きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2006.6.30 東京・新宿



2006.8.2(水)

 日本詩人クラブ第13回詩書画展の3日目。本日の来場者は42名でした。この手の展覧会に平日どの程度のお客さまが来るのか、素人の私には判りませんが、実際に一日いるとひっきりなしに人が来ている感じです。開催時間は午前11時から午後6時までの9時間。単純計算では13分に一人の割合ですから、普通の生活ではあり得ない数字ですので、まぁ、多いと云えるでしょうね。

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 写真は後日撮った会場風景です。細長いギャラリーで適当に柱もあって、観るには変化があって良いでしょう。以前の有楽町の会場よりは広いようです。
 本日、私を訪ねてくださったのはかわさき詩人会議の本田さん、詩誌『輪』の倉田さん、私の居住地・神奈川県南足柄市の画家・田代さん、日本ペンクラブ電子文藝館副委員長の牧南さんの皆さまでした。本田さん、倉田さんとは初めてお会いしました。それを考えると毎日詰めているのも良いものだなと思います。詩人の世界は狭いので、いずれ皆さまにもお会いすることもあるかと思いますけど、こうやってわざわざ来ていただけるというのは、受け手の私の気持が違います。何よりシラフで会ってる(^^; わざわざおいでいただき、ありがとうございました!



詩・創作・批評『輪』100(終刊)号
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2006.7.25 神戸市兵庫区
輪の会・伊勢田史郎氏発行 1000円

<目次>
■詩
主和音の鳴らない終止形・各務豊和(6)
ソンタグの余白に・倉田 茂(16)
花影・丸本明子(18)
歌物語「新雪」・岡見裕輔(20)
半酔半醒・直原弘道(22)
虹がかかった・渡辺信雄(24)
波切翼・岩崎風子(34)
錆びていく刻・山南律子(36)
望郷異郷8・北原文雄(38)
教信のねむる寺・伊勢田史郎(40)
■訳詩
六年が経って イォーシロフ・ブローツキィ/赤松徳治訳(42)
■終刊に寄せる
茫茫五十年・伊勢田史郎(3)
「輪」とともに・灰谷健次郎(8)
「輪」100号を迎えて・岡見裕輔(10)
詩誌「輪」の時空を回想する・丸本明子(11)
思い出の色紙・直原弘道(14)
車座で繁った一期の宴・赤松徳治(26)
「いのちはまるい」に寄せて・坪谷令子(32)
「輪」の同人として・渡辺信雄(44)
しかし昨日へは進めない・各務豊和(57)
■随想
鯤墨逍遥・岩崎風子(46)
伊豆から・北原文雄(48)
働く人の詩−清水正一さん・山南律子(50)
■批評
殿堂を出てから・倉田 茂(53)
■ギャラリー
私の中の絵本・坪谷令子(29)
■「輪」総目次61〜99号
選録 各務豊和(44−52)
・表紙・カット/田中徳喜 ・書(表紙・目次)/岩崎風子



 ソンタグの余白に/倉田 茂

大石芳野写真展 <子ども 戦世
(いくさよ)のなかで> をみた

ベトナム、ラオス、アフガニスタン、コソボなどの地の
子どもたちの肉体や環境が痛ましいだけでなく
ときに わずかに覗いた青空のような
笑顔もあるのが救いだった

戦争の写真に出会うたび私は思い出す
スーザン・ソンタグの『他者の苦痛へのまなざし』を
写真やマスメディアの映像からゴヤの絵まで
彼女の戦争写真論は鋭く広く 余すところがない

ソンタグは世の知識体系をすべて解体したうえで
芸術から政治にわたる革新的な批評を書きつづけ
ニュー・インテレクチェアルズと呼ばれた
九・一一の「テロの原因は <文明の衝突> ではなく
外交政策の過ちだとブッシュ政権を批判」するところに
「アメリカには稀有
(けう)な知性と立場」があった

行動する人でもあった 「原発性ガン」と闘いつつ
「テロ直後、市民ボランティアとして連日現場に通」い
「九三年、封鎖中のサラエボで現地の芸術家たちと組み
『ゴドーを待ちながら』を蝋燭
(ろうそく)の明りのなかで上演」した

ここに 病いに一喜一憂する愚かなわが晩節がある
ああ同い年の鮮烈な知性よ 私は何をすればいいか
あたかも戦争へ歩み寄るようなこの国の気分の流れは
幼かった私が見たものに似ている

反世論となろう そして発言しょうではないか
二〇〇四年末「骨髄性白血病の合併症」で逝った
ソンタグの余白にせめて書き込めるほどに
それは私の生きるしるしともなるだろう

 *「 」内はソンタグの友人木幡和枝氏の追悼文から(朝日2005.1.6)。

 ギャラリーにおいで下さったおりに頂戴しました。封筒から出して「終刊号」の文字に驚きました。『輪』は私が好きな詩誌のひとつで、力量ある書き手が揃っていますので毎号楽しみにしていました。昨年12月には『詩脈』がやはり100号で、先月には『蠻』が145号で終刊となり、少なからぬショックを受けていましたので思わずなんで!≠ニ、初対面にも関わらず声を荒げてしまいました(その節は失礼しました、倉田さん)。これまで同人誌は主宰が亡くなっても誰かが続けるものだと思っていましたから、発行者の伊勢田さんもお元気なのに何故?と怒りが混じっていたのも事実です。購入もせず、寄贈に甘えた一読者ですが心底そう思いました。

 倉田さんはそんな理不尽な私の我侭にもお付き合いくださって、順々にご説明くださいました。その結果私なりに判ったのは、皆さんがお元気なうちに一つの区切りで終刊することは、美意識なのだということです。半世紀も続いた同人誌が終刊になるのは惜しい気がしますけど、確かにそれも一理あると思いました。人も晩節を汚すことなく惜しまれて勇退するのが華だと最近は思っていますから、それと同じだと考えれば理解できます。もちろん私がどうのこうの言っても何の変化があるわけではありませんが、ここは素直に『輪』の終焉を見届けたいと考え直しました。長い間、高い送料を使って読ませていただき感謝申し上げます。同人の皆さまの今後のご活躍も祈念いたします。

 さて、そんな記念すべき終刊号は倉田茂さんの作品を紹介しました。不勉強で「スーザン・ソンタグ」という名を初めて知りましたが「アメリカには稀有な知性と立場」な人だったようです。その「ソンタグの余白にせめて書き込めるほどに」「反世論となろう そして発言しょうではないか」と記す作者に、日本の良心を感じました。アメリカにはアメリカの、日本には日本の良心が今ほど求められている時代はないのかもしれません。爪の垢を煎じてでも、少しでもちかずければなと思った作品です。



詩誌『黒豹』112号
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2006.7.30 千葉県館山市
諫川正臣氏方・黒豹社発行 非売品

<目次>
諫川正臣/芒野 2
     首塚 3
西田 繁/孟宗竹 4
     散歩 5
よしだおさむ/タンポポ 6
     あめ 7
前原 武/風の夜 8
    その夫婦(「その店」続編)-Iさんの話 9
山口静雄/ローカル線 10
     寺庭 11
富田和夫/鮟鱇の苦言 12
杉浦将江/草餅 13
     花水木 14
本間義人/風に吹かれて 15
     季節の麦 16
 編集後記 17



 孟宗竹/西田 繁

孟宗竹の林は
からかさ差して 歩けるほどがいい
いまは亡い 部落の長老に聞かされて久しい

そんなものかと耳の端に残したままになっていた
青く 太く まっすぐのびる姿 惜しいと思いながらも
右腕の筋力衰えぬうちにと
次つぎ 決断の鉈うちおろした 今年の夏

整理しすぎたかと思う竹林に身をおくと
冷えた汗に 秋風のなかに佇っているような
こころにまで 寒さを感じ

見上げる葉末の向うの 蒼空すけて見えて
うしろめたさに似たもの抱き 竹林をあとにした
捨てる手に好手ありと言った棋士を ふと思った

 「孟宗竹の林は/からかさ差して 歩けるほどがいい」とは私も聞いたことがあります。それを「決断の鉈うちおろし」て実行したわけですけど「惜しいと思」う気持が強かったのでしょうね。「捨てる手に好手あり」という詩語が生きていると思います。「右腕の筋力衰えぬうちに」という意識でやった「整理」ですが、人生の半分を過ぎた私も身につまされました。暑い「今年の夏」のことなのに「秋風のなかに佇っているような/こころにまで 寒さを感じ」た作品です。



詩とエッセイ『樹音』53号
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2006.6.1 奈良県奈良市
樹音詩社・森ちふく氏発行 400円

<目次> 特集 青
南の島/寺西宏之 2
青い空/結崎めい 3
青/汀さらら 4
青二才/中西 登 5
青から蒼へ/中谷あつ子 6
そら/藤千代音 7
ミラクルブルーの君に/森ちふく 8

屋根裏の住人/寺西宏之 10
さくらの木/結崎めい 11
悠久のとき/汀さらら 12
青い池/中西 登 13
ゆれてゆれて谷底覗く/中谷あつ子 14
地図/藤千代音 15
青/大西利文16
「蒼い海」/板垣史郎 17
父の切り抜き/かりたれいこ 18
樹のこえ 19
編集後記 20
樹音・会員名簿



 青二才/中西 登

まだまだ青二才
磨け、磨け
二才がとれて
青になるまで

青、青、青を深めて
群青となる
群青、青緑に輝く。

 「特集 青」の中の作品です。色の青を扱った作品が多い中で人間への形容である「青二才」を持ってきたところが秀逸だと思います。「二才がとれて/青になるまで」が佳いですね。「青、青、青を深めて/群青となる」も、群としての青を想起させておもしろいと感じました。短詩ですが内容は「深め」められていると思います。




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