きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2006.5.29 さいたま・見沼たんぼ「見沼自然公園」にて |
2006.6.4(日)
日本詩人クラブのオンライン現代詩作品研究会は、予定通りに午前10時過ぎに終了を宣言しました。作品は14名14作品、発言者は10名、総発言数52件という結果でした。前回までのようにイギリスやインドからの参加という見た目の派手さはありませんでしたが、落ち着いた佳い研究会になったと思います。
午後からは池袋のカラオケ「パセラ」に行ってきました。女性詩人の個人誌『波』に投稿している人たちの集まりです。私が幹事役で、新年会でもない忘年会でもない、というので「中途半端な会」と名付けました(^^; その女性詩人は今年、埼玉詩人賞と小熊秀雄賞をダブル受賞しましたので、そのお祝いの会にしようとしたのですが、ご本人の「やめてくれ!」という言葉を真に受けて、タダの呑み会にしました。ところが…。
壁に「村山精二」の張り紙がありますけど、何と私の早期定年退職を祝う会だったのです! ハメられましたね。花束は渡されるは、表彰状はもらうはで、ちょっとドギマギしてしまいました。でも副賞(?)でいただいた「獺祭」は嬉しかったです。私が一番好きな山口の銘酒で、いつもは1合、2合とチビリチビリと呑んでいるだけですが、何と一升瓶。初めて一升瓶を見ました。すぐに呑むのはもったいないので、しばらくは眺めるだけでニンマリしていようと思います。皆さん、ありがとう!
今回は伊豆の国市にお住まいの女性詩人を誘いました。私が20代の頃に沼津の若手が集まった詩誌『混隣祭』に入れてもらっていましたが、そこの主要メンバーです。詩誌が自然消滅したあとはなかなかお会いする機会がなかったのですが、それでも10年に一度ぐらいは会っていたでしょうか。最近、メールの遣り取りをしている中で、どこにも属さず出る機会もないとのことでしたから思い切って誘ってみた次第です。だいぶ刺激を受けたようで、喜んでくれましたので私もホッとしています。
二次会は近くの「ライオン」へ。解散のあと、一人で四谷に向かいました。奥野祐子さんが「四谷コタン」でライヴをやっているのです。この半年ほど奥野さんのライブに行けませんでしたから、今夜は何が何でも行こうと決めていました。もうひとつ行く理由があって、ある男性詩人が待っていたのです。彼は前述の会にも来たかったのですが、時間の都合で参加できず、お前が行くという「四谷コタン」で待っているから来い、とメールが入りました。これじゃサボるわけにはいかないわナ(^^;
相変わらずフラッシュが使えないので、画像が暗くてごめんなさい。でも穴倉のようなライヴハウスの雰囲気は出ていると思います。奥野さんの迫力は以前より磨きがかかったようで、件の男性詩人も「これは凄いわ」と驚いていました。私も鼻が高くなりましたね。
例によって備忘録で曲目を書いておきます。キャンドルライト/嘘がつきたい/La mer/ポテトチップス/神様のいない夜/ひとこいしくて/新宿うらどおり/All or Nothing/愛のブルース/smile/神さまがおられたならば。
予約した22時40分の小田急で帰宅。うちに着いたのは午前1時近くでした。朝から怒涛のような1日でしたが、充実していました。お逢いしたすべての皆さまに感謝申し上げます。
○『現代日本生活語詩集』 |
2006.6.10
「現代日本生活語詩集」編集委員会編 大阪市中央区 澪標刊 1300円+税 |
<目次>
はじめに――「生活語」とは 島田陽子 2
T北海道・東北・関東
原子 修 函館朝市 10/朝烏賊売り 11
渋谷 聡 ほごいでまるまで 13/ひとりぽっちのおとうさん 14
斗沢テルオ 生きる 16/おふくろ 17
斎藤 彰吾 モンツキバカマ 19/袋まずら 20
佐々木洋一 あっペ とっペ 22/なっペ たんペ 23
山家 常雄 独白■死んだ兵士たちの歌 25
白根 厚子 春 28/胸のどどめき 28/ほうき草の実 30
大塚 史朗 ショウシイ 31/チャバク 32
星 善博 廃屋の秘密 34/声 36
U中部・関西
小日向みちぞう 棚田相貌 38/刻限 39/「鬼」考 40
徳沢 愛子 妹よ 41/顔 41/天の父よ 42/ねんころ子守歌 43
岡崎 純 油かけ地蔵 44/ヨボの葉 44/少し遅れて 45/はかない話 46
穂田 清 お婆ちゃんの茶飲み話 47
有馬 敲 時世 50/親子 50/本能寺あたり 51/終い弘法 52
白川 淑 かたことのうた ちゅうとにゃあ 53/足のむいたほう 53/とどめさす 54
田中 国男 にげられへん 56/てはことのは 57/うちのせいかつ 58
根来眞知子 忘れ神 59/お説教 60/余得 61
本多 清子 うしろの正面どおぉなた 62/比良の八荒 63/西洞院四条界隈 64
日高 滋 まいまいする休日 65
村上 知久 おじいちゃんの顔 68/ほんま 68/あがるさがる 69
安森ソノ子 ビジネス出張 71/金閣寺で 73
八ッ口生子 気いおつけやっしゃ 74/けったいな日 75/顔 76
山田 英子 祗園祭 77/夜のとばりの烏丸通 78/南座顔見世 79
秋野 光子 留守番電話 80/バレンタインデー 81/ちやう 82
島田 陽子 酒なかりせば 83/道行き 84/あかんたれ 85/らぶこーる 85
司 茜 吉野 86/金魚池 88
武西 良和 高畑4 89/露の径 91
V中国・四国
真田かずこ 校舎 94/寝坊 95
岡 隆夫 かおり米 97/仰山出来りゃァ 98
なんば・みちこ 戦争1 100/戦争2 101
長津功三良 うじむし 103/八月・そして白刃 104
堀川 豊平 阿波・徳島の百歳 106
せんばふみよ 下波界隈 109
堀内 統義 余寒消息 112
森原 直子 節分 115/蛇 116/むかしむかし 117
小松 弘愛 せんだく 118
西岡寿美子 告別 121
山本 衝 春 124/兄 よ 125
W九州・沖縄
柿添 元 たからもん 128/村ん同級生 129
門田 照子 どこ吹く風 131/誓いの休暇 132/一人ひとりの私たち 133
古賀 博文 砂の舟 134
中原 澄子 一九四五年八月九日・長崎 137
鈴木 素直 村の正月 140/青葉木菟異聞 141/あいさつ 142
南浜 伊作 焼酎讃歌 143/赤トンボ 144/祖母 145
田上 悦子 心づくし 146/山頂で 147
飽浦 敏 うぶなん 149/ゆねんてぃだ l50
与那覇幹夫 「赤土の恋」抄 152
作者紹介 155
あとがき――『現代日本生活語詩集』解題 有馬 敲 160
装丁 濱崎実幸/本文挿画 田中国男
ほんま/村上知久
なんでかよう知らんけど おっさんだけで
しとった ちっさな ほんやさんが
つぶれてしもうたから 電車に乗って
遠くにある 大きな ほんやさんに行って
ほんと ほんの あいだの ほんを探す
あのこに こうてあげたい ほんや
探す 探す くまなく探しても あらへん
まがいもんで 間に合わせるのも
いややし ほんならと 遠くの遠くの
新聞にも載ってた 最近でけたばかりの
大きな大きな ほんやさんへ行って
探す 探す 探す ほんでも あらへん
なんでや ぎょうさん ぎょうさん
ほんはあるのに まが 悪かったんやろか
まが 抜けてたんやろか
ほんに ほんま に ほんま もんの
ほんは みつからへんかった いつも
おっさんとこには 置いてた ほんや
広さも落ち着きも ほん えー
おっさんのとこのような ほんやさん
もう でけへんのやろうか
全国津々浦々の「生活語」で書かれた作品を収めた詩集です。部分的な方言を集めた詩集はありますが、方言などと意識せず使われている言葉、すなわち「生活語」という感覚で書かれた作品を集めた取り組みはおそらく日本初ではないかと思います。方言と生活語は何が違うのかという問題は、きちんと定義されているわけではありませんから区別するのが難しいのですが、島田陽子さんの「はじめに」を読むと、例えば京都弁は今は方言になってしまったがかつては都の言葉だったという認識を考えると判りやすいかもしれません。
その一例というわけではありませんけど、たまたま京都弁の作品を紹介してみました。京都の雅な言葉遣いと「ほんに ほんま に ほんま もんの/ほんは」という、ある面では言葉遊びのような作風も面白いと思いました。京大卒の後輩に教わった言葉で「あの犬、チャウチャウとちゃうやろか? いや、あれはチャウチャウとちゃう!」というのがありましたが、それと同じですね。
紹介した作品は、そんな表面的なこと以上に「おっさんのとこのような ほんやさん/もう でけへんのやろうか」と、現代の本屋事情を鋭く捉えていて考えさせられます。「生活語」で書くということは、自分の身の丈で世の中を見るということなのかもしれません。お薦めの一冊です。
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