きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2007.1.26 小田原「アオキ画廊」




2007.2.25(日)


 昨日から1966年版の講談社『日本現代文學全集』42の小川未明の項を読み続けています。今日は「薔薇と巫女」「物言わぬ顔」「民衆藝術の精神」を読んで、これから「戦争」を読もうかというところです。その他にまだ20編近い短編があって、ここ数日中には読んでしまいたいなと思っています。その中から1編を選び出して、日本ペンクラブ電子文藝館に載せようとしています。著作権はまだ切れていませんからご遺族には連絡してあります。1編を選び出した時点で事務局から正式な依頼をしてもらいます。小川未明作品はまったく載っていませんので、ここはちょっと頑張って早く載せたいと思っています。



詩とエッセイ『千年樹』29号
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2007.2.22 長崎県諌早市 岡耕秋氏発行 500円

<目次>

奇異/江崎ミツヱ 2            円/さき登紀子 4
椿のアクセサリー/わたなべえいこ 6    イチョウ/竜崎富次郎 8
「北総台地V」の為の習作/早藤 猛 10    磔/植村勝明 12
富貴寺/和田文雄 14            早春のノートから/岡 耕秋 16
エッセイほか
「佐賀のくらいばあちゃん」/佐藤悦子 24   自由の鐘(二)/日高誠一 26
古き佳き日々(二六)/三谷晋一 34      菊池川流域の民話(二三)/下田良吉 38
プルサーマル計画と佐賀/満岡 聰 48
千年樹の窓から 七年輪記念エッセイ 64
初春月の空の下で 江崎ミツヱ/キュウちゃんとコニャ 佐藤悦子/私の亥年 早藤 猛/世界最古の人体解剖学教室 日高誠一/星になったトム 三谷晋一/発表 竜崎富次郎/年輪 和田文雄/ばらの日々 岡 耕秋
七年輪索引 二五〜二八号索引・執筆者紹介 73
『千年樹』受贈詩集・詩誌等一覧 76
樹蔭雑考/岡 耕秋 78
編集後記ほか/岡 耕秋 80
表紙デザイン/土田恵子



菊池川流域の民話(二三)/下田良吉

 縁起かつぎ
 
 むかしな、とてん縁起ばかつがす旦那さんのおらしたげなたい。
 この旦那さんな、縁起の悪かこつばすると、とたんに不機嫌にならすとたい。
 ある年の正月のこったい。今日は正月だけん、不調法ばしちゃならん、て家ん者なびくびくしとったげなたい。ところが、事もあろうに、女中がどびんば打ち割ったそうたい。女中は真っ青になるし、旦那さんな旦那さんで、元旦早々、どびんば打ち割ったりして縁起ん悪か、て気色
(きしょく)ん悪うしとらしたてったい。そしたりや、そん時、そこん家んばばさんの、すかさず、
 元旦やどん(貪)とひん(貧)とを打ち割って手に残りたる金のつるかな て詠ましたげな。ばばさんな知恵ん多かけん、どびんば打ち割ったつばよか方さん考えらしたわけたい。
 そっで、旦那さんな、「こら縁起んよか。今年や金んたまるばい。何事も、よか方に変ゆっと気持ちよかばい」て言うて、そるかるが、いつもにこにこした、よか旦那さんにならしたげなたい。

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 今号は詩ではなく民話を紹介します。もう23回目の連載になっていまして、今号では他に「正直で親孝行の徳」、「情深い旦那さん」、「上木場の伝説」、「おしくじん」、「出田のむかし話(一)〜(四)」が組まれていました。いずれも熊本県菊池市に伝わる民話です。ここではその中で一番短い作品を紹介してみましたが、この前向きな姿勢はほとんどの作品に共通しています。熊本県人の県民性が出ているのではないかと思った次第です。なお原文では「どん」と「ひん」に傍点がありましたがhtmlではうまく表現できないので太字斜体としました。ご了承ください。
 他の作品では熊本弁の注釈がありましたけど、この作品にはありません。しかし注釈がなくても良く判ると思います。「元旦やどん(貪)とひん(貧)とを打ち割って手に残りたる金のつるかな」は、そのままでも佳い句と言えるのではないでしょうか。

 今号は満岡聰氏の「プルサーマル計画と佐賀」も圧巻でした。佐賀県のプルサーマル誘致問題で、作者が佐賀県議会で行った意見陳述です。原子力問題の核心を突く論考であるばかりでなく、国・県という行政と住民との関係を判りやすく論じた書としても貴重だと思いました。機会のある方は是非お読みいただきたいと思います。



詩誌『詩区 かつしか』90号
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2007.2.18 東京都葛飾区
池澤秀和氏連絡先 非売品

<目次>
月の声/石川逸子              人間78 いつ死ぬの/まつだひでお
人間77 情欲の炎/まつだひでお       深尾竹恋歌/小川哲史
勝ち組負け組/小林徳明           女神ミューズに祝福されて/小林徳明
あと さき/池沢京子            ふにゃふにゃ/みゆき杏子
サンシャインの彼方に2.ここはかつては「プリズン」だった/しま・ようこ
くどき/工藤憲治              なげき/工藤憲治
銭湯/内藤セツコ              07・冬の ひとりごと/池澤秀和



 あと さき/池沢京子

受話器のむこう側 あなたの言葉は
涙でした
受話器のこちら側 わたしの言葉は
涙でした
行き交う言葉は
ただ ただ 溺れているのです

 ゆれ迷う 自分の思考
(おもい)を納得させ
 たった一つの純白のドレスに
 一針一針をこめて織りつないだ刻
 あなたの珠は掌の中に
 弦しさだけをおいて
 望みの空へと飛びわたっていきました

三人の子の母になった娘
溢れ出る知恵を色ずけ
重ねていたアルバム
まだ終わるには遠い四十九年 綴じ終えてしまったのです
もう 決して増えることはないのです
急ぎすぎて順列を見誤ったのです

どんなに高い知識を積み上げても
どんなに美しい国の中でも
軽い言葉でつじつまを合わせてみても
あと さき になったという親に
突き刺されたこの痛み
取り去ることは絶対にないのです

 「三人の子の母になった娘」がその生を「四十九年」で「綴じ終えてしまっ」て、「あと さき になったという親」の「突き刺されたこの痛み」が伝わってくる作品です。「重ねていたアルバム」は「もう 決して増えることはないのです」というフレーズにそれは集束されていると言えるでしょう。「急ぎすぎて順列を見誤った」娘さんへの慟哭に、こちらも胸に迫るものがありました。
 「まだ終わるには遠い四十九年」は速い∞早い≠フ誤植かもしれません。しかし「遠い四十九年」も詩語としては成り立ちますので、そのままにしてあります。



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