きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2006.9.16 群馬県榛東村「現代詩資料館・榛名まほろば」にて



2006.10.2(月)

 出版社から電話があって、拙詩集の原稿が届いたとのことでした。何とか年内には出したいと言ってくれましたので、よろしくとお願いしました。私は来年になっても構わないんですが、出版社には出版社の都合があるようです。一応、これで一区切りかな? 後は校正を何度かやって、それで終わるでしょう。贈呈先の選定はいずれやるつもりですけど、500人になるのか600人になるのか…。書店では売れるはずもないので、ほとんどが贈呈です。これが日本の現代詩の現状ですから止むを得ませんが、そのうち詩集が売れる時代が来るといいですね。来ても私のものは売れないと思うけど(^^;



阿賀猥氏詩画集
『転生炸裂馬鹿地獄、割れて砕けて裂けて散るかも』
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2005.11.1 千葉県富津市 岡姫堂刊 1100円

<目次>
1
.転生後 1     2.4女 ラクなど 6
3
.その外の姉妹 16  4.原口桂和 28
5
.鼻輪姫 34     6.犬物語 37
7
.猫物語 46     8.豚物語 54
9
.鳥、蝿、ティラ嬢など 62



 横須賀線の大豚

横須賀線で行って、大船と北鎌倉の中間あたり、東京を背にすると、左側
に野原があり、その中央に豚の邸宅があった。そこに信じられないほどに
巨大な豚が一匹で住んでいた。
晴れ渡った日には、巨大豚は邸宅から野原に出て、その巨大な腹を陽に乾
したりしていた。
        (大豚の天日干し)
豚はいつの間にかいなくなった。
その後私は結婚し、以前ほどは電車に乗らなくなり、豚のことは忘れてい
た。
夏、風呂上がりの夫をみて、先の大豚を思いだし、大豚の行方が分かった、
と思った。
        (大豚の転生)
− その昔、あなたは何だったのでしょうねえ?
横須賀線の大豚の話をしたが、昔の事をちゃんと覚えているような男では
ない。
私たちは、直線的な時間概念でしか時間を把握できないが、身勝手な時間
がそうそう安直にヒトに感知されるはずもないではないか。
        (時間屈曲)
時間の隙間に追いやられた大豚が、今、再び現世にこういう形で出現した
とは考えられないか?
− あなたは野原で、お腹を干すのが好きではなかったの?

こうして、私の夫は冬の日にも裸の腹を天日にさらすのが日課となった。
かっての大豚ほどではなかったが、夫はそれなりに非常に肥満していたの
で、それは実に見事な光景で……
私たち、私と近辺の女どもは、驚きながらもほれぼれとその腹にみとれた
のだ。

 詩:阿賀猥氏、絵:谷敏行氏というコンビの詩画集です。犬や猫、牛などが登場する楽しい詩画集で、ここでは「横須賀線の大豚」を紹介してみました。「大豚の転生」であるという「夫」、その発想のユニークさに驚きますが、考えてみれば世の亭主族なんて「風呂上がり」を見られてしまうと「大豚の行方」なのかもしれませんね。「昔の事をちゃんと覚えているような男ではない」のは申すまでもありません。チクリとやられたなと思った作品です。



村尾暉子氏詩集『金のなる字』
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2006.9.1 第2版 東京都北区
岡姫堂刊 1100円

<目次>
1 金のなる字
お蔵 1                  金の生まれる字 2
真赤なイマジネーション 3         人はみな寂しき哉 5
ユメ見る夢子のソネット 7         倫理社会は夢の色 8
動物園 9                 株(
horiemonjiken) 11
2 人は誰でも年をとる
鏡 13                   人は誰でも年をとる 14
何となくクリスタル 15           エトランゼ 1 17
エトランゼ 2 17             エトランゼ 3 18
サルと原爆 19               私は? 22
3 キン、ギン、リュウ、カメ、トメ、カネ、サク
キン、ギン、リュウ、カメ、トメ、カネ、サク 25  エトランゼ 27
お店 28                  自分だけは 29
偽善と真実 31               女は哀しい 33
娘たちよ 34                息子 35
挿画・ayaran
編集・阿賀猥・戸沢豆蔵



 金の生まれる字

伊勢丹の勢という字
三越の越すという字
高島屋の高いという字
東急の急ぐという字
西武の凛凛しい武という字に
仲良く光り輝く和光という字
銀座の銀は銀行の銀の字で
モトマチの元町はハイカラという字
帝国ホテルは帝という字
ホテルオークラは大きな大きなお倉だし

金の生まれる字
こんなに沢山あるというのに
暉子の暉は
朝鮮では明暉といい
日本では落暉といい
どこでどうすれちがってしまったのか
暉子の暉は
プラス マイナス ゼロという字

 詩集タイトルと同じ作品はありませんが、紹介した「金の生まれる字」が最も近いと思われます。「金の生まれる字」という発想がおもしろいですね。それに対して「暉子の暉は/プラス マイナス ゼロという字」と嘆きますけど、そんなこしはないと思います。「暉」は光り輝く字、人生にとって「金の生まれる字」よりも大切なようなものに思います。そんなことを考えた作品です。



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