きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2006.10.22 山梨県立美術館




2006.11.5(日)


 ゆっくり仙台市内を観光して帰ろうと思いました。その前に新幹線の指定を取らなくちゃと「みどりの窓口」へ行ってビックリ。午後の便は20時過ぎまで満席とのこと。20時過ぎの電車では今夜中に帰宅できません。そこでようやく3連休の最終日だったことに気付きました。あちゃぁー。取れるのは午前11時台のみ。泣く泣く11時40分の便で帰ってきました。もちろん市内観光なし。お土産を買ったり喫茶店で時間をつぶして過ごしました。
 退職して半年経って、平日と休日の区別もつかなくなり、勤労者の生活パターンが判らなくなってきたようです。今度は帰りの切符もちゃんと買っておこう…。

 帰宅は15時過ぎ。お陰で雑務が捗りました。写真の整理をして、メールのチェックをして、いただいた本も少しは読めました。いつもなら夜中に帰宅して、そのまま寝るだけですけど、なんか儲かった感じです。ま、それはそれで良しとするか!



詩誌『白亜紀』126号
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2006.10.1 茨城県水戸市
星野徹氏方・白亜紀の会発行 800円

<目次>
●エッセイ
武子和幸 渡辺めぐみ詩集『光の果て』覚書 22
溝呂木邦江 渡辺めぐみ詩集『光の果て』 24
鈴木有美子 『モルタウから・山振まで』に見る空間の描き方 26
真崎節 詩集『モルデウから山振まで』を読んで 28
近藤由紀子 詩を書き始めた頃と現在と 30
永井力 <農>から詩的根拠へ 56
太田雅孝 開かれた形而上詩へ−現代詩文庫『星野徹詩集』 60
●作品
渡辺めぐみ*白 2             斉藤貢*常夏 4
北岡淳子*宴の宵に 6           真崎節*光を引用する路地の契約 8
広沢恵美子*根っこ 10           太田雅孝*橋 12
宇野雅詮*イマージュ 14          橋浦洋志*島 16
鈴木有美子*隣家の物置の中には 18     鈴木満*ラダック 20
大島邦行*お!図主 32           平井燦*帰郷 34
黒羽由紀子*南無、身を笛とも太鼓とも 36  網谷厚子*わだつみ 38
石島久夫*器 40              溝呂木邦江*YOU 42
近藤由紀子*齧る人になって 44       永井力*公園 46
岡野絵里子*押しボタン式、ではない 48   武子和幸*いま君は…… 50
硲杏子*古地図 52             星野徹*余響 54
編集後記 64
●装画 立見榮男 貝



 帰郷*平井燦

いつの間にか平坦な道を選んで歩いていた
背丈の低い不安が影のように
行く手をふさぎ
ふりむくと佗しさに似た薄い壁が
通り過ぎるのを感じた

崖下を翼をひろげた鳥が流される
遠い夏
くびきを外された馬が
斜面に繋がれたまま
淋しさをまともに受けている

旧屋敷で誰かが話している
広い庭に積み上げられた黄ばんだ光景
村は 遅い午後にとまどっている
公孫樹のつつしみ深い季節
古い写真帳の中を 重い靴音が通り過ぎる

 勇んで故郷を出たものの、今は「いつの間にか平坦な道を選んで歩いてい」ることに気付く。高く飛翔を夢見ていたものの、今は「崖下を翼をひろげ」て「流され」ている。その挙句の「帰郷」は「黄ばんだ光景」の中で「村は 遅い午後にとまどっている」ばかりだ。
 そんな風に読み取ってみましたが、不思議に悲壮感はありません。「背丈の低い不安」や「公孫樹のつつしみ深い季節」などの詩語が激しさを伴っていないからではないかと思います。精神の安定を取り戻したら、また現実の喧騒へ戻って行く、そんな意識さえ感じられます。短く、凝縮された佳品と思いました。



個人誌『せおん』4号
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2006.11.1 愛媛県今治市
柳原省三氏発行 非売品

<目次>
来島海峡大橋にて 2  ビューティフル・マインド 5
見えない時間 8    狸とカラスと猪 11
あとがき 14
表紙写真:来島海峡大橋の夕刻



 狸とカラスと猪

ぼくは肥満体質だ
ビールを飲むとすぐ太る
健康と趣味のために
船員退職後は農業を始めた
子供のころ父母に連れられ
慣れ親しんだ畑である
農業で食えなくなった後
すっかり荒地になってしまっていた
一町歩に余る面積なのだが
ほとんどは段々畑で山野に戻り
狸と猪の棲家になっている
人家の近くは苦情が出るので
迷惑にならない程度に
草や雑木を刈り込んでいた
そんな一画を開墾している
農作業や山仕事が
大好きだった二男は突然死に
残った長男はかなり重い障害を持つ
開墾しても維持できる公算はないが
ぼくたち夫婦の足腰の立つ間
将来に夢があるかのように耕そうと思う
先のことは誰にも分からない
分からないことは考えないのが正しい
夢は今を生きるためだけに存在するのだ

わが家の畑は豊かに甦りつつある
作物を収穫するのは妻の役目だが
狸とカラスと猪がライバルになってきた

 私も「退職」したばかりだからか感じるのですが、「先のことは誰にも分からない/分からないことは考えないのが正しい」と思います。餓えない程度の金は必要ですけど、「夢は今を生きるためだけに存在するのだ」とも感じます。
 「一町歩に余る面積」には及びませんが80坪ほどの畑を「健康と趣味のために」見様見真似で耕しているところも似ています。「足腰の立つ間/将来に夢があるかのように耕そうと思う」というフレーズにも共感しました。



隔月刊詩誌『石の森』136号
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2006.11.1 大阪府交野市
交野が原ポエムKの会・金堀則夫氏発行 非売品

<目次>
真夜中の/四方彩瑛 1             5番目のアオイソラ/佐藤 梓 2
ブラックジャック/美濃千鶴 3         タッチのスキマ/山田春香 5
怠け狩り/山田春香 5             もじかくれ/山田春香 6
めぐる/上野 彩 6              さよならのかわりに/夏山なおみ 7
いと高き栄光/大薮直美 8           硝子の心/大薮直美 8
波紋/高石晴香 9               風向とわたしたちの狂気の時代/西岡彩乃 10
清瀧瀑布/金堀則夫 11
<<交野が原通信>>第二五〇号 12         石の声 13
あとがき 15



 5番目のアオイソラ/佐藤 梓

彼女は何もかも分類したがる
イヌもネコもビンボーもカネモチも
ヨロコビもカナシミもカコもミライも
彼女の偏見で
分類して無理矢理
分類箱に押し込めて
満足そうに
上から見下ろしてくる
そんな傲慢に耐え切れなくて
私は逃げた
彼女のモノサシで測れる物じゃないから

彼女が思い込むワタシは
彼女が分類するワタシは
なんてまあ間違いだらけ
彼女の与えてくる餌も
「アナタノタメヨ」と言いながら
私を殺す
毒々しいセイギが満載
決して私を見ることのできない彼女
彼女の分類したワタシしか見れない彼女
彼女の中でワタシはいつまでも弱く
彼女の用意した分類箱は
私にとても狭く
息苦しい
アイジョウとタダシサで囲まれた狭い箱
彼女の押し付けてくる狭い狭い世界
ガラス越しの小さく四角い空
ある日とうとう飛び出した
分類箱を逃げ出した
思えば彼女も可哀想な人
最後まで私を理解できなかった
何もかも四角く分類した彼女の世界
分類することでしか安心できなかったのね
可哀想で弱い女

カノジョの箱から逃げたという青い蝶は
そうカノジョを分類して、笑った

 「カノジョ」と「ワタシ」の関係は母娘かと思ったら「青い蝶」だったんですね。その上「そうカノジョを分類して、笑った」のですから、これは傑作。人間の性癖への見事な「笑」いだと思います。
 もともと「分類」は頭の中の整理のために始まったものだと思いますが、いつの間にか「モノサシで測」るためのものになったようです。当初の目的が忘れられて、あるいは意図的に改竄されていく良い例と云えるでしょう。そんなところも上手く突いた佳品だと思いました。



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