きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2006.6.30 東京・新宿



2006.8.31(木)

 長かった8月もようやく終わりますね。8月を長いと感じたのは、退職して家に居たからだろうと思います。38年ぶりの長い夏休みでしたから戸惑うこともありましたけど、まあ、何とか乗り越えたかなと思っています。
 今日は横浜みなとみらいの家具屋さんに行って来ました。以前は平塚市に店があったのですが、10年ほど前に横浜と統合されてしまいました。以前に買った本箱を求めに行ったのですけど、同じサイズの物はありませんでした。かなり特殊な本箱だったようです。確かに高さ755mm、奥行300mmなんてサイズはネットでもほとんど見つかりません。先日の文庫本専用本箱の自作に気を良くして、これは自作するしかないかなと思っています。別の店で近い物を探してもらったら20万円ほどしていました。皆さまからいただいた大事な詩集を保管する本箱ですから、そこまで出すかと一瞬考えましたが、やっぱり高い! やめた(^^; ボチボチと作っていこうと思います。



川中子義勝氏作・絵『ふゆごもり』
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2006.9.1再刷 東京都新宿区
いのちのことば社刊 1000円+税

<目次>
ふゆごもり 2
あとがき 43
あとがき・もう一つ 44



おとうさん
おとうさん
おはなしをして!

おはなしかい?
むかし むかし あるところに
ひとりの おとこのこが……


おとうさん ちがうの
べつのおはなしよ

べつのおはなし?
どんなおはなしだい?


あのね
わたしが
うまれたころの おはなし
わたしがもっと
ちいさかったときの おはなし!

 1996年初刷で10年後の再刷絵本です。著者自身によるモノクロの絵(おそらくペン画)が添えられています。紹介したのは冒頭の部分で、娘の言葉は細丸ゴジック、父の言葉は太丸ゴジックになっていましたので、ここでは明朝と明朝の太字で区別しましたが、機種によっては表現しきれないと思います。しかし、読んでいただければ誰の言葉かすぐに判るでしょう。

 物語は「ふゆごもり」の最中の父娘の会話という設定です。父はたぶんカワウソ、母はおそらく熊、息子は豚、娘はたぶん狐か犬ではないかと絵から読み取れます。おもしろい組み合わせですが、そこにもちゃんと意味があるようです。あらゆる生物は共存しなければならないという著者のメッセージが込められているのではないかと想像しています。
 長い冬の夜に「わたしが/うまれたころの おはなし」が続きます。書店で求めて、一味違った童話の世界をぜひ楽しんでみてください。



詩と批評『幻竜』4号
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2006.9.1 埼玉県川口市
幻竜舎・清水正吾氏発行 1000円

 目次
<作品>
清水正吾/ふかい沼…2  痛みの心…4  無花果の記…6
高村昌憲/花梨
(かりん)のある静物…8 アクセス不良…10
いわたにあきら/竜はなぜ石を投げつけたか…12 皮膚の内部
(なか)…15
<イラスト> 梅沢 啓/花うたう…18
<コラム> 清水正吾/G茶房・ゲノムにて W…19
<エッセイ> 館内尚子/眠る男…20
<作品>
弓田弓子/不整脈通信…22 櫓…24
梅沢 啓/断層詩片…26
舘内尚子/細胞たちの遊び場…34 みちゆきのみち…36 糧…38
<評論> 高村昌憲/哲学者・アランの思考(4)…40
編集手帳
表紙デザイン・本文レイアウト/ネオクリエーション



 糧/舘内尚子

もの書きとして
早死にしてはいけない
のんびりと ほそぼそと 餓えて
さまざまな異形の体験を糧として
生きる

三歳の好奇心
十歳の裏切り
十五歳の親捨て 家出
さりげなく成し遂げて
こいびとを制作して

異性の性について実験する
化学反応を起こす寸前で燃料を切る
――Flレースを見に行った
――エンジン音を夕陽のなかで聴いた

むかしむかしは アブサンの味

いまは ものを食べながら
戦争の話はしない
裏の林のなかで
そおっと一枚一枚 着衣を捨てる

子どもたちが殺されていく国の子たちの眼を
その眼を全裸の身に浴びつづけよ
しなびた乳首から乳をほとばしらせ
いっしんに洗面器をいっぱいにせよ

 「もの書き」には「さまざまな異形の体験」、「子どもたちが殺されていく国の子たち」には「しなびた乳首から」の「乳」を「糧」とせよというメッセージ性の高い作品だと思います。ヒトに対する見方も鋭いですね。「三歳の好奇心」はすぐに判るにしても「十歳の裏切り」は考えたこともありませんでした。「十五歳の親捨て 家出」は現在なら二十歳過ぎまで遅れているかもしれません。ことによったら三十過ぎか!? 「むかしむかしは アブサンの味」は私にも懐かしい味です。30年前の二十代にはよく呑みました。安くてすぐに酔えます。そんな時代を過ごして、ようやく「そおっと一枚一枚 着衣を捨てる」ことが出来るようになったのかなと思います。時代を考え、その時々の「糧」を考えさせられた作品です。



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