きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2006.11.04 仙台市内 |
2006.12.8(金)
明日の日本詩人クラブ「国際交流の集い」のため来日した中国人講師を迎えて、東大駒場キャンパスで歓迎式典が催されました。式典と言えるほどの大袈裟なものではありませんで、中国側4人、日本側20人ほどの小さな前夜祭です。日本側は詩人クラブの会長・理事長を始め理事各位、海外との交流が多い会員数名でした。
1時間ほど、明日の予行演習のようなミニ講演があり、そのあとはキャンパス内のレストランで歓迎パーティー。写真は右から通訳の中国人女性、講師の沈奇氏、講師の楊克氏、通訳の中国人男性です。料理は本格的なフランス料理で、大学のキャンパス内といえば学食しか頭にありませんでしたから、ちょっと驚きましたね。しかも安い! 市価の半額程度でしょうか。
とりあえず前夜祭は無事に終わりました。本番は明日です。参加者が少ない可能性があり、ちょっと心配していますが、同報メールで呼びかけたら数名の返信があり、心強い思いをしています。
前夜祭が入り、明日は午前11時集合ですので、今夜は神田でお泊り。明日はどうなるか、少し不安を抱きながらもぐっすり眠ってしまいました。
○詩誌『やまどり』40号 |
2006.12.2 神奈川県伊勢原市 丹沢大山詩の会発行 非売品 |
<目次>
安曇野の中学生に伝える/高林智恵子 1
作品ノート
お花見/早川綾香 2 時は風のように・輝く君/福原夏海 2
あなたへ・夏に思う/大橋ヒメ 3 田園で・背高泡立草/神谷禧子 4
冬の雲・雨の日のカフェ/吉田涼子 4 ひととき/沙謝幸音 5
幸せの丘/川口征廣 5 自分・身体でライブ・自分その二/こころ 5
さむけ/川堺としあき 6 蝶々が来る庭/瀬戸恵津子 7
海の風景/今井公絵 7 お祭り/小倉克允
運動会・なんでも秋/松田勇樹 8 うんどうかい/松田太智 8
失敗は成功の元/松田しのぶ 8 深夜の散歩/上村邦子 9
露天風呂/松本せつ 9 すべてに感謝!/山形尚美 9
棚田に立つ・方言/柴山ISAO 10 いっしょに帰ろう/小林教子 11
ひとつの生涯/ゆき 11 旧婚旅行スイス/古郡陽一 12
畑のパラダイス/大山湧水 13 秘密/照山秀雄 14
荒田に座る/中平土天 14 時は流れて/為我井千代子 15
為我井千代子さんに寄せて/大橋ヒメ 16 為我井さんを偲んで/上村邦子 16
編集後記 17
方言/芝山ISAO
言葉は風土から生まれ
それぞれの地で 生きづき
人の暮らしに深くかかわる
トドメ(桑の実) イゴク(働く)
ヤトダ(段々畑のような田)
ノアガリショウガツ(田植後の祝)
ゴロゴロサン(雷)メグッコ(めだか)
オカッチャン(お母さん)
ハナジョロ(花嫁)
ドーシヤ(大山参り)
オデエコクサン(住職の奥さん)
でもじ〜んと
優しく 暖かい
力ある静かさが
豊かさが 味わいがある
(大山・子易地区方言)
私は神奈川県に住んで35年ほどになりますが、ここに出てくる方言はまったく判りませんでした。伊勢原・大山地方と私の住む足柄地方は、小田急線で六つの駅で結ばれている近さ、直線距離で25kmほどでしょうか。それでも通じないということは、私の不勉強ばかりでなくTV・ラジオの標準語≠フ勢いがいかに凄いかの現れだろうと思います。そのことに気付かれせてくれた作品です。
判りそうなのが「オカッチャン」。これはオカアチャン≠フ訛りでしょうね。「オデエコクサン」は「住職の奥さん」を大黒さん≠ニ言うと聞いたことがあり、それの訛りだろうと考えられます。それら「大山・子易地区方言」を「力ある静かさ」と表現したところに作者の見識があると思いました。こういう詩をどんどん書いて、民の言葉を遺したですね。
○秦恒平氏著『湖の本』エッセイ39 |
2006.12.1 東京都西東京市 湖(うみ)の本版元刊 2300円 |
<目次>
かくのごとき、死――死なれて 死なせて 3
私語の刻 332
大学2年生19歳という著者の孫娘を、この7月下旬に癌で「死なれて 死なせて」しまった330頁に及ぶ大著です。お孫さんはmixiで自分の手で、亡くなる直前まで癌の進行状況や心理を書き込んでいたそうですから、ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。著者はその書き込みとご自身の感懐をHPに掲載していました。本著はお孫さんの死の前後を書いたHPの日記を書籍化したものです。
お孫さんの父母、すなわち著者の娘さんとその嫁ぎ先の家と、著者家は10数年に及ぶ確執があり、現在でも断絶状態。その上、HPで孫娘の日記を転載したことは著作権継承者である父母の了解を得ていないので著作権侵害にあたるとされ、現在、法的な係争中です。著者のHPは父母の申し出を受けたプロバイダーにより削除されています。お孫さんをなぜ「死なれて 死なせて」しまったのかという大きな問題とともに、文芸作品満載のHPをプロバイダーが削除するという別の大きな問題も含んだ日記文学と云えましょう。そのことを赤裸々に、しかも文学者としての視線で冷静に見続ける著者に敬服しました。一般の書店では入手できない本ですが、著者の新しいHP「作家・秦恒平の文学と生活」http://umi-no-hon.officeblue.jp
にアクセスして注文し、ぜひ読んでいただきたいと思います。HPで文芸活動をする人のみならず、インターネットを利用する人全てがこの問題を考えなければいけないのではないかと感じています。
紹介した詩はお孫さんの作品で、亡くなる約5カ月前のものです。まだ癌は発見されず、しかし本人には身体の異常が感じられていた時期の作品です。敏感に「不安」や「怖」さを感じ取っているのが判ります。それでもなお「生きなきゃいけない」、「みんなとまだ別れたくない」と必死に自分と向き合っている姿に何度も胸にこみ上げてくるものがありました。改めてご冥福をお祈りいたします。
→ お孫さんの作品を掲載していましたが、ご両親より削除依頼がありました。2008年6月8日に削除しましたのでご了承ください。村山精二
○詩・小説・エッセー『青い花』55号 |
2006.11.25 東京都東村山市 青い花社・丸地守氏発行 500円 |
<目次>
巻頭言『胡蝶の夢 舞踏家大野一雄』に思う/丸地 守 表2
詩
赤ちゃんは知っている(11) 比留間一成 4 神様だって 鈴木哲雄 6
散歩の理由 菊池柚二 10 人の木 北川朱実 13
思惟の錘 埋田昇二 16 消えない数字 布川 鴇 19
いのちを纏う 奥村 泉 22 初冬/空荷 古田豊治 24
やさしい水脈 さとうますみ 26 いのち立つ 吉田章子 29
リマ 松沢 桃 32 ゆめのなかで 坂本登美 34
色彩考−白から黒へ 山本倫子 38 跳躍 草間真一 40
海鷂魚(エイ) 山本十四尾 42
今辻和典追悼
今辻和典さんを悼む 石原武/人間としての誠実さ 西岡光秋 44
追悼 今辻和典さん 木津川昭夫/置酒幻談 比留間一成
哀惜離苦 相良蒼生夫/ツーショット 内藤紀久枝
思い出がいま宝物のように思えて 竹内美智代/碧い眼の話 山本龍生
追悼・今辻和典さん 丸地寺
書評
絶妙の文体、滋味みたかな読ませる詩論−西岡光秋著『触発の点景』 内山登美子 60
現代詩批評の精髄がここに−木津川昭夫詩論・エッセイ集『詩と遊行』 辻元佳史 62
<庭>の夢、あるいは<場>のエトランス−本郷武夫詩集『夜は庭が静かだね一行読めればいい』 川島 完 64
小説 訪問 平田好輝 66
エッセイ Ουσιαの木陰で 森田 薫 74
評論 詩論ノート 装置としての詩空間(二十四)−詩が歌となる原理を求めて 溝口 章 78
ショート・エッセイ
西岡光秋「詩魂断章」・柏木恵美子「先見性ということ」
竹内美智代「まだ間にあう、日本の子育て」 89
詩画 もう堪えられないといった悲鳴が 丸地 守/大嶋 彰 93
詩
衣通姫(そとほりひめ)の謎 木津川昭夫 94 夏 伊勢山峻 96
草 高山利三郎 99 ネジ花 橋爪さち子 102
塔に住む 野仲美弥子 105. Insomnia 岩下 夏 108
白い夏 真崎希代 110. 応答セヨ(2) 古賀博文 113
風待ち岬 竹内美智代 118. 殻 こもた小夜子 120
燕 武田弘子 122. ジャガイモの花の咲く頃 内藤紀久枝 125
夏の窓 北松淳子 128. グラジオラスよ 悠紀あきこ 131
喜八の墓 河上 鴨 132. 挽歌 相良蒼生夫134
二〇〇六年八月十五日.櫻貝の歌.寺内忠夫.137 乱反射考−七つの断章 丸地 守 141
詩書評
寺門仁遺稿集『玉すだれ』 新藤涼子・高橋順子・車谷長音『地球一周航海ものがたり』
豊岡史朗詩集『拙生園』 山下静男詩集『梅漬け』 山本十四尾 144
杉山平一詩論・講演集『詩と生きるかたち』 有馬敲詩集『洛中洛外』
倉橋健一詩集『化身』 小長谷清実詩集『わが友、泥ん人』 埋田昇二 146
後記 木津川・西岡・今辻・山本・丸地 148
表紙デザイン・カット 大嶋 彰
リマ/松沢 桃
胸のおくに棲みついたのは
にびいろの天蓋
くぐりぬける
いくつものみえない扉
季節のたがう
不透明なひかりの粒子が散乱する
フンボルト海流がもたらす
つめたいみなみかぜ
青空はのぞめない
雨のめぐみもない
ながい海岸線に沿う沙漠
つらぬくアメリカンハイウェイ
水平線は水蒸気でもやう
移民船の記憶がくぐもるとおい岬
侵蝕する砂とたたかう
あざやかなみどりと花があふれる大都会
日課の撒水がささえる人工のオアシス
街路樹や公園 ゴルフ場の芝生そして富裕層の庭
みえかくれする銃装備の警戒網
多人種のけぶる憂鬱
かわいた哄いと会話がのみほす
検察庁の前に展がる人混みは偽造通り
蘇生以外は万能コピーの市場
万国旗はためく空はあくまでもグラデーションのくもりぞら
五月
リマは秋である
南米ペルーの「リマ」に旅した紀行詩だと思います。実際に体験しなければ書き得ない事実に驚いています。「青空はのぞめない/雨のめぐみもない」とは、何と陰鬱で恵まれない天候なのだろうと感じますし、それを書き取る作者の感性に脱帽です。「日課の撒水がささえる人工のオアシス」というフレーズも日本に居ては判らないことでしょうね。最終連の締めもよく効いています。日本の「秋」とは違った「グラデーションのくもりぞら」に南米の憂鬱を見る思いのした作品です。
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