きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2006.7.7 クリスタルボウル(「アリキアの街」にて) |
2006.9.5(火)
昨日に引き続いて書斎の整理。新しい書棚に詩集を収めたまでは良かったのですが、その余波で出てきた雑誌類の整理に頭を痛めています。詩誌は当然廃却できませんが、それ以外で廃却できるものは何だろうと考え込んでしまいました。でも、探せばあるもので古い取説がまず対象になりました。パソコン関係の取説は、さすがにMS-DOS対応は不要でしょう。唯一『ハードディスクの基礎』だけは残しました。これは基本中の基本ですからいつ読み直すことになるか判りませんからね。おそらく使うことはないと思いますがバイブルとして取っておきたいものです。Windoes-XP以前のハードの解説書や取説は廃却。ソフトの変遷の早さには改めて驚くばかりです。
結局、廃却対象は30冊ほど。まだまだ足りません。大部の『文藝春秋』は泣く泣く捨てるようかもしれません。最悪の場合は文藝春秋社に行けば見られると思うからです。それに、これは自分で買ったものですし…。善意で贈呈していただいた本はそうはいきません。しかし自分で買っている『詩と思想』、『詩学』は捨てられないなぁ。図書館が欲しい(^^;
○隔月刊詩誌 『サロン・デ・ポエート』263号 |
2006.8.25 名古屋市名東区 中部詩人サロン編集・伊藤康子氏発行 300円 |
<目次>
作品
あの人へ…伊藤康子…4
夏の朝…横井光枝…5
小暑…小林 聖…6
文字に触る−或る企画展に寄せて…足立すみ子…7
法隆寺…阿部竪磐…8
負け修羅…みくちけんすけ…10
あなたに…野老比左子…11
こいのぼりの葬列…三尾みつ子…12
ちひろ美術館を訪ねて…荒井幸子…13
夢の架橋/旅立ち…甲斐久子…14
蜜の滴る森…及川 純…15
散文
阿部堅磐詩集『梓弓』を読む…加藤則幸…16
詩集『家族の風景』を読む…阿部堅磐…17
村岡空氏の便りと詩集…阿部堅磐…18
カキワ君の文学的回想(1)(2)(3)…阿部堅磐…19
同人閑話…諸家…22
詩話会レポート…25
受贈誌・詩集、サロン消息、編集後記
表紙・目次カット…甲斐久子
こいのぼりの葬列/三尾みつ子
緑が滴る川の風景
両岸に結ばれた綱に
繋がれたこいのぼり
丸い口を空けて
川風の吹くままに
身を委ねている
*
まごいがおよぐ
ひごいがおよぐ
のぼりを立てて
みんながいわう
よい子になーれ
大きくなーれ (*)
幼子が溺れ 水底にしずんだ
あわあわと この川の流れに
引き込まれていったのか
川面はゆったりと
うたっている
横一列 およぐこいのぼり
緑の川風を吸い込み
大きな目玉が 見てきたものは
夕暮れ
こいのぼりの
葬列が
川を渡っていった
* 昭和17年 文部省 唱歌
「幼子が溺れ 水底にしずんだ」ことは何度かあったと記憶していますが、「横一列 およぐこいのぼり」がそれを「大きな目玉」で「見てきた」と捉えたところに新鮮さを感じます。さらにその子のために「こいのぼりの/葬列が/川を渡っていった」とする作者の視線には、あたたかさとともに同じ母親としての悲しみを伝えていると思いました。「両岸に結ばれた綱に/繋がれたこいのぼり」という光景は、最近、全国的に見られる風物ですが、それを「幼子」のための「葬列」とした作者の、詩人としての魂に敬服した作品です。
○奥津さちよ氏詩集『ハンス』 |
1998.11.11 東京都文京区 詩学社刊 2200円+税 |
<目次>
崖 8 ブタが飛ぶ絵 10
捕獲 あるいは 14 テントで探す 16
キューバの砂糖 18 おひゃくしょうさんが 22
ペトロに手紙を書くときは 24
辞書 28 ロープウェイ 30
首都マドリッド 34 コイン 38
遺跡 42 駅 46
鍵 48 突堤 50
山道 52 ひとつの石に 54
飛び込むまでの十一分 56
沈黙する器 60 通る、朝 64
統計学 68 地図から森が 72
涼しい水 76 六月 78
迷彩日 80 さわろうねこ 84
蝶 86 春へ 88
ハンス 90
さちよ詩の余響 竹野静雄 94
あとがき 100
ハンス
もう一世紀も前のこと あるとき
数を数えられるとして有名になった馬がいた*
数だけでなく 掛け算 割り算も
時の政府の命を受けて
心理学者や動物学者が くわしく調査した結果
馬は しかし数を数えていたのではなかった
馬は 愛する飼い主の何かを感じて
カッと ひづめを止めていたのだった
それは何なのか――わからなかった
微妙なそれは
彼の目のかすかなうごき
目のなかの海のちいさなさざ波
うぶ毛を吹くひとすじのひかり
裏山でみつけた黄いちご
落とした腕時計 心臓の音
それていくキャッチボール
もしかしたら 非常に単純なことなのかもしれない
雑踏のなかで あなたを見わけられる
夕日のなかで あなたの声を聞くことがある
人にも そんなことがある
こころがはだかのときは
*渡辺茂著『認知の起源をさぐる』
詩集のタイトルポエムです。巻末に置かれていました。「ハンス」というタイトルの正確な意味は判りませんけど、おそらく「数を数えられるとして有名になった馬」か「愛する飼い主」の名前だろうと想像しています。この馬のことは私も何かで読んだかTVで見た記憶があります。結論は覚えていませんが「愛する飼い主の何かを感じて」のことだったとしたら凄いことですね。でも、我々にも「雑踏のなかで あなたを見わけられる/夕日のなかで あなたの声を聞くことがある」というように納得できることです。それはどういう時かと言うと「こころがはだかのとき」なのだと最終連で書かれています。これも充分に理解できることで、著者の詩人としての感性に敬服しました。約8年前の詩集ですが時間の経過と無関係に本質を抉る作品であり、そういう視点に満ちていた詩集でした。
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