きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2006.10.22 山梨県立美術館




2006.11.8(水)


 暮に出版する予定の第6詩集の再校が来ました。ついでに発送代行もやってあげるよと書いてあったので、自分で出す場合とどちらが安いか調べたら、ほとんど変わりませんでした。発送に時間が費やされることを考えると、これは頼むべきだなと思って依頼しました。全国の詩人名簿が添えられていましたから、お名前をチェックしていったら、何と550人になってしまいました。その名簿には載っていない人もいますから、私の手元に来る予定の残り150部はすぐに無くなってしまいそうです。前回の詩集も700部を作ってもらって、5年ほどでほとんど無くなりましたが、今回は1年ももちそうもありません。ま、それ以外に400部を書店に出すと言っていますけど、どうせ売れっこないからほとんどを買い戻しするようでしょう。それで何とか次の出版まで繋げられるかなと思っています。



石原滝子氏著『焔の道』
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1985.7.10 大阪市北区 創元社刊 1500円

<目次>
もどり道…三                春の雪…二五
三〇一号室…四二              罪業深き悪念…六七
焔の色…八八                使命の道…一一九
台風の夜…一三八              かえり花…一七六
ニューヨークの冬…一九六          手探りの路…二二〇
梅の丘…二三七               雪の旅…三五七
氷の道…二九四
あとがき…三一九
題字:奥田紋左ヱ門 装画:奥村幸ヱ門 装丁:菊池速雄



 1979年から約1年間紀州新聞に連載された小説で、月刊誌『旅の情報』記者・美野子が主人公です。米国留学している娘を持つ美野子に、20年前から心を寄せる同級生たち、窯元たちが登場するロマンと愛憎の物語と言ってよいでしょうか、一気に最後まで読み通した作品です。主な舞台は和歌山県南部(みなべ)、大阪府千早赤阪、兵庫県有馬、そしてニューヨーク。陶芸の里は信楽、古曽部、丹波立杭、小鹿田、小石原、唐津、伊万里、有田、平戸と変化に富んでいて、地図を展げて楽しみました。もう30年近く前に書かれた長編小説ですが、月刊誌や陶磁というお膳立てもあってまったく古さを感じさせません。遺跡を開発しての巨大プロジェクト、それに絡むゼネコンや役場の汚職、殺人事件などは現在でもそのまま当て嵌まるもので、著者の視線の確かさを感じました。

 唯一古いと思ったのはタバコです。当時はレストランは当り前、電車の中も当然という時代背景には私もその頃を思い出してしまいました。愛煙家の私が言うのもヘンですけど、昔の男は何処でもいつでも煙草を吸っていたなぁ。日本の企業が米国の支社を続々と設立した時代でもあり、エコノミックアニマルという言葉も今は懐かしいですね。

 美野子をはじめ登場人物の人間性が生き生きと描かれています。連載を終えてから4年間、さらに推敲したようですから、おそらく連載時よりも格段にレベルが上がったろうと思います。もう絶版になっている可能性が高いと思われますけど、ぜひお読みいただきたい1冊です。



石原滝子氏著『銀河の結晶』
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2006.10.30 川崎市麻生区
てらいんく刊 1400円+税

<目次>
銀河の結晶 3
暮れなずむ刻 last love 167
あとがき 277



 こちらは新刊の中篇小説が2編収められて小説集です。「銀河の結晶」は、拙HPでも紹介している総合文芸誌『まほろば』に7年間に渡って連載された「妖」の集大成です。帯の文章が内容を良く伝えていますので、それを紹介しておきましょう。
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 陶工の娘として生まれた清水真貴は、男友達から、彼の先輩にあたる陶工の卵勝部を紹介される。やがて勝部との交流のうちに、虹色に輝く曜変天目復活をめざすべく窯焚きにいそしむ姿に惹かれていく。陶芸の世界を舞台に、紅蓮の炎に包まれて燃え上がる女と男の妖しい業。
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 著者自身も陶芸に造詣が深いようですが、説明ではなく文学としてきちんと処理しているところはさすがです。真貴の心理の綾は、さすがに女性だけあって納得させるものがありました。登場人物の人間の描き方も抜群です。先の「焔の道」とともに陶磁2部作とも呼べる小説だと思いました。

 後半は「暮れなずむ刻 last love」には、実は驚いています。60を過ぎた雑誌記者の蔦野恵里子と58歳の売れっ子作家・立花巧の道ならぬ恋が読者をぐんぐんと惹きつけます。精神的な愛だけではなくセックス描写も過激ですが、決していやらしくはありません。性は若い時代のものだけでなく、男と女である限りいつまでも続くものだと改めて感じました。
 日本ペンクラブの京都例会も出てきて、何度か行ったことのある私にも懐かしい庭園が描写されていました。雑誌社の編集長は『まほろば』の編集発行者と性格がよく似ており、これには思わずニンマリ。私が知るささやかな小説の裏舞台ですが、これも小説を読む楽しみのひとつです。
 この本は出版されたばかりですから入手しやすいでしょう。ぜひ手に取って読んでみてください。肩は凝りませんけど考えさせられる点が多くあります。



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