きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2006.11.09 表参道「Gallery Concept21」




2007.1.4(木)


 午前中は銀行に行って、それ以外は書斎にこもっていました。ようやく12月31日までアップして、1月1日の日記に取り掛かっています。記憶も1週間以内なら大丈夫です(^^; 忘れないようにメモは取ってあるのですが、細かいところは書ききれませんからね。退職してしばらく経ったころは、送られて来る本を手ぐすね引いて待っている状態があったんですけど、今はちょっと追いかけられています。でも、嬉しい悲鳴です。どんどん送ってください。そして全国の詩愛好家の皆さまに見てもらいましょう。海外からも見に来ている人がいるようですから、佳い詩を書いて、日本の現代詩の実力を披露しましょう、、、って、お前が佳い詩を書け! ですか。それが一番難しいんです。それよりも皆さまの佳品を紹介した方が楽(^^; さあ、続きを読まなくちゃ!



文芸誌『北の詩人』52号
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2007.1.5 札幌市豊平区  100円
日下新介氏方事務局・北の詩人会議発行

<目次>
写真(冬のナナカマド並木)・詩(ナナカマド)/佐藤 武 1
そこに青空が/高田淳一 2
叙事詩 いじめ克服の近道/松元孝一郎 3
エッセイ 靖国神社は何を主張しているか/高畑 滋 3
掌のひら/松元孝一郎 7           虐待列島/佐藤 武 8
短詩・自殺・札幌市政にのぞむこと/佐藤 武 8
  ・安部首相・一番危険な人物
  ・世論を捏造してまで
「いたどりの唄」に学ぶ/かながせ弥生 10
エッセイ 犬に吹まれて/かながせ弥生 11
新しい義歯/たかはし・ちさと 12      俊の抵抗/たかはし・ちさと 13
筒の中の少年(2 夢の中)/倉臼ヒロ 14    地球温暖化防止/内山秋香 16
合唱コンクール/内山秋香 16        夜桜/内山秋香 17
決意/高柳卓美 17             反省/八木由美 18
長崎/八木由美 18             衣の下は/釋 光信 19
氷河の底から甦るとき/高畑 滋 20     格差社会/大竹秀子 21
アメリカ言いなり/大竹秀子 21
短詩・学力テスト・教育基本法・子供が命を絶つ 大竹秀子 22
  ・東米里小中学校・幼子あわれ
竪琴弾き/泉下イチイ 13          予告状/泉下イチイ 23
見えない手紙/泉下イチイ 24
書評 大海赫著「メキメキえんぴつ」/泉下イチイ 95
鮭っ子腰/乾 葉子 28           俳句三首/小高美恵子 28
茂子(10)鳥/阿部星道 27          茂子(11)白石郷土館/阿部星道 27
痛み/貴島雄二 29
「俳句人」より落合敏子作品集 29       終着駅の青春/日下新介 30
短歌 霜月ゆきで師走に入りぬ/幸坂美代子 31
受贈詩誌・詩集寸感/日下新介 32
「北の詩人」51号作品評/佐藤 武 33
もくじ・あとがき 36



 痛み/貴島雄二

詩が書けなくなった
どうしようか
誰かこの気持ちがわかるか
背中が病み
胸が病み
体全体が病み
誰にも説明のしようのない
この痛み
ガムテープで
張りつけるような詩しか
書けなくなった

 一般的に「痛み」は肉体的、精神的なものを指すと思うのですが、ここでは「詩が書けなくなった」ことが痛みだと言っています。この感性は素晴らしいですね。私も書けないことは毎度のことで、そのために悩んだり悔しがったりしていますけど、「痛み」とまでは感じていませんでした。作者の詩に対する謙虚な気持に敬服します。
 最終部の「ガムテープで/張りつけるような詩」は名言。私なら「痛み」だったら絆創膏や膏薬と発想してしまうでしょうが「ガムテープ」とは! この言葉でこの詩が成り立っています。書けない、書けないと言いながらもそのことを詩にしてしまう作者に感服した作品です。



詩誌『鳥』11号
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2007.1.15 さいたま市大宮区
力丸瑞穂氏方発行所 700円

<目次>

消しゴム…田嶋純子 2         一日の始まり・母…八隅早苗 4
足袋…力丸瑞穂 6           百合の花・団塊世代……倉科絢子 8
命のリレー…山本陽子 10        神田川6…金井節子 12
ミンミンゼミ…菊田 守 14
エッセイ
じゅうろくささげ…金井節子 15     私の大切なもの…力丸瑞穂 16
この一篇(3)−新川和江…菊田 守 18
小鳥の小径… 20
□力丸瑞穂 □山本陽子 □八隅早苗 □倉科絢子 □田嶋純子 口金井節子 口菊田 守
表紙…西村道子
編集後記



 一日の始まり/八隅早苗

雨が降り出したと思ったのに
もう上がりそうな気配。
硝子越しに空を見上げて
夫が言った。
 「根性のない雨だ」。
雀も賑やかに唄いだした。
 ――ナイタカラスガ モウワロタ チュン。

けさのお空はだだっ子のようだ。
ひと泣きしたら気が済んだ。
気が晴れたでしょ。
さあ 笑いなさい。
私はこれからベランダで
洗濯物を干すところ。
夫もいそいそ出掛けていった。

さっき
先刻まで囃していた雀たちは
遠くに烏の声をききつけて
これはいかん と逃げていったよ。
雀たちよ 気をつけなさい。
今日も必死の鬼ごっこ。

 この作品の主題は、もちろんタイトル通りの「一日の始まり」で、「私はこれからベランダで/洗濯物を干」し、「夫もいそいそ出掛けてい」き、「雀たち」は「今日も必死の鬼ごっこ」と市井の平和な「一日の始まり」に共感します。しかし、それ以上に興味をそそられたのは「根性のない雨だ」というフレーズです。詩を書かない人でも詩的な言葉を発することはよくあることで、ここにもそれが現れていると思います。「雨」という即物的な自然現象に「根性」という人間的な言葉をぶつけた「夫」の感性に敬服します。それを詩語として採りいれた作者の感性にも、また。毎日が良い「一日の始まり」であってほしいですね。



個人詩通信『あん』31号
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2006.12.18 北九州市八幡西区
鷹取美保子氏発行 非売品

<目次>
介護日記余白−おつかい
空のもとで
空を引く
あとがき



 介護日記余白 ――おつかい

病弱だった私だが
熱のない日には
母はおつかいをたのんだ

野原をおおう
背高泡立草の黄色がこわくて
近道ができなかった

空が雀色に暮れはじめ
握りしめた十円玉は汗ばんだ
べそをかいて手渡した
ボウルのなかの豆腐はくずれていた

だが 約束ごとのように
母はいつもほめた
「よくおつかいができましたね」

母は丸い背をいっそう丸くし
季節の挨拶と
一日の挨拶をかわしてきた
ひたすら腰を曲げ
九十二年の日々をつないで来た

そんな母が
挨拶もせず
だれの了解もえずに逝った
末期の微笑みを白いシーツに置いたまま
一年が過ぎた

誠実だった母のことだ
「お礼を言い忘れていましたね。
 四年間、お世話になりまして」と
いつもの丸い背で
もどってこないものか

「おつかいに出ておりましたから」と
この地に在った日々の記憶を
ひろいあつめながら
息をきらせ
もどって来ないものか

取り残された日常に
雀色に暮れる空の下で
母に語りかける

あなたのように
ようやく私も
ほめ上手になりました

あなたの一年がかりのおつかいにも
極上の「お帰りなさい」を
用意できました

作法どおり
門を数歩でた所で
若い日のあなたと同じ顔をして
私は立っています

 子が母を思う気持というものは、年代によって反発したり離れたりがありましょうが、基本のところでは変わらないものなのかもしれません。この作者の場合は大きな乖離もなく「九十二年の日々」を送らせてあげたのでしょう。
 タイトルにもなった第8連の「おつかいに出ておりましたから」という言葉が印象的ですね。親を亡くした子なら「息をきらせ/もどって来ないものか」と誰でも思うものでしょう。私もそう思いました。気持が素直に滲み出た佳品です。



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