きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2006.9.16 群馬県榛東村「現代詩資料館・榛名まほろば」にて |
2006.10.20(金)
今日、Niftyのサービスマンが来てくれて、書斎のパソコンの無線LANの設定をやってくれました。これで我が家のパソコンは2台とも無線LAN付きとなりました。嬉しいです。
でもね、ちょっと問題が…。書斎パソコンの通信速度が変動しています。本来なら最大54Mbpsのはずですが、1〜38Mbpsに変動しています。通常は18Mbps程度で問題なくネット接続できますけど、1Mbpsはさすがにトロい。ルーターに近い方の居間のパソコンは問題ないので、書斎パソコンだけの問題と判断しています。たかだか10mほどの距離ですが、意外と出力が小さいのかもしれません。ルーターの位置を変えたりしながら調整しようと思っていますけど、最悪の場合はLANコードで繋ぐようかもしれないなと考えています。アマチュア無線技士としては無線に拘りたいですけどね(^^;
今日は拙第6詩集の初校が上がってきました。12月の発行のようです。書店にも配本されるようですから、よろしかったらお求めください。土曜美術社出版販売の21世紀詩人叢書・第U期26で『帰郷』というタイトルです。定価はいくらだろう? 税別で2000円かな? 高いなぁ(^^;
○狩野貞子氏詩集『春の言ふれ』 |
2006.10.30 東京都新宿区 土曜美術社出版販売刊 2000円+税 |
<目次>
T
予感 8 春 10
今朝の食卓 14 午前十時 18
罌粟 22 影 24
かもめ 26 熟れる果実 28
夕暮れどき 30 天使の羽根 32
女狐 36 嵯峨野の 40
U
幻の卯月 44 光の中に 46
萩 48 山茶花 50
ひよどり 52 父の限 54
山崎川 58 盂蘭盆 62
大晦日 66
V
駅前の花屋 70 落下 72
自転車 76 食べる 80
信号 82 事故 86
バス停 90 空 92
跋文『春の言ふれ』が意味するもの
――自然との親密な交歓と日常の中にひそむ可笑しさゆえの怖さ 内山登美子 96
あとがき 104
装画 長谷川健司 装丁 田中淑恵
午前十時
午前十時
わたしは ベランダに出て見上げる
南の空から
小さな玩具のような
ジュラルミンの旅客機が
飛んでくるからだ
爆音は聞こえないけれど
空の深みを
旅客機は北西の方向へ
少しずつ 確実に進んでいく
何時からか
わたしは機内の乗客になっている
その気になりさえすれば
見なれた部屋に居ても
何処にだって旅ができる
青みを帯びた北の大陸だって
海岸線に沿って
夜の海を越え
バルカン半島の野外劇場にだって
行ける
いま さらりとスカートの裾を揺らして行ったのは
シェンヤンで生まれた風?
憧れをもって見上げるように
機内の窓からも
見下ろしている人がいるかもしれない
第一詩集です。ご出版おめでとうございます。
詩集タイトルの「春の言ふれ」という作品はありません。詩集全体から春≠ェ感じられます。第一詩集という春≠手にしたからかもしれません。
紹介した詩は、その春≠ニは関係ありませんが、ああ、同じ空を見ているんだなと思った作品です。著者は東京都国分寺市在住、拙宅は神奈川県南足柄市にあり、間に丹沢山系が据わっています。その上空を毎日「小さな玩具のような/ジュラルミンの旅客機が/飛んで」来て「北西の方向へ/少しずつ 確実に進んでい」きます。羽田から福岡方向に向かう便です。著者はそれを眺めながら「機内の乗客になってい」ます。私は高度がどのくらいで、速度はどうで、あと何分したら次の飛行機が同じコースを飛んできて、などと即物的なことしか頭に浮かびませんが、著者は「海岸線に沿って/夜の海を越え」「何処にだって旅」をしてしまいます。この想像力は素晴らしいですね。
他の詩にもヒラリと現実を越える作品が目立ちます。先天的に詩人なんだなと思います。今後のご活躍を祈念しております。
○詩とエッセイ『焔』73号 |
2006.10.15 横浜市西区 福田正夫詩の会発行 1000円 |
<目次>
詩
花の声がする 亀川省吾 4 原点 高地 隆 5
かなしいにおい 上林忠夫 6 薔薇 森やすこ 7
臍の胡麻 古田康二 8 雪 阿部忠俊 9
僕の日常 保坂登志子 10 林の中への思い 布野栄一 11
あなたに 水崎野里子 12 叱言 山崎豊彦 14
またぎ越す鐘/春たつ明日 伊東二美江 15 町田志津子さん/ヤマザクラと新芽の山/サクラ 小長谷源治 16
ほむら 平出鏡子 17 永泰公主の墓 濱本久子 18
妻の陽炎 五喜田正巳 19 閉店 野島 茂 20
ふたたびこころよ 瀬戸口宣司 21 亀合わせ 新井翠翹 22
歩行者のひとりごと/無題/植木屋 金子秀夫 24
アルバムに 黒田佳子 26 詩人(炎の人) 古田豊治 28
メール 福田美鈴 29 風を切ります……死にたくなったら読む詩 植木肖太郎 32
福田正夫の詩・心の垢 阿部忠俊 34
連載
知らない昨日、未知の明日7 宇田 禮 36
散文
野球あれこれ 許 育誠 40 土屋文雄先生のこと 錦 連 42
上野菊江さんのこと 福田美鈴 49
書評
高地隆、高地資子詩歌集「二本のつる」を読む 山崎豊彦 56
工藤茂著「小説『四角な船の謎』」を読む 濱本久子 59
小野寺苓『みちのく腑分け始末』 及川和男 62
井上ふみ著『せせらぎ』より・幸福は我心の中に 新井巳喜雄 64
詩集紹介
出海渓也/綾部健二/野口正士/川端進/武西良和/秋野さち子/中村吾郎 金子秀夫 67
編集後記
題字、表紙画/福田達夫 カット/湯沢悦木
雪/阿部忠俊
大寒の翌日の雪の中を徘徊する
一面の銀世界に一際はなやいだのが赤いモチの実、そ
の美しさにみとれた。
沖縄では桜が満開というのに、この寒さ。
雪は一日中降り積もった。
教会を離れて半年になる。
自由で合理的な人間が非合理的な観念の世界に惹かれ
るのは現状を打開できない無力感とあきらめにある。
神は人間の本質だとファエルバッハは言うが、宗教は
虐げられた人達がその不遇を慰謝するため自らあみだ
したものなのかもしれない。
イエスが生まれたローマは内乱と戦争続きのすさまじ
い階級対立の時代であった。
民衆は重税とたびかさなる徴兵でくたくたに疲れ、す
ベての権利を剥奪された奴隷と何ら変わるところがな
かった。
虐げられた人達が頼ったのは体制の転覆、十字架にか
けられたイエスを迫害の象徴として神にまでまつり上
げ、権力者に立ち向かったのが原始キリスト教の始ま
りである。
春は花、夏はほととぎす、秋は月、冬雪さえてすずし
かりけり(道元)
高校の卒業式が始まった。
ここのところ宗教について愚考する機会が多いのですが、この作品はそんな私に多くのことを教えてくれました。「自由で合理的な人間が非合理的な観念の世界に惹かれ/るのは現状を打開できない無力感とあきらめにある」。「宗教は/虐げられた人達がその不遇を慰謝するため自らあみだ/したもの」。なかでも「虐げられた人達が頼ったのは体制の転覆」であり、その「迫害の象徴として神にまでまつり上/げ」られたのが「イエス」であるというところは、宗教の始まりとは何であるかを考えさせられました。おそらく結論なんてものは出ないのでしょうが、考えるヒントを与えられたように思います。最終連の「高校の卒業式が始まった。」というフレーズも佳いですね。グッと現実に引き戻されました。
○詩誌『梢』42号 |
2006.10.20 東京都西東京市 山岡和範氏方事務局・井上賢治氏発行 300円 |
<目次>
「戦死」他2編 日高のぼる…2 「作品『宇宙の再生』を描く」 藤田紀…8
「冷房の夏」 牧葉りひろ…8 「二〇〇六年夏・断章」 宮崎由紀…12
「攻めてきたら」他1編 山岡和範…18 「夏の終わりに」他1編 山田典子…22
真美井房子さんからの手紙…23 「知床 そしてカモメよ」 井上賢治…25
「取り壊す納屋」 上原章三…29 「包丁と砥石」他1編 北村愛子…33
山岡和範詩集「スイちゃんの対話」感想紹介…37 「梢」41号感想紹介…44
事務局だより…46 表紙 版画−知床の海 井上賢治
息の根/日高のぼる
鉛色の海に軍艦が浮かぶ
基地の街 横須賀
ふだんの喧騒もない正月三日
家路を急ぐ女性が殴り殺された
警察からの電話
「聞いてすぐ米兵と思った」と夫
母親の手料理を楽しみにしていた
家族のうえに突然ふりかかった 死
原子力空母の母港化に反対する「7・9首都圏大集会」
殺された女性の夫が壇上に立った
日本人ならあんなひどいことはしない
遺体を見たとき顔はめちゃくちゃでした
ろっ骨が6本折れ 内臓は破壊されていた
犯人は米兵です 人を徹底的に殺す
子どもも女性も容赦なく殺す訓練を受けている
3万人の参加者は息を飲んでいた
犯人は米空母キティホークの上等水兵22歳
法定で防犯ビデオに写った殺害現場の様子が再生され
女性の「助けて 助けて やめて」と叫ぶ声が流された
犯人は殴り続けたのです
顔を足でふみつけ 馬乗りになって顔面を殴りつけ
息の根が止まるまで
法定で息の根が止まる声まで聞きました
どんなに怖かったか 苦しかったか 生き延びたかったか
そういう気持ちを思うと恨みを晴らしたい
本当にかたきをとりたい気持ちです
ベトナム戦争で米軍は
兵士の恐怖感をなくし ためらわずに殺すため
オカルトや猟奇映画をくりかえし観せた
そして兵士は
自分と家族の安全を神に祈り
ベトナムの人たちを殺していたのだ
そしていまもアフガンでイラクでレバノンで
アメリカの「正義」のための
殺りくがつづいている
どんよりとした空の下
波間に漂うのは腐りきったアメリカの汚物か
人間の顔をした狂気が
くらしのなかにはびこり
きょうもどこかで
息の根の止まる声がしている
(「しんぶん赤旗」7・10付参照)
「法定で息の根が止まる声まで聞きました」という「殺された女性の夫」の証言に愕然とします。「子どもも女性も容赦なく殺す訓練を受けている」「米兵」が「自分と家族の安全」だけは「神に祈」る姿に軍隊の本質を見る思いもします。あるいはアメリカの本質なのかもしれません。それを作者は「波間に漂うのは腐りきったアメリカの汚物」と表現しています。「人間の顔をした狂気」をどうしたら止められるか、考えさせられた作品です。
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