きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2006.11.09 表参道「Gallery Concept21」 |
2007.1.28(日)
西さがみ文芸展の入りには驚いています。おさらいをすると初日が72名、2日目63名、3日目63名、4日目の今日は61名。連日60人を超えるというのは、銀座で日本詩人クラブの詩書画展を運営した経験を持つ私としては、いかに凄いことかと身を持って判ります。銀座の目抜き通りのギャラリーでさえ一日40人がやっとでしたからね。
そんな盛況に私も寄与できたと、密かに(HPで公表しては密かにとはいきませんけど(^^;)ほくそえんでいます。わたしがお誘いした方のうち、きょうはお三人がおいで下さいました。小田原市内、秦野、それから三島の詩人たちです。秦野の女性は町田方面に出勤するという忙しい時間を縫っておいで下さいました。ありがとうございました。
写真は市内の女性と三島からクルマで駆けつけてくれた男性のお二人。実はこの二人、20年ぶりの再会なんです。私と男性とは電話やEメールでの遣り取りはあったものの、顔を合わせるのも実は20年ぶり。彼はまだ20代、私は30代でした。懐かしかったですね。
昼食を3人で摂りながら、やっぱり思い出話に花が咲きました。で、やっぱりそのうち昔の仲間に声を掛けて同窓会≠やろうよ!となって、昨夜の高校クラス会から同窓会づいているなと一人ニタついていました。実現するかどうかは別にしても、おいでいただいた昔の仲間がそういう気持になってくれたというのは素直に嬉しいですね。
今回の展覧会を主催している「西さがみ文芸愛好会」に入れてもらって3年ほどになりましょうか。やっぱり地元っていいなと思います。私の先祖は福島県の會津藩支藩の出で、私は北海道生まれ。流れ流れて神奈川にたどり着きましたけど、40年近く住み着くと愛着も湧きます。そんな気持になっていたところを拾ってもらって、感謝しています。「西さがみ文芸愛好会」にお礼を、そして来てくださった仲間たちに、ありがとう!!
○小西敬次郎氏著『一期一会』 |
2004.12.1 神奈川県小田原市 西さがみ文芸愛好会刊 1200円 |
<目次>
■はしがき…3
一期一会
俳句との出会い…8 蒲田車掌区での思い出 1…18
蒲田車掌区での思い出 2…27 蒲田車掌区での思い出 3…34
山本鶴丘と『爽籟』…46. 松下康雨と『爽籟』…57
佐倉東郊の活躍…68. 岡田万次郎と岡田貞二…76
鶴小田原支部『こゆるぎ』創刊…83. 岩出昌寿のこと…91
高梨町の靴店…96. 十五夜句会…101
香取久雄のこと…105 ゴルフ場…112
『泉』の大会…119 俳句文学之碑…126
寒椿と冬菊 石田波郷先生・石塚友二先生との関わり
「寒椿」の短冊…132 『鶴』の句会…135
友二先生の来原…140 波郷先生とのこと…143
俳句の添削…149 句集『今日』と「冬菊」の短冊…152
友二先生、入院…157 湯ケ島行…161
友二先生の死…168
■小西敬次郎略歴…171
川崎長太郎先生が店に来るようになったのは、店を出して初めての冬を迎えたときで、先生お気に入りの皮ジャンパーが綻びて着られなくなり、修理を頼みに来られてからであった。縫い糸に弾力性がなくなって一か所が切れると、次へ伝染していく。先生は糸の弱くなったのを知っていて、靴を縫う糸はさぞ強いだろうからと思っての相談である。靴を縫う糸は、松の樹脂に油を少し入れて煮詰め、柔らかくして糸に染み込ませるから強いのであった。それを使っての皮ジャンパーの修理である。戸惑いながらも先生のことだから引き受けた。先生が千代子夫人と結婚する少し前の話である。
二日もすると、先生は取りに来た。意外にせっかちな所があって、その場で着た。
「小西君、いくら?]
「先生、いいですよ。」
「いや、手間がかかったろう。」
「いいですよ。」
強く言うと、先生は黙って出ていった。私が石塚友二先生の弟子であることを知ってやりとりであった。
暫くすると、先生が戻って来た。
「これ吸いな。」
と言って、作業台の上に煙草の「新生」を五個置いて帰っていった。
一か月もすると、また他の所が綻びて持って来る。そんなことを四、五回も繰り返し続けた。
考えてみると、弱っている糸の手前を強い糸で縫って止めてしまうのだから、次は抵抗がなくなり綻びていくのは当然であった。
この年、ブームを起こした『抹香町』が出版され、出版記念会が小田原「だるま」の二階で行われた。島本恆に誘われて出席する。小田原図書館の内田(のち森田)正が、
「川崎先生は一年中下駄ばかり履いていて、革靴を履いたところを見たことがないんです。履いても、年二、三回ですか?」
とスピーチしたことが、靴屋だけに記憶に残っている。
先生は、歌を唄うとき、いつも、壁に向かって押さえるように掌を当て足を半ば開いて、下腹から出す強い声で「鉾をおさめて……」と唄い出した。唄い終わったときの嬉しそうな顔が、今でも目の前にあった。
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西さがみ文芸愛好会副代表の著者から頂戴しました。句集は4冊刊行していますが、エッセイ集としては初のようです。小田原を中心にした俳人との交遊や若いときの国鉄勤務時代も語られていて、小西敬次郎という俳人を知るには格好の本だと思います。
紹介したのは「高梨町の靴店」の後半部分です。他の章では当然、俳句について書かれた場面が多いのですが、門外漢の私には紹介の荷が重すぎますので、小田原地方の文人なら誰でも知っている「川崎長太郎先生」の部分を転載してみました。著者が国鉄退職後はじめた「靴屋」時代の思い出です。長太郎さんの心遣いも良いと思いますけど、それを見守る著者のあたたかい視線に共感します。「意外にせっかちな所があっ」た、などは直接接した人でないと判らない部分と云えましょう。長太郎研究にも貴重な一文だと思いました。
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