は埼玉詩祭実行委員長宅に泊めていただいて、今日は休暇を取ったという彼の案内で「見沼たんぼ」周辺を見学させてもらいました。「見沼たんぼ」というのは埼玉県民にはお馴染みかもしれませんけど、私には初めての地名で、そのネーミングに惹かれましたね。浦和を流れる芝川の流域のことのようで、もともとはまったくの田園地帯だったようですが、今では田圃は少なくなって、替りに植木の産地だそうです。残っている田圃も見事でしたが植木も見事。低木、高木が固まりになって風景にリズムを刻んでいて、車窓からの景色は飽きさせませんでした。人工の樹木なのですが武蔵野の面影がそのまま残っているような錯覚に捉われました。何という木か判りませんけど、幹の細い3mほどの木が疎林になっている処などうっとりしてしまいました。拙宅の裏の80坪ほどの畑をいずれは細い樹木の疎林にしたいと夢見ているせいですが、思い描いた通りの風景に出会えて嬉しくなってしまいましたね。

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 いろいろと案内していただいた中で、一番印象深いのは「見沼自然公園」です。写真はそこの蓮池と水鳥。自信がありませんがイスカではないかと思います。このあと蛇が泳いでいるのを見たり、亀の甲羅干しを笑ったりしながら散策して良い運動になりました。写真もいっぱい撮りまして、昨日の埼玉詩祭のパンフレットを飾った写真のポイントも教わりました。これも疎林で、パンフレットでは広い場所のように見えましたけど、意外と狭い場所でした。写真ではなくて写嘘だわな、これは(^^;

 今はいなくなったようですがシラサギの名所だったようで、驚いたことに浦和学園高校内に誰で自由に訪れることができる「シラサギ記念自然史博物館」がありました。さすがは私立、公立ではできないことをやりますね。博物館にはシラサギを始め昆虫・動物の剥製もありましたが、圧巻は写真家、故・田中徳太郎のシラサギのモノクロ写真です。ほとんどが全紙(457×560mm)を2枚重ねた写真で、焼付けの技術の高さに唸りました。私も写真メーカーに勤めていた関係でモノクロ焼付けはプロ並みだと思うのですが、重ね合わせの上手さは脱帽でした。

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 「氷川女體神社」という処へも連れて行ってもらいました。女体と聞いて思わず舌なめずり(^^; をしましたけど、女神を祭るというだけのことでした。細かい謂れがあるようでさきたま文庫で出している冊子を買ってきましたが、まだ読んでません。でも、女体と言えば●根? 写真のような立派な樹があって思わずパチリ。おのが粗●ンを恥じる次第です(^^;;;

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 おもしろいところでは、これ。山田の中の一本足の案山子≠ナ有名な唱歌「案山子」の発祥の地だそうで銅像が建っていました。ここで件の実行委員長に登場してもらいましょう。私と義兄弟の契りを結んだと言う同年生で、お互いに道産子です。
 お薦めの土蔵を改造した喫茶店「蔵」にも連れて行ってもらって、見沼の初夏を満喫しました。ささきひろしさん(あっ、言っちゃった)、ありがとうございました!



詩マガジン『PO』121号
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2006.5.20 大阪市北区 竹林館発行 840円

<目次>
特集 童謡・唱歌
      白秋と雨情−童謡の時代 小川和佑……10
          石垣りんの場合 有馬 敲……17
童謡運動はユニークな文化現象だった 畑中圭一……20
           いま 童謡は 島田陽子……24
             童謡五篇 冨岡みち……29
        「赤とんぼ」のなぞ 島  雄……32
宮沢賢治の童話にちりばめられた童謡 梶谷忠大……37
宇宙といのちの秘密を解き明かす
       童謡詩人まど・みちお 佐古祐二……44
  童謡・唱歌の歴史と教育との関係 藤原節子……54
なんぼ よおても(いくら 良くても)神田好能……64
       童謡「野菊」に寄せて 蔭山辰子……67
     ころころころろ なんの音 蔭山辰子……69
            罵詈童歌集 三方 克……70

               友人 薬師川虹一…72
             夫恋新年 川村慶子 …74
      ◎夏−幻想 白い爽竹桃 藤本数博 …76
           キヲツケの声 佐藤勝太 …78
             夏の余熱 飯田雄三 …80
       thrown into stalkers 藤谷恵一郎…82
         僕的瀝々抄(一) 川中實人 …88
            五月の記号 まつだくみこ93
               伝統 佐相憲一 …94
            コアの停止 加納由将 …96
               狂歌 桜鬼弓女 …97
           さくらしぐれ 北山りら …102
      クリスマス・ストリート 佐古祐二 …104
    コケを想う/携帯のつぶやき 高野信也 …105
               望郷 左子真由美…108
 真空を語っているか/地球温暖化
       ――人類の未来を憂う 清沢桂太郎…110
滑り続ける島のイスカ/女たち(八) 牛島富美二…118
        狭山の散歩道/想い 神田好能 …122
            あくび/風 中野忠和 …126
             玄関の靴 星乃絵里 …131
      レモン・スライスの効用 堀  諭 …136
        平日/仮病とジャズ 及川謙二 …138
            ギター弾き 関 中子 …142
         冬から春へ/人生 長谷川嘉江…144
      
ピロティ 「あげる」考 中野武志……7
ギャラリー探訪 市川伸彦のアトモスフィア 前田尚司……84
舞台・演劇・シアター 昭和の戦争を描いて 河内厚郎……86
ビデオ・映像・ぶっちぎり 地獄少女 北村こう……98
詩のふるさと 「鳥夜啼」李白 水口洋治……101
この詩大好き 詩の言霊にふれて 丈六友子……114
一編の小説 「地上を旅する者」大原富枝 藤谷恵一郎……116
エッセイ 続アメリカ黒人詩の流れ22 堀 諭……132
詩誌寸感 主に関西の詩誌から 牛島富美二……134
読者投稿欄POランド 中野忠和……148
    *
▽会員・誌友・定期購読募集/「PO」例会
 /「PO」ホームページ/投稿案内/詩を朗読する詩人の会「風」例会……147△
▽広告掲載案内/「PO」育成基金……150△
▽執筆者住所一欄……152 編集後記……153△



 玄関の靴/星乃絵里

玄関のチャイムが鳴り
慌てて玄関の靴をそろえる

長靴に サンダルに ぞうりに 運動靴に…
小さいのやら 大きいのやら…

賑やかな靴たちの相方を見付けて
順番に並べていくと
靴たちはおとなしくなって
顔を見合わせて口を開く

「お客さん、さあ、どうぞ。」

玄関のドアを開けると
太陽の光が差し込み
透き通った風が流れ込んできて

玄関の靴は喜びながら
私とお客さんの会話を聞いている

玄関の靴はかしこまった顔になって
ひきしまった顔になる

 こういうところにも詩があるのだなと思います。「賑やかな靴たちの相方を見付けて」というフレーズに脱ぎ散らかした普段の生活が見えて、のびのびとした家庭が窺えます。「靴たちはおとなしくなって/顔を見合わせて口を開く」というのも佳いですね。擬人化された靴が生きています。「喜びながら/私とお客さんの会話を聞いてい」たり「かしこまった顔になって/ひきしまった顔にな」っていたりする「玄関の靴」。私たちの普通の大事な生活がてとおしくなる作品です。



詩誌『すてっぷ』72号
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2006.4.15 京都市左京区 河野仁昭氏方
すてっぷ詩話会発行 500円

<目次>
天国からの年賀状 乙吉登美子 4
黄色い煙 田中明子 6
今が華ですよ 曽谷道子 8
お姐ちゃん 野谷美智子 10
真夜中の交差点 日高信 12
老人ホームで 上野準子 14
走って四十五年 北野一子 16
現実 西原真弓 18
Y氏の一日 西田明子 20
目を合わせない 住田文子 22
叫び(ムンク)/飛行機雲 森田英津子 24
水仙のある夕暮れ 井手美穂子 26
独り暮しの朝 藤本美代 28
信じること/寝る子は育つ 賀川昌樹 31
それとは知らずに 富沢玲子 34
アンネフランクとへップバーンとわたし 富沢玲子 36
栄養指導 武藤迪子 39
通りすがりの白い薔薇 司由衣 42
早春 河野仁昭 45
ふうせん 金原樟子 46
残屍 矢部節 48
滝坂道 中村つる代 50

白い灯台と一本の樹 稲葉やよい 52
例会 メモ 他 賀川幸夫 55
京都詩壇の生成(1)−竹内勝太郎(上) 河野仁昭 59
 step 73
 ADDRESS
 カット・森田英津子



 通りすがりの白い薔薇/司 由衣

あれはまだ学生のころだった
アトリエからの帰り道
キャンバスの白い薔薇の青年に話しかけられ
夢をもらった

二人で同じ夢を追いかけて
この道がどこまでも続く
そう信じていたら
その人にはほかに
愛しい人との暮らしが待っていて
「女児のパパになっちゃったよ」…だって

道を間違えたのだから
引き返すしかないのだが
あきらめきれずに
引きずっていたら
横合いから中年の男が飛び出してきて
いきなり亭主の役を買って出た

現実を受け入れて
それなりにしあわせな人生を
そう思って暮らしてきたが
亭主 酒飲み過ぎてあっけなく逝ってしまい
遺された子は十一歳と八歳

夢の匂いも 花の匂いもありませんよ
稼いでも 稼いでも
削ぎ取られてしまうものだから
どんどんわたしは減っていく

近ごろでは些か歳も手伝ってか
頬まで削げて そのうち
自分が通ってきた道から
自分がいなくなる
そんなのあんまりだから

−詩を書いて残そう
ふと 思い立たせてくれた
今朝の通りすがりの白い薔薇

 不謹慎な言い方かもしれませんが、人生なんてそんなものかもしれませんね。「稼いでも 稼いでも/削ぎ取られてしまう」のは、何も嫁さんや子だけでなく、国・県・市が大きな負担だと思うこの頃です。「そんなのあんまりだから//−詩を書いて残そう」という気持がよく判ります。それを「白い薔薇」にうまく乗せた作品だと思いました。



個人誌『伏流水通信』19号
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2006.5.25 横浜市磯子区
うめだけんさく氏発行 非売品

<目次>

ペルコヘの思慕……………………長島 三芳2
詩と鶺鴒……………………………  〃  3
日没の海………………………うめだけんさく4
青春の幻影……………………    〃  5
    *
フリー・スペース(18)
自然と情緒…………………………絹川 早苗1
    *
<シネマ・ルーム>
「ヨコハマメリー」を観て…うめだけんさく6
    *
後 記……………………………………………8
深謝受贈詩誌・詩集等…………………………8



 青春の幻影/うめだけんさく

電車の窓から
景色を見ている少女の目が
ぼくの心の中にもあり
景色を押し流す心そのもである

すべてのものが
消し飛んでいくのを
ただ見ているのはあまりにも辛い
過ぎていく時間
景色は走る時間とともに変わる
過ぎてしまったものを
あまりにも長く持ちすぎたのだ
もっと早く悟るべきであった

ぼくは座ったまま
遠く遠くへと離れ去っていった
輝く日を
あの少女に渡してあげたいと思った
目を潤ませた視線に気おされ
消し飛んでいく景色の方へ投げるしかなかった

あの少女も辛い思いで
景色のあとを見ているのかもしれない
輝きを失った軌跡を

 「すべてのものが/消し飛んでいく」のが、「遠く遠くへと離れ去っていった/輝く日」が青春だったのかもしれません。それを「あの少女に渡してあげたいと思った」作者の優しさが伝わってきます。「もっと早く悟るべきであった」のかもしれませんが、不遜な言い方をすれば、それも人生なのかなと思います。私も50も半ばを過ぎて、ようやく少しは作者の思いに近づいたのかなと感じさせられた作品です。




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