きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2006.5.29 さいたま・見沼たんぼ「見沼自然公園」にて |
2006.6.24(土)
今日も特に予定はなく、いただいた本を読んで過ごしました。
○月刊詩誌『現代詩図鑑』第4巻5号 |
2006.6.10 東京都大田区ダニエル社発行 300円 |
<目次>
水野るり子 ……3 佐藤真里子 …… 37
國井 克彦 ……6 高橋 渉二 …… 41
荻 悦子 ………9 小野耕一郎 …… 45
山之内まつ子 …13 かわじまさよ … 50
高木 護 ………17 岩本 勇 ……… 53
枝川 里恵 ……22 倉田 良成 …… 59
岡島 弘子 ……27 表紙画 … 来原貴美
竹内 敏喜 ……33 『魔法』
先立つものは/高木 護(たかき まもる)
戦地で遺書を書かされたな
書き方の見本があって
父上 母上
お国のためによろこんで
華と散ります
先立つ不孝をお許し下さい
見本どおりに書いて
血判を捺したな
遺書はどうしたのか覚えてないが
不孝を不考と書いたのではないかと
いまでも気になっているな
あれからお国のためにもならず
先立つどころか
父上も 母上も先立たれ
わたしはいまや老い耄て
くらしもままにならず
途方にくれるばかりで
毎日 降参しているな
バンザイ! しているな
改めて「先立つ不孝」という字を見て、私の長年の勘違いに気付きました。「先立つ不幸」だとばっかり思っていたのですが親不孝の「不孝」だったのですね。ああ恥ずかしい。
それはそれとして「不考」とは云い得て妙です。何も考えてはいけない時代だったでしょうから、こっちの方が合っているかもしれません。「不孝」は現在では死語に近くなっている気がしますが、「不考」は現実味を帯びているようにも思います。考えさせられました。
○詩誌『光芒』57号 |
2006.6.18
千葉県茂原市 斎藤正敏氏発行800円 |
<目次>
◇詩作品
武田 健 入舟町 6 市村 幸子 乳房の記憶 8
立川 英明 如月そうそう 10 帆足みゆき 夢の出口 12
川島 洋 父のチョコレート 14 清水 博司 童話(「問はず語り」聞き書き)17
末原 正彦 やさしさという砦 20 阿賀 猥 変形型恋愛天虫色模様 23
本田 和也 カーテン 26 本田 和也 マーラー 27
本田 和也 生きる 28 植木 信子 雪によんでみる 30
植木 信子 時代を過ぎて 32 鈴木豊志夫 金冠塚騒動記 35
奥 重機 雉 38 奥 重機 虚の人 40
小池 肇三 ある駅を出た所で 42 山田ひさ子 永平寺の元日 43
みきとおる 星の物語 46 山佐木 進 春 52
佐野千穂子 トーフ ジョニー 54
◇エッセイ
高橋 馨 続・名著再読・その4 56 松下 和夫 あやうい時代の中で 62
見ることを学ぶ −リルケ −僕の裸身−
『マルテの手記』(1910)を読む− 山田ひさ子 忘れ得ぬ人(6) 65
神尾加代子 医に働けば角がたつ 66 佐藤 鶴麿『香山紀行』=エピローグへ 68
権利を許せば流される
◇翻訳詩
本田 和也 ジェイムズ・ジョイスの詩 71
◇詩作品
池山 吉彬 竹林 74 吉川 純子 たましひの飲み方 76
松下 和夫 妻の還暦 78 石村 柳三 寒椿 81
中村 節子 予言者が帰ってきた 84 小関 守 人生模様 86
水崎野里子 裏町の銭湯 89 高橋 文雄 白い迷想 92
横森 光夫 私たちを救ってください 94 きし・すすむ 桜の花の下に 96
きし・すすむ 雲一片 98 神尾加代子 紅梅 .100
神尾加代子 Restaurant くらはし .102 篠原 義男 残っていたもの .108
篠原 義男 氷の中で .109 篠原 義男 コブラ−病の沼− .110
川又 侑子 流氷と春 .112 金屋敷文代 ひさしぶりに… .114
山形 栄子 しょぼくれ .116 青野 忍 体質について .117
吉田 博哉 煙突 .120 石橋満寿男 反発 .122
斎藤 正敏 出発 .125 伊藤美智子 旗と歌 .129
◇言葉の広場
高橋 馨 赤坂真理にぞっこん .130 きし・すすむ 良覚考 .131
〜良寛様の漢詩とその心〜2
◇光芒図書室
石村 柳三 佐野千穂子詩集『ゆきのよ.134 武田 健 しあわせについて .137
の虹』『消えて候』を読む 中村節子詩集『モザイクの山』
−美を見し眼の感性と を読んで
本燃の女心をつつんで 佐藤 鶴麿 死に損ないが 六十年 .143
本田 和也 広大無辺のアジア .139 小関守詩集『晴嵐賦』論−
水崎野里子詩集『俺はハヤト』 渡辺那智子 もがいてきた人生 .146
を読んで 小関守詩集『晴嵐賦』に思う
吉田 博哉 農民の魂の記録 .148
石橋満寿男『百姓の嘆き』を読む
◇詩集評
T 斎藤 正敏 .152 U 池山 吉彬 .156
V 本田 和也 .160
◇詩誌評
T 山佐木 進 .170 U 鈴木豊志夫 .172
◇受贈深謝 .177 ◇同人の近刊書一覧 .188
◇詩の窓
【選者】帆足みゆき・吉川純子・斎藤正敏
松本 関治 一夜 .181 大森 雄介 線路 .181
佐藤 義江 虫も友だち .182 大曽根満代 迷える貴方(あなた)へ .183
中山 操 やっとつかんだ幸福 .184 知野 創七 春が来るよ .184
星野 薫 おーい、ここにいるよ .184 金綱あき子 童たちは今 .185
阿部 匠 わかくさ .186 御園千賀子 剣道と孫 .186
平田 靖彦 由ケ浜にて .187 ◇同人の近刊書一覧 .188
◇ご案内
三隅浩詩集『痕跡』 .191 草原舎の近刊詩集 .192
茂原詩の教室 .193 『広報もばら』の詩作品募集 .193
光芒の会ご案内 .193
◇編集後記 .194 <表紙絵/内海 泰>
紅梅/神尾加代子
住みびとがいない家の朽ちた軒下で
秘めやかに 紅梅が咲いていた
針さえも割ってしまいそうな
しみじみ寒い日なのに
おびえることなく恋を呼吸し
微香のような叫びをあげて
お伽話の少女のように
紅のくちびるが大気いっぱい
吐息していた
もはやゆだねる人もいないのに
季節が風にほどけると
遠い日に
愛でられた熱い憶いが寄せてきて
せつない習いで また歓び色に染まる
住みびとがいない家の朽ちた軒下で
ひっそりと 紅のくちびるが閉じてゆく
うすい日差しが近くまできた日だった
満たされたすぐあとのように
まだあかあかとして
そのひとひらに夕ベの甘きを宿しながら
早い春に身支度を急いでいる
軟風(なよかぜ)の痛みを知らぬうちに
転生の希へと
擬人化された「紅梅」が艶っぽく、私には似合いませんが頬を紅らめて拝読しました。第1連の「針さえも割ってしまいそうな/しみじみ寒い日」という詩語も佳いですね。この形容は初めて眼にしました。作者のことはまったく判りませんが短歌の素養がある人なのかもしれません。日本人の持っている、良い意味での情緒性、叙情が綺麗に表出した作品だと思います。
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