きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2006.11.09 表参道「Gallery Concept21」




2007.1.13(土)


 日本詩人クラブの理事会と新年会が神楽坂エミールで開催されました。理事会の方は特にここでの報告事項はありません。会報『詩界通信』に出ますのでそちらを参照してください。
 新年会は福岡、福井、大阪、長野からもおいでいただき、110名ほどと盛会でした。歌あり踊りありの楽しい会でしたが、残念ながら神楽坂エミールでの新年会はこれが最後となります。3月末で閉館です。1989年6月に入会させてもらって以来18年ほど、ほとんどが神楽坂エミールでのイベントに参加してきましたから、私個人としても感無量です。

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 日本詩人クラブとして感謝の花束を職員に贈りました。粋な計らいだと思います。写真は中村会長から職員への贈呈。写真を撮りながらちょっと胸に迫るものがありましたね。お返しにワインやら日本酒がどっさり差し入れてくれたのは嬉しかったけど(^^;
 4月以降は、4月の3賞贈呈式、5月の総会を私学会館アルカディア市ヶ谷で行います。それ以後は東大の駒場キャンパスで行いますので、東大見物のつもりで是非おいでください。さすがに学生の顔つきが違いますよ。

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 こちらの写真は会場風景。時刻は16時頃。窓の外には早くも夕暮が忍び寄っています。会場のざわめきとは対照的に、消え行くものの侘しさを感じさせました。

 二次会は珍しく同世代の男4人だけでいつもの韓国料理店に行きました。女性陣に声を掛けたら、彼女らはコーヒーを飲みに行くというのでパス。何が哀しくてコーヒーなんか飲まなくちゃいけないんだ! そうそう、声を掛ける相手を間違えたのかもしれません。呑み助の女性に声を掛けなければいけなかったんだな、これは。人選ミスでした(^^;
 でも、女性陣には悪いけど、男4人もおもしろかったですよ。女性がいては出てこないような話もバンバン出て、お互いに男同士もいいなと慰めあいました。それに神楽坂「醍醐」のマッコリはやっぱり旨い。ドンブリを4回おかわりしましたから、ひとりあたり五合ぐらい呑んだのかな? でも悪酔いもせず新幹線の客となって帰宅。最後までお付き合いいただいた宇都宮の、前橋の、八王子のお三人、ありがとうございました。酔い、、、違った、、佳い夜でした!



詩誌『EOS』11号
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2006.12.31 札幌市東区
EOS編集室・安英晶氏発行 500円

<目次>
昆虫の書(一五)*高橋渉二/2
コーヒーカップ*安英 晶/8
死んでしまった犬*小杉元一/14
表紙絵:そうならそれでよし(木版原寸) 2006年11月作



 コーヒーカップ/安英 晶

ぽこっ ぽこっ ぽこぽこっ
攪拌する闇と光
するすると
(ああ、そうね
(と
(地下にいるものたちの陰影がほどけ

わたしたち
ひかりのなかでは
やってくることができないから
深海魚 
SINKAIGYOのように
こうして

ふいと
寄り添ってくる

ぽこっ ぽこっ ぽこぽこ ぽこっ

おやっ
あそこで死んだねえさんがひかっています
(ついとあっちのほうから
(透明な手足をのばしはじめて

遠い裸眼の風景に
ピンク、イエロー、グリーン
やわらかな中間色のカップが
風船と一緒に ゆらーり ゆらーり 揺れて
ぼんやりとした光のなか
かすかに回りながら浮かんでいる
景色が色を交差させて消えていく

ぽこっ ぽこっ ぽこ ぽっ
溢れてくる真昼の

ねえさん あの日 おそるおそるわたし
の手指がなぞった あなたの頬は陶器の
それでしたよ まだ少女の面影の残った
十六の唇に はじめての紅をさしてねえ
さん 花嫁みたいにきれいでした 葬儀
の帰途の車窓から なぜか異国のように
瓦屋根が秋の夕日にひかってみえました
どこかの庭先で柿の実があかくいろづい
ているようでしたよ そう 日が傾くの
も随分とはやくなって

(これから、たびたび出てきそうで
(困ってしまいます (困っています

ぽこっ ぽこっ ぽこぽこっ

真水の姉
うすくなってゆく姉
その倒置法に
なみなみとよこたわる晩秋の空が
箔状に剥がれ

ひかりがひとを呑み込むのをみた/ような
たまゆらの光と闇の輪郭をかたどり
ね え さ ん
さりさりと音たてる
あたらしい形象の だから

生の虚構も
死のまやかしも
なんにもわかっちゃいないけど
とろーり とろり
ターンテーブルごと
どこかに運ばれていく
(どこへ?

攪拌されて いま
回転するカップの中の濃い影体
くすくすも
ふふふも
いっしょになって 無になって
くすふ すふく くすふふ くすふふ
あっ
ひらいて

ぽこっ ぽこぽこっ ぽ ぽ ぽこっ

 (ついとあっちのほうから
 (透明な手足をのばしはじめる
ところで、ねえ
ねえさん
濃いめのキリマンジェロより
ネスカフェのほうが
好きだった?

 「死んだねえさん」を思い出しているという作品ですが、不思議に明るさがあります。それは後から3連目の「くすくすも/ふふふも」という笑い声があるからでしょう。それに「まだ少女の面影の残った/十六」という設定ですから、もう何十年も前のことと捉えられ、時間が悲しみを緩和させてくれた結果なのかもしれません。しかし、繰り返し出てくる「ぽこっ ぽこっ ぽこぽこっ」というオノマトペーには哀しみが込められているように思います。
 詩語としては第1連の「攪拌する闇と光」というフレーズに魅了されました。確かに「コーヒーカップ」の中はそうなっていますね。視線の確かさも感じた作品です。



会報『中四国詩人会ニューズレター』19号
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2006.12.31 徳島県阿南市
宮田小夜子氏事務局・扶川茂氏発行 非売品

<目次>
年頭にあたって/中四国詩人会会長 扶川茂 1
金時鐘氏、倉敷大会で講演 1
中四国詩人会第6回倉敷大会報 1
中四国詩人会第13回理事会開催 2
大会などの予告 応募 受賞 記録 2
受贈詩集等 3



 【2007年が明けました。会員の皆さん、おめでとうございます。
 このような世界の潮流の中で、私たち詩を書く者は、その流れの遅速や方向にどこまでも関心を持ち、こだわっていきましょう。「詩が政治と何らかの線びつきを持つことができるという考えを多くの人はきらう。」などといった考えからは遠く離れて。】

 紹介したのは中四国詩人会会長・扶川茂氏の「年頭にあたって」の全文です。簡潔に、端的に書かれていて、内容にも同感します。続く「金時鐘氏、倉敷大会で講演」では、次のように書かれていました。

 【「詩を生きる:書かれない小説は存在しないが詩は書かれなくても存在する」と題し、日本の現代詩は<自己内面中心の詩がほとんど>だと、日本の詩人の視野の狭さを鋭くついた。<不当なものを憎み現状を拒む力、その思いを他者へ感化させる力こそ詩だ>。『山陽新聞』06/10/17,25 】

 前半の部分はポエジーについて書かれており、後半は扶川会長と同じ趣旨を語っています。いずれも共感しますし、中四国詩人会の姿勢の良さを示す文章だと思います。足柄山の麓から影ながらご発展を祈念しています。



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