きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2006.6.11 京都・泉湧寺にて



2006.7.20(木)

 居間のTVがとうとう壊れて、量販店に行って見てきました。圧倒的に液晶TVが多いですね。主流は37インチあたりでしょうか。在職中は液晶の保護フィルムや液晶用ガラスの洗浄フィルターなどの仕事に従事していましたが、液晶TVを持つまでには至りませんでした。ようやく我が家にも薄型TVが導入されそうです。店員はしきりに37インチを勧めましたが、そんな大きなTVを置くスペースはないと断って32インチを物色しました。37インチと32インチでは10万円も値段の差があります。その理由もありますけどね。
 TVはあまり見ない方ですけど、最近は夜10時から酒瓶を片手にTVの前に陣取ります。以前は夜10時からお酒を呑み出してもパソコンに向かい続けていましたが、今はパソコンの電源を切るようにしています。頭の切替えも大事だろうと思ってのことで、パソコンの代わりにTVを観ます。自然を映したものなどはなごみますね。老境に入ったかな(^^;



詩誌『やまどり』39号
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2006.7.18 神奈川県伊勢原市
丹沢大山詩の会発行 非売品

<目次>
美と祈りと/湧水 1
ぼくのたんじょうび・きらいなものとすきなもの/まつだ たいち 2
家族のこいのぼり/勇樹 2
足並みそろえて/松田しのぶ 2
今も・ひととき/ゆき 3
記念行事/松本せつ 3
山/小林教子 3
身上調査/川堺としあき 4
孤独の海・梯梧の花の咲く頃/福原夏海 4
家庭科/瀬戸恵津子 5
門歯/山口良子 5
健康/松田政子 5
無言館/古郡陽一 6
へだたり/照山秀雄 7
叫び/きらら 8
六月・ばあちゃん/岡本湧水 8
道・ふるさと/柴山ISAO 9
碌山美術館(穂高)/高林智恵子 9
気遣い・やさしい傷み・昇華/吉田涼子 10
心の化粧/大橋ヒメ
詩の発表会(反省)/今井公絵 11
なし・感謝/こころ 11
枇杷/神谷禧子 12
夏の始まり・哀しみに満ちて/西部周子 12
ごきげんよう ひさしぶり/沙謝幸音 13
雨/早川綾香 13
刀/上村邦子 13
三畝の畑/小倉克允 14
…その日/中平土天 14
眠れぬ海/土百 14

私の好きな詩/高林 15
随想 東亭順の空−個展「変容する空の色」リポート/小林教子 15
早川綾香さんの詩集『自然 風と心』を読んで/古郡陽一 16
随想/小野秀行 17
随想 私のお不動様/早川綾香 18
10周年記念展に関する記事の紹介/古郡陽一 18
出版記念会のことなど/古郡陽一 20
編集後記 20



 ごきげんよう ひさしぶり/沙謝幸音

僕らの本名
『ごきげんよう ひさしぶり』
知らない人は
『きゃー』と呼ぶ

僕らは暗闇の中でしか
生きられない
陽の当たるところにでれば
殺されてしまうから
仲間がいっぱい殺された
けどその何十倍も仲間がいるから
僕らは心強いんだ

ある日
僕らを本名で呼ぶ人間がいて
嬉しくて二本の長い触角を揺らした
お姉さんに呼ばれたくて
仲間たちがたくさん姿を見せた
お姉さんの椅子の下
お姉さんと洗面所
お気に入りはお風呂場
お姉さんは
『よっぽど私のことが好きなんでしょ?』
と笑った

僕たち略して『ゴキブリ』

 おもしろいタイトルだなと惹かれて、それが「僕らの本名」だということでますます惹かれてしまいました。途中から、どうも『ゴキブリ』のことを書いているようだなと気づきましたけど、その理由が判りませんでした。頭の中でゴキブリの生態ばっかり考えていたんですね。最終連で『ゴキブリ』という文字を見て初めて判りました。一本やられたな、という感じです。ある事象を与えられて、字面は措いてその現象なり生態なりを考えるのは私たちの性癖であるのかもしれません。そこを巧く突かれた作品だと思います。「お姉さん」の対応も爽やかですね。こういう詩も楽しいものです。



河田忠氏詩集『暗愁の時』
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2006.7.7 岐阜県各務ヶ原市
存在社刊 3500円

<目次>
折句的詩篇
遥かな存在      闇の彼方
時の流れに      冬枯れの時
たまゆらの生     夕暮れのヴァリエーション
対象への断想     秋断想
虚な異界       杣山にて
折々の詩篇
骨のさざめき     乾いた風景
白晢の女       闇の中の光
イメージ連環     緩と急
明と暗        ある心象
自然体への措定    夕刻断想
夢について      あぶく
時の流れ       塔について
ニューヨークの朝   へミングウェイの死
人鵜一心       モノローグ
追憶のバラード
あとがき
カバー装画「橋のある風景」・本文小扉カット
一陽会委員 河井一郎



 へミングウェイの死

サンゴ礁の島々と生い繁るマングローブの林を抜けて
マイアミから二百四十キロ
フロリダ最南端のキーウエストヘのバスの旅
ドライバーのセルシオは鼻唄まじり
最長のセブンマイルズ・ブリッジを含めて橋は全部で四十二

十九世紀末海軍基地建設のために敷かれた鉄道が
ハイウェイと平行して断続的に延び
今は廃道となっている百八十キロのそれが
至るところで海にのめり込んでいて はるかな時空を思わせる

スペイン語の骸骨の島という語に因んでの命名というキイウエスト
カリブ海に出没した海賊たちやごろごろ転がる骸骨など
往時を偲ぶには余りにも海が碧すぎる

目あてのへミングウェイの家では感嘆することばかり
スペイン風の屋敷に群がる猫たち
当時の工費二万ドルというプールのぜいたくさと
中庭のセメントにはめ込まれている最後の一セント硬貨の皮肉
(アイロニー)

 『武器よさらば』『キリマンジャロの雪』
 『誰がために鐘は鳴る』……等々
それらの執筆の場であった屋根裏部屋がまぶしく映る
行動と冒険の作家と言われ
飛行機事故には二度も遭い
従軍先では多くの生と死の姿を見てきたへミングウェイよ
猟銃による自殺の意味するものは いったい何であったのか

 この詩集にはノンブルがありません。その理由をあとがきで「掲載詩篇には順序性がないので、すべてノンブルを外した。どこからでもご自由にご覧いただきたい」と述べています。おもしろい発想で、私はおそらく初めてそのような詩集を手にしたことになると思います。
 紹介した作品はいわゆる紀行詩の範疇に入るでしょうが「へミングウェイの死」を念頭に置いた旅であったと思います。「猟銃による自殺の意味するものは いったい何であったのか」という命題は解決の求めてのものではなく、その死を実感する旅であったのかと感じさせました。一味違う詩人の旅、という趣を感じた作品です。




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