きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2007.1.26 小田原「アオキ画廊」




2007.2.26(月)


 小田原青色申告会に行ってきました。生まれて初めて退職をしましたので、生まれて初めての確定申告です。非常に丁寧に教えてもらえて、無事に申告が済みました。ただし時間は掛かりました。待ち時間が多く、3時間も掛かってしまいました。私の書類の揃え方が悪く、担当の人が一緒に探してくれたりしましたから一概に責める気にはなりませんけど…。やり方は判りましたので、これで来年は大丈夫、、、だと思います。

 待ち時間に近くの「だるま食堂」で昼食を摂りました。「だるま食堂」は知る人ぞ知る老舗で、小田原の私小説作家・川崎長太郎が通っていた店です。文化庁の史跡になっていました。たしかに古いからなぁ。
 店はかなり混んでいて、和服姿のご夫人が大勢いらっしゃいました。吟行途中の昼食という感じでした。そういう人たちには似合う場所です。そんな中で古いフリースとジーンズの男がひとり。サマにならなかったです(^^;



藤井雅人氏詩集『無限遠点』
21世紀詩人叢書・第U期5
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2004.11.30 東京都新宿区
土曜美術社出版販売刊 2000+税

<目次>
消えた詩人 6    ピアニスト 8
遁走した詩人 12   石壁についての考察 14
公園の詩人 16    結び目 18
詩人と薔薇 22    風 26
死の床の詩人 28   葵祭 30
仏像 32       水琴窟 36
さざえ堂 38     戻橋 42
御城将棋 46     百万遍 48
八月の記憶 52    丹波路 56
水時計 60      水晶宮 64
バベルの塔 68    ハムレット 72
わがホメロス 74

解説 78
あとがき 88
初出一覧 90



 消えた詩人

 あの詩人の原塙がまだ届かない。いまだかつて、締切りに遅れた
ことのない人だが。
 編集者は煙草に火をつける。詩人と面識はない。だがかれへの信
頼は、手にしたペンの触感とおなじほどたしかだ。
 詩の沼に漬かりきって、泡のようにことばを噴いている詩人だ。
かれに変事があったとすれば、詩そのものの消息を危ぶまねばなる
まい。
 一服終えた頭に、澱
(おり)のように析出した決意がある――十年来の文
通の末に、詩人をはじめて訪ねよう。

 教えられた場所はいちめんの草っ原で、人が住んでいる気配はな
い。それとも――あの黒い掘立小屋がそうだというのか?
 ガラスの嵌まっていない窓からのぞくと、やはり人の姿はない。
しかし埃まみれの木机に、原稿用紙が文鎮でおさえられ、その上を
黒い鉛筆がのたくっている――透明な手に玩ばれるように。
 よく見ると、鉛筆は天井から垂れた糸に結ばれ、吹きこむ風のま
まに動いているのだ。そういえば、詩人の筆跡は虫の這い跡のよう
で、いつも判読に悩むものだった。

 帰りの車室で煙草をふかしながら、編集者は風に揺れる鉛筆を心
にえがく。なるほど、かれはまさしく詩の虜
(とりこ)になり、そのことばを
書き留めているわけだ。
 心配はいらない。風がゆるいので、かれはいつもより手間取って
いるんだ。

 紹介したのは巻頭作品です。この詩集にはタイトルの「無限遠点」という作品はありません。詩集タイトルについて「あとがき」の冒頭で次のように書かれています。
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 本詩集には、詩人を主題とする作品がいくつか含まれている。芸術の本質がことばを超えた無限なるものの表現だとすれば、言語による芸術である詩、さらに書き手である詩人は矛盾を含んだ存在である。ことばそのものが無限と有限の境に成立する危うさをもつのだから、真の詩とははるかに遠い、到達しがたい地点にあるのではないか。そのような思いから、数学のことばを借りて「無限遠点」と命名した。
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 この言葉を一番具現化させているのが紹介した「消えた詩人」だろうと思います。「消えた詩人」のあとに残された「風に揺れる鉛筆」。それは「人」が消えて「詩」だけが残っているとも読み取れます。詩人とは本来、詩を書くだけの人であって、残すべきは詩のみ。人は残らない方が良いのかもしれません。曲は残って、作曲家・作詞家の名はいずれ忘れられていく…。それを名曲と言うのではないでしょうか。同じことが詩でもいえるかもしれません。詩は「天井から垂れた糸に結ばれ、吹きこむ風のま/まに動いている」「鉛筆」、詩は「風がゆる」ければ「いつもより手間取って」しまうもの。やはり「真の詩とははるかに遠い、到達しがたい地点にある」ものなのでしょう。おもしろい見方で、考えさせられる作品であり詩集でした。



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