きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2006.9.16 群馬県榛東村「現代詩資料館・榛名まほろば」にて



2006.10.5(木)

 3日掛かりでようやく日本詩人クラブ詩書画展の作品をアップしました。
日本詩人クラブHP入っていただき、トップページの「例会・イベント案内/報告」の「詩書画展参加作品」から見ることが出来ます。詩人名の50音順になっていますから、参加している方はご自分の作品や、そうでなければお気に入りの詩人の作品をご覧になってください。もちろん全部見ていただければ嬉しいです。ただし、何度も書いていることですが、ピンボケが多いです。著作権保護上ではその方がコピーし難く、良かったかもしれません(^^;



戸上寛子氏詩集『月の鏡』
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2006.9.25 東京都千代田区
砂子屋書房刊 2500円+税

<目次>
花かげ 10      あおぞら 12
さわおと 14     朝顔 16
往復切符 18     すすきの原 20
虫の音  22     五百羅漢さま 26
湖のリコーダー 30  お正月に 34
初日 38       初音 42
やまぶきの花に 46  月と同級生 48
そら豆 56      三保の松原 60
軽井沢日記 62    ブラックコーヒーで 64
秋 66        高原の冬 70
道祖神 74      ふきのとう 78
生きる 80      野ばら 82
橋 88        秋初め 92
石垣 96       桃の里 98
緑零れる 100
.    月の鏡 102
芦ノ湖 104
.     箱根駅伝讃歌 108
黒髪 110
戸上寛子「カンヌ国際芸術質」受賞祝いの言葉 手塚 宏 114
あとがき 122



 月の鏡

夕ぐれに待つことを覚えてしまったのだから
淡い暮色に身を沈めても
タベに咲く花はそのかたみに
追憶の花びらを染める

夕ぐれに待つことを覚えてしまったのだから
啼いてすぎゆく鳥の群れにも
近くを流れる渓谷
(けいこく)の瀬音にも
いつも夢は還ってゆく

待つことを覚えてしまったその頃から
どこにめぐるであろう
胸に負いすこしも色褪せることもない
秘やかな思いや山の麓のさびしい村

月が出ていたのかいなかったのか
ある夜のある夜をうつしていると
月の鏡よ

途方もなく埋もれ火の歳月
詩を書くには朧月夜のほうがいいね
そういった人よ

 19年ぶりの第6詩集だそうです。詩集タイトルの『月の鏡』という詩語は、紹介した作品のタイトルの他に「芦ノ湖」という作品にも出てきます。ここでは素直に「月の鏡」を紹介してみました。「秘やかな思いや山の麓のさびしい村」というフレーズは、おそらく著者の生まれ故郷であるか、それに重ねられたものと思います。最終連からはレクイエムという印象を受けます。二度繰り返される「夕ぐれに待つことを覚えてしまったのだから」というフレーズからはもっと違うものを想像しますけど、最終連の印象が強く、レクイエムではないかなと思う次第です。「ある夜のある夜をうつしている」というフレーズはおもしろいですね。日常のやさしい言葉で書かれた詩集ですが、捉えている世界は深いと感じています。



詩誌『よこはま野火』51号
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2006.10.1 横浜市神奈川区
菅野眞砂氏方・よこはま野火の会発行 500円

<目次>
秋風の中で(U)/進藤いつ子 4       かげのたわごと/松岡孝治 6
夏至の影/真島泰子 8           竹の家/唐澤瑞穂 10
そして今度は――/宮内すま子 12      はだしになって/馬場晴世 14
ビーチグラス/はんだゆきこ 16       ガラス/浜田昌子 18
梅の実/阪井弘子 20            西へ/疋田 澄 22
半世紀ぶりの/森下久技 24         背中/加藤弘子 26
無辺の眼/菅野眞砂 28
   *   *
詩集評「青いニワトリ」(加藤弘子) 堀井勉 30  「みねばりの木」(阪井弘子)柳生じゅん子 31
よこはま野火の会近況 編集後記 
表紙 若山 憲



 ビーチグラス/はんだ ゆきこ

寄せては返す波の絶え間なく
どれほどの時間をかけて磨かれたか
青白緑茶 色とりどりのビーチグラス

捨てられたガラスの破片
荒波にもまれもまれてすべすべに角も取れ
のどかな葉山の海岸に流れ着く

銘柄を競ったレッテルは剥がれ
いったい何を入れてあったのか
記憶も失せのっペらぼうに
やがて浜の砂になる日も近い

一時 にぶく輝いていたビーチグラス
子どもの手に拾われて小さな宝物
接着剤でつなぎ合わされキャンドル立てに
ローソクを灯せばほんのり海の色

 「のどかな葉山の海岸に流れ着」いた「色とりどりのビーチグラス」に寄せる思いが美しく描かれた作品だと思います。しかし作者の眼は冷静で「銘柄を競ったレッテルは剥がれ」と、「捨てられたガラスの破片」の来歴もしっかりと見ています。さらに「やがて浜の砂になる日も近い」と、詩人らしい視線を発揮していると云えるでしょう。その上で「ローソクを灯せばほんのり海の色」になると鮮やかな転身まで予想しています。この二重の視線がすばらしい作品だと思いました。



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