きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2007.2.8 自宅庭の白梅




2007.3.1(木)


 3月最初の今日も散文な日。郵便局、市役所、銀行と回って最後は自動車修理工場。修理ではなく新車の購入をお願いしてあります。3月9日に納車だそうです。そう思っていま乗っている車の走行距離を見たら、8万2千キロほど。13年間でそれだけですから、年平均6300キロというところ。20代に比べると3分の1か4分の1ぐらいでしょうか。まだまだ走れますけど、ここで買わないと生涯買えないでしょう。また13年乗ると、私は70歳になります。生涯最後の車と思っていますので、ここはマニュアル・トランスミッションで頑張ります(^^;



詩誌『ERA』8号
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2007.3.31 埼玉県入間郡茂呂山町
北岡淳子氏方・ERAの会発行 500円

<目次>

小島きみ子/(mama) 4         北岡淳子/祈る 6
清岳こう/ウエディングベルを鳴らせ 9   佐々木朝子/登攣 12
吉野令子/途上から、そして悼歌にかえて 16  吉田義昭/自然の法則 18
橋浦洋志/虹の地殻 21           貝原 昭/まだ時間がある 24
中村洋子/ぶらんこ 26           田中眞由美/世話人の想い 28
藤井雅人/否定 32
抒情とは何か3 山田直/現代詩のなかに散文詩のトポスを求めて 34
ユビキタス
清岳こう/へちま・かぼちゃ・少年の梨 42
佐々木朝子/ブローチ――「時」のかたち 44
瀬崎 祐/私が走ることについてのささやかな考察 46
エッセイ 岡野絵里子/野をわたる声――鈴木東海子『詩の尺度』―― 48

竹内美智代/戦い 50            中柑不二夫/K病院救急病棟――夏・その手の記憶―― 52
岡野絵里子/地球に降る雨 55        瀬崎 祐/窓都市 58
田村雅之/みちの奥の、ひとばめん 60    大瀬孝和/冬の祭り 62
日原正彦/高い樹低い樹 64         小川聖子/十三夜の逆襲 二重人格 66
畑田恵利子/平和 68            川中子義勝/連祷・ぶなの森で Ettersberg 70
連載 日原正彦/断章3 76
編集後記 79



 まだ時間がある/貝原 昭

もう時間がない
世の多くのだれかが言った
庭の隣りの小さな垣根のむこうの
胸を病む近しき酒友の徒が言った
(その酒友は はるか昔日 中天の月夜に逝った)
いや ぼくの預り知らぬ遠き古の詩人も言った
そして 名も知らぬ若き世人までもが…

この世の戯れにその言の葉は発せられたのか
いまだ その言の葉の真意は分からぬまま
ぼくの心は 残された時間を またぞろ
この身にとり戻せないでいる
ああ だが 水の流れのごとく あといくばくかは
ぼくにも生き永らえる時間はある
それは ぼくの傍らの一匹の秋の蝿が知っているだろう

だれかが言った その言の葉の
もう時間がない≠ニいう
人の世の由々しきもの謂いを証すのは
しずかな死を前にした秋の蝿の羽音だと
天涯の妻や子が 自らの血の音ととも教えているというのに
ぼくの行く末を ぼくはまだ知らないでいる

この日まで その行く末を見据えぬまま
とおく亡母
(はは)の匂いのする蒲団の中で 今朝(きょう)も目が覚めた
ああ まだ酒と詩を書く時間がある

 「もう時間がない=vという「言の葉」は確かに「世の多くの」が言い「遠き古の詩人も言」い、私も言います。それほど重きを置いて言っているつもりはなかったのですが「まだ時間がある」と題されると、フと立ち止まってしまいます。逆転の発想と言ってしまえばそれまででしょうが、ここでは「もう時間がない≠ニいう/人の世の由々しきもの謂いを証すのは/しずかな死を前にした秋の蝿の羽音だ」と書き、人間の「行く末」なんか人間には判るものかと突き放しているように思います。そんなことよりも「ああ まだ酒と詩を書く時間がある」と思え、と言われてしまいました。現代日本の李白の言、と受け止めて「酒と詩」の日々を続けたいと思いました。



詩と評論・隔月刊『漉林』136号
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2007.4.1 川崎市川崎区
漉林書房・田川紀久雄氏発行 800円+税

<目次>

こっち/長谷川忍 4            出て湯の色/遠丸 立 6
影のサーカス 13/坂井信夫 8       浜川崎の月/坂井のぶこ 10
瞽女 1/田川紀久雄 12          報告/逸見猶吉 22
短歌 渋面/保坂成夫 14
エッセイ・書評 特集 坂井信夫詩集『<日常>へ』を読む
坂井信夫詩集『<日常>へ』を読む「奇妙なオブセッション」の寓話/小原宏延 16
釘男のいる風景/上手 宰 18
坂井信夫詩集『<日常>へ』を読む/北村朱美 20
尾崎寿一郎著『逸見猶吉 火襤褸篇」書評 逸見猶吉へのデディケーション/田中益三 26
後記 37



 こっち/長谷川 忍

いつも
あっちにいる。

あっちで
巷を歩き
仕事をこなし
誰かをこづき
誰かにこづかれ

時々は、嬉しいこともあって

それで、お酒を飲む。
いつの間にか
こっちに来ている。

日本酒でも
ウイスキーでも
ズブロッカでも
よい。
(泡盛でもいいぞ)

ただ
愚痴ってはいけない
つるんでもいけない
深酒なんて、もってのほか
独り、密やかに、もぐるのだ。
なぜだか、望んでは決して来られない
気がつくと
来ている。

こっちに来たからとて
どうにかなるわけでは、ないのだが
妙にしっくりしている自分
というやつを見つけ
つい苦笑ってしまうのだ。

限を細め
あっちを、覗いてやろうか。

 「あっち」と「こっち」の区別ですが、「あっち」では「巷を歩き/仕事をこなし」ていますので現実の世界と考えて良いと思います。それに対して「こっち」は「なぜだか、望んでは決して来られない」けど「気がつくと/来ている」世界。夢や幻想、酔いの世界と捉えられるでしょう。そのふたつの世界を彷徨いながら「こっち」に来ると「妙にしっくりしている自分/というやつを見つけ」しまう。要は酔っ払いのうたですけど、最終連の「こっち」の世界から「限を細め/あっちを、覗いてやろうか」というフレーズが効いています。酔眼で見る長谷川忍の世界…。また一緒に呑みましょう(^^;



詩誌『たまたま』14号
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2007.3.1 東京都多摩市
小網恵子氏方・たまたま本舗発行 300円

<目次>

吉元 裕/切り捨て御免ね・深層パンチ 2  松原みえ/ギンナン・湯気の向こう・さより 6
富山直子/キズ・ドラマ 12         李 美子/さいたま新都心という名の駅・通勤電車で 16
皆川秀紀/ピースエイク・希望が在るから 22  おのめぐみ/芯・大寒・お花見 26
丸山緑子/炬燵・動く耳 32         小網恵子/書庫・ひとやすみ 38
エッセイ
はじめまして/松原みえ 42         詩集吹聴/丸山緑子 44
怖くて眠れなかったことがある/おのめぐみ46 冷蔵庫/富山直子 48
朝の三十分/小網恵子 50          ウイルキンソン…/吉元 裕 62
深夜、チェジュの病院で/李 美子 64
詩集紹介
山村由紀詩集『風を刈る人』を読んで/小網恵子 57
 表紙・吉元 裕



 切り捨て御免ね/吉元 裕

あ、
こんなところに
返り血を浴びている
いささか調子にのったことば遣いで
知らずにまたもや撫で斬った
電車のエアコンに乾いて
あの人の血片がサワサワと揺れている

お昼ご飯のときであろうか
はたまた帰り道であろうか
今月に入って早、三人目である

攻めに溺れる弱さである
弱いが故に人を傷つけるのである

達人と呼ばれる人のことばは
金魚に化けてひらひら泳いでゆくという
魚が人を斬る道理は無い
懐に諸手を突っ込んで
ことばが湧いてくる穴っぽこを覗いてみる
まだまだ修行の道のりは険しそうだ

そして
腕をくすぐる血片の感触に
仇討ちの予感を覚えるのである

 「ことば」による「撫で斬」りを書いていますが「今月に入って早、三人目である」であるという自覚に、この詩人の見識があると思います。それは端的に第3連に出ています。「達人と呼ばれる人のことばは/金魚に化けてひらひら泳いでゆくという」という視点は、私も学ばなければいけませんね。誰にとっても「まだまだ修行の道のりは険し」いのかもしれませんが…。最終連の「仇討ちの予感」もタイトルの「切り捨て御免ね」も生きています。今号の巻頭作品で、この詩誌の方向性や特徴をよく見せているとも思いました。



詩とエッセイ『橋』120号
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2007.3.1 栃木県宇都宮市
橋の会・野澤俊雄氏発行 1000円

<目次>
作品T
◇地球は何処まで行くの?/酒井 厚 4   ◇凛として眩しく/大木てるよ 6
◇月見草・他/簑和田初江 8        ◇風と抜ける/國井世津子 10
◇二人の読者・他/和田 清 12       ◇眼/斎藤さち子 14
エッセイT
◇原野/瀧 葉子 16            ◇出逢いと別れ/鈴木輝代 18
◇拝辞/大木てるよ 19           ◇囚人の住処/酒井 厚 20
◇猛獣使い/冨澤宏子 22          ◇母の導き/斎藤さち子 23
◇温もる/江連やす子 24          ◇私の周辺/高島小夜子 26
◇ビートルズを聴いて/若色昌幸 27     ◇小雀通信(番外)/戸井みちお 28
作品U
◇場所・他/都留さちこ 30         ◇すすき・他/鈴木輝代 32
◇一月六日/江連やす子 34         ◇風になって/相馬梅子 36
◇朝・他/高島小夜子 38          ◇二人・他/瀧 葉子 40
エッセイU
◇書籍と人生/相馬梅子 42         ◇香を友として/野澤俊雄 44
◇流転/和田 清 46            ◇微笑仏/そのあいか 47
◇順不同私的国語辞典/草薙 定 48     ◇生きることに飽きない/國井世津子 50
◇契約/山形照美 51            ◇小さないのち/簑和田初江 52
◇金魚のなみだとうっかりはげ/都留さちこ54
作品U
◇一歩から/冨澤宏子 56          ◇佐原囃子/草薙 定 58
◇掟/そのあいか 60            ◇コンサート/若色昌幸 62
◇日本に住む少年/山形照美 64       ◇巣箱/戸井みちお 66
◇桜落葉/野澤俊雄 68
評論 品格をもって謙虚に誠実に生きる−藤沢周平に学ぶ−/宇賀神忍 70
橋短信 風声/野澤俊雄 74
「橋」データ 「橋」目次総覧(一〇〇号〜一一九号)/(担当)草薙 定 75
受贈本・詩誌一覧 91
編集後記 92
題字・中津原範之/カット・瀧 葉子



 地球は何処まで行くの?/酒井 厚

渋谷の夜の街
娘の背中を見失わないように歩く
何処から若者が集まってくるのか
まるで地の底から湧いてくる

娘と観たロープという演劇
野田秀樹 作・演出の
ああ 面白かったと娘の第一声
ああ 疲れたと私の第一声

デパートに入る
ここも若者がうようよ
買いたいものは何も置いてない店だ
過去のおばあちゃんが迷い込んだ
娘がだらしない服を着ていると思ったら
みんな髪は崩れかけ
戦争中のゲートルみたいな細いズボン
折れそうに細くて高いヒールの靴
首からジャラジャラや
マフラーを垂らして
服装のステキさがわからない
装い品はその時代へのパスポート
完全に乗り遅れたな

地球はこの若者たちに乗っ取られた
乗っ取ったと自覚していない若者
飢えた瞳をむいて歩いている
かつて私もそうであった
こうして乗り継がれて
ここまできた地球
彼等にまた乗り継がれて
何処まで行くんだろう

パスポートが手に入らなくて
幾分寂しく 幾分ほっとして
日本語とは思えない
超スピードでアジってる宣伝
若者語のイントネーションの音波
うねる街を歩いてゆく

 創刊から42年、120号の記念号です。100号から119号までの「目次総覧」がありました。エッセイもほぼ全員が書いて、92頁という大部になっていました。紹介したのは記念すべき号の巻頭作品です。「買いたいものは何も置いてない店」のある「渋谷」。「地球はこの若者たちに乗っ取られた」と嘆きながらも「かつて私もそうであった」と認識するところにこの詩人の誠意を感じます。
 「日本語とは思えない/超スピードでアジってる宣伝」というのも確かにその通りですね。私も20歳の娘の言葉が判らず、ときどき教えてもらいます。「パスポートが手に入らな」いのかもしれません。しかし「こうして乗り継がれて/ここまできた地球」なのだと思いたいです。



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