きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2006.6.30 東京・新宿



2006.8.22(火)

 高校野球の熱戦も終わって、いただいた本を急ピッチで読んでいます。ようやく一日遅れまでこぎ着けました。遅れると苦しいんですよね。「更新が遅れてるゾ」とメールが来ます(^^; まあ、1週間ぐらいの遅れは目をつむってもらえるようですが2週間になると矢のような催促、、、でもないか。それだけチェック、いやいや、注目してくれる方が多いのは嬉しい悲鳴です。がんばります、お酒は時間通りに呑みますけど(^^;



都築紀子氏詩集『陽の下で』
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2006.8.10 東京都板橋区 待望社刊 2000円+税

<目次>
静かな道 6     来客 10
挨拶 14       庭で 18
虫干し 22      朝をたしかめる 24
牛前三時に 28    用水路の月 32
走る雨 36      庭の黒松 40
整理 44       ネクタイ 48
初秋のある日 52   大雨のあと 56
歩いていると 60   冬の蚊 64
雨の日に 68     早春の畑で 72
三月 76       飛び立っていく花 80
一服 82       晩春 86
初秋の河原 90    牛喰い祭り 94
鳥インフルエンザ 98 午睡の続き 102
トロピカルな味 106
. おばあさんの風景 110
空の下で 114
あとがき 118



 挨拶

さわやかな山の気を浴びて
犬と歩いていると
うしろから
「こんにちは」
と声をかけられた
三人の自転車の学生だ
私もとっさに
こんにちは と返したが
声がうわずった

シャツの袖口から
男の骨格をのぞかせた腕
三つの背中
汗と男の匂いがすれ違った

都会を離れて
この土地へ来てからの
不意の
私への贈り物だ

ずり落ちたジーンズに
金髪を立てて
闊歩
あの都会の族たちよ
押し黙って
ケイタイの洞のなかに
なにをさがしているのか

大人になったばかりの
低い話し声が
まっさらな陽に包まれて
林の道を走っていった

風が背中を押して
私の足もはずんでいた

 第1詩集です。ご出版おめでとうございます。紹介した詩は「都会を離れて/この土地へ来てからの/不意の/私への贈り物」を表現した作品で、「あの都会の族たち」との違いを際立たせています。私の場合は田舎からより田舎への移住で現住所に住んでいますが、やはり「挨拶」が行き交っていて居心地は悪くありません。「汗と男の匂いがすれ違った」「大人になったばかりの/低い話し声」という観察力も佳いですね。今後のご活躍を祈念しています。



月刊詩誌『柵』237号
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2006.8.20 大阪府箕面市
詩画工房・志賀英夫氏発行 572円+税

<目次>
現代詩展望 私的・詩の読者考 境節詩集『薔薇の はなびら』から考える…中村不二夫 82
少年詩メモ(9)現代詩? 少年詩?…津坂治男 86
奥田博之論(7)東アジア共同体…森 徳治 90
流動する世界の中で日本の詩とは 23 於・ソウル第二回「韓・日詩の祝祭」報告…水崎野里子 94
風見鶏・石田美栄子 森原直子 浜田紀子 内川美徳 横田英子 98
「戦後詩誌の系譜」35昭和55年48誌追補9誌…中村不二夫 志賀英夫 112
詩作品□
大貫裕司/六月の風に 4
北村愛子/母の声 6
柳原省三/初老の顔 8
肌勢とみ子/死者の待つ部屋 10
小城江壮智/聖なる闘士 12
山南律子/かたみ 14
佐藤勝太/老いていく夏 16
松田悦子/不動尊 18
前田孝一/雨季の回想 20
小島禄琅/やもり考 22
川端律子/日の出に 向き合う 24
宗 昇/わびすけ 26
中原道夫/眠り 28
伍東ちか/戦士 30
山崎 森/風にふかれ 32
忍城春宣/鶯 34
岩本 健/はにかみ足さん 36
上野 潤/和蘭物語 28 38
織田美沙子/あれから十年 40
名古きよえ/つくる(竹細工) 43
小沢千恵/暗証番号 46
安森ソノ子/営業の心音 49
立原昌保/夜明け 52
水崎野里子/真実の木 54
小野 肇/痛み 56
西森美智子/見ないで下さい 58
鈴木一成/窮余急作 60
門林岩雄/初夏 他 62
江良亜来子/屋上 64
高橋サブロー/君が 逝って 66
山口格郎/庭師 68
野老比左子/空の花 70
進 一男/猫の別れ 72
若狭雅裕/坂の町 74
今泉協子/天目茶椀 76
南 邦和/72歳の朝 78
徐柄鎮/人情温泉 80
現代状況論ノート(4)…石原 武 100
世界文学の詩的悦楽−ディレッタント的随想(3) 人生が詩を模倣した詩人−シルヴィア・プラース試論…小川聖子 102
韓国現代詩 金光圭の詩 夏の日…水崎野里子訳 106
コクトオ覚書212 コクトオ自画像[知られざる男]32…三木英治 108
東日本・三冊の詩集 山本萌『草の瞳』 田中美千代『風の外からおされて』 結城文『できるすべて』…中原道夫 124
西日本・三冊の詩集 松田研之『夕陽のスポット』 長津功三良『新日本現代詩文庫35』 柳原省三『船内時間』…佐藤勝太 128
受贈図書 134  受贈詩誌 131 柵通信 132 身辺雑記 135
表紙絵 申錫弼/扉絵 中島由夫/カット 野口晋・申錫弼・中島由夫



 屋上/江良亜来子

ビルというビルの屋上には
地上より早く雨が降る
それだけの新しさ
天上にいくらか近く
雨の速度が測れる
上りつめた地点での
眺めは全方位
雨の広がりに
ビルというビルが洗われる
雨が天地を繋ぐ
それだけの親しさ
降る向きに階段を下りる
そしては又上る
雨から見れば僅かな高さ
試練の高さ
何程か目が開かれる
屋上という屋上に雨

 「地上より早く雨が降る」というフレーズに眼を奪われました。まさに「新し」い視点です。そう思いながら読む進めると「雨が天地を繋ぐ」という詩語も「雨から見れば僅かな高さ」という言葉も立ち現れて来ました。いずれも「雨」という立場での視座で、まさに「目が開かれる」思いをしています。当たり前の、ありふれた光景も視点を変えると新鮮になるという見本のような作品だと思いました。このまま色紙にでもしたい佳品です。




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