きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2006.9.16 群馬県榛東村「現代詩資料館・榛名まほろば」にて



2006.10.6(金)

 「四谷コタン」のライヴに行ってきました。4人のライヴがありましたが、もちろんトリの奥野祐子さんが目的です。退職した会社で一緒だったオバさま方を連れて(連れられて?)行ったんですけど、台風16号接近という荒れ模様。「私たち3人以外は誰も来ないかもしれないね」と言いながら東名高速を東へ。ところがいつもと変わらない盛況でした。

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 帰りのファミレスでオバさま方曰く、「今日が、今までで一番良かった。4人の中でも一番良かった。同じピアノでも奥野さんが弾くと見違えるようになるね」。たぶん聴き慣れたんだろうと思います。私にも経験がありますが、奥野さん歌は聴けば聴くほど詩の内容も判って、胸に深く落ちてきます。だから、私もできるだけ都合をつけて行くのです。オバさま方は先月のワンマンライヴに引き続いての鑑賞ですから、余計に理解しやすのなったのかもしれません。この分だと毎月連れて行けと言われそうだなぁ。



〈在日〉文学全集18『詩歌集』U
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2006.6.10 東京都千代田区 勉誠出版刊 5000円+税

<目次>
宗秋月
猫飼野・女・愛・うた 9
おおぎいちゃあらん 10/遺言 11/これは一つの物語
(デジャブー)です 12/名前(イルン) 17/ポッタリジャンサ 20/マッコリ・どぶろく・にごり酒 23/風景をなぞる 25/ごきぶりだんご 27/まぼろしのふるさと 28/済州道の母よ 29/キムチ 29/祖国がみえる 30/チェオギおばさん 31/頼母子講 33/にんご 34/あぱぁとめんと 36/貼子(はりこ)哀史 38/酒筵(しゅえん)(繰言をする父) 40/子守り唄考 42/きんぽうげ 45/朝顔 46/ピラニヤ 47/日本海(鳥取からなる) 49/睦言 51/蛇経(じゃきょう) 52/新潟港 54

妙達
李朝秋草 57
李朝秋草 58/チュムイ 巾着 60/文箱
(ふばこ) 62/鶴 64/オムニ 母よ 65/ハラボヂ 祖父 67/玄海灘 68/チョンヂ 天池 70/オッコル 71/ウリマル 母國語 72/陶祖「李参平」 74
李朝白磁 77
李朝白磁 78/パンソリ 歌劇 79/アリラン峠
(コゲ) 82/ハヌニ 天空神 83/ソンピョン 松餅 84/マヌル大蒜(にんにく) 86/チマ・チョゴリ 88

金太中
囚われの街 91
序詩 92/空と海 92/奇妙な風景 93/あさ 94/血 95/海峡 96/海 97/昇天 98/おとずれに 99
わがふるさとは 湖南
(ホナム)の地 101
ありありて 102/蟇 102/若きおとめたちに 103/ぼくらはうたう 104/そのとき ことばは凍った 105/石燈籠 107/青い上衣
(チョゴリ)のひとに 108/少年の死 109/告発 110/何かがきこえる 111/哭 113/初冬の六時は―― 114/長興(チャンフン) 115/わが一日の始まり 116/生きていたい 117/ソウルで 118/わが記憶のはじまり 119

趙南哲
風の朝鮮 121
丘 122/峠 122/船 123/吹雪 124/頂 125/村 126/土 127/神経 128/獄 130/胎児 132/胃 133
樹の部落 135
雨 136/海岸 137/傷 138/広場 139/路地 140/犬 142/豚 143/瓦 144/井戸 145/坂 146/老婆
(ハルマシ) 148/鉄橋 149/座布団 150/炭 151/金アジメ 152/島 153/母(オモニ) 154/政治 155/指 156
あたたかい水 159
にげる160/私を見なさい 161/春 162/樹葉 163/火 164/道 165/オルゴール 166/あたたかい水 167/市 168/争い 169/球根 170/鼻毛 171/石 172/動物園 173

崔龍源
鳥はうたった 175
木 176/弦 178/夢の影 179/水 180/宙
(そら) 181/手紙 180/無言歌 185/馬の目 187/鳩と少年 188/サラン 189/渇く 190/はじらい 192/昭和 194/潮騒 196/在りたい 197/遊行あるいは鎮魂歌 198/生きる 201/鳥はうたった 202

盧進容
赤い月 205
赤い月 207/電話、その日 208/願い 209/夜明けの灯火 210/貼り紙 211/神戸に来たら 212/ボランティア 213/炊き出し 214/マスク 215/千年後の再会 216/涙 217/長話 大震災 218

李龍海
ソウル 241
私戦 242/ひねくれた数個の穴 243/孤独のアニマ 244/五月の不死 245/傾いた椅子 246/伏うなかれ 248/ 家路 249/鳥取 250/猿王 252/密航 253/密漁の夜 256/夜なき夜のもみじ 258
赤いハングル講座 263
仁川(インチョン) 264/赤いハングル講座 265/空の冬 269/カンタービレ! 270/記憶の船 271

尹敏哲
火の命 273
窓 274/追憶 275/息子に 279/震災 280/狼のように 291/祈り 293/炎 296

李美子
遥かな土手 299
荒川 300/かるび屋繁昌記 301/少年の日 303/三日月 304/日曜日 305/街 306/夜に 308/路 309/風変わりな小曲 310/土手下朝鮮 311/戻りみち 312/ネクタイ 313/食卓 314/夕暮れの手 315/迂闊 316/刃先 317/まくわ瓜 319/しゅうさん 320/八月の海峡 321/トラジ 322/夏の花 323/故郷 324

キム・リジャ
火の匂い 325
欅 326/瓜 327/雨のあとに 328/アメリカン・ドリーム 329/鉛筆 330/贐
(はなむけ) 331/傾く 332/水仙 333/谷に降る雪 334/潮目 335/陰 337/誕生日に 338/八月の畑 339/孔雀は飛ぶ 340/こどもの喧嘩 341/昼の花火 342/その前夜 343/泣く男 344/火の匂い 346

全美恵
ウリマ
 349
梨花橋
(イホアギョ) 350/イーデアッペソ(梨大前にて) 351/ミーティング 352/チョンノエソ(鍾路にて) 353/クワンホァムネソ(光化門にて) 354/ウリマ 355/コケコッコー 358/肉 359/かくれんぼ 360/ハーフ 362/民族の衣 363/1985・赤坂「MUGEN」にて 365/パん ムん ヂョム(坂門店)367/オモニの指 368/姓 369/ピビンパ・パーティー 372/恩津弥勒(ウんジんミルク) 373/黄土(ホアント) 374

丁 章
闊歩する在日 377
日本人と恋をして 378/在日サラムマル 380/わたしたちは日本で産まれた 381/ザイニチの分裂から 383/涸渇した遺産 385/民族の言葉 386/すりかえ 387/コンビニにキムチ 389/国旗とエロス 391/闊歩 392/記録 394/在日の覚悟 395/めざす島396/提起 400/仮想のまつりごと 402/今来た者と遺されし者 404/和人よ、和民族よ 405/蔵入れされる昭和 407/血の儀式の再来 408/和サラムの人 409

年譜・解説
【年譜】金太中・趙南哲・崔龍源・盧進容・李龍海・尹敏哲・李美子・キム・リジャ・全美恵・丁章 416
【解説】在日の詩について(佐川亜紀) 450



 ホアン ト
 黄土/全美恵

聴こえる。心臓? その音なの?
カーテンを裂いて
視る。戦車だ。
静か
ゆっくりと戦車
つぎつぎと戦車
移動する夜 ソウル
トング
(通行禁止令)であった

静けさの中で海の向こうを求めた
日本語がほしい!
ラジオの雑音をまさぐる。
あこがれのホァント(黄土)を踏み締めた。という
のに
ハングルにうんざりして、
ウリマ
の会話からも遠ざかり、
ひとりでいたい!
図書館ではひらがなばかりをさがし、
ヘ ウエチ ドキヨスシル
海外指導教授室にたむろったり
ミヨンドン    タバン
明洞のポエム茶房≠ナセブンスターをふかしたり、
部屋に閉じこもってはアンアン・ノンノをながめた
り、

体はたしかに海を越えて来た、というのに
心は海の向こう。おきざりのままだった
あげくのはてに卒業もできず、逃げ帰った
ここで。
こうして、詩を書くなんて
体はたしかに海を越えて帰って来た、というのに
 
ホアン ト
心は黄土の中に埋もれているのか
誰もきかないでほしい
 祖国のことは何も知らない
 祖国のひとは何も知らない

 磯貝治良・黒古一夫両氏編の「
〈在日〉文学全集」第18巻です。全18巻ですから、この本が最終巻ということになります。『詩歌集』はT、Uがあるようで、Tは在日1世・2世が主、Uは 2世・3世が主になっているようです。
 紹介した詩は在日3世の女性詩人の作品で、1995年に発刊された第1詩集『ウリマ
』(紫陽社)に載せられたもののようです。背景を説明しないと判り難いかもしれませんね。年譜によると全氏は東京で生まれ、18歳で韓国の大学に入学しており、その時の体験を元に書かれています。「黄土」とは朝鮮半島のことを謂うようです。「あこがれのホァント(黄土)を踏み締めた。という/のに/ハングルにうんざり」する在日3世の心境が良く出ていると思います。時代は1970年代後半。「通行禁止令」が出て「戦車」が「移動する夜 ソウル」。時代背景としても貴重な記録と云えましょう。



詩誌『さよん・V』創刊号
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2006.10.1 神奈川県高座郡寒川町
冨田民人氏事務局・さよんの会発行 500円

<目次>
ゲストのページ
芝刈り/小池昌代…4

嵐・夏の桜・東海道線下り横浜22時05分発/冨田民人…7
コラボレーション・ターニャと地球/風間妙子…12
韓国の詩
イ・ボッキ「秘密番号」/全美恵…22
私の一篇
まど・みちお「妻よ」/全美恵…24
エッセイ
父の頭像/冨田民人…26

夢の言葉・長文読解・黒くて赤いカーテンの内側で/全美恵…28
近況・雑記…36



 アンショウ
 秘密番号/イ・ボッキ  訳・解説 全美恵

たった今、きみに愛を振り込んだ
オンラインで電算処理された愛は
数字となって通帳に刻まれてゆく
日付は省略するとして
受取主はきみで、振込主はぼくだ。
そこんとこだけしっかりと

記入欄が、ぎっしり埋まったなら
どの支店からでも秘密の番号ひとつで
必要なだけ下ろして使えばいい
この口座に、ひたすら愛だけを積み立てよう
いついかなる時でも、ぼくらの恋愛関係は
債権者と債務者の関係であってはならない

今日もぼくは銀行へと走る
振込用紙には、
永遠の魂の口座番号を書き込もう
そして、この愛の瞬間を振り込んでおこう

--------------------

* オンライン *
 この詩は、ト・ジョンファンさんが編集した詩選集『必読!親と子のための詩』(ナムセンガク・二〇〇四年)の中のイ・ボッキさんの作品です。そのため、この詩人の情報は、この本には載っていませんでした。詩からのイメージでは若い人のようですね。インターネットでも調べましたが、出てきませんでした。すみません。
 このての詩が、私は大好きです。私たちの国は、ふたつに分かれ、南では米国の影響を受けて民主主義というよりも色濃い資本主義社会になり、その恩恵(?)も受けて経済発展(?)も成し遂げようとしている中で、何かを失う危機感も気付き始めています。そういうことに敏感な詩人らしい仕事ぶりに頭が下がりました。「オンライン」と題された原題を私なりに「秘密番号」と訳して見ました。この秘密番号はピミルポノと読み、日本では暗証番号のことです。そして、原作には「秘密の番号ひとつで」の言葉は無く、私の解釈で付け加えたものです。暗証番号を「証明する暗号」ではなく「秘密の番号」と決める言葉のセンスは、詩の盛んなお国柄らしいロマンチックな発想だと思います。
 お金で泣いたり怒ったりするのは、もう沢山です。これからは、愛をがめつく貯めましょう。そして、借しげもなく使いましょう。涙をぬぐって、笑顔で暮らしていけますように! そこんとこだけしっかりと。

--------------------

 「韓国の詩」と全美恵さんによる解説を紹介してみました。翻訳は難しいもので「私の解釈で付け加えたもの」も必要になってくるでしょう。これが「言葉のセンス」だと私も思います。それにしても「オンラインで電算処理された愛は/数字となって通帳に刻まれてゆく」という発想は佳いですね。全さんもおっしゃる通り「詩の盛んなお国柄らしいロマンチックな発想だと」私も思います。佳い詩を紹介していただきました。



詩誌『二行詩』18号
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2006.10.10 埼玉県所沢市
伊藤雄一郎氏連絡先 非売品

<目次>
暮らしの妖怪(しみじみ)/高木秋尾
捨てる/布谷 裕
野生動物公園にて/伊藤雄一郎
ゲストコーナー きのと・とり/小島ノブヨシ
投稿者作品集
 かたつむり他/根本昌幸
 六月/渡辺 洋
 喪他/青柳 悠
先人の『二行詩』を訪ねて 第1回 八木重吉/伊藤雄一郎
二行連詩の試み
お便りコーナー
後書き



 根本昌幸

 かたつむり
虫なんですよ
でんでん虫といいます。

 からむし
むしなんだけれども
草なんです。

 腹の虫
居場所が悪いんだって
腹が立つこと。

 癇の虫
なにを怒っているんだろ
いつもぶつぶつ言って。

 紙魚
点点の私も
変な虫なのでございます。

 総タイトルを付けるとしたら虫≠ナしょうか。「かたつむり」は実際の虫ですが、それ以外は違うものを集めたところが成功していると思います。特に「からむし」が佳いですね。「腹の虫」「癇の虫」は私でも発想し得たかもしれませんが「からむし」には、おそらく到らなかったと思います。「紙魚」も佳いですね。二行詩という制約があるからこそ出来た作品だろうと思います。



個人詩誌HARUKA 1810号
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2006.10.1 大阪府交野市
交野が原ポエムKの会発行 非売品

<目次>
残りもの       地球が認めた(私の嫌いな)もの
ハナクソ・ゴハン   生きた注射針
余韻
《はるぶみ》



 残りもの/山田春香

うちの犬にエサをやると
かまずにほぼのみこみながら食うんだ
しっぽをふりながら食ってるんだ
器まで食っちまいそうな勢いで
そりゃあもうスゴイ
だけど全部食っちまうんだ
だされたメシのカスまで
なめまくってたいらげる
土がついていようが
そんなモン関係ないのさ
それに比べて自分はなんだ!
こんなに残してやがる
米つぶだって集めれば
小さなニギリメシできるじゃねぇか
腹いっぱい食えねぇヤツが
この世にうじゃうじゃいるんじゃねぇか

ゼイタク丸見えの器が
犬と一緒にうなずいた

 本当に「犬にエサをやると」「スゴイ」と思いますね。私の家の犬は老犬ですから、週に一度ぐらいはまったく食べない日もありますけど、それ以外は「器まで食っちまいそうな勢いで」「しっぽをふりながら食って」います。それに対して人間は「こんなに残してやがる」。私も反省しきりです。最終連の2行も効いていると思いました。



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