きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2006.11.09 表参道「Gallery Concept21」 |
2007.1.22(月)
15時から日本ペンクラブの電子文藝館委員会が日本橋兜町の会館で開かれました。今回は会報に載せる文藝館展観などについて話し合いました。現在までにHPにアップしたのは690作品ほど。時々会報に全作品の作者名、タイトルなどを載せてきたのですが、相当な頁数を使っています。直近の昨年4月の375号では8頁を使っています。今後9頁、10頁と増えるわけですから、会報委員会からナキが入りました。
電子文藝館委員会としての結論は、新しい作品だけを1頁ぐらい使って紹介しようということになりました。もともと会報に全作品名を載せるというのは会員に対するデモンストレーションの意味合いが強かったのですが、開設から6年が経った今、その目的は達しただろうということで、今後は会員ではなく、もっと外の人に知ってもらおうということになりました。具体的には会員のHPで宣伝してもらうこと。例えばHPのトップページに電子文藝館のリンクを張ってもらうなど。さっそく私は今日から始めます。
で、私の提案は、無名の私のHPを使うのもいいけど、ペンには著名な作家が多いのだから、そこを使わせてもらってはどうか、です。これは事務局から依頼してもらうことになりました。何人の作家が協力してくれるか判りませんけど、まあ、効果はあるだろうなと思っています。皆さんも是非訪れて、良質な日本文学を堪能してください。
新年最初の委員会だというので、会が終わったあとは茅場町の「浜町亭」へ行って呑みました。酒奉行(^^;
の私が指名したのは「いいちこ」900mlの緑茶割り。コストパフォーマンスが一番良かったからですが、ちょっと失敗しました。5人で行って、真面目に呑むのは二人だけ。お三人はほとんどお替りをしませんでした。これはマズイと思って必死で呑みましたけど、最後は100mlほど余ってしまいました。うーん、眼が卑しいんだな、きっと。値段は高かったけど750mlの「雲海」の方が良かったかな? 自分の呑む量×人数ではいけないんだということを悟りました。
○浅野浩氏詩集『光る海熱い海へ』 |
2003.11.25 東京都新宿区 土曜美術社出版販売刊 2000円+税 |
<目次>
記憶の河 6 海の匂い 8
光る海 10 架橋 13
胸さわぎの航海 16 狼煙 19
犬の記憶 22 密航者 24
夜の扉 26 片道切符 29
錆びた海 32 風の音 35
日蝕 38 透視図 41
光る風 44 もうひとつの世界 46
長い旅 48 雨の音 51
影 54 小さな賭け 57
出発 60 熱い海へ 62
迷路 64 過ぎゆく日々 67
挑戦 70 青空 73
あとがき 76
装画 星野美和
光る海
舗道にほの暗い影を曳きながら
ぼくたちは出発した
傷口のようにひらいた地平線を
淡い恋のように覗き込んでいる
君は誰?
陽炎の街に伸びる舗道の割れ目から
さりげなく希望を覗き込もうとしている
君は誰?
夕日が落ちて地平に稲妻が走った
明滅する都市のいたるところで
汽笛のように口笛は流れ
鉄路に耳をあて
新世界の幕開けを待った少年時代
ぼくは目撃した
光る海から
鋏で切り抜かれた小鳥たちが天翔けるのを
故郷に帰るためには
時空を越えて
薔薇の紅い蕾の内部を通過しなければならない
ゆるやかな勾配の長いながい坂道をのぼる途中
眼底にはいつも海が光っていた
詩集タイトルは「光る海」と「熱い海へ」の2作品から採っていると思います。心憎い、粋なタイトルの付け方と云えましょう。
ここでは「光る海」を紹介してみました。「舗道にほの暗い影を曳きながら」の「出発」の果て、あるいは途上は「光る海」と採れると思います。ちょっと暗いトーンの作品ですが、どこか仄明るさが感じられるのは「光る海」にあるのかもしれません。
この作品の中では「鋏で切り抜かれた小鳥たちが天翔ける」というフレーズに注目しました。儚いものの象徴かもしれませんけど佳い喩だと思いました。
○文芸誌『文芸埼玉』76号 |
2006.12.27 さいたま市浦和区 埼玉県県政情報センター発行 1000円+税 |
<目次>
評論・随筆
●私憤 −田代栄助 福沢諭吉 菊池貫平 中江兆民−…高橋哲郎 6
ボルヘス・再考…森田 一 16
坂口安吾、三浦綾子、藤沢周平にみる「教員生活」に関する一考察…石井 昇 24
自転車で越えたチベットの道…日本ひろし 33
バイトと朝の少年…堀内善市 41
箸供養…金井雅之 44
富士山が無ければよかった…齊藤俊勇 46
かささぎ−華容米蒐集の思い出−…佐藤源作 51
詩 60
●洋上輝夫 ●岡本勝人 ●笠井 剛 ●北岡淳子 ●関富士子
秋田芳子 浅井裕子 あさのたか 井上朝之 鵜飼攝子 宇津木愛子 岡本いつ子 小野崎孝子
河内さち子 小林登茂子 小山美千代 ささきひろし 塩田禎子 早田早苗 代靖子 巴希多
成川友華 林哲也 水木萌子 宮岡つや 向田若子 山丘桂子
●埼玉詩人会50周年と「地球」55周年…飯島正治 92
短歌 94
●海野登紀 ●荻本清子 ●金子富美子 ●萩原千也 ●山崎 孝
加藤文子 小澤六子 柴崎波津恵 水村浅子 安良岡正二 田口佳寿子 南雲ミサオ 吉弘藤枝
遠山栄子 関根ヒサエ 堀山徳子 山口富江 戸田年子 松田代子 藤島繁雄 関口みさ子
厚川久代 桃木良子 川俣英男 長谷川洋子 富田l志子 杉本和子 飯土井佐知 金子孝
藤田良廣 石橋孝雄 大野一与 林康子 島田和子 澤田貞治
●埼玉短歌事典の刊行…綾部光芳 114
俳句 116
●折原八重子 ●河野益代 ●木村麗水 ●倉持喜久子 ●斉藤敬子
斉藤利彦 鈴木すみ子 脇田美智子 蘇我たか哉 細村洋子 外山智恵子 森岡恵子 金子勝美
鈴木富美子 三好かほる 赤瀬川至安 赤瀬川恵実 長谷川清子 澤田君子 小沢紫苑 新井章有
今西桂子 宮原幸子 東條康永 中島京子 志村美好 小阪弓子 中川和子 篠原稔子
西野敏子 馬場友里恵 堀越よし江 高林雅子 田口幸子 工藤みのる
●俳句時評…小川原嘘帥 136
小説
●荒川の風…高テレサ 138
夕立のあと…小林百合子 148
僕のみち…潮津 暁 156
望郷の挽歌…柴田ただし 165
海へ帰る…小坂 昭 168
川柳 174
●丸山しげる ●篠崎紀子 ●片島康子 ●大澤静江 ●相良敬泉
大瀧峰保 林徳太郎 渡辺猛 松本叶 村井杢子 奥田実 島崎穂花 石田正則 相良博鳳
池田一紘 森田正巳 竹内田三子 石川蝶平 酒井青二 稲森あこ 宮本彩太郎 茂木かをる
岡田時雄 川瀬翠 永井栄子 千葉古丘 若月葉 茂木道子 永井麻男 岡野輝男 小高啓司
●川柳あれこれ…松岡葉路 192
共通テーマ作品「埼玉の祭(まつり)」 194
川柳
小林きみ
榎本博子 相川雅敏 鈴木文鎮 垣堺幸三 江森暉 吉野重雄 野口慶市 新井娃子 宮川たま枝 橘勝代 始夏至 亀井哲 大橋与志江 内田善美子 渡邉定雄 嶋山とよ 佐野新一 辻野光江 大日方冬子 古川哲也 大日方和雄 吉揚由江 栗原洋子 榎本里子 村岡文夫 飯野正美 岡田チエ 横田朝子
俳句
坂上山 水野加代 斎藤勲 秋元虹雪 町田昭二 橋本洋子 新井あい子 宮嶋婦美 角貝久雄 五十嵐勝二 鈴木政子 今枝茂 井上美也
短歌
岩崎久美子 大和静江 石原あおい 一ノ瀬清子 能藤孝子 石井美智子 寒河江眞 森田富美子 粕田友子 若林昇 浅見美和子 青柳久 石関叡子 代靖子 渡邊たけ 須藤哲雄
詩
田中朋子 吉田ゆき子
小説・随筆
オクムラマホロ 關根巧 召田紀雄 板橋均 やましろゆう (●印 依頼執筆者)
「文芸埼玉」第七十六号応募作品選評…227
さいたま文学館収蔵資料紹介…235
編集後記…239
☆編集委員
委員長 秋谷豊
内田雪彦 岡安仁義 木坂涼 北原立木 杜澤光一郎 原田しずえ 深町金鳥 水野昌雄 矢内久子 青木義雄
とびら絵/加藤晋 表紙絵/安達時彦 カット/酒井英実 目次絵/日吉智 レイアウト/小菅章雄 カット/柳田伸郎
浦和祭り/吉田ゆき子
浦和祭り練習太鼓音が
鉢植えの芍薬に降り注ぐ
根岸五丁目辺り練習場
昔 根岸は海辺
響く波音のリズム
祭り太鼓は海を呼んでいる
身体に呼び起される海
私のからだは太古の波を感じている
萎れていた私の心も少し元気が涌いてくる
蕾のまま口を閉ざした芍薬
皺くちゃになった花弁
を少しみせて葉も垂れている
執刀医が三分の二切除した胃は皺の花
お囃子の練習が聞こえてくる
窓は閉まっている
見えぬところで人は汗を流して
七月二十三日は
中仙道を御輿が練り歩く
手が咲き揃い
太古の海を揺らめいてゆく
共通テーマ作品「埼玉の祭(まつり)」の詩部門作品です。「昔 根岸は海辺」で、現在は「祭り太鼓は海を呼んでいる」状態であることが判って、時空を越えた佳い詩だなと思いました。
しかし、第4連の「執刀医が三分の二切除した胃は皺の花」というフレーズで、この詩がそう単純ではないことを知りました。作品ですから現実と突き合わせる必要はありませんけど、それでもやはりこのフレーズは重いです。そうやって読み直すと第3連では「萎れていた私の心も少し元気が涌いてくる」と、ちゃんと伏線が張られています。そうやって見ると第5連の「見えぬところで人は汗を流して」の意味も判ってきますね。佳品だと思いました。
○詩誌『礁』創刊号 |
2007.1.30 埼玉県富士見市 礁詩社・穂高夕子氏発行 非売品 |
<目次>
詩作品
一本の木…山浦正嗣 2 空蝉…近村沙耶 6
半月…近村沙耶 8
俳句『涙・・・なぜ』…川端 実 10
エッセイ
『礁』発足と私の病気…川端 実 10 正岡子規5 子規とカリエスと短詩文学…川端 実 12
唱歌探遊…秦健一郎 18 金子みすゞの詩を読む1…穂高夕子 24
山浦同人快挙…川端 実 28 遊びをせんとや――流行うた今昔 中谷 周 30
詩作品
落ち葉の街…佐藤 尚 38 中棚荘…穂高夕子 41
受け取る…穂高夕子 42
編集後記…44
表紙デザイン 佐藤 尚
中棚荘/穂高夕子
ひかり
午後の陽光は木の葉の色で
開けっ放しの千曲川に向いた窓から降りそそぐ
わたし達の短い旅も終わりに近づき
歩き回った足と心をこの椅子で休めることにしよう
日常を切り捨ててあふれ湧く思いに浸った
頭を駆け巡るこの秋の色の深さ
目を閉じて胸の焦点を中棚荘に合わせると
やっと小諸がわたしをすっぽり包んだ
「コーヒーをひとつ」
わたしの声は
大正のにおう過去から聞こえて来た
昨年7月に145号で終刊となった『蠻』のメンバーによる新詩誌です。ご創刊おめでとうございます。今後の『蠻』以上のご発展を祈念しております。
紹介した作品の「中棚荘」は小諸市古城中棚にある島崎藤村ゆかりの宿のようです。泊まったことはありませんが「千曲川」「小諸」「大正」という言葉でそれらしいと気付いて、ネットで調べてみました。なかなか良い宿のようです。
紀行詩は難しいものだと思っていますが、ここではそれを感じさせません。時系列的な旅の説明ではなく、「旅も終わりに近づ」いたところから書いてあるのが成功の鍵だろうと思います。旅を他人に説明するのではなく、徹頭徹尾自分に引き寄せたことで作者の詩になったと云えましょう。その最たるものが最終連の「大正のにおう過去」という詩語です。紀行詩について学ぶことの多い作品だと思いました。
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