きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2006.11.04 仙台市内




2006.12.5(火)


 午前9時から妹の嫁ぎ先のおばあさんの告別式。キリスト教ですから葬送式と云うそうです。昨夜と同じく神父に合わせて「主の祈り」と「使徒信条」の唱和、賛美歌合唱と続きました。エレクトーン演奏は妹の長女。昨夜と同じくニューヨーク滞在中の三女のEメールが紹介され、家族ぐるみの葬送式という印象を強くしました。あばあさん、皆から慕われていて、良かったね。

 お骨になったあとは、仏教で云うところの精進落とし。キリスト教徒が多いらしく、誰もお酒なんか呑みません。せいぜいビールで、堪りかねて私は日本酒を注文しました。おばあさんと同居の家族はあまり知りませんが、故人は実は日本酒好きだったのです。私と呑み交わしたこともありました。ここはきちんと日本酒で献杯しないとおばあさんの霊は浮かばれません。
 出てきたのは地酒の「足柄山」4合瓶。しょうがないから一人で呑んでましたけど、おばあさんは喜んでくれたかな。84歳だったからトシに不足はありませんが、私の家系の90歳台に比べるとやっぱり早いなと思います。おばあさん、安らかに…。



季刊文芸同人誌『青娥』121号
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2006.11.25 大分県大分市
河野俊一氏発行 500円

<目次>

秋の夕暮れ/多田祐子 2
秋の山/多田祐子 4
シューマンの四十代/河野俊一 7
随想
僕が日本人であるということ 二、仏教・キリスト教・日本教/笹原邦明 10
「青蛾」三十年記念短期連載 「青蛾」思い出の作品 2/河野俊一 19
青蛾のうごき 24
編集後記 24
 表紙(冬の上野公園・東京都台東区) 写真 河野俊一



 シューマンの四十代/河野俊一

シューマンの四十代を語ろうと思えば
シューマンの三十代を描けば良い
やっとクララと結ばれ
交歓の中に音符が舞った三十代を
そして最後にひとこと
その後彼は
と続ければそれで足りる
シューマンの三十代を描くときには
背後にトロイメライを流せば良い
トロイメライは二十代で
すでにできていたのだから
ものごとには
大切なはざまというものがある
たとえばそれは
シューマンの三十代だ
シューマンの年譜を綴ったあるホームページに
「ライン川へ投信自殺」
という誤字があったが
信じるものさえ
河に流さざるを得なかったのなら
この文字は
残さねばならないだろう
シューマンは
四十六歳で死んだ
四十六歳といえば
俺がそれからも生きるために
眼鏡を買い替えた歳だ
四十六歳は
それほどまで
晩年か

 「シューマン」はひとつの喩で、誰であっても「四十代を語ろうと思えば」「三十代を描けば良」く、「三十代を描くときには」「二十代」の作品なり行動を描けば良い、と云っているように思います。人間は過去によって成り立っているということを改めて気付かされますね。もちろん社会も国家も…。だから歴史の勉強が必要なのでしょう。
 「四十六歳といえば/俺がそれからも生きるために/眼鏡を買い替えた歳だ」というフレーズにも感心しています。「眼鏡を買い替え」るという何気ない行為にも「それからも生きるため」という位置づけをする、この感覚が詩人には必要なのだろうと思いました。



児童文芸誌『こだま』29号
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2006.11.25 千葉県流山市
保坂氏方・東葛文化社発行 非売品

<目次>
雨にぬれているツツジの花/杜仁翔 3    ぼくの足/貫名航世 4
風/福田実樹 5              草の葉はね/ムン ジェ ウォン 6
ほんまかな ふしぎやな/島田陽子 8    うきわ/市川満智子 9
すみれのことば/神山暁美 10        アプローチ/多田ひと瀬 11
くるくる−ことばあそびうた−/絹川早苗 12 かんぱい/中村洋子 12
「よかったね」/尾崎昭代 13        ねむりの小鳩/高島清子 14
無人島/高木総子 15            やさい畑/青山かつ子 16
二種類のクリスマスローズ/大石玉子 17   おちばとかぜ/久野美惠 18
かばん/高山柚美 20            空/脇谷幸歩 21
あかトンボ/保田真吾 21          せんこう花火/福田真章 22
あした/川筋慶斗 22            とんぼ/冨村郁斗 23
プール/中島梨紗 23            ドアー/藤木文乃 24
じてんしゃ/小林桃子 24          さいあくの日/貫名泰生 25
え/高山晴奈 25              ぼうし/平田綾香 26
メガネ/廣瀬愛佳 26            せみ/長岡祐子 27
空/渡邊亜紀 27              フランスの詩/比留間恭子訳 28
貝の動物誌他/クロード・ロワ 水谷清訳 34 ひとり/岡島弘子 38
飛ぶには/徳沢愛子 39           金魚/菊田 守 40
蜻蛉/前原正治 41             どこから見ても/名古きよえ 42
兄弟/滝 和子 42             兄いもうと/市川つた 43
夕日/江部俊夫 44             さんりんしゃ のれた−自閉症とぼく−/土田明子 45
夜と ねこすけちゃん/佐伯多美子 46    ないしょばなし/田中眞由美 46
休みぐせ/渡邊京子 48           メロンパンのうた/江本あきこ 49
けしごむ/平田実紗 50           星/阿部麦穂 50
とんぼ/廣瀬玲佳 51            流れるあくた川/平山日菜乃 51
色んなかおり/安道礼実 52         おじいちゃんとおかあさん/福田紘子 52
川の手紙/井上妃咲 53           ゆうれい/松山伸一郎 53
笑顔/今枝あかり 54            風の音/平田祐希55
光と暗やみ/関 美湖 55          オーストリアの詩/高橋あかね訳 56
ネパールの詩/磯村桂子訳 62        お母さんが 立っていた/新川和江 66
わたしのおかあさん/江島その美 68     木の葉のボート/宮入れい子 69
テスト/伊藤ふみ 70            紙ヒコーキ/大石規子 71
ピアノのおけいこ/安川登紀子 71      空のサッカー/松下和夫 72
宝島/村田 譲 72             冥王星/菊池敏子 73
オハグロトンボ/道草人 74         コンペイトーの花/小沢千恵 74
ちょっとした幸せ/谷田俊一 75       赤ちゃん/飛田隆正 75
お母さんとこおろぎ/佐野千穂子 76     あけび/国吉節子 77
宇宙の色/尾崎一斗 78           明日の道/松尾智久 78
いつか忘れる小さな何か/小高一輝 79    不死山/近藤祐麿 79
ドイツの詩/松尾直美訳 80         あさ/品田美恵子 88
二つのすいか/井立輝子 89         虹のハープ/志村宣子 90
あなたは/保坂登志子 90          鈴虫/柳生じゅん子 91
へびさま/前田裕子 92           植木鉢/原田 慶 93
秋/星 梨津子・英訳共 94         客員教授A・k氏/武石 剛 96
国境/浦野公彦 97             河童/卜部昭二 98
花暦 秋−コスモス−/神崎 崇 100
.    魯桃桜/清水栄子 100
おじいさんと花/天彦五男 101
「運動会詩集」
組体操/井出郁央 102
.           三重の塔/池添桃花 102
組体操の決心/菊池彩花 103
.        「立って」/寺岡左智 103
つらくて苦しい三重の塔/篠原佑奈 104
.   組体操/新津愛美 104
重い、つらい、痛い組体操/星野芽衣 105
.  組体操/萩原 萌 105
組体操/橋本萌子 106
.           もう限界の組体操/山越奈央 106
限界に至るまで/山口侑季 107
.       運動会と友情/山本信生 107
命とのひきかえ/山下花野 108
.       腰/岩間未沙希 108
組体操/市川真季 109
.           「重い、重い、だけど」/依田若菜 109
練習/小池和正 110
.            大太鼓はつらいよ/臼田美夏 110
先生からのプレゼント/井出宏貴 111
.    シャキッ、ダラーン、金管バンド/荻原 京 111
騎馬戦/勝俣博貴 112
.           練習/井出洋成 112
騎馬戦/大橋育実 113
.           騎馬戦/漆戸千弘 113
韓国の詩/徐正子訳 114
.          韓国の詩/高敬子訳 120
中国の詩と寓話/小沢千恵訳 126
.      台湾の詩/保坂登志子訳 130
インドのお話「アマゾンのジャングルで」5/アマレンドラ・チャクラヴォルティ作 谷口ちかえ訳 140
編集後記 150
表紙絵 内山 懋
(つとむ)



 そうなったらよいと思います/キ
 ヨンウン 小六 徐正子訳

よいのになと思います
韓半道を横切る
(にく)いイバラの鉄条網(てつじょうもう)
消しゴムでごしごし
きれいに消すことができるならば
そうなったらよいと思います

よいのになと思います
手を伸ばせばとどくような
北の方を眺めながら
痛みに涙ぐむ離散家族
(りさんかぞく)たちの涙を
消しゴムでごしごし
きれいに消せれば
そうなったらよいと思います

よいのになと思います
韓民族が一つになった
ワールドカップの時のように
民族が一つになったら嬉しい歓声
(かんせい)
全国を埋めるその日が早く来れば
そうなったらよいと思います

よいのになと思います
もう一度このような題名で
詩を書くことのない日が早く来れば
そうなったらよいと思います

 韓国の小学校6年生の作品です。南北分断を学校でもきちんと教えているのかもしれません。小学校6年生でここまで意識が高いことに驚きます。技術的にも各連の行頭と行末に同じフレーズを持ってくるところなど、とても小学生とは思えませんね。何より最終連が優れています。詩の盛んな国、韓国ならではの作品と感じました。



ミニコミ紙『東葛文化』109号
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2006.11.1 千葉県流山市
保坂氏方・東葛文化社発行 1000円(年3回分)

<目次>
空巣症候群(カラス・シンドローム)/上野菊江 1
スペイン初夏/石川寿夫 2
休日の過ごし方 その9/藤田瑞穂 3
俳句・夏草 夏の草 4



 若者のニート、中高年の自殺に雪崩落ちるウツ、こんな状況をカラス・シンドロームというそうです。
 カラスは空巣、文字どおり心のなかが空っぽになってしまった病的な、対象喪失状態をいう。就職難、リストラ、詐欺、破産、離婚、失恋など日常茶飯事のことであれば、わたしたちすべての人が空巣症候予備群ではあるまいか。
 その原因としては、要するに高学歴、知的人間の過剰というか「知」が狭い分野の専門知に偏って、お互いに強くエネルギッシュに凄いスピードで作動しあい混乱を招いているのだといわれる。
 こんな知的ゲームに終始する社会では、いかに人間の「知」を深めていくかという根源的な問題はなおざりにされてしまう。たとえ競争に打ち勝ち事業に成功しても、なお心が空虚という現実がある。
 これが人間のよって創りあげた文化の姿である。
 物と人間との関係が全く変わってしまった。身につけるものすべてが製品として与えられるし、生活手段もガスレンジや全自動洗濯機のように完結した装置として与えらえる。つまり、機械装置の端末機関化した人間生活である。

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 紹介したのは上野菊江氏による「空巣症候群(カラス・シンドローム)」の冒頭の部分です。「『知』が狭い分野の専門知に偏って、お互いに強くエネルギッシュに凄いスピードで作動しあい混乱を招いている」、「いかに人間の『知』を深めていくかという根源的な問題はなおざりにされて」いるというのは鋭い分析だと思います。深く専門分野を極めることは当然としても、それと同じ比重で他分野の知識なり他分野との交流の必要性を説いていると受け止めました。続く「物と人間との関係が全く変わ」り、現代人の生活とは「機械装置の端末機関化した人間生活である」という視点にも驚きます。確かにコンピュータの端末、すなわちインターネットで繋がった個々のパソコンが我々であるという見方が出来ると思います。面白い見方であり、かつ考えさせられるエッセイでした。



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