きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2006.10.22 山梨県立美術館




2006.11.23(木)


 勤労感謝の日。現職の頃は感謝されているなんて気持は全々持ちませんでしたけど、退職した今は余計に感謝なんて言葉から遠のいていますね(^^; 私が感謝するのは全国の詩人の皆さま。いただいた本を読んで過ごしました。



隔月刊詩誌RIVIERE89号
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2006.11.15 堺市南区 横田英子氏発行 500円

<目次>
マニラの告白(1)見果てぬ夢 蘆野つづみ(4) バラの園 後 恵子(6)
風の鳴咽 泉本真里(8)           夏の終わり(駅への道) ますおかやよい(10)
百万本の彼岸花/初秋 横田英子(12)     失踪届け 平野裕子(14)
初秋 松本 映(16)             永久革命 正岡洋夫(18)
時とそれをとりまくもの 安心院祐一(22)
RlVERE/せせらぎ(24)〜(27)
 永井ますみ/石村勇二/横田英子/河井洋
生きながらえて 石村勇二(28)        好古園にて 藤本 肇(30)
愛と希望の国(1) 河井 洋(32)       雄鶏のはばたき 釣部与志(34)
弥生の昔の物語42 白い蛇 永井ますみ(36)  空の遮断機 戸田和樹(38)
子供とブザー/水底の闇 山下俊子(40)
受贈誌一覧(44)               同人住所録(45)
編集ノート 永井ますみ(46)         表紙の写真・TORU/詩・平野裕子



 マニラの告白(1)/蘆野つづみ

  見果てぬ夢

ラッシュアワーの
白い無言の 皮靴とハイヒールが行く
その傍らの 乾いた土くれの排水溝に
襤褸の身体を 投げ出して 眠る小僧

ふるさとを逃れ ジープにぶら下がり
出てきたマニラの 熱いコンクリート

涙の温もりを忘れ 皮膚の疼きを忘れ
街角の藪を 息を殺して 駆け抜ける

ポケットの 硝子の手作りナイフには
大人の迫害にやりかえす 切れがある
見果てぬ夢を 切り刻む 冴えがある

孤独というさえ 優しすぎる 小僧に
語りかける 僕の存在が 恥ずかしく
屹立する 霞色の壁の前で 佇むだけ

僕は また マニラに来てしまった

     *ジープは小型乗合自動車
           2006・9・25

 「編集ノート」によると、作者は「底辺に暮らす人の取材」でしばらくマニラに出張とのこと。そのことと紹介した作品は関係があるのだと思います。「乾いた土くれの排水溝に/襤褸の身体を 投げ出して 眠る小僧」、「孤独というさえ 優しすぎる 小僧に/語りかける」ために「僕は また マニラに来てしまった」のでしょう。日本ではそんな「小僧」たちのことはあまり知られていないようですし、私もまったく判りません。それを今後どんな詩として読ませてくれるのか、期待した作品です。「僕の存在が 恥ずかしく」とありますので、決して高みに立ったものではないと思います。



文芸誌『北の詩人』50号
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2006.10.5 札幌市豊平区
日下新介氏方事務局・北の詩人会議発行 100円

<目次>
写真/相川敏治 詩エゾニュウ/佐藤 武 1 詩誌・『北の詩人』と私/松元幸一郎 2
土葬/松元幸一郎 3
茂子・8
天女となりて妻逝けり/阿部星道 4     何事もなかった/阿部星道 5
新年に/阿部星道 5
恨み晴らしてくれ/岡本マヤ 6       やめた、やめた!/泉下イチイ 7
うに/泉下イチイ 8            置き土産は?/泉下イチイ 8
検閲コスモゴニア/泉下イチイ 9
エッセイ 食べろテリヤキくん/泉下イチイ 9
夏祭り/たかはたしげる 10         ほとばしる力/たかはたしげる 11
短歌 夏−不穏な動きに−/幸坂美代子 12
八・一五 大通り公園にて/大竹秀子 13   二人の兄/大竹秀子 13
大きな判決<東京裁判を詠う>/日沖晃 15  秋の一日/乾 葉子 17
歌声は やがて/日下新介 18        さらなる地平に向かって/日下新介 19
エッセイ 書くこと読者であること 普及ということ/日下新介 20
仏を観る/かながせ弥生 21         ここに宿りぬ/かながせ弥生 21
花咲く星(神について) かながせ弥生 22   いのちは法。/釋 光信 22
精神力を鍛える/高柳卓美 23        庶民いじめの政治にさよなら/佐藤 武 24
独立独歩/佐藤 武 25           核廃絶/佐藤 武 25
戦前復古/佐藤 武 25           自民党の正体見たり/佐藤 武 26
秋桜/佐藤 武 26             小さな手/佐藤 武 27
俳句・短歌 小高美恵子 27
絆/たかはしちさと 28           熱き八月/たかはしちさと 28
受贈詩集・紹介 佐藤武・日下新介 30    もくじ・あとがき 32



  エゾニュウ/佐藤 武

蝦夷の夏
山裾 林 原野に巨大な白い花が咲く
幌延 豊富の草原農道沿いに
林かと思う大群落がある
セリ科シシウド属エゾニュウ
高さ三メートル 直径六センチの太い茎
直立した上部で枝をわけ
葉柄の下部は袋状
複散形花序も大型な野草だ
大花序四〇から六〇個
蝦夷地の大地がもつ力が噴き上げている
子どもの頭ほどの蕾
大きな白いレースフラワー
陽光がちらちら差し込む林で
パラソルをさす火星人の群れ
蝦夷開拓民だったオラ家では
若芽 若い柄 茎をアク抜きして
ゴマしょうゆあえ 油炒め 煮物にしたっけ
遠い日の影絵の夏に親父の汗を拾う

 紹介した作品は巻頭詩で、「エゾニュウ」の写真が表紙を飾っています。ちょっと見難いかもしれませんね。私も北海道生まれですが、生まれてすぐに福島県に行っています。その後、小学校の3年から4年の1年間だけ芦別で過ごしました。そのときでも「エゾニュウ」は見ていません。しかし「蝦夷地の大地がもつ力が噴き上げている」という比喩はよく判ります。北海道の植物に共通したものと云えましょう。作品は、最後の4行「蝦夷開拓民だったオラ家では/若芽 若い柄 茎をアク抜きして/ゴマしょうゆあえ 油炒め 煮物にしたっけ/遠い日の影絵の夏に親父の汗を拾う」が良く効いていると思います。「蝦夷地の大地がもつ力が噴き上げている」というフレーズと同じ力強さを感じました。



文芸誌『北の詩人』51号
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2006.11.15 札幌市豊平区
日下新介氏方事務局・北の詩人会議発行 100円

<目次>
写真(真っ赤なモミジ)詩・紅葉/佐藤 武 1 秋に想う/八木由美 2
母/八木由美 2
短歌 二題 秋の訪れ・秋深まりて/幸坂美代子 3
意味がわからない/岡田 泉 4       初恋/かながせ弥生 4
想えば……/かながせ弥生 5        心の色は赤十字/岡本マヤ 7
深夜ラジオ/輪島裕美子 8         プラス思考/輪島裕美子 8
あえて七五調「道」/日沖 晃 9      魂粒/泉下イチイ 10
杞憂/泉下イチイ 10            マージョリーの小指/泉下イチイ 12
プラヌラエフィラストロビレーション/泉下イチイ 12
筒の中の少年 1筒の中/倉臼ヒロ 13    書く喜び/松元幸一郎 14
カフェE/松元孝一郎 15          恋/松元幸一郎 16
邪心の柵/釋 光信 17
茂子・9
孫の入学式/阿部星道 18          ギョウザ屋で/阿部星道 18
一瞬のとき/日下新介 19          美しい国のあしたは/日下新介 20
敗戦を知らずに残った人達/大竹秀子 21   安倍首相は戦争好きか/大竹秀子 22
奥村和一〔蟻の兵隊〕/大竹秀子 23     蟻になるまい−映画「蟻の兵隊」を観て詠む/たかはたしげる 24
エッセイ 映画「蟻の兵隊」を観て/高山友子 25
ヘルパーさんの歌/貴島雄二 26       教科書が変わる時/佐藤 武 26
餓死者が出る国で/佐藤 武 27       美しい国日本/たかはし・ちさと 29
イジメ/たかはし・ちさと 30
メールマガジン版「北の詩人」案内 泉下 13  会員詩集(乾葉子)発行案内 25
受贈詩誌・詩集雑感 日下 31        もくじ・あとがき 32



 意味がわからない/岡田 泉

警察官が悪いことして逮捕された
と ニュースを見て
小3の末っ子が
「ケイサツがケイサツにタイホされるって
意味がわからないよ」と言う
「意味がわからない」
近頃の流行語として
子供・若者に幅広い意味で使われているが
確かにその通り、思わず笑った
高校生が友達に母親を殺させた
親がシツケのためと幼児に熱湯かけて殺した
親が 子供にご飯を食べさせないで殺した
死ぬとは思わなかったって
意味がわからない

老人が税金いっぱい取られて
病院代も高くなって病院にいけない
暮らしていけないから生活保護頼んでいるのに
働きなさい 親類から借りなさい
それができないから生活保護頼んでいるんだよ

意味がわからないことだらけだ
学力が世界の中で下がったって騒いでるのに
学校を減らして学費を上げて
お金がないから学校に行けなくて
一〇〇人の中の一人のエリートを育てるって
非才・無才は実直な精神を養えって
そんなんで学力が上がるか マトモな人間が育つのか
意味がわからない

キットミンナニホンゴガワカラナインダネ

 本当に「意味がわからないことだらけ」ですね。そんな日本にしたのは誰か、と考えると、それは我々有権者。ますます「意味がわからな」くなってしまいます。投票者の半分にも満たない票で当選してしまうという小選挙区制の問題はあるけど、それさえも圧倒的な有権者が選んだ政府。ま、そんな日本人をじっくりと見てやろうと思っています。
 作品上では最終連にたった1行だけ置かれたフレーズが成功しています。しかもカタカナですから、これは強烈な印象を与えますね。詩人は「ニホンゴガワカ」るようにするのが仕事かもしれません。



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