きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2006.11.04 仙台市内




2006.12.6(水)


 午前中は下山して(^^; 街に出て、所要を済ませ、午後は読書。いただいた本のお礼は1週間遅れです、ゴメンナサイ。一所懸命読んでますのでご海容のほどを。早く手ぐすね曳いて待つに持っていきたいものです。



詩誌『詩区 かつしか』87号
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2006.11.26 東京都葛飾区
池澤秀和氏連絡先 非売品

<目次>
僕らの時代/工藤憲治             ジャック・アンド・ベティー/工藤憲治
お隣同士/内藤セツコ             自立 を助ける/内藤セツコ
こがらし/池澤秀和              晩秋のある日/堀越睦子
十一月/石川逸子               人間73 現代ドイツ最大の詩人 パウル ツェラン/まつだひでお
人間74 がしんたれはいきている/まつだひでお  白鳥/小川哲史
晩秋/小川哲史                秋がいっぱい陽は燦々/小林徳明
ベランダにバラ園を/小林徳明         息づまる/池沢京子
二合半/みゆき杏子              おしえてください/しま・ようこ



 二合半/みゆき杏子

草加まで一里
千住まで三里

 二合半ってお米の量ですか
 違うよ
 わしの生まれ故郷の俗称だよ
 ふたつの郷がくっついて
 いつの頃からか二郷半

早場米の産地
北葛飾郡彦成村大字彦成
自作農一家五人兄姉ばっちの仙吉さん
明治生まれの九十八歳
漬物 麦飯大嫌い
コーヒー 新劇 週刊誌好きのハイカラ育ち

半年前から入院中の奥さん
訪問時 今朝亡くなると聞く
歩行練習 洗髪 足浴 清拭
する横で家族は葬式準備
七十年の二人三脚
思い出がまあるく空に浮かんでいる

 二合半ってお米の量ですか
 そうだよ
 炊く飯の量だよ
 七人家族一食分が二合半

草加まで一里
千住まで三里

 まず、タイトルに魅了された作品です。「ふたつの郷がくっついて/いつの頃からか二郷半」になったというのも面白いですけど、それが「二合半」になったという説明に地名の変遷を考えさせられます。
 「草加まで一里/千住まで三里」は「北葛飾郡彦成村大字彦成」を示していると思いますが、この同じフレーズを第1連と最終連に配置した構成も良いですね。「五人兄姉ばっち」はたぶん方言で五人兄姉ばっかり≠ニいう意味でしょう。「仙吉さん」の人間性もよく浮かび上がっています。訪問介護の詩ですけど、「葬式準備」を「する横で」介護できるほど信頼されているのだなと感じた作品です。



個人誌『ポリフォニー』10号
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2006.11.30 東京都豊島区
熊沢加代子氏発行 非売品

<目次>
 博物館 2
  立ち尽くす 5
  冬のソナタ 6
  平均律 8
  すべてのトッカータとフーガ 10
コンサート・ホール/弦楽四重奏 12
アド・リビテュウム/息子の結婚 14
後記 16



 博物館

上野の文化会館に入ると売店で
音符の模様のついた革製のペンケースを買う
それから公園口の混雑する人混みに紛れて
博物館へ向かう途中
ここはいつもざわめいている
行き交う人との通り過ぎていく風のように爽やかな
知らんぷりの親近感
幸福だとか不幸だとかそんなことを考える必要もなく
五月は光を孕んで生きていることを歌わせる

だが博物館はいつ来てもひんやりとして薄暗く
常設展を見て回っていると
一度や二度は必ず眠くなってくる
優れた芸術品に囲まれて昼寝をするのも悪くはない贅沢だ
金髪の青年が長身を屈めて漆塗りの小箱に見入っている
ガラス越しの中の東洋のエキゾチズム
と言ってしまえばそれまでだが
芸術品をただ単に趣味や情緒で片づけてしまうのは
安直な観賞のしかたなのかも知れない

大事なのは喜びがあるかどうか ということ
<夕顔蒔絵硯箱>を美しいというその見ることの喜び
それが創られた時代を知ることの喜び
一つの小さな作品が含んでいる小宇宙を感じることの喜び
心は静かな喜びで満たされ感動へと重力を傾けていく

 美術館は好きでよく行くのですが、「博物館」はそれに比べるとちょっと遠慮勝ちです。「趣味や情緒で片づけて」「安直な観賞のしかたなのかも知れ」ません。「優れた芸術品に囲まれて昼寝をする」ことができれば印象も違ってくるかもしれませんが…。二次元の絵画が持つ親しみとは違って、三次元のモノとしての存在感に私は入り込めないのかもしれません。
 しかし、この作品で「大事なのは喜びがあるかどうか ということ」と教えられました。「美しいというその見ることの喜び」を発見しないといけないようです。今度はそんな気持で「博物館」に行ってみようと思いました。



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