きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2007.2.8 自宅庭の白梅




2007.3.24(土)


 今日は生れて初めてのショックを受けました。ETCのJCBカードの申込みをしたのですが「誠に残念ながらご期待に添えないことになりました」という葉書が来たのです。
 新車になったのを機に有料道路の支払いに便利なETCを導入しようと思いました。クルマの購入手続きをしてくれた修理工場のオヤヂさんの勧めるまま、決済をJCBカードに申し込んだのですが、そういえば職業欄に「無職」と書いた覚えがあります。それが災いしたのでしょう。そう思ってカード会社のHPを調べてみると、契約者は職業を持っていることなんて書いてあります。そうか、世の中は無職は相手にしないんだと改めて気付かされました。ようやく失業者らしい気持になってきました(^^; 悔しいから次の機会には著述業≠ニでも書いてやろう!

 クレジットカードはVISAを持っています。それを使えばETCが取り付けられますから問題はないんですけど、審査でハネられたという経験は生れて初めてです。サラリーマン時代はそんなことも気付かずに過ごしていました。やっと世の中に出たという気になりました。持っている知識、能力をフル動員してあたるか! いやいや、そんな無駄な努力はせず静かに読書…。二つのせめぎ合いの中で、やっぱり両方とも必要かなと思っています。JCBさん、ありがとう、いい経験をさせてもらいました。二度とお宅は使わないけどね。



中野朱玖子氏句集『滅びや遊べ』
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2004.4.1 東京都千代田区 角川書店刊 2900+税

<目次>
序 小寺正三 1
四季淡彩
春夢 15
.       青嵐 19
白露 23
.       玄冥 27
讃 原初回帰I 「髑髏百句」 31
花筐
(はながたみ)
春の賦 69
.      夏の賦 87
秋の賦 103      冬の賦 120
春秋余韻 136
風声
僧院 147       糞
(まり) 149
花ふぶ記 151     花と少女 154
少年と果実 156    ドライフラワー(干華
ひか)160
久女惜春 164     初夏へ 168
紫陽花 172      秋野 I 175
秋野 U 178     華 180
花野闇 184      阪神淡路大震災 187
讃 原初回帰U 「髑髏二百句」 197
四季幽韻
月 237        人造湖 241
古物春愁 247     星空 259
無辺際 263
あとがき 267



 秋の賦

鷺草や手すさびなせる神います

儚さを紫衣にたよりし山桔梗

秋の蝶はかなき舞の白幻夢

淋しさは形に舞えり秋の蝶

秋扇水なき鮎の錆びゆけり

忘れ里ゆめうつつ聞く盆太鼓

盆踊りよもや死人も笠の内

過去帳の面影もあり盆の月
       
ほ し
秋の夜の真下の地球を踏めるなり

佳人とは未だよばれず花芙蓉

秋草の露それぞれの玉ひびき

露草は天を千切りし彩ならむ

羞じらいて七草に入る女郎花

喘ぐ馬車紅葉の興のままならず

キリストも仏陀も一過月の下

孤りして天地に透る虫の鈴

秋の闇白露生める何を秘す
     
とつくに
飢餓の子ら異国にあり菊薫る

社朽ち神も老いたり村の月

氏子去り蔦もみじのみ里の紅
          
やまが
月醒める過疎の村あり山家なく

月と牛昨日のむかし過疎やまず

月光や牛小屋に睡る耕 耕耘機

秋燕や巣の藁しべに風抜ける

祭り果つこれよりただに行く秋ぞ
            
かさ
月光や軋かれし猫のうすき量
       

淋しさや秋より出ずる小蝶かな

風に落つ木の実いくつや古瓦

乱れ萩水面とどくやとどかざる

女身なりき抜毛の秋を梳きにけり

萩ひそと白足袋のうえ零れけり

月光にすこし動きぬ蝋人形

秋の土手老狗がたどる伽のあと

瘠せ犬の乳房ぶらぶら秋夕陽

月の木曾時を束ねて風探し

ビルの街砕けてとどく月明り

酔眼の月とたわむる街の底

月赤しエログロの街いま無人

屋台酒腰だけに吹く秋の風

月光に馬場しずかなり夢の跡

高層の秋灯いのち薄くあり

鶏頭を残して墓地の草を抜く

柿の実の捨てること知る野分かな

花すすき狂わせて風老いにけり

声たてぬものが死にゆく秋の山
          
 すが
遠からず死がくる虫の音の清し

滝壺に巻かれ紅葉の血を吐けり

こおろぎの真昼に鳴けり吾も孤り

澄めるなか椿は堅き実となりぬ

柿一つ天地に赤き遠野かな

 私は俳句は門外漢で、佳い句を選んで紹介するなんてことはできません。私なりにこの句は佳いのではないかと思った作品が多い、「花筐」の「秋の賦」の全句を紹介してみました。俳人の皆さまのご鑑賞をお願いいたします。
 私なりに佳いと思ったのは「秋草の露それぞれの玉ひびき」「社朽ち神も老いたり村の月」「萩ひそと白足袋のうえ零れけり」「屋台酒腰だけに吹く秋の風」「鶏頭を残して墓地の草を抜く」「遠からず死がくる虫の音の清し」などです。なかでも「社朽ち…」は神も老いるという発想に惹かれました。「屋台酒…」は腰だけが見えている屋台の風情と、そこで呑む人の哀歓まで伝わってくるようです。著者は女性ですが漢気の感じられる句集です。
 なお句集のタイトルは、巻頭に「花びらの滅びや遊べ花吹雪」の句があり、ここから採られているようです。



中野朱玖子氏歌集『乱 鈔掠
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2004.4.1 東京都千代田区 角川書店刊 2700+税

<目次>
乱――華がたみ 7
乱――弄花
絹 29        陶 34
そして…… 36
乱――炎上
わらべ幻灯 41    播磨野 44
乱――夢しずく
舞う 53       古都 56
夢 62        幽けくて 65
乱――紫怨抄
紫式部 69      碑 78
虫供養 84
乱――現し世
少年 89       火蛾 93
映し絵 98
乱――修羅
悲器 105
.      巡る世に 110
「花のなごり」の……118
乱――地異T
一九九五年 阪神淡路大震災・月抄 抄録 123
乱――地異U
有馬道 195
.     外科病棟 200
ルミナリエ 205
乱――いかに閉ずらむ 209
あとがき 215



 ルミナリエ
                   

この街の惨事鎮めむルミナリエ希望と仰ぐ瞳も遊ばせつつ
                   
つよ
忘却にあらねど街は華やげり生きて残るに勁きもまた人
                  
まぶ
大地震やがてうたかたルミナリエ希望に眩しそれも闇間に

ルミナリエ満天の星つねにあるを人は仰がず虚につき惑うも

つかの間の光に癒し浮かされむ心の闇は問わず持ちつも

その闇に憑かれ求むる光彩の幻視につなぎ生きむ束の間

 短歌も門外漢で、紹介の人ではありませんけど、「乱――地異U」の「ルミナリエ」全歌を転載しました。「乱――地異T」「乱――地異U」ともに阪神淡路大震災の体験をもとに詠われています。「ルミナリエ」はご存知の通り、震災復興のシンボルとなったものです。「忘却にあらねど…」の「生きて残るに勁きもまた人」に感動します。「つかの間の…」の「心の闇は問わず持ちつも」は、詩人・俳人・歌人としての著者ならではのものと受け止めました。



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