きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2006.6.30 東京・新宿 |
2006.8.10(木)
地元の日刊ローカル紙にエッセイを求められていて、その締切が今日でした。忘れていたわけではないんですが、どうしても直前にならないと書けませんね。根が怠け者なんでしょう(^^; それでも頑張って午前10時までには仕上げました。すぐにEメールで送って、紙の原稿は持参することにしました。以前は小田原市内に本社があったのですが、2年ほど前に郊外に移っていましたからクルマで持って行きました。私の処も山の中なんですが、新社屋もすごい山の中でした。まさに箱根外輪山の麓です。環境は良かったですけどね。私の家から広域農道を使って30分ほど、以外と近かったです。
掲載は8月26日とのこと。「神静民報」というローカル紙ですから神奈川県西部、静岡県東部の方でお手にとれる方はご覧になってくだされば嬉しいです。
○詩誌『りんごの木』13号 |
2006.8.1 東京都目黒区 荒木寧子氏発行 500円 |
<目次>
風/武田隆子 3
秋の道で/青野 忍 4
きらめき/宮島智子 6
二月 その一/山本英子 8
津波/藤原有紀 10
ロンド/高尾容子 12
旭川・近文一線一号かいわい/東 延江 14
白鳥の湖/川又侑子 16
楽園/粟島佳織 18
祈り/横山富久子 20
夜の箱/田代芙美子 22
青い風景/さごうえみ 24
オフェリアの歌/蜂岸了子 26
水祭り/荒木寧子 28
表紙写真 大和田久
オフェリアの歌/峰岸了子
ぷちぷちあわわあ
ぷちぷちあわわあ
水泡がうまれ
足裏からたちのぼってくる
儚い夢の吐息のよう
ときはなされた悲しみのよう
りんご酒のよう
オフェリア
川面に仰臥するあなたを
流れにひきとめていたのは
柳の小枝ですか
それとも
水草の繁みですか
あなたの長い髪
あなたの伸びた腕
あなたの摘んだぴんぽうげやひな菊のまわりで
あなたの口づさむ歌にあわせ
水泡がはじけていたのを覚えていますか
ひろがった裾に水がしみこみ
川床に沈みそうになるあなたの重い躰を
けんめいに抱きかかえていた
泡たちの嘆きの旋律
ぷちぷちあわわあ
ぷちぷちあわわあ
父と恋人
愛する二人の男が植えた茨垣の
その閉ざされた庭をあなたはさ迷い歩いた
むきだしの心に絶えることのない傷を負わせ
オフェリア
あなたの口からこぼれる歌がとだえ
嘆きがいつしか弔いの旋律に変わっても
泡たちはあなたの死を悼み
いつまでも離れようとはしなかった
シェイクスピアの「ハムレット」の一場面です。「川面に仰臥する」「オフェリア」を囲む「泡たちの嘆きの旋律」がうまく表現されていると思います。「ぷちぷちあわわあ」という擬態語も佳いですね。この画面では横書きになってしまいますが原本は縦です。本文から下げられた部分はいかにも水中という雰囲気をかもし出しています。有名な古典もこのように描かれると新たな命を与えられたように感じた作品です。
○『栃木県詩人協会会報』19号 |
2006.8.10 栃木県芳賀郡茂木町 森羅一氏発行 非売品 |
<目次>
微笑一考/野澤正憲 1
詩集評 上原季絵のロゴス−上原季絵詩集『乳房は母にあずけて』について−/森 羅一 2
会員エッセイ
珊瑚のふるさと/神山暁美 2
私だけの環境問題/岡田泰代 3
想定外の人生/菊地礼子 4
青年/白沢英子 4
ひばり/螺良君枝 5
眼と心/斎藤さち子 6
会員の詩作品
午睡−「あ・き・ら・め」の文字/白沢英子 6
ほほえみ/野澤正憲 7
歩いてみると/大木てるよ 7
斜面に座って/本郷武夫 8
ヘコ/深津朝雄 8
雨の影/松本ミチ子 9
化粧/岡田泰代 9
群集/原 始 10
新刊書紹介 小網恵子詩集『浅い緑、深い緑』 11
高内荘介著作の紹介(五) 草野心平論 12
お知らせ・編集後記 12
へコ/深津朝雄
鼠食う猫ネコと呼び
鳥追う猫をトコという
蛇を捕える猫のことをヘコといい嫌う
ながく飼っていた猫がヘコだった
瞬きのない瞳の奥は
人の心を吸いとる
けものの本性が
ブルーに深く澄んでいる
ヘコは主に土産とばかり
座敷に青大将を引き摺り上げて
新体操のリボン競技さながらに
投げ上げ 立ちあがって受けとめる
青大将の腹には医者がいて
臥していれば弱った体は快復するが
ヘコはそれを知っていて
休む余裕を与えない
ボロ紐となった青大将を銜えて
庭の植込みに潜りこんだまま
ながい時が経っても出てこない
梅雨とかさなる蛇の季節
雨の前触れの生暖かい風に
植込みの葉擦れが歌うヘコのうた
鳥追うトコを捨ててこい
蛇捕るヘコも捨ててこい
遠いお山に捨ててこい
深い谷に捨ててこい
「ネコ」は当然知っていますが「トコ」「ヘコ」ということは知りませんでした。そういえば子供の頃に居ついた猫たちに「鳥追」い、「蛇を捕える猫」がいましたね。「ヘコはそれを知っていて/休む余裕を与えない」ところもあったように記憶しています。「トコ」「ヘコ」という名付けは地域由来かもしれませんが納得できます。今では蛇どころか鼠さえ捕らない猫が増えているのかもしれません。日本のある時期を彷彿とさせる作品だと思いました。
○文藝同人誌『金澤文學』22号 |
2006.8.20 石川県金沢市 金沢文学会・千葉龍氏発行 1600+税 |
<目次>
扉の詩 春、金沢エスキス 千葉 龍…1
小説 赤い花 尾木沢響子…11
特集 誌上小詩集 三木英治
モディリアニの女/形容詞追放/舞曲/群列/正午/le
printemps s'en vient/淡路島/石山寺/さて夢幻遊行の日を/美は一瞬にして去り…34
豊能の時代…40
小説
夜のバス 畔地里美…41
TANAKA TOKEI 杉本利男…51
特集 詩賓席 羅喜徳/馬敬徳・韓成絶/訳
風葬の習慣/わき腹の絶璧/載せられて行く木 飛べ風船/甘カボチャの子宮/砥石…68
評論 エクリチュールの魅惑−言葉は観念の壁をこえていく− 谷かずえ…72
俳句
豆の飯 中山純子…82
年始め 上田政代…84
短歌
録音テープ起こし 高橋協子…83
ひめゆり 上田政代…84
折々の風 長尾まみり…86
軌跡 井上裕夫…86
詩
風の墓標/牧場にて/星の彼方に 池田星爾…88
雪下ろし 池端一江…91
岩手山/北上川の清流/漁港の灯 外村文象…92
招かれた新年 越田 茂…94
若いカジュマル 名古きよえ…95
とぎれた声 おしだとしこ…96
壁、あるいは祈り 2006 年頭に 南 邦和…97
シーハイルの女 千葉 龍…98
あしあと ハンダ シンカズ…100
エッセイ
東北コンプレックス〜その二〜「ズウズウ弁の独眼流」 佐々木欽三…101
滋賀詩壇絵図 外村文象…103
上海・蘇州を訪ねて 吉岡昌昭…104
鮭 高橋協子…111
横顔 池端一江…112
杉並だよりU 公園の釣堀で 中条佑弥…113
下の住人のこと 研まち子…115
カラスの恩返し? 向井成子…117
歴史エッセイ 消えた村 池端大二…118
童話
まいちゃんのさいふ 西村彼呂子…127
抱っこの日 菊綿りの…129
詩
ヒロシマが、見える。/微笑み/埋め立て 清ア進一…132
架風の値 下林昭司…135
そして罪と罰 福田陽子…136
インド夢現 柳沢むつ子…137
春暁花咲く実のなる人生 天上純白大慈愛御来光 希望の星への天の大道 清沼 覚…139
淡いローズのリップグロス/彼氏 田村史織…140
納骨のあとで 大湊一郎…141
冬越え/わがままん 長尾まみり…142
海の誕生日/春とひと 東 淳子…143
夕すげの丘−国史跡・凾石浜物語 井上裕夫…145
『新・日本現代詩文庫33 千葉龍詩集』評
ダイナミッタな熱血漢のモノローグ 古賀博文…148
新しいメルクマール<指標> 島田昌彦…153
和紙の歴史と 堀内 守=…155
『千葉龍詩集』の発と影−新しい一歩を発見する 谷かずえ…156
踏みつけられた草 どっこい死んでたまるか=@下林昭司…160
小説
名前をつけてあげる 吉村まど…162
湯あたり 吉本加代子…171
誤算 北村ともひで…177
異性への憧憬 玉川久栄…189
エッセイ
父の生誕百年祭 中田邦雄…208
心のスケッチ=w女将の独り言』 辰島悦子…209
抒情・犀川大橋 池田正典…212
つれづれに 村上八重…215
アンモナイトの眠り 原 力雄…216
思いつくまま、足利と金沢 野村道子…217
小説
雑草原−敗戦のショックの中から立ちあげた校内詩誌− 下林昭司…218
巾着に載った「パンドラの箱」 西村 薫…227
錆と夏の神楽太鼓 渡 紫緒…233
ライトゴールドの青春 清沼 覚…237
エッセイ
蕗谷虹児の抒情を探る 松井郁子…242
林檎の木の下で 高橋はる美…244
「小松文芸」第二號 折口ふたり…245
連載特集5 その人と文学の故郷 加賀耿二(谷口善太郎) 柴田みひろ…248
口付稿/三つの顔、その光と影 千葉 龍…256
批評
詩誌東西南北 誇り高い57冊に乾杯! 谷かずえ…258
誌界・読点(同人雑誌・小説評) 吉岡昌昭…264
◆報告「龍のぼる雲虹色に…」千葉 龍主宰の「石川テレビ賞」受賞を祝う会記 尾木沢響子…270
◆主宰の部屋・れくいえむ福田陸太郎さん/小松伸六さん 千葉 籠…272
・文学は魔力に満ちて
◆金沢文学同人刊行著書一覧…273
●グラビア…2 ●広告索引…8 ●バックナンバー…280 ●受贈書・誌…291 ●編集室から…293
●金沢文学会のきまり(会員募集のしおり)…298 ●入会申込書…299 ●原稿募集…300
【題字】竹中晴子(同人。書家=石川県かほく市)
【表紙の絵】外村文象(同人。詩人,画家=大阪府高槻市)
春、金沢エスキス/千葉 龍
北東。九〇度角 二面
総ガラスのキャンバス。
わが書斎に四季の来訪が賑やかだ
朝からひらひら舞っていた風花が
やがて しまく雪に変貌し
キャンバスを白で覆いつくす。
書斎の向かい 学校の緑芽ぶく土手は
瞬く間に白練り厚化粧の狂女達に占拠される
名残の雪にしては ちと荒っぽすぎないか
平成十八年・きょう 弥生果つる日。
赤みを増してきていた枝々が痛いたしい
ここ金沢・鳴和台。
春がふるえている
巻頭詩です。「書斎」から見える浅い「春」の風景を詩情豊かに伝えていると思います。「瞬く間に白練り厚化粧の狂女達に占拠される」というフレーズには、そう容易くはない雪国の現実を知らされた感を持ちました。最終連の「春がふるえている」という擬人化も佳いですね。「四季の来訪」という詩語とともに季節と一体になっている作者の姿勢が見えて、巻頭にふさわしい作品だと思いました。
蛇足ながら「しまく雪」は「しまい雪」の誤植かもしれません。しかし自信がありませんので原文通りとしてあります。
→後日談:作者から「しまく」という言葉があると指摘を受け、広辞苑で調べてみました。風巻く≠ニ書き、風が烈しく吹きまくるという意味でした。しまい雪ではまったく意味が違ってしまいますね。失礼しました。浅学を恥じます。
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