きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2006.7.7 クリスタルボウル(「アリキアの街」にて)



2006.9.1(金)

 現在、北側の窓の下に置いてある書棚は高さ755mm×幅2000mm×奥行300mmという変則的なものです。昨日はそれに合わせた幅1650〜1800mmの書棚を探しに横浜みなとみらいの過去に利用したことのある家具屋さんまで行ったのですが見つかりませんでした。別の店で近い物があったのですけど、それは20万円もするという代物。諦めて自作しようと思いました、というのが昨日のお話でした。今日はその続きです。

 結論から言うと見つかりました。ネットで粘って検索して、奈良の「赤や」という店が幅900mmの物を1万円弱で販売していることが判り、それを2本注文しました。ガラス戸もない剥き出しの書棚ですけど、写真で見た色も現在の物に合いそうです。在庫はあるというメールが来ましたので、到着するのは1週間後ぐらいでしょうか。2万円だったら電動丸ノコを買って、材料を買って作るより安い!
 これでようやく皆さまからいただいた詩集に安住の地が! とはいかないんですね(^^; いま山積みになっているご本の3分の1か2分の1は片付くかもしれません。しかし全部は無理でしょう。残りをどうするか、詩集以外のダンボール詰めになっている詩誌をどうするか。実家に置いてある詩集・詩誌、約5000冊をどうするか。これからいただくであろう貴重なご本をどうするか…。悩みは尽きません。

 いずれ小さな図書室を作ろうと思っています。実家はひとり暮らしの親父が死んだら売り払うか、借地ですから更地にして返すかしようと思っていますので、最終的には現住所に全て集めるつもりでいます。建築基準法の問題がありますから六畳間ぐらいの図書室を建てるのが精一杯でしょう。それでも書棚を使うと5000冊が限度かなぁ。ダンボールにしまい込むと利用価値が半減するからなぁ。現住所は平屋なので2階を上げて図書室にする、という案も以前は考えましたけど、家族に総スカンを喰らいました。うーん、悩みは尽きない…。



桜庭英子氏エッセイ集
『銀の糸草紙』
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2006.10.10 東京都板橋区
待望社刊 1200円+税

<目次>
−序詞− 4     緑の町から 6
赤いランドセル 9  夜の森 15
道しるべ 18     銀の糸 21
一枚の写真 25    新緑のしずく 29
この親にして 34   地震・雷・火事・? 38
鎌倉スケッチ 42   地名のロマネスク 46
愛しい名前たち 49  砂絵の町 56
春三題 65      詩を書くということ 71
最後の手紙 74    魚の行方 81
ガラスの芸術と飢餓の時代 87
言葉に魅せられて 93 情念の詩人は黄昏の雑草であれ 99
冬牡丹 105
.     美しい人 108
空のブランコ −ひとりの少女ヘ− 111
百年たったら 116
.  −終詞− 121
あとがきに代えて 124
装帳 高島鯉水子



 ようやく創立した会社が不況の為に、ついに倒産し一家は崩壊し借金に追われて逃げた男がいた。八方手を尽くしたが到底、再建もならず残された手立てはただ一つ、後は命を絶つだけと心に決めて死場所を探しに旅に出たのであった。
 どこをどうしてか辿りついた時は、岡山辺りをさまよっていたらしく、日もとっぷりと暮れて真冬の月が煌々と空にある。今夜は近くの寺にでも野宿かと境内に入ろうとしたそのとき、入り口の三叉路に立っていた道標に(右くらし)(左つらし)とある。
 右手の道は暗く、左の道も辛いのならいずれの道を選んでも駄目だ。やはり死ぬしかないのかと男は絶望のどん底に突き落とされた。
 そのとき一陣の風が巻き起こり、道に積もっていた落葉が吹きとばされ道標がすっかり現れた。すると(右くらしき)(左つらしま)と、なっているではないか。
 思わず男は落葉に隠れていた一番下の文字を月明かりで確認し、ほっとした時にふと手に触れたのは、なんとずしりと重い立派な皮財布であった。慌てて右の道を急ぎ倉敷の交番に届けると、連島の落とし主が現れ法外な謝礼を貰う。それを元手に男は再び生きる事に挑戦し、やがて大成功を収めた。めでたしめでたしのこの話は、亡兄がよく話してくれた少し出来すぎの人生訓でもあった。
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 著者初のエッセイ集です。紹介したのは「道しるべ」の冒頭の部分で、確かに「少し出来すぎの人生訓」ではありますが、ここで大事なのは「亡兄がよく話してくれた」というところです。このエッセイ集には数多く「亡兄」が出てきて、父ほども歳の離れた兄上が著者の幼少時代から影響を与えたのが判ります。詩という文学にのめりこむことになったのも文学好きで絵描きでもあった兄上の影響であったようです。

 著者はこの「少し出来すぎの人生訓」の後に、次のように続けます。「後年になってこの話を思いだすたびに、言葉や文字というものが人間に与える希望と絶望を思い、その影響の怖さを考えさせられる」と。まさにその通りですね。さらに続けられた「心して詩を書き文章を綴りたいものと思う」という言葉に共感しています。
 原文では(右くらしき)の「き」、(左つらしま)の「ま」、「倉敷」「連島」にそれぞれ傍点が振られています。html形式では表現し切れないので割愛してあります。ご了承ください。



個人詩誌『進化論』5号
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2006.8.31 大阪市浪速区
佐相憲一氏発行 非売品

<目次>
詩 長崎外海
(そとめ)
詩活動記録(06.1〜8月)
新連載エッセイ 文学と歴史の道で(1)
受贈詩誌等紹介(05.12.24〜06.8.29)
受贈詩集等紹介(05.12.24〜06.8.29)
詩 我が文化ルーツ進化論 1
新連載 私の好きな詩 第一回



   
そとめ
 長崎外海

 
天 国
パライソはこの地上に

働くことがほとんどすべてか
苦しみがほとんどすべてでか
マリア観音は明日の顔なのか

幾百年
握りこぶしが発光するまで
汗の叫びが祈りの肌にぬくもるまで
奴隷の反逆が
自然に生きる本能が
時代を歩くこの夏の
私の青い海に波打っている

誰もいない朝の教会
赤レンガの教会に沈黙の生命賛歌

歴史の海が見えないヒト達よ
八月の衝撃が思い出せないヒト達よ

ハー アアアー ハー アアアー
澄んだ女性のコーラスが
リスボンの丘から国家をこえて
マルセイユの丘から世紀をこえて
ちゃんぽんの潮の風味に上海の福建の
中国びとの船の女神の微笑みが
宗派をこえて思想をこえて
ハー アアアー ハー アアアー

舞い続けるアゲハチョウ
あなたは命の使者だ
めぐり続ける真夏の海風
あなたは夢のステンドグラスだ

もう焼かれなくていい
もう隠さなくていい
もうあきらめなくていい
もう黙っていなくていい

パライソがこの星の素顔なら
信じることが生きることなら
二十一世紀の海辺を歩くこの足で
哀しみというこの心で
私は人生を耕そう

ハー アアアー ハー アアアー

朝の教会にひとり着席し
刻まれた復活の叙事詩を体で読む

 「詩活動記録」に拠りますと8月中旬の5日間、長崎・西彼杵外海などで詩想とありますから、その時の作品だと思います。謂わば紀行詩ですが外海にとどまらず、平面的には「リスボン」「マルセイユ」「上海」「福建」と広がり、佐相詩らしい雄大さを見せています。さらに時間的には「歴史の海が見えないヒト達よ/八月の衝撃が思い出せないヒト達よ」と縦軸、横軸が織り成す世界を表現していて、壮大な佐相詩の醍醐味が味わえる作品と云えるでしょう。そんな中でも「哀しみというこの心」を持つ佳品だと思いました。



隔月刊会誌Scramble83号
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2006.8.27 群馬県高崎市
高崎現代詩の会・平方秀夫氏発行 非売品

おもな記事
○本を捨てる…遠藤草人 1
○私の好きな詩 チャールズ・シミックの不思議な魅力(3)…宮崎 清 2
○会員の詩…3
 宮下公仁子/渡辺慧介/福田 誠/芝 基紘/金井裕美子/遠藤草人/清水由実/天田紀子
○中央公民館文化祭展示部門参加について 8
○新会員ひとこと 天田紀子/横山慎一 8
○萩原朔太郎賞受賞者展覧会 荒川洋治 8
○会費/原稿締切り/編集後紀 8



 いっとうさいしょは/宮下公仁子

みんなまる
おひさままんまる
うまれたてあかちゃんまる
あまだれまんまる
なみだまる
ははのてまんまる
ひざしまんまる ねこもまる
そんなひ こころもまんまる
いっとうさいしょは
みんなまる

 物質、特に液体が「まる」くなろうとするのは、科学的には表面張力または界面張力によるものだろうと思います。分子間の引力に関係し化学構造とも関係するようですが、それ以上のことは現代の科学でも不明のようです。「あまだれまんまる」などはよく体験することですけど、そんな単純なことも解明しようとすると難しいものなのですね。詩の良いところは科学とは無関係に「まる」を扱えることだと思っています。「うまれたてあかちゃんまる」「ははのてまんまる」などは詩人の感性で描ける世界です。そこが読めて、ホッとしています。この感覚は読み手としても大事にしていきたいと思います。色紙にでも書いて飾っておきたい作品です。



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