きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2006.11.09 表参道「Gallery Concept21」 |
2007.1.8(月)
恒例の『詩と思想』新年会が表参道の「NHK青山荘」でありました。例年通り100名を超える参会者で、盛会でした。昨年暮に出版した拙詩集をお贈りした方も大勢いらっしゃるはずなので、返信をいただいた方の名簿を持参し、会場で配布された出席者名簿と照らし合わせたところ、40名近い人が来ていることが判り、御礼をし捲りました。ほとんどそれで一次会が終わったようなものです(^^; いつも通りデジタル一眼を持って行ったのですが、今回は撮る暇もないほどでした。名簿を見て是非お会いしたいと思った女性の青山さん、江さん、男性の新井さんともお話しでき、大満足でした。
新年会では第1部で「詩と思想新人賞」の授賞式をやります。第15回の受賞者は林木林さん。受賞作「夕焼け」を朗読しましたので、そこはカメラに収めましたけど、後の方から望遠で撮りましたのでイマイチどころかイマ3000ぐらいかなぁ。若い女性ですからはっきり写らない方が良いかもしれません、、、、と、これは負け惜しみ。それにしてもここのところ女性ばかりが受賞しています。男女を云々する気はなく、佳いものは佳いで当然なんですけど、やっぱり若い男どもも感性を磨け!と言いたいですね。ところで林さんは知る人ぞ知るうにまる≠ウん。本名かペンネームか判りませんけど、林木林の方が私は良いと思いますね。
第2部の懇親会は同所で。二次会はこれも例年通り近くの「鳥良」で。三次会は同年代の連中が10人ほど集まって、何という店だっかなぁ、青山通りをちょっと這入った居酒屋で。件の新井さんとも隣同士でずいぶんお話しできました。佳い詩を書く詩人と話をするほど楽しいことはありません。ありがとうございました、楽しい青山の夜でした。
○個人詩誌『Quake』23号 |
2007.1.15 川崎市麻生区 奥野祐子氏発行 非売品 |
<目次>
巡礼がいく 一
DRAGON DAYS 六
感情の葉脈(ぼくのスパイダー) 七
墓守 十一
DRAGON DAYS
竜が空からおりてくる 音もなくああ 鱗!銀色の羽毛のような
柔らかく 冷たい その感触 ああ 竜が空からおりてくる
あまりにも大きくて あまりにも遠い存在で ぼくにはわから
なかった 竜よ おまえの姿は一体 どこで始まり どこで終わ
るの? 頭の先から尾の先まで まるでひとつの生命の歴史のよ
うに 長く長く空をくねり流れていく おまえの純白の腹がああ
かすかにぼくの頬をかすめてゆく 水の流れにも似たとめどない
終わらない愛撫 竜が空からおりてくる 恐怖よりも脅威よりも
いつまでも その感触に身をゆだねていたいような誘惑 愛ああ
竜よ ぼくたちヒトが滅びるその日も こんなふうにおまえがそ
っとおりてきてくれるのならば ぼくは終わりの日だって怖くな
い 静かにおまえのその腹に顔をうずめて ヒトの命を素直に終
わりにしよう!ああだから 竜よ このまま
ぼくを 連れ去り
ぼくを溶かして いのちの始まるその始源の姿に どうか還して
今号は宗教的なイメージの作品が多く、驚きました。輪廻転生をうたった作品があり、紹介した詩もその範疇で鑑賞してみました。「頭の先から尾の先まで まるでひとつの生命の歴史のよ/うに 長く長く空をくねり流れていく」という詩語はもちろん「生命の歴史」の直喩で、最終部の「いのちの始まるその始源の姿に どうか還して」が輪廻転生をうたっていると思います。「DAYS」には直線的なそれらの日々≠ニいう意味と、人間一人ひとりの並列的な意味があるようにも思います。今までの奥野祐子詩から新たな展開が始まったのかもしれません。しばらく注視していこうと思っています。
○詩誌『こすもす』51号 |
2007.1.15 東京都大田区 蛍書院・笠原三津子氏発行 450円 |
目次
<詩>
薔薇の木に…佐瀬智恵子 2 車中幻想…笠原三津子 4
一木一草…三木 昇 6 草原讃歌…藤井搖子 8
納得の意味がわかるまで…井上富美 10 語感…今朝丸翠 12
課題…阿部堅磐 14 山栗…友永淳子 16
あなたは楽器…柏木友紀絵 18 水の駅まで…森原直子 20
<エッセイ> 偽史倭人伝…石田天祐 22
会員の消息…23 後記…24
車中幻想/笠原三津子
灰色の空に
灰色の富士山頂が 見える
静かに見つめている山
目をこらして 私は富士山頂を見つめる
山頂のシルエットは
大觀の描いた富士の絵に似ている
穏かな心地で見つめていると
ひとつかみの灰色の雲が 飛んでいった
富士山は頂上を一層現わにして
なおも こちらを見つめつづける
静かなと午後
遠く左の方に 淡いバラ色の雲が渦巻き
一りんのバラの花を咲かせた
緑と黄の田畑がつづく地上
あぜ道に こすもすがゆれている
静かな風景の中
突然「核」が飛んできたら
日本のシンボルの山
−富士山が見えなくなったら−
のっペらぼうの風景になる
そのとき 不意打ちをくらったヒロシマの惨状が 私の瞼の中に映った
いま 布のように平和な空
灰色の富士の高峰が
悠々聳え
おごそかに のたまう
〈人々よ核兵器はつくるな
責任と努力は 皆の胸の中にある筈だ〉
第3連の「一りんのバラの花」が、続く第4連の「核」を連想させて見事なつながりだと思います。第1連、第2連の「静か」さから一変して、ここから一気に恐怖の予感へと読者を誘います。「のっペらぼうの風景になる」というのも、考えたら怖いですね。最終連では再び静かなタッチに変わっていきますが、この静かさは一度味わった恐怖のあとの静かさですから質が違います。「灰色の富士の高峰」が「おごそかに のたまう」言葉を人類は真摯に聴かなければなりません。「布のように平和な空」を守るために…。考えさせられた作品です。
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