きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2006.9.16 群馬県榛東村「現代詩資料館・榛名まほろば」にて |
2006.10.28(土)
今日は一日、家族デーでした。庭木の手入れとキッチンワゴンの改造。庭木は半年ぶりかな? 剪定鋏の扱いは慣れましたけど、キツイ作業です。普段、箸より重い物は持ったことがないので(^^; 指に相当負担が掛かったようです。煙草を吸おうとしても指が震えて掴めませんでした。でも伸び放題だった庭木はスッキリと纏まりましたけどね。
それが終わってキッチンワゴンの改造。捨てようと思っていたワゴンの足を嫁さんが短くしていました。聞くとプリンター用のワゴンに改造したいとのこと。普段はテーブルの下に入れておいて、必要なときに引っ張り出して使うとのことでした。先日買った卓上電動ドリルで木ネジ用の穴を開けてやりました。卓上電動ドリルを買ったときは、口にこそ出していませんでしたが「また道具に凝って!」という目付きでした。これで共犯だな。
しかし、そのあとが辛かったですね。長い木ネジをドライバーで締め込んで…。また、指が! キーボードを打つ指が震えています。日頃、いかに何もしていないかが露呈してしまいました。書斎に籠もって本ばかり読んでいたのでは、確かに身体に悪い…。たまには身体を使うこともしないといけないようです。
○詩誌『烈風圏』第二期10号 |
2006.9.30 栃木県下都賀郡藤岡町 本郷武夫氏方・烈風圏の会発行 非売品 |
<目次>
駅/豆の詩 水無月ようこ 3 ねむり姫 石神かよ子 8
古澤履物店 十 古沢克元 11 白川郷 高津朝子 14
詩でコミニュケーション 金敷善由 17 キリギリスも 三本木昇 18
果て 瀧葉子 20 軍国少年の同窓会 須永敏之 23
食卓にて 金子一癖斎 28 おしゃれ 白沢英子 32
さいかう 山形照美 34 返信ノート 本郷武夫 57
遠い海 松本ミチ子 38 変身 立原エツ子 40
丘の上のライブラリー 出井栄 42 臼(二) 深津朝雄 44
Milk 山形照美 47 ゴッホのひまわり たのしずえ 48
小さな/すれちがい 坂本久子 50 明滅する花とは 金敷善由 54
遠い日 都留さちこ 56 過ぎてしまえば 小久保吉雄 58
視線死線 柳沢幸雄 60 葦の中にて/沼にて 本郷武夫 63
あとがき 66
駅/水無月ようこ
ふるさとの駅をあとにする
ゆるやかな速度に身を委ね
車窓枠のフィルムに
見慣れた風景を焼きつけた
初めての帰省は
のろい走りがもどかしくて
高鳴る鼓動が
ギギィと音をたて木戸改札を出る
あの日も 今日も
売店のおばちゃんの笑額があった
どこの誰が出かけ
いつ帰ってくるか
おばちゃんはよく知っていて
わたしは会いたい父母がいた
母が包んでくれた
帰省時よりも増えた荷物を
自転車に乗せると先回りして
黙って切符を
ポケットに押し込んでいく
それが父の見送り方だった
古びた駅舎は立て替えられ
自動改札を抜けると
売店はキヨスク
駅前広場の樫の樹は
樹の株だけが残され
ベンチ代わりに女の子たちが
携帯メールを交わしている
おばちゃんも両親もいないのに
何しに来たのかと訊かれれば
ここはふるさと
わたしのふるさと
駅は もうひとつの家だ
と 応えよう
最終連の「駅は もうひとつの家だ」というフレーズが印象的で、佳い詩語だと思います。それほど馴染む「駅」は、転居を繰り返した私などには実感がありませんけど、長年住み続けた地を持つ詩人には自然と出てくる言葉なのかもしれません。しかし、そこに気付く人は少ないと言えるでしょう。少なくとも私は初めて見ました。
「父」の人間性もよく出ていると云えましょう。まるで映画の一齣のようです。「見慣れた風景」の描き方も卓越しています。観察眼の鋭い詩人ならではの、過去、現在の時間の処理の仕方で、この面でも優れた作品だと思いました。
○文芸誌『獣神』30号 |
2006.10.24 埼玉県所沢市 伊藤雄一郎氏編集責任 1000円 |
<目次>
小説
甲虫節/通 雅彦 4 断絶(後編)/伊藤雄一郎 30
エッセイ
石見のや/野田悦基 94. パブ考/ページ・剛子 111
中国からの引上げの思い出/澤田よし子 121 銀次郎の日記/青江由紀夫 128
短詩特集
一行詩/たむらのぶゆき 148 二行詩「四季の栞」/渡辺 洋 149
四行詩「蝶と遠雷」抄/大重徳洋 152
30号特別企画
エッセイ
澤田賢二の思い出/澤田祥子 154 澤田賢二さんのこと/野田悦基 157
やさしかった澤田賢二氏を偲んで/青江由起夫 159『獣神』以前のこと/通 雅彦 160
牽牛・織姫のように/高久清美 162 最後の提言/伊藤雄一郎 165
総目次 創刊から29号まで 167
後書き 174 カット●白石陽子
四行詩「蝶と遠雷」抄/大重徳洋
谷地へ
ガンベルトを巻く手つきで
ウエストポーチを装着して 今日も出かける
私は狩人 だが銃は持たない 網も胴乱も
腰には双眼鏡とルーペ そして小さな図鑑
距離
私の接近を鳥は拒む
いま水辺に立つアオサギも
片脚をゆっくり持ち上げながら
私との距離を 注意深く測っている
ウラギンシジミ
銀白の大切な衣裳が傷みはしないか
そんなに大はしゃぎして飛びまわっては
羽をそろえて テーブルマナーはいいけれど
おいおい そいつはミミズの死骸だぞ
カヤキリ
キリギリスの仲間なら
節回しというものがあるだろうに
グラインダーに金属棒を当てた絶叫
深夜まで残業がつづく草むらの町工場
視線
気の毒だが また見つけてしまった
葦の茎に両脚を突っ張り 首を反らして
うまく紛れたつもりのヨシゴイなのだが
真剣な目つきがいけない こちらをうかがうその視線が
カマドウマ
雨水がたまった軒下のバケツのなかで
溺死しているカマドウマ
羽を棄てて得た自慢の跳躍が災い
夜中に しかも雨だというのに いつものジャンプで
イラガ
ちょっと腕が触れただけで
烈しい痛みを見舞うイラガの毛虫
私の過去の草むらにも イラガは潜んでいて
うっかり触れると 慙愧と悔恨が電流のように胸を走るのだ
虫もいろいろ
鳴く虫ならばオペラ風に朗々とやる方がいい
それが そうとばかりはいえないと気づいた
抹香くさい音色で 神妙に鉦をたたくカネクタキ
しんみりとした音色にこそ うっとり聞き入る虫もいるのだ
カマキリの卵
山椒の木にカマキリが産みつけた卵
葉を落とした枝で陽を浴びている卵鞘
つやつやしたカルメラ
キューピッドのふぐり
今号は「30号特別企画」になっていました。「総目次」を見ると創刊は1978年、26年前です。初期は季刊だったようですが、途中から年刊になった由、しかし続けることに意義があると私は思います。今後のますますのご発展を祈念しています。
紹介した作品は四行詩で、うまく纏まっていると思います。最初の「谷地へ」でタイトルの「蝶と遠雷」の意味が判り、あとはスーッと入っていけました。「私は狩人 だが銃は持たない 網も胴乱も」、「グラインダーに金属棒を当てた絶叫/深夜まで残業がつづく草むらの町工場」、「つやつやしたカルメラ/キューピッドのふぐり」などのフレーズに魅了されました。
○堀諭氏詩集『ぶる〜★の〜と』 ポエム・ポシェット20 |
2006.10.20 大阪市北区 竹林館刊 800円+税 |
<目次>
ぶる〜★の〜とT
青のフィールド 10 緑の小さな草原 11
光る水面 12 ふくらむもの 13
井の中の蛙(かわず) 14 未知の世界T 15
未知の世界U 16 未知の世界V 17
真っ暗な闇でも 18 情があれば‥ 19
やっと…! 20 終わりのない旅へ 21
これから 22 白い頁に 23
憧憬 24 水底に 25
朝はけだるく 26 忘れもののメモ 27
こともなげな爽やかさ 28 後姿 29
原初のこころ 30 一声鳴いて 31
光を待って 32 それから 33
アメイジング イメージング 34 いさぎよいということ 35
再発を期す 36 せんちめんたる・じゃーにー 37
岩に座して 38 匙加減 39
劣勢キャストの夢 40 無駄遣いの浪費癖の果てに 41
醜なる極地への旅 42 蘇生想念 43
またたく熱き灯り 44
ぶる〜★の〜とU
雨が降っている 48 下手な技術士 49
午前10時の曲 50 単純なデザイン 51
瞳の奥に 52 ひたむきに 53
幻想喫茶店 54 微笑夢大阪名物喫茶 55
果かない 突っ張り出っ張りバンド 56 どんぶり勘定描画 57
微かに輝く調ベ 58 午前のうた 59
豪勢だね 60 小雨の中のメロディー 61
和のレッスン 62 固唾(かたず)を呑んで63
見知らずな欲求 64 大和流(やまとりゅう)小プラン 65
再びの径 66 鮮明イメージ 67
ぶる〜★の〜とV
風の中の交信 70 気付かなかった・知らなかったこと 71
シオカラトンボが友になる 72 風車(かざぐるま)舞う 73
カンナの花咲いて 74 6月7月の爽やかウタ 75
ここ日本では 76 風薫る 78
ロマ人(びと)の生に寄りそって 80
「風合い
抜群!」のことばたち 左子真由美 82 あとがき 85
絵・堀 諭 装幀・左子真由美
終わりのない旅へ
そこから始まるのだ
そんな簡単なことなのに
さっさっさと仕上げて…
ハイ…出来上がり!
それで満足していた
昨日が 恥ずかしく
面映い
タイトルの「ぶる〜★の〜と」とは著者が詩を書きつけていたノートのことのようです。短詩が多く、ほとんどが1頁に収まっていました。紹介した作品は私も「面映」く感じました。確かに「さっさっさと仕上げて…/ ハイ…出来上がり!」と「それで満足していた」ことが多かったですね。それらをやっつけ仕事≠ニ嘯いていましたけど、本当は「そこから始まる」ものだったろうと、今なら思います。「そんな簡単なことなのに」、それに気付かなかった「昨日が 恥ずかし」い。簡潔な言葉の中に人生の深い意味を感じさせる作品であり詩集だと思いました。
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