きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2006.5.29 さいたま・見沼たんぼ「見沼自然公園」にて



2006.6.10(土)

 午後2時より2年に一度の日本詩人クラブ第15回関西大会が、大阪・南森町の新装なった「トーコーシティホテル梅田」でありました。参加者は全国から120名ほど。相変わらずの賑やかさでした。今回から実行委員長が変わったからと思うのですが、名物の参加者全員紹介が無くなって、その分時間に余裕ができたせいか、ずいぶんとスッキリした印象を受けました。

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もり・けんさんのハーモニカに合せて合唱する参加者

 先日の日本子守唄協会神奈川県西部支部準備会で話題になったもり・けんさんとも初めてお会いできました。写真は、日本詩人クラブ創設会員の喜志邦三作詞の曲を演奏するもり・けん氏。<ラララ、紅い花束車に積んで…>の「春の唄」、マヒナ・スターズの「お百度こいさん」、<さよならも云えず泣いている 私の踊り子よ…>の「踊子」を演奏してくれましたが、私でも知っているそんな曲が喜志邦三の作詞だったなんて驚いています。昔の会員はエライ人が多かったんだなぁと思いましたね。

 今回の講演は「日本詩人クラブ創設期の関西詩人をしのぶ」と題して、安水稔和氏による「富田砕花について」、薬師川虹一氏の「児玉実用について」。水谷なりこ氏と横田英子氏の対談「私にとっての喜志邦三」。いずれもレジメがしっかりしていて、役立ちそうです。私は10年ほど前から日本詩人クラブ会員名簿の電子化を進めていますが、特に物故会員の経歴調査には難渋しています。古書店をまわったりネットで古書を漁ればいいんでしょうけど、そんな時間もお金もありません。こうやって参考になる資料が出てくるとうれしくなりますね。実行委員の皆様、ありがとうございました。

 懇親会、二次会と呑んで、最後は天神橋筋のカラオケまで繰り出しました。ロビーにいた7人で行きましたが、いまだにお名前の判らない女性もお二人。関西の方だと思うのですが、同じ会場にいたという気安さから親交を深めました。呑んで唄ってバカ騒ぎをして、日頃の疲れなんかフッ飛んでしまいましたね。ホテルに帰ったのは0時を過ぎていたと思います。いい夜でした。遅くまでお付き合いいただいた皆さま、ありがとうございました。



詩誌『プリズム』創刊号
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2006.5 堺市西区 西きくこ氏代表 非売品

<目次>
プロローグ
 プリズム …………… 西きくこ 1
脱走 …………………… 西きくこ 3
降ってくる ………………………… 5
かますが動く ……………………… 7
火 ……………………… 東尾緯子 9
土手 ………………………………… 11
血潮 ………………………………… 13
それぞれの …………… 福岡公子 15
風向き ……………………………… 17
飛翔(祝婚歌T)…………………… 19
支えあって(祝婚歌U)…………… 21
戦没画学生の絵 ……… 吉田国厚 23
物質と精神 ………………………… 27
波長 ………………………………… 29
     表紙・カット 吉田一之



 風向き/福岡公子

我が家の犬は
風の流れが読める

庭の中を何度も移動した後
彼の寝ている場所が
その時の
ベストポジションだ

ある日 彼は混迷する国会に
迷い込んでしまった
その場の淀んだ空気
しばらく動き回った末
底辺にうごめく
生ぬるい風を感知した
そしていつものように
その流れに添って寝転んだ

どちらを向こうか窺っている議員達
彼を見ていれば
ピタリと教えてくれるよ

刻々と向きを変えるので御用心

 「風の流れが読める」「我が家の犬」を「混迷する国会に/迷い込」ませてしまったところが面白い作品です。やっぱり国会は「淀んだ空気」「底辺にうごめく/生ぬるい風」があるのかと思いますね。「どちらを向こうか窺っている議員達/彼を見ていれば/ピタリと教えてくれる」のだけど、その風は「刻々と向きを変えるので御用心」とした最終連がよく効いています。「犬」と「国会」を組み合わせた作品はおそらく初めてではないでしょうか。



山本萠氏詩集『草の瞳』
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2006.7.7 埼玉県所沢市
書肆夢ゝ刊 1500円

<目次>
秋の水
水のほとり 10    バスラの水桶 12
秋の水――傷猫に 14 ヒトデ 17
流木 18       藍 20
木の下に立って 22  摂理 24
黙・示 26
遠影
五月のどこかで 30  遠景 32
野天 34       星 37
霧の道 38      遠影 41
さようなら 42    木片 44
久遠を追って―捨て猫挽歌46
あなたの日々の戸を――永遠にいるY・Tに 52
記憶 59       非在 60
天の硝子
科(とが)の実 64   残欠 70
越えて行く 76    白蝶はおもった 80
いにしえの草苺 84  天の硝子 88
 あとがき  92



 流木

流れ着いたものを拾う
てのひらの
海の総量

流れて行ってしまった
とりかえしつかぬ わたしから

汀では
ほほけた木片が
錆びた砂を食
(は)んでいる
海を吸い空を背負って なんと
とほうもない重さ

流して行ったのだろう
木のすがたで(木を脱ぎながら)
時を そのように
大きなものへ

 山本萠という詩人にかかると「流木」もこうなるのかと感心した作品です。「ほほけた木片」が重くなっていることは体験していましたが「海を吸い空を背負って なんと/とほうもない重さ」になるとまでは考えもしませんでした。たかだか流木でも詩人が見るとこうなるのだと教えられました。「てのひらの/海の総量」という詩語も佳いですね。物理的な総量ではなく小さな「てのひら」の中だけの海。そこには海の組成の全てが詰まっています。作品では数CCという文字通りの総量を言っていると思うのですが、それを通り越した組成まで私にイメージさせてくれました。優れた作品とはそういうものだろうと思います。最終連は、散文的には「木のすがたで」「時を そのように/大きなものへ」「流して行ったのだろう」と読み取れますが、( )にくくった「木を脱ぎながら」が利いています。これも原子まで分解していくようなイメージを与えてくれました。刺激の多い作品・詩集です。




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