きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
061104.JPG
2006.11.04 仙台市内




2006.12.26(火)


 京都で出ている総合文芸誌に原稿を求められていて、締め切りは12月31日。詩でもエッセイでも良いとのことでしたから、詩を書いて送稿しました。7年ぶりの詩集を出してホッとしているところで書いたせいだと思うのですが、今までとちょっと毛色が変わったように思います。なぜか小学校や中学校時代がしきりに想いだされます。仲の良かった、あるいは喧嘩した学友が次々に出てきました。それをモチーフに現在・未来を絡めて書いてみましたけど、そういうことを考えるようではトシなんでしょうね(^^; 原稿が突き返さなければ、そのうちここでも紹介したいなと思っています。



詩と評論・隔月刊『漉林』135号
rokurin 135.JPG
2007.2.1 川崎市川崎区
漉林書房・田川紀久雄氏発行 800円+税

<目次>
詩作品
底籠り…成見歳広 10            春から秋へ…遠丸 立 12
影のサーカス――10…坂井信夫 14      コメディアン…長谷川忍 18
許しあう…田川紀久雄 22          明日は思いがけない歓喜が…田川紀久雄 25
小説
猫のいる風景(最終回)…坂井のぶこ 38
エッセイ
恵泉女学園詩話りを…田川紀久雄 4     恵泉女学園(アンケート用紙より)…6
自作詩の語りの再出発…田川紀久雄 9    巡回朗読会と私…田川紀久雄 28
島村洋二郎の痕跡…坂井信夫 30       他流試合の中で揉まれながら…田川紀久雄 36
 後記 47



 コメディアン/長谷川 忍

飲む?
どんどん飲みなさい。
(死なない程度にね)
打つ?
どんどん打ちなさい。
(ヤクザ屋さんに追っかけられない程度にね)
女?
やりなさい。どんどんやりなさい。
(無理やりは、ダメよ)
嗤う?
とことん嗤っちまいなさい。常識を、権力を、気取った輩を、
これはアタシたちの使命。
泣く?
アンタが泣いて、どうする
泣かすのよ、アンタが。
お客さんを、気持よくね。

いいかい
マスターベーションじゃ、いけない。
コンビは、和姦。判る? 相方を信頼するのが基本よ。
ヘドも、クソも、毒も、温かさも、
裏切りも、いやらしさも…、相方なら、全て受け入れる。
全て、赦す。
それで互いに芸が深くなっちまったら
本望さね
とことん有名になっちまうのも
いい。

ただし−、ひとつだけ鉄則
世間をなめるのだけは、ペケよ。
よこしまな心持ち、
ってやつを
お客さん、ちゃんと見ているよ。
怖いよ、お客さんは。

それでも
どうしても、アタシと組みたい、っていうのなら
歓迎しましょ。
抱きついちゃう。
一緒に面白いこと
くだらないことを
しこたましようぜ。
舞台で、な。

 芸人の世界というのはよく知らないのですが、たぶん書かれている通りだろうと思います。「アンタが泣いて、どうする/泣かすのよ、アンタが。/お客さんを、気持よくね。」というフレーズは、おそらく文芸一般に向けられた言葉でしょう。もちろん詩も自分で「泣いて、どうする」という姿勢が必要なのかもしれません。
 圧巻は「世間をなめるのだけは、ペケよ。」というフレーズですね。「お客さん、ちゃんと見ているよ。/怖いよ、お客さんは。」という気持で私たちも書いていかなければいけないのでしょう。考えさせられました。



『漉林通信』14号
rokurin tsushin 14.JPG
2007.2.10 川崎市川崎区
漉林編集室・田川紀久雄氏発行 200円

<目次>
聲の訓練/田川紀久雄 1          浜川崎日記/坂井のぶこ 1
坂井信夫詩集『<日常>へ』より 2      新詩集シリーズへのお誘い 2



 浜川崎日記/坂井のぶこ

 7月21日
夕方浜川崎の駅で
小さなすずめが一羽
こちらを向いて柵にとまっていた
足をちょんと開いてお行儀よく
おじいさんが歩いてきて
袋にはいったパン屑を一粒なげた
口をあけて受け止めたすずめは
棕櫚の茂みを超え 送電線のむこうへ飛んでいった
十七時七分 浜川崎着の電車をおりて
改札まであるいてゆく
ほんの十秒の出来事だった

 7月22日
カンナが咲いた
毎年 伸びては刈られ 生えては抜かれていた
カンナが 今年は
地面すれすれに黄色い花を咲かせた
すぐ横にタイヤの跡がある
紺色の自動車が知らん顔してとまっている
電車を降りた人たちがぞろぞろぞろぞろ
会社の門へと向かってゆく
私ひとり反対側の駅へゆく

 7月23日
あのね はなしかけたいの
はなすことはなんにもないんだけど
わたしのなかでむくむくむくむく
せかいへむかってひろがってゆくものがあるの
あけがたのへやで
からすややまばとやすずめのこえをきいているとね
せかいがわたしのなかでとけあってゆく

 「7月21日」では「ほんの十秒の出来事」をしっかり捉える視線が佳いと思います。「7月22日」でも「カンナ」に対する視線があたたかいですね。「私ひとり反対側の駅へゆく」という行動は現実のみのでしょうが、あわただしく生きる人々と「反対側」の世界を目指しているとも採れました。「7月23日」の「はなしかけたい」相手は「からすややまばとやすずめ」たちと採ってもよいのではないでしょうか。作者のおだやかな精神世界を垣間見た作品です。



   back(12月の部屋へ戻る)

   
home