きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2006.6.11 京都・泉湧寺にて |
2006.7.8(土)
神楽坂エミールで日本詩人クラブの理事会、引き続いて例会が開催されました。理事会のトピックスは何と言っても法人化が出来たことでしょうね。7月3日に登記が完了し、正式に有限責任中間法人・日本詩人クラブが発足しました。56年の歴史上、画期的なことで、この時に理事として立ち会えたことを誇りに思います。
例会は「日本詩人クラブ創設期の詩人たち」と題して山田直氏がご講演くださった「堀口大學」が印象的でした。周知のことでしょうが明治の外交官の長男としてメキシコ、ベルギー、スペインと渡り歩ったのですね。それが大學の日本人放れした作品に繋がっていったのだと理解できました。
もうひとつの講演は相沢那織子氏による「ドイツ古典詩を語って詩の有りようを探る」。こちらは正直なところ、ちょっと難しかったです。要は、現代詩人はもっと良いものを書け、ドイツ古典詩に学べ、というものでしたが、ゲーテやシラー、ヘルダーリンと比較されてもね(^^; 努力はしてますけど、愚者は愚者なり、下手は下手なりの詩があっても良いのではないかと愚者代表としては思います。
写真は会場風景。70〜80名ほどでしょうか、盛会でした。
懇親会はパスして新宿へ。例会には出られないけど夕方から呑みたいという仲間と会って、同じく懇親会をサボってもらった詩人たちと呑みました。世界堂裏の「あいうえお」だったかな? 雰囲気のある居酒屋で芋焼酎を呑んで、カラオケもつき合って帰宅は午前様。唄いすぎてちょっと疲れたけど、良い夜でした。おつき合いいただいた皆さん、ありがとうございました。
○焔75周年記念『焔詩集』 |
2006.6.26
横浜市西区 福田美鈴氏代表 福田正夫詩の会発行 4000円 |
<目次>
1 第一次「焔」・詩選集
詩
空地の花 佐藤晴吉 11 無題/岩瀬一男 12
白鷺/大鹿 卓 13 釜/加川文一 14
日記/坂本蕗夫 16 柳/赤堀昌宏 17
故郷/神山時雄 18 秦野高原の暁/小泉宗雄 20
砂の塔/宮本をさむ 21 生蕃の脳丁に/林 静夫 23
たそがれの丘/高柳奈美子 26 女工の手紙へ返す/宮本 重 27
夜を掘る/渡邊衣子 29 鐡橋落成式/稲葉晃一 30
恋愛と痔/横地正次郎 31 百姓の詩/渡井千年 34
翹/北見庄三郎 35 一月上浣の夜の海で/鈴木周一郎 36
泥こね/伊藤 浦 38 小石/今井きみゑ 39
国境を越へて/庄司真三九 40 銃殺/金井新作 43
高知にて/能登秀夫 45 焔/近藤秀一 47
暮るゝ山峡/吉川政雄 48 溟濛の吹雪に/井上 靖 49
フランス大革命史断章/南條蘆夫 50 烈風の朝/中山智方 53
牛/柿澤幹雄 54 豹/福田正夫 55
煙突のある風景/黒田義治 56 ある女の生活/法橋章子 58
ある日の堤塘護岸工事場/平 倫盛 59 水を待つてゐる/安藤邦夫 60
八王子市/加藤丘之助 61 どら猫/中村泰明 62
あれる上海/吉見久夫 63 アトリエ/眞田喜七 64
白い霧/桑原正二 65 北方の季節/中村わか子 66
雨/横田克二 67 流謫者の歌/象潟龍三郎 68
ある日の點描/緑川 昇 69 河/服部晃二郎 70
蝿/赤井嘉一 71 鋼鐡の槍/小峰太亮 72
鐡骨と鳩/藤野秀衞 73 蟻/小林輝正 74
しひたげられた町/秦 武四郎 75 濁白/兼松信夫 76
穹/下村隆英 77 出旅/日向伸夫 78
榾火/戸張みちこ 79 花/寺尾紀美子 80
事故/矢島信明 81 秋の生活/松本 登 82
裸体/福井清朗 83 山の秋/井上逸夫 84
出発/加藤一郎 85 大空の下で/蒲生直英 86
日没/福田 稔 87 街/田中敏子 88
蟲/鈴木祥瑞 89 私は知らない/山崎 央 90
北行/長谷辰雄 92 山脈の詩/石橋隆道 93
窮鼠/小倉亥助 94 一本杉/小澤芳正 96
痴/森 堯 97 蹌踉たる独楽/竹内良雄 98
春かなしめる譜/矢迫一三 99
付録
同人諸君へ一言・編輯余録/福田正夫 100
第一次『焔』全目次 102
2 第二次「焔」・詩選集
帰ろう/矢島信明 123 海の墓標/福田達夫 124
陶工リーチ/林 鼎 125 土/中村泰明 127
灯/柿澤幹雄 128 変貌/福田信夫 129
五月/戸張みち子 130 行きずり/宮本 道 131
鶴/中山智方 132 言葉/渡辺和一郎 133
青の悲劇/横沢千秋 134 南海の静寂のなかに/山崎 央 136
戦争/能登秀夫 137 アラスカ/高棟健一朗 138
におい/石橋 隆道 139 烏合の群盲/森 堯 140
3 第三次「焔」詩集
節目/阿部忠俊 143 夏/阿部忠俊 145
直立不動/青木 登 147 化粧する男/青木 登 149
朝日連峰「竜神森」の深夜に/雨海修.151 雪の降る夕暮の坂道で/雨海 修 154
跳ぶ/新井翠翹 156 泥鱈/新井翠翹157
なつかしきビーゲラン/井手文雄 159 言葉/井手文雄 160
春の足音/伊東二美江 161 天も地も輝く命/伊東二美江 162
黄河/井上 靖 163 飛天・讃/井上 靖 164
俺の五十年/植木肖太郎 165 暗い夜/植木肖太郎 167
ブナになった少年/宇田 禮 169 古船/宇田 禮 170
挑む/小笠原啓介 172 妙義山/小笠原啓介 173
平和/小澤 彰 174
酒前、酒後/おの・ちゅうこう 175 ある作家の終末/おの・ちゅうこう 176
裏門から/風山瑕生 177 切断されて/風山瑕生 178
初島へ/金子秀夫 179 ルンビニ遺跡/金子秀夫 181
そうかしれない/兼松信夫 183 申訳けなし/兼松信夫 184
蛮学ノススメ/亀川省吾 185 そこにいるのはあなたです/亀川省吾 186
天災/蒲生直英 188 二〇〇一年暮れて/蒲生直英 189
梅雨・小田原/川崎浩一 190 枯葉の群れ/川崎浩一 191
夜の時間/上林忠夫 192 雪の日/上林忠夫 193
花籠/北川れい 194 友情/北川れい 195
ある風景/許 育誠 196 夢/許 育誠 197
こぼれ落ちるもの/錦 連 198 月・太陽・生存と衰亡/錦 連 199
微笑に包まれて/黒田佳子 201 黒い花/黒田佳子 204
出発/高地 隆 206 リハビリ病院/高地 隆 207
百日紅/五喜田正巳 209 ある夕方/五喜田正巳 210
日本の女/小長谷源治 211 大瀬崎/小長谷源治 213
反芻/西條嫩子 216
月の森/瀬戸口宣司 217 桜に逝く/瀬戸口宣司 218
風船かづら/武井 京 219 マンションの窓から/武井 京 220
糸トンボ/田嶋栄子 222 桜嫌い/田嶋栄子 223
運河/東野一矢 224 眠れない夜のために/東野一矢 227
詩人/永岡浩子 228 水棲/永岡浩子 229
海音/永田東一郎 230 高長寺の白木蓮/永田東一郎 231
都ノ書 林 鼎 232
潮目/西川 修 233 弦月/西川 修 235
みみずの死/野口忠夫 237 クマムシ/野口忠夫 238
しぐれ/野島 茂 239 千曲川/野島 茂 241
痛ましい勲章/濱本久子 243 琉球朝顔/濱本久子 244
最果て/平出鏡子 245 ぽと ぽとっ/平出鏡子 246
あの夏は今/福田達夫 247
続・海の永遠/福田美鈴 254 ヒマラヤのアサ/福田美鈴 257
戦中を生き抜いた日々/布野栄一 259 パリでミレーの絵画に想う/布野栄一 261
恐怖する/冬園 節 263 海峡の誘惑/冬園 節 264
手拭い/古田康二 265 見失った絵/古田康二 266
木の寓話/古田豊治 267 放逐(大震災より)/古田豊治 270
ざくろ/保坂登志子 271 浅蜊/保坂登志子 272
リスト・愛の夢/水崎野里子 273 ひまわりへのオード/水崎野里子 274
第25五郎竹丸沈没/宮崎潤一 275 山本和夫先生追悼詩/宮崎潤一 276
世紀/宮本 道 277
風船になって/森 やすこ 279 依頼/森 やすこ 280
私が読み取られている/矢島信明 281
蝋燭を見つめて/山崎豊彦 282 むくろ/山崎豊彦 284
美しい或る未亡人像/山本和夫 286 ゴッホは生きている/山本和夫 288
宇宙船基地/渡辺和一郎 290
蝶昇夢/和智美佐枝 291 しかと 置きます/和智美佐枝 293
4 第三次「焔」散文集
『焔』発刊について/福田美鈴 297 歌はぬピッケル/小澤 彰 298
福田正夫と加藤一夫/加藤不二子 302 伊東静雄小論/傳馬義澄 305
福田先生と「武相の若草」/小澤 彰 310 小田原と福田正夫/永田東一郎 313
邂逅/西川 修 315 近藤東氏のウィットの振幅/西條嫩子 319
『みだれ髪』から『小扇』へ/逸見久美 322 ちょっと、ひとこと/山本 和夫 325
山本和夫詩の周辺/保坂登志子 329 '89夏「焔」尾道同人会/西川 修 333
福田正夫の詩・断想/蒲生直英 335 福田正夫詩の受容/工藤 茂 338
福田正夫さんご夫妻の思い出/永田東一郎342 講演『焔』時代/井上 靖 344
井上靖先生若き日の消息/福田美鈴 351 「焔伊豆全国会」記/小長谷源治 356
「自由詩人」の死/瀬戸口宣司 361 思い出の福田正夫先生/蒲生直英 363
教えるということ/野島 茂 366 「福田正夫生誕百年記念の集い」報告 金子秀夫 369
暁闇瀝滴と成す/福田達夫 376 井上靖と静岡県/小長谷源治 384
蒲生直英の詩の世界/阿部忠俊 387 訳詩 フリーデリケ マイレッカー/松尾直美 389
訳詩 マグダレーナ フォーゲル/松尾直美 392 万歩計の旅(九)/工藤 茂 396
井上靖の書簡四通/黒田佳子 399 福田達夫さんを憶う/逸見久美 401
福田正夫生誕100年祭ノート/金子秀夫.405 大正デモクラシーと福田正夫/神川正彦 408
古廟の歌/許 育誠 424 「福田美鈴の会」に参加して/山崎豊彦 427
開会のあいさつ/金子秀夫 429
5 解説
当時のこと/蒲生直英 433 詩誌『焔』(第一次)に集った詩人たち/宇田 禮 434
第一次、第二次『焔』発刊経過/福田美鈴.448 復刊『焔』と現在発行中の『焔』のこと/金子』秀夫 462
あとがき/瀬戸口宣司 480 表紙画・扉カット 福田達夫
豹/福田正夫
豹の瞳(め)は燃えてゐる。身に炎の影を織り出して、
原始林をその本能で焼かうとする、
かくれ、沈み、伏しながら、
終にしつかりと、身を以て炎の本質をつかむまで。
――静かな怒りは、やがて大いなるものに、
生れ変つて行くぞ!
豹はすみやかな足に、荊棘(いばら)の刺をふんで走る。
するどい知恵は体験にとぎすまされる。
豹は感能の芽生を食ふ、
はてしなく成長する、思想への情熱を苦しんで、
幻の火花のひらめく瞬間、
飛躍の刹那をはげしくねらひすます、
恐ろしい跳躍を以て、生命(いのち)をつかむ日までの充実!
待つものは、現実への力の表示、
衝撃へ転化する苦脳は、光への望みに生きて、
正しい待望の夢をむき出しにしてしまふ、
倒れるまでも、豹は求めようとする、つかまうとする、
それでいゝ、――豹の瞳(め)は烈しく燃えてゐる、
身を以て、あらゆるものを炎にしようとしてゐる。
1931年7月号
副題に「1929〜2005」とあり、福田正夫が興した詩誌『焔』の75年の歴史が刻まれた480頁の大冊です。特に1929〜37年の第一次が面白く、詩史上の価値という面でも第1級の資料でしょう。
第一次には伏字だらけの能登秀夫の「高知にて」、今の時代なら不適切と言われてしまう井上靖の「溟濛の吹雪に」などの貴重な作品が目白押しですが、ここでは主宰・福田正夫の「豹」を紹介してみました。今から75年も前に発表された作品ですが、さすがに古さを感じさせませんね。「豹」に託した普遍的な生のテーマです。現代から見るといかめしい言葉のように感じるかもしれませんけど、私は格調高く受け止めました。「現実への力」を感じた作品です。ご一読をお薦めします。
○詩誌『馴鹿』43号 |
2006.6.30
栃木県宇都宮市 我妻洋氏方・tonakai発行 500円 |
<目次>
*作品
白昼夢/トマト/桜 … 入田一慧 1
桜/春/夏 ほか … 大野 敏 3
安息 … 和気勇雄 13
沈黙の農民 … 村上周司 15
フキ … 矢口志津江 17
意味 … 和気康之 19
白い馬 … 青柳晶子 21
ブレーキ … 我妻 洋 23
*エッセイ
タイムカプセル・手紙 … 和気康之 9
礼始礼展 … 青柳晶子 9
金子光晴の反戦詩 … 我妻 洋 10
外村京子詩集『オーヴァ・ザ・ムーン』… 青柳晶子 12
後記
表紙 青山幸夫
白昼夢/入田一慧
白い花の
夢をみた
鼻を突き合わせるようにして
百合のような
ラッパ状の花を
じっと見つめていると
蕊の林の間をすり抜け
花の付け根の所で
ちょっと
衝撃を受け
維管束の中まで吸い込まれ
地面から集められた水に押し戻され
気が付くと
また
花を見つめている
たゆたうものの
振り幅を
作者は絵も描いているようですが観察力の鋭さ、想像力の豊かさに驚かされました。「蕊の林の間をすり抜け/花の付け根の所で/ちょっと/衝撃を受け」るところまでは私でも書けるかもしれませんが、その後の「維管束の中まで吸い込まれ/地面から集められた水に押し戻され」というフレーズは素晴しいですね。水の一滴一滴まで眼に飛び込んで来るようです。最終連の「振り幅」という詩語もこの作品を締めていると思います。巻頭詩だけのことはあるなと感じた作品です。
○詩誌『詩風』13号 |
2006.6.30
栃木県宇都宮市 仲代宗生氏方・詩風社発行 300円 |
<目次>
樹の割れ目/金敷善由 2
走リナガラ/あらかみさんぞう 4
オワリノハジメ/あらかみさんぞう 10
提琴/金子いさお 14
青の男/綾部健二 18
春の海/和田恒男 22
詩の音楽と批評性の依拠に関する断章/和田恒男 26
白い幹/仲代宗生 36
変幻へ投影される不在――和田恒男詩集『慈姑採りの歌』/仲代宗生 38
編集後記
オワリノハジメ/あらかみさんぞう
モウオワリデス
ゼツボウデス
トソンナニイイハルノナラ
ソノモウオワリ
ソノゼツボウトイクモノヲ
メノマエニ 出シテミセナサイ
アナタハ
変ワロウトシテイルダケデショウ
変ワルコトヲオソレテイルダケデショウ
ナニカガ
始マロウトシテイルダケデショウ
始マルコトヲオソレテイルダケデショウ
ヨウヤク
アナタガ生マレヨウトシテイルノデス
モウイチド生マレルコトヲ喜ブベキトキデショウ
「ソノモウオワリ/ソノゼツボウトイクモノヲ/メノマエニ 出シテミセナサイ」と言われてドキッとしてしまいましたが、見せられないものに心を砕く必要はないと諭されているのかもしれません。さらに「変ワロウトシテイルダケ」「始マロウトシテイルダケ」と説得されると、救われる思いがします。絶望とは「ヨウヤク/アナタガ生マレヨウトシテイル」前段階なのかもしれませんね。カタカナの一字一字を追いかけていくと、知らず知らずに納得させられる作品です。
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