きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2007.2.8 自宅庭の白梅




2007.3.23(金)


 上野の東京都美術館で開催されている「大調和展」を観てきました。日本詩人クラブの会員でもある女性から入場券をいただいており、会期は明日までですので慌てて行ってみました。大調和会は1927年に武者小路実篤が中心となって第1回の展覧会が開かれたもので、途中で中断はあったものの今回で第46回という歴史ある会です。3月3日に開催された日本詩人クラブ研究会講演「詩と美術」で講師の天彦五男氏が大調和会にも触れて、私はそこで初めて会のことを知りました。

 そんな興味で行ってみたものですが、展示総数440点ほどという凄い展覧会でした。ほとんどが具象で、風景や人物を描いたものが多く、その面では安心して観ていられました。私に入場券をくれた女性の作品は、太い樹木の根元を描いた100号ほどのもの。迫力があって良かったです。その他では梶原さんという男性が描いた「トーキョー・シティ・ブルース」に注目。半抽象と言ってよいでしょうか、このグループの中では異質な作品です。写真の手振れのような顔、夜の高層ビル群、色刷りのテストパターンなどが組み合わされており、発想の豊かさを感じました。

 都美館ではちょうど「オルセー美術館展」もやっていましたから、こちらも見学。こちらは人が多くて閉口しました。私は他の人より背が高いので、人混みの後からでも見えましたけど、背の低い年配の女性などは可哀想なほどでした。作品はポスターにもなっているマネの「すみれのブーケをつけたベルト・モリゾ」、そのベルト・モリゾ自身が描いた「ゆりかご」、アルベール・バルトロメの「温室の中で」などが良かったです。印象派の絵は見飽きた感じもあるのですが、やはり佳いものは佳い。原画で観るとその繊細さ、大胆さに改めて見入ってしまいます。会期は4月8日まで。よろしかったらお出掛けください、、、って、ここで宣伝してどうする!



会報『新しい風』7号
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2007.2.25 川崎市川崎区
川崎詩人会・卜部昭二氏発行 非売品

<目次>
詩 残像/新井翠翹 1
  蜂よ/卜部昭二 1
  ジョムソンのスズメ/金子秀夫 1
近刊伊藤二美江第三詩集『花びらの声』に寄せて/金子秀夫 1
輝け9条!詩人のつどいin横浜 開催 1
しおかぜ・予告 1
「慰安婦」マルディエムの告発/短歌・梅田悦子 文・吉池俊子 2
エコール・ド・川崎展のことなど/出海渓也 2
'05年「エコール・ド・川崎展」記念講演(上)/針生一郎 3
2005エコール・ド・川崎展出品作品より 夏木晩夏/針生一郎 4
浜川崎の風景/坂井のぶこ 4
活動概況報告(6)/卜部昭二 4



 残像/新井翠翹

外界と遮断された館内に充満する
叫喚と死臭のなかで
そこだけ静寂な一点
どんな饒舌よりもはるかに強く
人間の過ちを告発して
六十年
黙し続ける炭化した胎児の標本

私は見る
昭和二十年八月九日
午前十一時二分
長崎
上空で確かな指が決意したように
冷たい侠気に取りつかれた
何本もの指が
誤ってボタンを押すのを

閃光に射ぬかれた
瞳孔の奥に
くっきり映っている残像
炭化した胎児に重なる地球

大きな手が
資料館の片隅に残す
嘗て地球であった地球
今はじめて
響きわたる泣き声

 私はまだ行っていないのですが「長崎原爆資料館」を見学して書かれた作品だと思います。「六十年/黙し続ける炭化した胎児の標本」は、確かに「どんな饒舌よりもはるかに強」いものでしょう。第2連の「誤ってボタンを押すのを」というフレーズからは、あれは間違って押されたものだという作者の思いを感じます。最終連の「今はじめて/響きわたる泣き声」も見事です。胎児は私たちに見られて初めて泣くことが出来ます。その胎児を私もいずれ見たいと思った作品です。



詩誌『軸』88号
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2007.3.20 大阪市浪速区   500円
佐相憲一氏事務局代表 大阪詩人会議発行

<目次>

あかずの扉/幽間無夢 1          ナイルパーチ/竹島 修 2
土に返りたい/木村勝美 3         忘れていたこと/和比古 4
少女時代/みくもさちこ 5
新会員作品
傷/西田彩子 6              転生・壷が見つめていた時代/猫だましい 7
エッセイ 夏の蝉しぐれ/藤本数博 8

美しきかな駅前通り/山本しげひろ 10    津波/佐古祐二 10
しるし/いしだひでこ 11
エッセイ 一冊の古本/脇 彬樹 12

僕の功山寺決起/畑中暁来雄 14       眩しくて・ひとりで/椛島恭子 15
大統顔、確たる証拠を出してください/しかやまぶん 16
日常を生きる/迫田智代 19
投稿作品 何もないようで、何かある/馬場利和 19
エッセイ 絵を描く/松本千鶴子 20

灯を/松本千鶴子 21            バイロン/臼杵かぼす 22
貧乏人/中井多賀宏 24
詩と写真 ひよどりの自分/原 圭治 25

おほさか慕色−二題/玉置恭介 26      音楽/おれんじゆう 28
娘に/やまそみつお 28           皆「‥ではないものなのだ」・異邦人の見た日本・短歌七首/清沢桂太郎 29
エッセイ 「数」あれこれ/山本しげひろ 32

わが臣民よく忠によく孝に(二)/浅田斗四路 34 百回登山/脇 彬樹 35
エッセイ
映画「硫黄島からの手紙」を鑑賞して/もりたひらく 36
タイミングと主観は向かい合わせ・所要時間は同じだが/必守行男 39
文学と歴史の道で/佐相憲一 40

会員新刊書紹介 中井多賀宏詩集・ひつもりいくお絵本/畑中暁来雄 43
詩 冬の庭/瀬野とし 44
詩と写真 縮景園/幽間無夢 45
詩 心臓の星・贈りもの/佐相憲一 46
「軸」87号感想集 48
受贈誌・詩集等紹介 52
お知らせ「軸」89号原稿募集・カンパ大募集 54
編集後記
表紙絵/山中たけし



 美しきかな駅前通り/山本しげひろ

駅に降り立つと「コウバン」がある
その横に日本政府公認賭博のパチンコ屋
チンジャラジャラの重奏で道行く人を誘う
ひしめく一杯飲み屋が誘うように旨そうな匂い
ホルモン焼き屋の壁全面に
肝 心臓 舌 唇 目玉 みそ たぶ
子袋 ほと 玉 竿 ふぐり などなどと
ウシのものか ブタのものか
あるいはイヌ?もしかしてヒトのもの?
・・・・
どて焼き屋の店先ではぐつぐつと
  ・・
そのすじのものが肩を怒らすように煮たっている
     ・・・・・・
店の裏口は庶民のための消費者金融の看板
「プロ魅栖」「哀降る」「嶽腐死」「檻屈す」「痾混む」
「焔の霊苦」などが並ぶ
パチンコですった連中も駆け込むとか
数日前
退職金を使い果たし闇金に追われた老夫婦
パチンコ店の男女各々のトイレで首を吊った
生命保険をかけさされていなかったか
臓物は残っていたか

 「駅前通り」の「美し」い風景をうたった作品ですが、考えてみると「ホルモン焼き屋の壁全面に」書かれているタン∞ハツ≠ネどの品書きは「肝 心臓 舌 唇 目玉 みそ たぶ/子袋 ほと 玉 竿 ふぐり などなど」なんですね。「もしかしてヒトのもの?」とまでは思いませんが、「臓物」であることを改めて認識します。その「臓物」を最終行で出して、この作品の怖さを一段と深めていると思います。「プロ魅栖」「哀降る」「嶽腐死」「檻屈す」「痾混む」「焔の霊苦」には笑ってしまいましたけど、サラ金の特徴をよく現していると云えましょう。全部、判読できました。この手法も面白いです。
 「生命保険をかけさされていなかったか」は方言なのか誤植なのか判りませんけど、生命保険をかけさせられていなかったか≠ニ読み取りました。怖い作品です。



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