きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2006.10.22 山梨県立美術館 |
2006.11.28(火)
外出予定のない一日。終日、いただいた本を読んで過ごしました。
○詩マガジン『PO』123号 |
2006.11.20 大阪市北区 竹林館・水口洋治氏発行 840円 |
<目次>
特集 スペイン
スペイン美術とボードレール 紀行文風に/山田兼士…9
清水幾太郎とスペイン/坂東省次…17
ロルカ――詩と死の源泉/福田知子…24
すべてはこれから−わが国の「ドン・キホーテ」−/世路蛮太郎…31
カルメン幻想/蔭山辰子…36
DON・QUIJOTEのSi,if,moshi/中野忠和…39
スペインからの便り/神田好能…42
不思議の国へ・漆黒の掛け声/堀 諭…44
アルハンブラ(永遠の町)/関 中子…48
踊る木−ベラスケスとゴヤ/三方 克…49
詩
帰郷/村山精二…50 彼岸/美濃千鶴…………52
想い出される/山崎広光…54 めぐりあひて/辻下和美…56
僕的瀝々抄(三)/川中實人…62 キャンプファイヤー/加納由将…64
コーヒー・薔薇・椅子/中野忠和…66 あの頃/長谷川嘉江…76
時計の針/北山りら…77 はな・定年退職・偽善/清沢桂太郎…78
猫の死/牛島富美二…92 幻覚のような・あてのない旅/及川謙二…94
六月のメランコリー・ギャロップでスキップ/蔭山辰子…98
記憶・闇の中を・あんびしゃす/左子真由美…105
僕の夏/水口洋治…109. 夏/おれんじゆう…110
老いたればこそ/神田好能…120. ことばの流れのほとり/梶谷忠大…122
八歳の川沿いの冒険/星乃絵里…128. フランケンシュタイン/左子真由美…129
少年と夏/佐古祐二…130
*
ピロティ 僭越ですが言葉の方のお話を/勝部康平…7
舞台・演劇・シアター 蜷川幸雄氏と語る/河内厚郎…58
ギャラリー探訪 「モネの睡蓮」とコーラ/斉藤明典…60
ビデオ・映像・ぶっちぎり 「ボビー・フイッシャーを探して」/高野信也…61
一編の小説『黒衣の花嫁』コーネル・ウールリッチ/山崎広光…72
一冊の詩集『東京がダンスする時』青山博明/中野忠和…74
エッセイ 続アメリカ黒人詩の流れ24/堀 諭…87
竹林館BOOKS 甦る詩心のために――左子真由美『愛の手帖』/桜樹…90
この詩大好き 金子みすゞに魅せられて/星乃絵里…100
エッセイ 純粋混血民族考/川中實人…102
エッセイ 特別寄稿 祖父との断絶を繋ぐ孫と曾孫/高橋サブロー…112
詩誌寸感 心に響くことば/左子真由美…132
*
▽投稿案内…59△
▽広告掲載案内/会員・誌友・定期購読募集…91△
▽「PO」例会/「PO」ホームページ/詩を朗読する詩人の会「風」例会…104△
▽受領誌一覧…134 執筆者住所一覧…135△
▽編集後記…136△
彼岸/美濃千鶴
霊園墓地というのは
さながら死者のマンションだ
平地は高価だが
急な石段を上る山上の墓地は
安い
じいちゃんの墓は山の中腹より少し下で
無駄なぜいたくはしないが、やや見栄っ張り
という
生前の性格を反映している
荒ぶる魂は死後百日を過ぎて
平安に還るのだとか
それでもたまには
この世まで暴れにおいで
卒塔婆小町だって百年だ
千里を渡るという魂が
十年や二十年
ぶんぶん駆け巡ったって
空は混雑しやしない
悪態ついて
迎えて
あげる
よ
夢枕に立つときはきまって
痩せ衰えた臨終の顔ではなく
丸々と恰幅のよい姿で現れる
死んだ後まで見栄っ張りだ
「じいちゃん」の人間性がよく出ている作品だと思います。その祖父とどういう接し方をしていたか、作中人物の性格もよく現していると云えるでしょう。現代の「彼岸」、現代の「霊園墓地」も上手く表現しています。「卒塔婆小町」は造語かと思ったら、ちゃんと広辞苑に出ていました。能の題名で、死後の小野小町の話と申しておきましょう。その「卒塔婆小町」と懸けた第2連も面白いですね。
今号では拙作「帰郷」も載せていただきました。お礼申し上げます。来月出版予定の拙詩集のタイトルにした作品です。機会のある方はお読みいただけると嬉しいです。
○季刊詩誌『GAIA』18号 |
2006.12.1 大阪府豊中市 上杉輝子氏方・ガイア発行所 500円 |
<目次>
兵士/竹添敦子 (4) いのち/国広博子 (6)
盆踊り/海野清司郎 (8) 遠い日の記憶/上杉輝子 (10)
秋の寸劇・鉄塔/横田英子 (12) 崩れながらも/平野裕子 (14)
枝と枝/立川喜美子 (16) 潮流/熊地 学 (18)
君達か!/猫西一也 (20) 海の花火/春名純子 (22)
七月の電話・手術入院一週間前/水谷なりこ(24) 軍馬/小沼さよ子 (26)
漂泊・秋/中西 衛 (28)
同人住所録 (30) 後記/中西 衛 (31)
秋/中西 衛
静かな静かな朝
洛北の古刹
紅葉した木の葉が音もたてずに落ちる
田には黄金色の輝きが消えて
かん高くひびく
シシオドシの鳴る音
空は高く
モズの声
寺の裏門から若い僧が托鉢に出る
今号の最後を飾る作品です。凛とした「洛北」の雰囲気が伝わってきます。「音もたてずに落ちる」「紅葉した木の葉」に対して「かん高くひびく/シシオドシの鳴る音」と「モズの声」が好対照で、ここは音をうまく遣っているなと思いました。最終連にたった1行置かれた「寺の裏門から若い僧が托鉢に出る」というフレーズも佳いですね。ここで初めて生身の人間が出てきて、この作品を生きたものにしていると思いました。
○詩誌『杭』47号 |
2006.12.1 さいたま市大宮区 廣瀧光氏代表・杭詩文会発行 500円 |
<目次>
■詩■
のぞきからくりのうた/齋藤充江 2 地図もなしで?/平野成信 5
子供用爆弾/大畑善夫 10 八十五歳よ/巴 希多 12
猫との生活雑感/石川和枝 15 留学六年・食指/棚橋民子 18
虹/尾崎花苑 22 季節のなかで/大谷佳子 24
くちなし/山丘桂子 26 イナバウワー/比企 渉 28
クライマックスです/白瀬のぶお 30 肺癌検査/長谷川清一郎 32
北町しましま公園のひまひま猫/二瓶 徹 40 ある一日/池上眞由美 42
犬吠岬/和田 望 44 恋ひ佗ぶ/瀬下正夫 46
積乱雲/伊早坂一 50 風化作用/廣瀧 光 52
曇ったガラス<第5回さいたま市民文芸賞受賞作品> 山丘桂子 56
■エッセイ■
日韓の未来に向けて/河田 宏 34 <たより> 槇 晧志 49
母/郡司乃梨 54
■杭の記■ 廣瀧 光 57 題字・槇 晧志
季節のなかで/大谷佳子
秋の夜長の
眠りにつくまでの ひととき
心を耳におき
家族の寝息を聴いている
時を惜しむかのように
季節を奏でる虫たちの合唱団が
同じ屋根の下に住む 愛するものたちを
夢路に誘ってくれたのだろう
安らかなその寝息は 私のなかで
どこまでも続く 穏やかな海と
繰り返し寄せては返す 波音となり
波の間に間の風うたになる
家族の寝息は 心地よく
疲れた私の一日を癒し
いつしか
虫時雨とともに
私のための
子守唄になっていた
一日の終わり、「眠りにつくまでの ひととき」に「家族の寝息を聴いている」。何とも穏やかで平和な光景です。小さな諍いや衝突があったとしても「同じ屋根の下に住む 愛するものたち」。まるで聖家族のようです。
この一見何でもない視点が大事なのではないでしょうか。こういう平和な時代を次代にも遺したいものです。「私のための/子守唄」がいつまでも続くように願うばかりです。この作品はタイトルも良く効いていると思いました。
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