きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2006.6.11 京都・泉湧寺にて |
2006.7.14(金)
特記事項なし。いただいた本を読んで一日が終わりました。
○詩誌『飛揚』43号 |
2006.7.7 東京都北区 葵生川玲氏発行 500円 |
<目次>
特集・名付けられたもの
●作品
レッテル――葛原りょう 4
犬――みもとけいこ 6
幸子さんのこと――伏木田土美 8
こうもりの洞窟――北村 真 10
空白の朝――土井敦夫 12
チェルノブイリ――青島洋子 14
「夢の超特急」――くにさだきみ 17
グランドゼロ――葵生川玲 20
●書評 北村真詩集『穴のある風景』
光る詩意識――米川 征 26
穴と空と窓――沖長ルミ子 28
●編集後記 30 ●同人刊行詩書 2 ●同人住所録 31
装幀・レイアウト――滝川一雄
チェルノブイリ/青島洋子
(苦ヨモギ、破滅の象徴の黒い草について書いた
詩人がいました)*
ロシア語で「苦ヨモギ」は
チェルノブイリ
破滅の象徴の名を冠されていたのだ。
「あなたがたのうちに
苦ヨモギを生ずる根があってはならない」
旧約聖書では罪と罰をも意味する。
「見よ、私はこの民に苦ヨモギを食べさせ、
毒の水を飲ませる」
エレミヤに言わせている。*
日本ではヨモギといえば
こどもを祝う柏もち、私の大好物。
善燃草あるいは善萌草と書かれる説もある。
ヨモギは一名もぐさと呼ばれ人の苦を救う。
仲間でもあまりに違い過ぎる。
ウクライナ共和国
キエフ州
チェルノブイリ地区。
何故罪と罰の名が地区につけられたか。
何故原子炉に破滅の名をつけたか。
一号から四号までの原子炉に 何故。
四号炉に事故が起き二十年
世界には多くの種類の
苦ヨモギがはびこっている。
その根は人間の内にいつも生じ
またたく間に繁殖する。
チェルノブイリはほんの序章。
あの場所で起こっていることを
ただ見ている私がいる。
書くことも、
身に引き受ける勇気もなく。
だが苦ヨモギの黒い大地に
赤い実をつけた木のこと
その名を私は記そう。
チェルポナ・カリーナ、
再生と癒しを意味する木。
私もまた
苦ヨモギを繁殖させている
一人かもしれない。
チェルノブイリはその名を以って
私たちを試している。
予言にはない人間の再生の
新しい記録を付け加えられるか否か。
*葵生川玲「苦艾異聞」
*エレミヤ書九章
広河隆一写真参考
「特集・名付けられたもの」のうちの1編ですが、確かに「何故罪と罰の名が地区につけられたか。/何故原子炉に破滅の名をつけたか」不思議ですね。日本では悪い名前を付けて福となすという伝承がありましたけど、ロシアではどうだったのかな。それにしても、もう「二十年」ですか。負の記憶は消したくないものです。
作品では「あの場所で起こっていることを/ただ見ている私がいる。/書くことも、/身に引き受ける勇気もなく。」としているフレーズが光っていると思います。人類の一員として最終連に書かれたことが「試」されているとも思います。考えさせられました。
○季刊文芸誌『南方手帖』83号 |
2006.7.10 高知県吾川郡いの町 南方荘・坂本稔氏発行 763円+税 |
<目次>
詩
手紙 朝倉ハル 2
カンダタ 玉井哲夫 8
雨に濡れる 平井広恵 10
夏ノ光 坂本 稔 12
短歌
天狗の土鈴 梅原皆子 14
随筆
ウィーン遠からじU(1).高橋悦子 16
旅愁の記 甲藤卓雄 20
ウィーン通信(10) 高橋幸子 24
南方荘漫筆(55) 坂本 稔 25
読者投稿作品
白昼夢 さかいたもつ 35
夕桜 西 弥生 35
題字・竹内蒼空/表紙装画・土佐義和
赤信号/朝倉ハル
1.危険や停止を示す赤色の交通信号。
2.憂慮すべき事態が迫っているというしるし。
今日は身体の具合が悪く仕事を休んだ。
外では時折、雷を伴う強い雨が降っている。
窓の下に感応式の信号機が見える。
通行する車が少ないのでほとんどの時間、この信号機は赤い光を放ち続けている。
この信号機を見るたびにほんの少し腹立たしさを感じる。
人通りのない交差点、ネコ一匹いない交差点で、
一人ポツンと「進んでヨロシイ」のお許しを待っている僕。
まるで、飼い主の楽しみの為に、「待て」を命じられているイヌの気分だ。
いったいこの先にどれだけ憂慮すべき事態が僕をまっているというのだろうか?
「あ!あのおじさん赤信号で渡ったよ!」
「いけないわねぇ!あなたは、あんな大人になっちゃダメよ!」
あぁ!…。あなたは一体何の権利があって僕を否定するのですか?
こんな恐ろしい事態を引き起こさないために、
お尻をモゾモゾさせながら「進んでヨロシイ」の合図をおとなしく待っている…。
確かに信号は「『進んでヨロシイ』のお許しを待っている」ようなものですね。「まるで、飼い主の楽しみの為に、『待て』を命じられているイヌの気分だ」というのもよく判ります。昨年亡くなってしまいましたが、ある女性作家が信号機についてこんなことを言っていたのを思い出しました。世の中では沢山の人を動かす人が偉いと言われている。それならば信号機が一番えらい=Bこれにも一理あるなと感心したものです。人間よりも法の方が上にあるという考え方、どこかおかしいなと考えさせられた作品です。
○会報『南方荘便り』54号 |
2006.7.1 高知県吾川郡伊野町 南方手帖社発行 非売品 |
一番下の写真に添えられた文章が愉快でした。「*5月末、京都へ。元同人の作曲家・故猪本隆氏のお墓に詣でたあと龍安寺石庭で撮影。右端が猪本千栄子夫人。左端は音楽プロダクション Napolis 経営の娘。中の二人は南方ボケ夫婦。・‥‥京都は万事が深うござった。石庭は言はず語らず梅雨に入る 捻」
もちろんお二人とも「ボケ」たお顔などしていません。4人とも知的な佳い感じです。それを茶化すところに坂本稔さんのお人柄を見た思いをしました。私もこんな風に軽く書きたいものです。勉強します。
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