きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2007.2.8 自宅庭の白梅




2007.3.15(木)


 新しいクルマの慣らし運転で、小田原から国道1号線を下って三島まで行ってみました。天下の険・箱根越えのルートです。通常は箱根湯本から箱根新道か箱根ターンパイクという有料道路を通りますけど、今日は1号線だけを使ってみました。箱根駅伝のコースで、このルートはたぶん5年ぶりぐらいだろうと思います。急カーブの連続です。
 まだ200kmしか走ってないので、かなり抑えましたが登りは思った通りの性能で満足。予想外だったのが降りです。降りのコーナリングがクルマの性能の分かれ道だと思っていますけど、コーナーの切れの良さに驚きました。ノーブレーキで5速から4速、せいぜい3速で充分でした。シフトダウンでカーブに突っ込み、カーブの途中からシフトアップで加速。思い描いた通りのコーナーリングにちょっと痺れましたね。
 その性能はひとえにフルタイム4駆起因です。理屈の上でも遠心力に抗します。本当はパートタイム4駆が欲しかったのですが、これならフルタイムでも文句がないと思いました。ABSを効かせる運転もしてみて、これも合格。13年前の、窓開閉も手動のクルマから比べれば進化したのは当り前でしょうが、それにしてもこの10年の進化はすごいなと実感しました。まあ、せいぜい中年暴走族にならないように注意しましょう(^^;



詩マガジン『PO』124号
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2007.2.20 大阪市北区
竹林館・水口洋治氏発行 840円

<目次>
没後一年 特集 茨木のり子
茨木のり子について/有馬 敲…9
さわやかな眼球――茨木のり子の作品を読む/瀬野とし…20
茨木のり子論 日本現代詩の貴重な財産/佐古祐二…26
気質ということ 茨木のり子ノート/片岡文雄…40
青春詩人・茨木のり子 戦争体験からの出発/藤原節子…42
詩のこころを読む/寺沢京子…49
球を蹴る人――地と天と人類の意志/藤谷恵一郎…54
茨木のり子――大輪に咲く詩に魅せられて――/丈六友子…55
茨木のり子/三方 克…58

夏至/瑞木よう…59             口笛/御庄博実…60
詩人の色/葵生川玲…62           朝(あした)に消える霧、夕べに消える露/青木はるみ…64
迷路/佐藤勝太…66             ケヤキの葉/日野友子…67
端境/牛島富美二…68            夕陽感応/川中實人…74
ボールの行方/星乃絵里…76         愛の季節/佐古祐二…77
ことばの流れのほとり/梶谷忠大…78     切り通し・廻る/藤谷恵一郎…84
乳房/比留野セイ…90            高校野球/水口洋治…93
孫は今/与那嶺千枝子…94          初冬・ジダンのジダンダ シンジョウのシンジョウ/蔭山辰子…97
顔赤らめクスクス…――塚田中応援歌のこと/堀諭…100
嫉妬(ジェラシー)・紅い花/北山りら…106
.  この夏の雄姿/山田満世…109
あるかけだし詩人かけだし歌人の独り言・蓮の花のような/清沢桂太郎…110
遠い花火/丈六友子…116
.          カリンとわたし・お話畑にようこそ/関 中子…122
旅行・ひまわり・詩・蝉/中野忠和…126     冬のノック/長谷川嘉江…133
ビッグバン/加納由将…134
 *
扉詩 海を見つめる/佐相憲一…1
ピロティ 螺旋の夢/河野 甲…7
舞台・演劇・シアター 女お仕打ち一代記/河内厚郎…70
エッセイ 続アメリカ黒人詩の流れ25 堀 諭…72
一編の小説 高見順「軽い骨」/宮内征人…86
一冊の詩集 村上久雄著『至福の時』ナチエラリズムの詩人に魅せられて/蔭山辰子…88
ビデオ・映像・ぶっちぎり 出口のない海/藤原節子…102
この詩大好き 堀雅子――インドへの旅の詩――/秋野光子…103
英語詩日本語訳 「なお雨は降る」イーディス・シットウェル/寺沢京子訳…119
竹林鋸BOOKS 堀諭著・詩集『ぶる〜★の〜と』
 ――どのページにもいい風、新しい風が吹いている。/尾崎まこと…120
詩誌寸惑 散文はどのように書かれているのであろうか/モリグチタカミ…136
ギャラリー探訪 ゆかりの詩人・俳人の詩句をテーマとした名筆研究会展/瑞木よう…138
読者投稿桶*POランド 谷澤りつ子「背中」 評‥佐古祐二…139
 *
▽会員・誌友・定期購読募集/「PO」例会…105△
▽広告掲載案内/「PO」育成基金…121△
▽「PO」ホームページ/詩を朗読する詩人の会「風」例会/プラネッツにご投稿を…140△
▽受領誌一覧…141 執筆者住所一覧…142△
▽編集後記…143△



 迷路/佐藤勝太

地下街を歩いていて
四つ角や三叉路を曲っている間に
地下鉄の改札口に迷ってしまった
方角も定まらず右往左往
居並ぶ商店に眼を奪われて
立ち止まったショーウインドーの中に
その女(ひと)は和服姿で佇んでいた

若い日 恋いこがれた女の面影がゆらゆら
立ち尽して見詰めていると
目許が微笑っているように
懐かしさが明滅した
あの女に愛を教えられた
そのためにさ迷った季節があった
仕事も替わった
迷路の途中で
マネキンに出逢って
余波を振り切り
男は訣別のウインクをした
浮足で靄の向こうに
ようやく行先の
入口が見えてきた

 私の住んでいる集落ほどもある新宿や八重洲の地下街で迷うことはよくあることで、しかし詩にはなりませんでした。誰でも覚えのあるそんな体験を詩にしたところが素晴らしいと云えましょう。しかもそれを「若い日」の「さ迷った季節」と重ね合わせて、青春の「迷路」を見せてくれました。これも大方の人には覚えのあることでしょう。後半の「余波を振り切り」という詩語も佳いですね。「余波」という言葉はなかなか出てこないと思います。ああ、そういえば「余波を振り切」るまでに何年も掛かってしまったな、と苦い思いも今は「ようやく行先の/入口が見えてきた」ところなのかもしれません。きちんと纏められた佳品だと思いました。



詩誌『北国帯』187号
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2007.3.15 石川県金沢市
新田泰久氏方・北国帯編集所発行 500円

<目次>
■詩
詩三篇(旧号より)…表紙裏
家路…彦坂まり…2             見えないものが――…岡田壽美榮…3
帽子屋さん…畑田恵利子…4         新年 空耳…稲元幸枝…5
測られない距離…中村なづな…6       同義語…細野幸子…7
ねこやなぎ…栃折多鶴子…8         かきつばた…長山鈴子…9
フウセンカズラ、他…新田泰久…10      BOKEの季節…有澤かおり…12
■詩短評…洒向明美…13
■短篇 あとつぎ…下林昭司…14
■エッセイ 北国帯と小心者…中村伸一郎…17
■詩
シルクロード…柴山 優…20         移民…近岡 礼…21
五月の詩、他…広岡守穂…22         白日
(ひる)の月、他…波 節子…24
老いの絶対時間…中村伸一郎…26       川の流れのように…タナカただみ…28
或る日、或る時…松沢 徹…29
■「北国帯」瞥見(17)…新田泰久…30
後記



 測られない距離 −G・Tに− 中村なづな

不遇だったもとラグビー選手の病室は
その日も空っぽだった

 「日没直前、目の前の山から数百羽の烏が一度に
  どっと飛び立って、城の森に帰ります。うねる
  ような痛みが引いたあとで、そこから咲いたよ
  うに上る月を見るのは、ひとしおです」

あらあらとした葉書のなかの山が
広い窓ガラスの向うにあった
文鎮をおいたメモ用紙に
緑いろのサインペンで
なにか書き散らされている

花が自分の重心をもて余しているような
小さな水溜りで
水浴びしている小鳥を
スローモーションで見るような 二行

案の定
かつて鎧を着ていた犀が
黒褐色になりながら
喫煙室に横たわっていた
スタジアムを猛進した力はとことん奪われて
 「苦いけど 吸わないとね――」
あとは何にも喋らない
誰もいなくなった芝生に残るぬくいざわめきにいる
春めいた雲が往き来している空

いっさいのものが
あるともないともいえない紫色に煙る聖堂を
やがて 思いっきり蹴り上げて
場外に出ていく犀――
に 烈しく手を振る

 「不遇だったもとラグビー選手」の人間像がよく出ていると思います。特に「あとは何にも喋らな」くて、その意識は「誰もいなくなった芝生に残るぬくいざわめきにいる」というフレーズによく象徴されています。タイトルの「測られない距離」は、ラグビーの「思いっきり蹴り上げて」到達するゴールだと解釈されますが、「烈しく手を振る」作中人物との距離と採っても良いかもしれません。「場外に出ていく犀」は退院と採ってよいのかどうか、そこはまだ迷っています。「あらあらとした葉書のなかの山」の中の「あらあらとした」は「鎧を着ていた犀」にも通じていると感じました。短い詩の中にイメージが何層にも重ねられた佳品と云えましょう。



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