きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2006.6.30 東京・新宿



2006.8.27(日)

 文庫本専用の本箱製作に着手しました。午前中にホームセンターに行って杉板を買い、ついでに卓上ボール盤と作業台も買ってきました。卓上ボール盤は中国製で8000円ほど、作業台は2000円ほど。この二つは大いに威力を発揮してくれました。特に作業台は杉板を切ったり、ボール盤を載せたりと大活躍。値段を考えたらエライ優れもんです。もっと早く買っておけば良かった…。ボール盤も買って良かったです。木ネジ用の穴は、今までは手持ちのドリルを使っていましたが真直ぐ開けるのは意外と難しかったのです。ボール盤はそんな心配がありません。スイスイと作業が進みました。下図は作業台に載せた卓上ボール盤です。適当な作業スペースがないので玄関先に鎮座しています。

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 作業は12時から始まり、終わったのが21時。ほとんど休憩なしで9時間も働いてしまいました。幅820mm、高さ1820mm、奥行120mmで10段の本箱が出来上がりましたがまだ完成ではありません。背板は明日に持ち越すことにしました。明日は本が入った完成品をお見せできると思います。



詩誌『潮流詩派』207号
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2006.10.1 東京都中野区
潮流詩派の会・村田正夫氏発行 500円+税

<目次> 表紙写真→鈴木茂夫
特集 馬
加賀谷春雄 馬は還らず 7
荻野 久子 嘶きは礫となって 8
中田 紀子 桂馬 8
丸山由美子 馬と自動車 9
村田 正夫 馬 10
夏目 ゆき 馬の背に乗るのは嫌いだった 10
山本 聖子 しまうま 11
津森美代子 競馬 12
鈴木 倫子 馬上の少年 12
山崎 夏代 御神馬が走った町 13
鈴木 茂夫 近くて遠い馬 14
高橋 和彦 あれ以来 14
水崎野里子 馬と夢 16
藍川外内美 諧謔の馬 17
勝嶋 啓太 「うま」 18
藤江 正人 馬耳東風 18
新井 豊吉 駄馬 19
宮城 松隆 馬と少年 20
原崎 惠三 馬は知っているのか 20
田島 美加 週末の楽しみ 21
山岸 哲夫 駄馬 22
竹野 京子 ウマシカところ変われば 22
皆川 秀紀 赤い馬 23
状況詩篇
藁谷 久三 原爆一号のYさん/日曜の午後 24
伊藤 美住 みたされていく大地 25
村田 正夫 ピロリ菌の二氏/師団旅団? 26
山下 佳恵 からす 27
熊谷 直樹 愛国心/コミッション 28
山崎 夏代 愛 そのはじまりは 29
平野 利雄 コラージュ<どなり街> 30
藤江 正人 国歌 31
大島ミトリ 雲海 32
千葉みつ子 どうするアイフル 33
土屋  衛 ロボット 34
堀川 豊平 巨大脳−トォキョ 34
高橋 和彦 「下流」若者諸君 35
詩篇
戸台 耕二 花見 36
若杉 真木 タマラナイ日 37
中村 恵子 イナバウアー 38
中森 隆子 自殺志願[追悼] 39
まちえひらお 夢なくして期待もなく 40
林  洋子 山香ばし 41
神谷  毅 虚壁の陰 42
山入端利子 あいさつ 42
清水 洋一残灯(その二) 43
時本 和夫 大岳山・残照(5) 44
飯田 信介 白雨(二) 44
土井 正義 蕎麦の花 45
麻生 直子 おがみむしのしょくし 46
鈴木 倫子 透明な雪 46
尾崎 義久 お茶の子さいさい 47
小澤 郁美 風船[投稿] 47
館野菜々子 サボテン/純潔 48
鶴岡美直子 リンボ 49
井口 道生 心の不思議 49
清水 博司 オレンジの木・ポプラの木 50
桐野かおる 某日 51
比暮  寥 団塊の友らへ 52
島田万里子 花時あそび 53
田島美加小詩集 八月末 秋の気配 黄金の涙 54
        春日雑詠 十二指腸癌騒動記 55
●世界の詩人たち(13) 水崎野里子
現代カンボジアの詩・続 60
東京の気象 回想の詩と時代(3) 村田正夫 62
その戦争と平和 上田幸法論(11) 丸山由美子 68
シルヴィア・プラス 海外詩随想(13) 中田紀子 70
ステッカーの語るもの ロサンゼルス通信(13) 福島純子 72
時評 村田正夫 印税など 74
ブックス 鈴木茂夫 麻生直子詩集『足形のレリーフ』・他 76
マガジン 山崎夏代 ヒロシマ・ナガサキを考える84号 78
前号展望 山本聖子 実は自然の摂理が生み出した 80
旧刊案内=熊谷直樹 村田正夫『轟沈とゴルフ』 82
旧刊案内=田島美加 村田正夫『イラク早朝』 82
旧刊案内=山本聖子 清水博司『いきつもどりつ』 82
メモランダム 83
詩集・詩論集・アンソロジー(リスト)/入会ガイド/編集後記 84〜87



 桂馬/中田紀子

斜めにすばやく飛ぶ男がいた

女が 好きになれないと言っているのに
いや好きだと言わせてみせると言い放ち
敵の陣地も何のその 征服欲まんまんなのだ

きまって週末 バーベキュウに行くぞと誘いに来る
用意周到に 持てる量の荷物を両手に 愛車へと
一段おきにひょいひょいと階段を昇りつめ

鉄板 炭 蛇口つき水タンク 団扇 マッチ 折りたたみ椅子
牛肉 魚貝 葱 茄子 南瓜 ピーマン
トランクを満杯にして 郊外の野原へと猛進

他人の私有地かもしれぬ芝生の一角に
ま昼に堂々と ランチ祭りの始まり
女は煙にむせながら 不自由なまな坂の上で野菜を刻む

斜め遠方から近づいてくる蹄の音
知らぬまに女のまわりに馬がしのび寄る
突然その一頭が翻った

金将となった男は とうとう女を支配した

 「特集 馬」の中の作品です。馬というテーマを与えられて、将棋の「桂馬」へと持っていく発想がユニークです。しかも桂馬と「男」をダブらせて「バーベキュウ」と重ねるという手法も見事ですね。私も昔はアウトドア三昧でしたので「不自由なまな坂の上で野菜を刻む」というフレーズには実感があります。今では出回っていますが、昔は「蛇口つき水タンク」なんか市販されてなく、自作したことを思い出しました。
 最終連もきれいにまとめたと思います。楽しめた作品です。



詩誌『弦』36号
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2006.9.1 札幌市白石区
渡辺宗子氏発行 非売品

<目次>
論理と情緒2 花ゲリラを道づれに/畑野信太郎
水琴の邑U/渡辺宗子
鍵老人のマザーグース(十一)/渡辺宗子
佐藤道子詩考V/渡辺宗子



 水琴の邑U/渡辺宗子

夕暮れの来ない
仮象の昼間
そびえる直方体の長方体の
窓を重ねた四角柱
不揃いの多角形の密林
すべて鉄筋だというのに
犬くらいの動物が通る
ふっと
洞窟の匂いがよぎる
届かない距離で
深い土の感触が伝う
電飾の炙り出す街路に
洞の壁画から歩み出る
牛馬は線描きのまま
鳥も骨のように飛ぶ
人か獣か 怪鳥の声
舗装の尽きた薄日に
吠えている 叫んでいる
呼んでいるのだろうか
耳を求める者たちへ
古代の溶け濾
(おち)た井戸の洞
水琴の邑の方から
幾重もの地層の底
人間
(ひと)の澱を溜めていたのか
永遠の不条理が
肉声を取り戻したらしい

確かな生の残骸
闘争或は欲情を証に
母国のない哀愁
ぼうぼうと昇ってくる
悲壮な姿で 青く漂っているか
鉄筋の夜の密林

犬くらいの動物の内耳
応答しているのは貌のない遠吠えだ
獣の血統がさわいでいる
ふっ切れた境界の
圧えきれない様々な声
這い上がる長い咽喉で
動物のすり寄る夜明け
ぼろぼろの音符をひろう耳
いま すすりあげている
明日の予報のように

 都市の「哀愁」のようなものを感じる作品です。「邑」はムラで、村と同じですから「不揃いの多角形の密林」としての都市の対極として考えられます。ここに出てくる「犬」は、人間の友としての犬ではなく、しかし人間に身近な存在として見る必要があるでしょう。「声」とともに表現されている「吠えている 叫んでいる」「遠吠え」も音波という概念では一緒ですが、その違いにも注意が必要だと思います。連作のようですから、最終的な形にならないとこの作品の象徴するものを捉えるのは難しいかもしれませんけど、視覚、聴覚、嗅覚などの五感が刺激されているという特徴も見逃せません。次作が楽しみですね。



木原まさお氏詩集『青の謎』
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2006.9.10 東京都板橋区 待望社刊 1500円+税

<目次>
序「青い謎を解く使者」西岡光秋 4
T章
時の集積 10     クリスマス 12
カトンボ 14     死者と歩く 16
落下する天使 18   無底 20
シュークリーム 22  異界への地図 24
海は怒る 28     ビワ 30
青い森 32
U章
初夏 38       静かな海 40
青い壁 42      明るい町 44
サヨナラ サヨナラ 46 農道 48
夏の終わり 50    私の道 52
亡き人の雲 54    笑顔 56
言葉 58       青い魚 60
あとがき 62



 青い魚

僕の心を覗いてみた

そこは広い部屋で
黄色い光でこうこうと照らされていた
一脚の椅子が部屋のまんなかに置かれていた
僕はその椅子に座ってみた

どこからか
青い海から泳いできた
石で作った魚が目の前をとおり過ぎた
それは青い魚だった

僕のさびしさを慰めるような
おだやかで優しい泳ぎだった

ときどき僕は目をつむって青い魚を思い浮かべると
さびしさは穏やかになった

青い魚の頭を静かに撫でた

 第二詩集です。「青の謎」という作品はありませんが全体に青が主調になっていることは目次でもお判りいただけると思います。その青についてあとがきでは「青は不安の青、それがますます濃くなるとか、雨は神様の怒りとかこの二面性に謎を感ずる。私の詩に海や魚が散見されるが、青を語るにいたっていない」と書かれています。この「二面性に謎を感ずる」というところから詩集のタイトルが決まったように思います。
 紹介したのは詩集の最後に置かれた作品で、「謎」の部分はありますが「不安」は感じられません。「おだやかで優しい泳ぎだった」「さびしさは穏やかになった」などのフレーズ、最終連の「青い魚の頭を静かに撫でた」からはむしろ「僕の心」の安定すら感じ取れます。「不安」の裏返しの安定なのかもしれません。感覚的な詩風に魅了された作品であり詩集です。



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