きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2006.10.22 山梨県立美術館




2006.11.6(月)


 ネットで注文した本箱が到着しました。幅1500mm×高さ900mm×奥行170mmが2本組で9800円。本来は上下2段で使うようですが、背中合わせにして置きました。さっそく山積みになっている詩誌を整理。過去のダンボールに入れた本の収納は無理ですから、当面、眼に見えている分をあいうえお順で収めました。もちろん1日で終わるわけがなく、1週間でも2週間でも掛けようと思っています。
 これもすぐに一杯になるだろうなぁ。次はいよいよ書庫の設置です。書庫が出来れば実家に置いてあるダンボール箱も整理できるかなぁ。ま、やれるところまでやるしかありませんね。



詩誌『青芽』543号
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2006.11.5 北海道旭川市
青い芽文芸社・富田正一氏発行 1300円

<目次>
◇「青芽」とともに六十年/富田正一 48
◇青芽の詩人達/文梨政幸 64
作品
森に舞う木の葉/富田正一 15        生口の賦/浅田 隆 18
原の城(石蕗)/村上抒子 20         ひび・コスモス/宮沢 一 22
燦々と/芦口順一 24            ふりかえれば/佐藤 武 26
染み/森内 伝 28             ふたり/本田初美 30
アーキテクチャー/四釜正子 32       雷鳴/山田郁子 34
Sさんの人形/吉村 瞳 36         るりるり/武田典子 38
坊ちゃん・風の方程式/荻野久子 40     因数分解・アニパーサリー/佐藤潤子 44
田舎/堂端英子 46
詩見・時言・私見
村田耕作 106 浅田 隆 107 小林 実 108 村上抒子 109
佐藤 武 110 本田初美 112 武田典子 113 森内 伝 114
宮沢 一 115 荻野久子 116 佐藤潤子 117
作品
茶髪の少年・危機・西野 花野・風が吹く/村田耕作 68
いろ媛が渡せない/菅原みえ子 72      冬の木/横田洋子 74
雪虫/小森幸子 76             振りむく光景は長閑なり/倉橋 収 78
骨のはなし/膳法輝美 80          真夏の雲・小雨/千秋 薫 82
途半ばの交差点で/岩渕芳晴 84       流れ/沓澤章俊 86
あなた(水銀の体温計)へ・眼差し/志々見久美子 88
ある旅たち・老母入院/現 天夫 93     百円玉ショップ/オカダシゲル 96
光のある村/仲筋哲夫 98          季節おくれの虚無/小林実 100
少年の眼/能條伸樹 102
.          この夏の断片/文梨政幸 104
詩誌「青芽」創刊60周年記念詩祭報告記/四釜正子 118
連載・青芽群像再見・第三回/冬城展生 134
「青芽」60年の小史 142
「青芽」六十年を支えた同人たち 152
会友の詩
佐々木利夫 127 斉成実介 128 鈴木節子 129 疋田栄子 130
平田ふみ 131 あずまみさ 132 楠原恵美 133
目で見るメモワール 2
詩祭出席者一覧表 126 青芽プロムナード 140
告知 67・117・160・161 寄贈新刊紹介 160 寄贈誌深謝 161
「青芽」発行の推移 162
青い芽文芸社既刊図書 163
編集後記 164
表紙装帳・文梨政幸
扉・写真・大河原誠(名寄市写真家)



 ふりかえれば/佐藤 武

生まれ故郷は最北のクッチャロ湖畔
母親のアカギレ疼く指間に 沈んでいく夕陽
開拓農民の涙のようにさざ波が濡れてふるえ

戦争が激しくなり父は室蘭の飛行場作りに徴用された
長兄は中国東北部の激戦地へ
次兄は軍港 大湊で出撃前の猛訓練
中二の私は食糧増産 米作りのため多寄へ勤労奉仕

家には男が一人もいなくなった
母親は好きなお茶を断って家族の無事を祈り続けた

あれから六十年。父母も兄も死んでしまった
盆花が咲く墓を秋風が吹き抜ける

ふりかえってくれ わしは、ここじゃ
父親の手に 今も いぶっている焼夷弾のかけら
母親はコスモスの花になって手をふる
買い出しに出かけた時のもんぺ姿 無言の母
今 語りかけたい言葉を手さぐる私
シベリアに抑留された長兄は骨になって帰還した
樫の精神棒で上官に殴られるために出征したような次兄
町内会長をしていた時 豪雪で閉ざされた
一人暮らしのおばあちゃんの家の窓の除雪奉仕中
突然 心筋梗塞で星になった やさしさを抱いたまま
「武ちゃんは九条を残すために駅前に立っているのかい」
次兄は風になって耳元を過ぎる

ふりかえれば悲しいことばかり
ふりかえれば耐えてきたことばかり

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 書き残したい作品

 高齢になると詩を書くのは遺言を書く思いがする。
 若い頃は 読む人に感銘を与える作品を書こうとか新しいスタイルで書こうとか試験管をふるって興奮薬をつくるような野心にかられていた。
 七十四才になった。現在は今自分が一番書きたいことを書き残しておきたい。人にほめられなくていい。自分でなければ書き残せない作品を個性を内蔵した内容手法で素直にかきたい。と思うようになった。
 戦争が終わってうれしかったのは平和がやってきたこと。命拾いをしたこと。思想 信条 表現 の自由を獲得したこと。基本的人権を保障した憲法ができたこと。
 私は再び戦争にのめり込む危険を犯す改憲に反対だ。平和があっての個人の幸福。
 私は「九条の会詩人の捨」に入会した。
 今の時期に書き残したいのは反戦・非核・平和を訴える作品。

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 今号は創刊60周年記念特集号です。敗戦後1年も経たないうちの1946年7月創刊ですから、おそらく全国でも最も早い時期の刊行だったろうと思います。それから延々と60年、休まずに続けてこられたご努力に敬意を表します。
 特集号だからと思いますが、今号では詩作品とエッセイが対になって載せられていました。紹介したのはそのうちの一作品です。自伝風の詩も良いのですがエッセイも佳いですね。「戦争が終わってうれしかったのは平和がやってきたこと。命拾いをしたこと。思想 信条 表現 の自由を獲得したこと。基本的人権を保障した憲法ができたこと。」と書く作者の気持がよく伝わってきます。詩の中の「樫の精神棒で上官に殴られるために出征したような次兄」というフレーズには、人権を無視された時代の人々の憤りを感じます。最終連の「ふりかえれば悲しいことばかり/ふりかえれば耐えてきたことばかり」という詩語とともに時代の貴重な証言だと思いました。



隔月刊詩誌
サロン・デ・ポエート264号
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2006.11.25 名古屋市名東区
中部詩人サロン編集・伊藤康子氏発行 300円

<目次>
作品
響き合う会話…足立すみ子…4        初秋…横井光枝…6
旅の途中…みくちけんすけ…7        横浜の友−渡辺悦男君に…阿部堅磐…8
無言館…荒井幸子…11            シャーデン・フロイダ…小林 聖…12
愛のかたち…甲斐久子…13          意味の森で…野老比左子…14
窓…三尾みつ子…16             早起きは…伊藤康子…17
歩く・見る・座る…稲葉忠行…18       血の通ったこの手は…及川 純…21
散文
追悼・福田万里子さんの思い出…阿部堅磐…22 花逢瀬日記「花の会」に出席して…野老比左子…23
カキワ君の文学的回想(4)(5)…阿部堅磐…24  重陽日記ちょうようにっき…野老比左子…26
古都日記…野老比左子…27          同人閑話…諸家…28
詩話会レポート…31
受贈誌・詩集、サロン消息、編集後記     表紙・目次カット…甲斐久子



 初秋/横井光枝

私は川の土手を歩いている
遠くで救急車のサイレンが鳴っている

さざ波を立てながら流れる川の上を
一羽の白鷺が横切っていく

近くの中学校からコーラスが聞こえ
水を抜かれた校庭の隅のプールには
子供たちの夏の喚声が枯葉数枚と共に
風に吹かれて転がっている

熟れた夏の陽はいつのまにか姿を消し
秋の名を奏でた風が私の上を通り過ぎる

ゆるやかな晩夏から初秋への移行
このような秋を私は何十度織ったであろう

この静かな田園地帯に住みついて
私のカレンダーの余白は日毎に
色のないもので塗りつぶされていく

それにしても
何というあてもない寂しさだろう

 最終連の「それにしても/何というあてもない寂しさだろう」というフレーズが印象深い作品です。「川の土手を歩いている」のは散歩でしょうか。「私のカレンダーの余白は日毎に/色のないもので塗りつぶされていく」とありますから、虚無感にさいなまれた日々を送っているのかもしれません。詩作品ですから現実の生活とは関係なく読むべきでしょうが、そんな思いに囚われました。「救急車のサイレン」、「近くの中学校からコーラス」という、どちらかと言うと大きな音が出てくるのも作中人物の心境と対照的で、作品の効果を上げていると思いました。



詩誌『掌』133号
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2006.11.1 横浜市青葉区
志崎純氏編集・掌詩人グループ発行 非売品

<目次>
エッセイ
外勤教員…国広 剛…10           雑談…福原恒雄…10
台風と豪雨…石川 敦…11

芒…福原恒雄…2              ピカソ(他二編)…掘井 勉…4
夏の喪…国広 剛…6            平成の信長(他一編)…半澤 昇…8
ケータイ…薄田久子…12           蟻…石川 敦…14
鶴…中村雅勇…16              桜協奏曲…志崎 純…19
編集後記                  表紙題字 長谷川幸子



 芒/福原恒雄

立ち止まれない手足についてできましたらお返事ください

しごとに閉じこめられている時間からやっと搾った休憩に
制服の釦とチャックにも風を入れ
遠くほそい空の蒼さに近寄ると
缶コーヒーのなかのぜいたくなため息が躍って
憧憬は
目のなかに横になったまま底無しです

明るさに慣れて窓からの眺めが見つけたのだが
風を分けて抱きしめたい手を
抑える

なつかしいきせつをとんで来たらしいが
風はいたずら好き
うたうようにぬるい節回しが聞こえてくるのです

それにしてもきせつの狂いを隠し持っているような根っこに
問うと
明日もあるしなと
その鷹揚な応えを掴もうとすると
伸びた切っ先は

日があたり影が過ぎる隠れ住まいを邪魔するなと匂うのです

せかいのしなやかな血を無差別に殺いでいく
ことばなんてとうに壊した均してしまったと
つむじの風さえ吹くが
立ち止まれない手足にも
とばされない芒はとばされていないときせつを捲る

だから芒が撫でる風につきましてもできましたらお返事を

 「お返事ください」「お返事を」と問いかけるフレーズが面白い作品です。問うのは「制服の釦とチャックにも風を入れ」る人で、問われるのは「芒」なのでしょう。その芒の「きせつの狂いを隠し持っているような根っこ」や「伸びた切っ先」に問うというのは何の喩か。おそらく「ことばなんてとうに壊した均してしまった」私たちの世界であり、私たちそのものではないかと思います。「つむじの風」に吹かれて「立ち止まれない手足」を持つ芒は、私たちの姿そのものであるように受け止めました。散文では描けない世界を書く、まさに詩そのものと言って良い作品だと思いました。



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