きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2006.5.29 さいたま・見沼たんぼ「見沼自然公園」にて



2006.6.15(木)

 16時半に家を出て、バス・電車を乗り継いで小田原のファミレスに17時半に着きました。クルマで行けば30分ですけど、どうせ呑んじゃうだろうと思って止めました。止めて正解でした。けっこう呑んだ(^^;
 先週、日本子守唄協会の神奈川県西部地方の準備会があったのですが、そこで小田原・南足柄方面はお前に任せると言われました。任せるったって一人じゃ何も出来ないから、小田原市在住の女性詩人お二人にご足労願ったという次第です。先週渡された資料を配布して経過を説明。何とか理解してもらえたようです。理解って言ったって、私も完全に理解しているわけではありませんから、私が判っている範囲で、ということですけどね。一応の協力はとりつけたのでホッとしています。これで核はできたので、あとはスケジュールをこなすだけ。問題はそのスケジュールが決まっていないってことだワな(^^;

 本当は高級レストランにでも招待すれば良かったのでしょうが、たまたまお一人の近くにファミレスがあったので其処にしました。ビールを呑んで、あとはよく判らない赤ワインを3杯ほど。何度か行ったことがある店なので赤ワインの味は判っていましたけど、見事に記憶していた味。マズイ(^^; でも、20年も前から知っている女性お二人を侍らせて、気分は良かったです。帰りは自宅までクルマで送ってもらって、どちらが依頼人なのか分からない状態でしたが甘えてしまいました。それにしても先週からたった1週間で核が出来たことは見事と自画自賛。幸先の良いスタートになりました。



隔月刊紙『新・原詩人』6号
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2006.6東京都多摩市
江原茂雄氏方事務局 200円

<目次>
この詩W 私論・ニーチェの詩 江原茂雄 1
詩 ≪夢をみたい≫ 竹内元 2
読者の声 2
詩 激しく叫ぶ 大井康暢/風が舞う 小林忠明/チェルノブイリ事故20年目の傘 山田塊也 3
詩 時のトンネルをくぐる 墨微/除草剤 伊藤眞也/岬の山 神信子 4
冗句・川柳 乱鬼龍 4
詩 にくい親子 井之川けい子/天に唾 まつうらまさお/いそがしいおとうさん(小三男)/つわ蕗の葉 川本説子 5
川柳 亀山剣鶴坊 5
詩 戦災孤児の少女 相馬健一/あいちゃん 丸山裕子 6
事務局より 6



いそがしいおとうさん

たまに
「遊んで。」
言うと
「そのうちな。」
と、いつも言う。
遊んでくれないうちに
ぼくは、大人になっちゃうよ。
         (小三男)
 (「家族の形 子どもの詩から見えるもの」駒草出版より)

 小学校3年男子の作品のようですが、佳いですね。私の子も小3頃はよく「遊んで。」と言ってきました。回答は「そのうちな。」とは言わずに「10分だけな」。その10分を目いっぱい喜んでくれて、私も楽しみでした。親子の関係は時間の長さではないとつくづく感じたことを思い出します。いかに中身を濃くするか。私にとっても気晴らしになった10分ですが、そのあとはまた書斎にこもって…。そんな子も今では「大人になっちゃ」いました。私が声を掛けても遊んでくれません……。



詩誌『梢』41号
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2006.6.20 東京都西東京市
山岡和範氏方事務局 井上賢治氏発行 300円

<目次>
「子どもたちよ 若者よ」藤田紀………………………2
「故郷の廃家」牧葉りひろ………………………………8
「窪田氏の書簡に寄せて」宮崎由紀……………………12
「思い出すこと」山岡和範………………………………16
「自然の恵みをいただいてます」他2編 山田典子…19
「ふきのとう」井上賢治…………………………………26
「留守」上原章三…………………………………………29
「体にしみついてとまらない」他2編 北村愛子……26
「給料計算書」他5編 日高のぼる……………………36
北村愛子詩集「ありがとう」感想紹介…………………44
「梢」40号感想紹介………………………………………51
事務局だより………………………………………………55
表紙 イラスト――沈丁花(入院後はじめて描いた絵)山田典子
54ページカット――ふきのとう 山田典子



 思い出すこと/山岡和範

  祖父

大東亜戦争が始まって
父が出征すると
祖父はがっくり力を落として
畑に出かけなくなった
肋膜にかかっていた母は
夜になっても月のあかりに
畑を耕した
ぼくもだまって耕した

戦争が終わって
父は福山からすぐ復員してきた
軍服のまま畑を見てまわった
母の命は助かったが
祖父はほっとして気がゆるんだのか
静かな眠りについた

父とモバ(肥料にする海草)を切りに
海へ行っているときだった

 「思い出すこと」という総題のもとに「祖父」「軍隊言葉あるいは号令」「月月火水木金金」の3編が収められ、ここでは最初の「祖父」を紹介してみました。息子が「出征」したあとの「がっくり力を落とし」た様子が「畑に出かけなくなった」という言葉で象徴され、帰還して「ほっとして気がゆるんだ」様子も手に取るように判って、痛々しい印象を受けた作品です。国家権力に息子をもぎ取られるということは、死に至るほどの悔しさだったのだろうなとつくづく感じます。最終連の「父とモバ(肥料にする海草)を切りに/海へ行っているときだった」という描写が印象的で、奏功している作品だと思いました。



飛田紀子氏全詩集『盛装』
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2006.6.20 東京都豊島区
書肆山田刊 3500円+税

<目次>
飛田紀子さんの詩――高橋順子 14
T 盛装
盛装 
.20
響き 
.24      始動 .28
律動 
.32      共生 .36
掟 
.40       浮遊物 .44
貧乏草 
.48     古都饗宴 .52
移調 
.56      トータルコーディネーター.60
連鎖 
.64      砂の記憶 .68
使者 
.72      陰画−ある光景 .76
舞う 
.80      陰翳 .84
忘れ物 
.88     花冷え .92
U 沈黙の春
沈黙の春 
.98    記憶 102
展示 106      首の海 110
旅立ち 114     定め 118
生 122       同化 126
行方 130      もう一人 134
操作 138      フィトンチッド 142
棘 146       錠剤 150
期限 154      異物 158
判じ絵 162     初舞台 166
生 170       鼓動 174
親王五色沼 178   時 182
出航 186      樹林にて 190
時空 194      再生 198
V ペルシャ陶器
ペルシャ陶器 204  束の間 206
アレルギー 208   初秋 210
消失 212      瓶の中 214
羽化 216      赤い花 二題 218
叫び 220      凝視 224
影 226       斑点 228
配置 230      回想 232
白粉花 234     スクランブル交差点 236
実像 238      女神の周辺 240
都会の祭 242    黒い閃光 244
人形工場 246    椿の行方 250
存在 252      ある朝 雑貨店は 254
動揺 256      高速道路 258
霧 260       ゆくて 262
嘘 264       一粒の祈り 266
裸木の幻想 268   彷徨 270
音 272       進路 274
合格発表 276    少年たちの夏 278
散る 280      青の音階 282
冬の日のメルヘン 284

編集覚え書き――高橋次夫 286
初出一覧 289
白装束の舞手――高橋次夫 292
春紫苑 飛田紀子さんへ――友枝力 302
やくよけ祖師 掘の内妙法寺――高野保治 305
あとがき――飛田良文 314



 盛装

そぼ降る梅雨に濡れ
両手で抱え
持ち帰った菖蒲
生暖かい体温が
伝わっているようだった
かすかに膨らんだ先端
そっと押さえると
確かな息遣いの応答

晴れの舞台への禊ぎ
意を決し
きっぱりと鋏を入れる
水盤に一花五実の装いで
端然と吃立した

造物主によって緻密に畳み込まれ
幾重にも固い緑に覆われた蕾
荘厳な曲に合わせ
充分な水分に精気を漲らせると
白い花弁を
ゆるりゆるりと弾いていった

ある夜
たった一人の観客の凝視する舞台
盛装をまとい
華やかな完結の舞を
束の間の競演
白装束の舞手は
真っすぐに背筋を伸ばすと
足早に去っていった

翌朝
水面に
生気を失い縮れかかった
花弁が折り重なって

 2004年6月27日に64歳という若さで亡くなった著者の全詩集です。北川冬彦氏の『時間』に発表した39篇、『時間』廃刊のあとを引き継いだ『竜骨』の45篇、計84篇の全作品が収録されています。
 紹介した作品は詩集のタイトルポエムで、かつ巻頭作品です。亡くなる2年ほど前に『竜骨』46号に発表したものです。癌再発の時期の作品のようで「白装束の舞手」は、あるいはご自身への覚悟だったのかもしれません。迫る、神仏への御手への旅立ちを「盛装をまとい」端然と受け入れる詩人の姿をここに見た思いをしました。生前は1冊の詩集も出版しなかったようですが、夫君、詩友に支えられた全詩集をご本人もどんなにか喜んでいるだろうと思います。ご冥福をお祈りいたします。




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