きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2006.11.04 仙台市内




2006.12.31(日)


 とうとう年末です、、、と1月4日に書く、この白々しさ(^^; ま、何はともあれ私の2006年がようやく暮れようとしています、メデタシ、メデタシ。さて、恒例の今年紹介させていただいた本の発表です。

  詩集等(冊) 詩誌等(冊) 計(冊)
1月 21 38 59
2月 11 39 50
3月 10 46 56
4月 15 48 63
5月 18 47 65
6月 25 51 76
7月 25 51 76
8月 22 44 66
9月 23 55 78
10月 27 48 75
11月 33 59 92
12月 30 68 98
260 594 854

 とうとう800冊を超えました。すごいものだなと思います。1年間に私に送られてくる本がこれだけあるのですから、全国ではこの10倍か100倍か…。1万や2万は軽く超えているということでしょうね。これで商売にならないらしいということは、経済の原理から言うとどこかおかしいのでしょうか。もっとも、経済原理を越えているところに詩の素晴らしさがあるのかもしれません。
 1年間ありがとうございました。また来年もどしどし送りつけてください。年間1000冊までは大丈夫、、、だと思います。バテたらバテたで次の手を考えますから。開設から10年まで、あと2年はこのスタイルを続けるつもりでいます。



詩誌『飛揚』44号
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2007.1.7 東京都北区
葵生川玲氏発行 500円

<目次>
特集 プラスチック
作品
朝焼け/北村 真 4            白い箸/伏木田土美 6
海を断つ/みもとけいこ 8         人のいない街/土井敦夫 10
季節禍/米川 征 12            プラスチック/くにさだきみ 14
<プラスチック言語2007>/葵生川玲 16
●特集「プラスチック」5行回覧連詩 19
葵生川玲→米川 征→北村 真→くにさだきみ→土井敦夫→青島洋子→伏木田土美→岡本達也→みもとけいこ
●編集後記 22 ●同人刊行詩書 2 ●同人住所録 23
装幀・レイアウト/滝川一雄



 <プラスチック言語2007>/葵生川 玲

思考の節約という
キーワードが、
沈黙の海を漂っていく。

世界の枠組みは、
文明の正しい方向に向けて一目散に走り回る
新種の用語が指し示しているのだ

欠けた全体知

埋めようとする言葉の類が求められているから

思考の類が躓きながら追いかけている。

空気読みばかりのぎらついた
目の並ぶ先の先には
今日の空が白いスクリーンとして広がっている。

快いばかりの、
、句読点を天辺に置いてみたり
。を段違いにばら撒いたりする
類型の
Yさんばりの
抒情の言葉がもてはやされているのも
思考の節約のためなのか。

「美しい国」に
「日本」を繋ぎ合わせて、
何か日常が飾られた

言うように、
演説の言葉はモザイクの積み木の一塊りのように
内閣府のホームページに掲載されている。

変幻自在に形を変える
手軽な甘い言葉として、
メディアや政治の演説に混ぜ合わせておくことで
直接の批判や、
盗作の疑問のダメージを受けることなく、
人々を何となく心地よく同意させることができる。

意味が大きく変わっているのに
正確な定義が問題にされることはない。

「耳に心地よい言葉だけが、アメーバのように
 変型しながら世界を席捲している」

「プラスチック言語2007」
言葉の触手は、
心脳の揺れに合わせて流動している。
磁力を強めて
意味から逃走を始めている。
未来社会を創るために、
言葉の意味と豊かさが抜き取られている。

 「思考の節約」という詩語にドキリとさせられます。直接的には「意味が大きく変わっているのに/正確な定義が問題にされることはない」ことを謂っていると思いますが、現在はむしろ思考の停止≠ゥもしれません。あるいは「意味から逃走を始めている」から「節約」なのか。いずれにしろ怖い詩語です。最終連の「言葉の意味と豊かさが抜き取られている」というフレーズはまったく同感。言葉の意味が知らないうちに変わっていくのは、そこに意図的なものがない限り止むを得ないと思っていますが、「豊かさが抜き取られ」た「美しい国」にはガッカリです。美しいという形容詞が可哀想。「プラスチック」も本来の物質・固有名詞には何の責任もないのですが、創り出した人間、使う人間に罪があると思っています。と、元プラスチック産業技術屋のささやかな抵抗(^^;



個人詩誌『進化論』6号
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2007.1.1 大阪市浪速区
佐相憲一氏発行 非売品

<目次>
街の詩学       詩活動記録
文化と歴史の道で(3)  受贈詩誌等紹介
受贈詩集等紹介    私の中の祖父
私の好きな詩第二回



 私の中の祖父

棺の中
花に囲まれた祖父の顔は
地球の水温

九十二年の血液が情熱を全うする時
大正ロマンの風が吹く
カステラ、鳩サブレー、ナボナ、紅茶、
中華料理、祖母自家製手打ちうどん、
ごちそうになった幼い私は世界を知り始めた

教職と畑仕事
大正デモクラシーのハマ風が
実直勤勉な人情を呼び戻す

私の親の結婚に反対し
私の親の離婚に賛成し
けんちゃん、けんちゃん、と
間一髪奇病手術で死を越えたこの私に期待した祖父
受け継いだものは
 自然好き、こども好き、スポーツ派、他人の世話役、学習努力、頑固さ、寂しがりや
受け継がなかったもの という見方はやめて 感謝をこめて
進化したもの
 リベラル保守派の祖父から 地球革新派の私へ
 戦争嫌いで中国文化好きの祖父から 諸民族平和連帯九条の私へ
 家の出自や世間体を重んじる祖父から 偏見を嫌うコスモポリタンの私へ
 文化鑑賞の祖父から 詩人の私へ
退化したもの
 も 少なからず あるだろう ・・・・・

横浜にチンチン電車が走っていた日々
私と並んでほほえむ祖父の画像は
私が地球の墓に帰るまで
この心臓に。

 「九十二」歳で亡くなった「祖父」への追悼詩です。第1連の「地球の水温」は死者の体温であり、地球との同化と捉えています。「受け継いだもの」「進化したもの」「退化したもの」という関係性に作者の思想を読み取ることができます。「祖父の画像」を「私が地球の墓に帰るまで/この心臓に」収めておくという最終連に、「この私に期待した祖父」への愛情が表出していると思った作品です。



『日本北醫醫科校友會會誌』
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2006.12

<目次>
日本北医医科校友会規約…校友会 1     総会謝辞…会長 元山福祥 2
次期会長ご挨拶…次期会長 宇野静恵 4   日本台北医学大学校友会懇親会記…会長 元山福祥 5
会計報告…会計部 江 本栄 7       幹事会紀要…会長 元山福祥 9
校友訪問記 陳哲朗校友の篇…会長元山福祥 14 校友訪問記 福岡の校友聯誼会…会長 元山福祥 16
九州聯誼会…芦沢茂生 18          校友訪問記 曾我洋士校友の篇…会長 元山福祥 19
東海地方の静岡聯誼会点描…会長元山福祥 21  北医歯科校友会の大阪聯誼会を迎えて…元山福祥 22
母校訪問記…会長 元山福祥 23       近畿校友会懇親会…会長 元山福祥 25
自説自画…廣野毅志 27           団らん 秋の風景 尾行…江 素瑛 36
見えないものが見えてくる…廣田光前 40   
Self CPR…編集室 林 宗融 41
北医医科校友会連絡網…幹事会 45



 団らん/江 素瑛

その日骨灰が四つ
岩手水沢に集められた
祖父母と若死のおば及び祖父の養父
若死の曾祖父の兄は子供がいなかった
じじはその曾叔祖の戸簿上養子である

湿潤でうだる暑さ
水沢寺小路の増長寺
日かげの微かな風
先祖の魂を安棲させる所を辿りついた人々
やっと永代供養される骨灰になった人々
和気あいあい
血族だけの安堵感

僧侶が読経
線香がうねり
手に取ったじじ達の骨灰
会うことのない親類縁者
不思議な存在

焼きつくした木炭のような
太いの 細いの 粉々の
手で触れたじじ達の骨灰
こんな形でじじ達が温もりを子孫に伝う
じじの葬式も墓まいりも行かなかった
心のすき間が一瞬うめられたよう

じじは生前何回も来日
水沢にいる長男おじが世話をした
おじ蛙じじより早く他界し
じじは台湾で五男坊おじに身寄り
天寿を全とうした

しかしじじ達の伝統たる墓は平地にあり
大雨になると水浸し計画道路になったし
五男坊おじはじじの墓を移そうと思いながら
叶えられないでいて世を去り
二男坊わが父と同じ台中大度山公墓に骨をおき
父は古き一戸建ての墓
五男坊おじは最新のマンション霊塔
ハワイ在住の四男坊おじにより
じじ達の骨灰ははるばる海をわたり
日本にいる長男おじの墓におさめる
となりに三男坊おじの墓があり
うらにはおじの夭折した子の墓がある

一族団らん
じじ達は夢にも思わなかったのでしょうか
それともじじ達の夢が叶ったのでしょうか

 本誌は台湾台北医学大学の校友会誌です。暮れに拙詩集を作者の江素瑛さん(品川区在住・開業医)にお贈りしたところ、私も弟も同じ墓に入ろうと書いた詩「終の棲家」に注目して下さり、校友会誌に似たようなことを書いたと送ってくれたものです。紹介した作品がそれで、国が違っても墓問題は大きいのだなと思います。「一族団らん」、たぶん「じじ達の夢が叶ったのでしょう」ね。
 それにしても台湾、日本、ハワイと国際的な一族だなと思います。私の兄弟は東京・神奈川と近くばかり。おそらくその辺が視野の広狭の差につながるのでしょうね。



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