きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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百日紅(さるすべり)




2007.4.6(金)


 昔の職場の連中と呑み会。とは言っても退職者は私だけで、あとの5人は全員現役です。30代の女性から私より一つ上の先輩男性まで、年齢はけっこう幅があります。私が退職してからこれで3回目の呑み会だったかな? バスで10分という近さが何よりです。それが災いして0時過ぎまで呑んでいましたけどね。東京で呑むと帰ってくるまでにすっかり醒めてしまうのですが、地元では酔ったままで帰宅することになり、ぜんぜん覚えていません。二次会には女性二人と私だけで行ったのですが、はて、どこで呑んだっけ? タクシーで二人を送って、家に着いたことは覚えている…。ま、今回は女性陣も以前のような派手な振舞いはしませんでしたから、店に迷惑を掛けることもなくて良かった。この次はビアパーティーだろうな、と思います。遅くまで遊んでくれて、みんなありがとうね!



隔月刊詩誌『叢生』149号
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2007.4.1 大阪府豊中市
島田陽子氏方・叢生詩社発行 400円

<目次>

さくら貝/島田陽子 1           微香/下村和子 2
けったいな景色/曽我部昭美 3       みんな平和が好き/原 和子 4
扉/藤谷恵一郎 6             使い捨て/福岡公子 7
さあ 噛むで/麦 朝夫 8         おぉー寒いさむい/八ッ口生子 9
幽霊占地パック/毛利真佐樹 10       雑学的人体論/山本 衛 12
語り部/由良恵介 13            「美しい心」/竜崎富次郎 14
裁断/吉川朔子 15             海から/秋野光子 16
甘夏/江口 節 17             僕らを巻き添えにしないで!/姨嶋とし子 18
初冬の庭/木下幸三 19           オールドイズビューティフル7/佐山 啓 20
本の時間 21     小径 22       編集後記 23
同人住所録・例会案内 表2
表紙・題字 前原孝治
絵 広瀬兼二



 「美しい心」/竜崎富次郎

「詩は心で作れる。
 詩は心が美しかったら、いくらでも作れる。
 ひとりでに作れる。
 心が美しかったら、なすこと思うこと、
  詩ばっかりだ。」*1
と坂本遼は謳ったが、
ボクには
その美しい心が
なかなか訪れない

「詩人というその相場が
 すぐに貧乏と出てくるのだ
 ざんねんながらぼくもぴいぴいなので
 その点詩人の資格があるわけで」*2
と謳ったのは、山之口貘だ
年末に質屋へ入れる品物を前にして
「火のない火鉢に手をかざして」と書いた
「ぼくもぴいぴいなので」が
詩集を出す金のない
ボクには
ぴったりする

格差社会というと
自分の上を素通りして聞こえるが
国民年金と厚生年金とでは
こんなにも差が出るとは思わなかった
生活保護で貰う金より
国民年金が少ないなんて
どう逆立ちしてもおかしい
これでは
生活保護を受けたくなる

貘さんが生きてたら
土管の中でひもじい思いをして
詩を書くこともなかっただろう
こんなことを考えてると
美しい心は
山のあなたへ
遠のくばかりだ。

 *1 坂本遼「詩を作る人」(坂本遼作品集 駒込書房 212頁)
 *2 山之口貘「年越の詩
(うた)」(山之口貘全集第一巻 思潮社 244頁)

 「坂本遼」の言葉、「山之口貘」の言葉、いずれも現代にそのまま通用する言葉で、改めて「格差社会」が訪れているのだなと思います。「生活保護で貰う金より/国民年金が少ないなんて」知りませんでしたが、まったく「どう逆立ちしてもおかしい」事態ですね。まさに「美しい心は/山のあなたへ/遠のくばかり」です。表面はやんわりと現状批判をしている作品ですが、底にある憤りがよく伝わってきました。



季刊・詩と童謡『ぎんなん』60号
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2007.4.1 大阪府豊中市
島田陽子氏方・ぎんなんの会発行 400円

<目次>
六十号を迎えて 島田陽子 1
創刊十五周年『ぎんなん』へのメッセージ
菊永 謙 2 こわせ・たまみ 2 高木あきこ 3 野呂 昶 3 はたちよしこ 4 林みやこ 4 吉田定一 5
作品とエッセイ
松本純子 6 萬里小路和美 7 むらせともこ 8 もり・けん 9 ゆうきあい 10 池田直恵 11 いたいせいいち 12 井上良子 13 井村育子 14 柿本香苗 15 かわぞええいいち 16 小林育子 17
『ぎんなん』十五年の歩み 島田優子 18〜19
作品とエッセイ
相良由貴子 20 島田陽子 21 すぎもとれいこ 22 冨岡みち 23 富田栄子 24 中島和子 25 中野たき子 26 名古きよえ 27 畑中圭一 28 藤本美智子 29 前山敬子 30
本の散歩道 畑中圭一 島田陽子 31〜32
曲譜
高月啓充作曲・前山敬子詩「わたしは天才チンパンジー」33
高橋友夫作曲・中島和子詩「あかちゃんが わらうと」34
前多秀彦作曲・島田陽子詩「ごまめのうた」35
INFORMATION あとがき 36〜37
表紙デザイン 卯月まお



 給食/ゆうき あい

ハンバーグや
スティック・ポテトは
全部 たいらげられるけれど

煮物の中のニンジンや
サラダのトマトは
はんぶんは 捨てられる

ニンジンのニンだけ食べて
ジンのところは捨てられる
トマトのトマだけ食べて
トのところは捨てられる

ねえ きみたち
スズキ マサコなのに
スズキ マサと呼ばれて
コは捨てられたらどうする
タナカ ハルキなのに
タナカ ハルと呼ばれて
キは捨てられたらどうする

 創刊15年、60号の特集です。おめでとうございます。同人は詩とエッセイを載せ、同人外からも多くの言葉が寄せられていました。
 紹介した詩は第3連に意表を突かれた作品です。それが最終連に生かされていて見事だなと思いました。子供向けの作品として書かれていますが、このまま大人にも当て嵌まりそうですね。



詩誌『よこはま野火』52号
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2007.4.1 横浜市金沢区
はんだゆきこ氏方・よこはま野火の会発行 500円

<目次>
冬のばら/阪井弘子 4           雛月のころ/森下久枝 6
夢/松岡孝治 8              源流へ/疋田 澄 10
霧/馬場晴世 12              光の朝/真島泰子 14
百人一首/浜田昌子 16           プージェー/菅野眞砂 18
夏の夜に/加藤弘子 20           猫と我が家/唐澤瑞穂 22
日脚がのびて/宮内すま子 24        お雛さまへ/進藤いつ子 26
ゲーム/はんだゆきこ 28
 * *
追悼 鈴木 亨先生 30
よこはま野火の会近況  編集後記 30
表紙 若山 憲



 猫と我が家/唐澤瑞穂

昨秋 猫のナツカが二十二年一カ月を生きて
 逝った
ナツカの名付け親の娘が 女児を出産して
 一方月後
赤児がすくすく育つのを見届けて のように

ナツカの死後まもなく 夫が緊急入院し
 手術をした

猫は 家族の病いを背負って死んでゆく と
 言われているそうだ

ナツカは 生の半分を赤児に託し
残りの半分で 夫の病いを抱えていって
 くれたのだろう 夫は無事退院した

ナツカの生きた二十二年間は
 我が家の歴史の半分以上に当たる年月だ

母猫とその仔猫六匹の 最後の一匹だった

母猫は白血病 仔猫らは腎臓病肝臓病乳癌など
 で逝った

我が家の健康は 心身共に猫によって
 もたらされていたのかもしれない

けれど
 もう 猫は飼わない たぶん

 「二十二年一カ月を生き」た猫がいるというのは驚きですけど、それ以上に「猫は 家族の病いを背負って死んでゆく」という言葉には驚かされました。もちろん迷信の類なんでしょうが、猫に対する見方がちょって変わりそうです。
 作品は最終連が佳いですね。「けれど/ もう 猫は飼わない」の後の「たぶん」が良く効いています。



新・日本現代詩文庫48
『曽根ヨシ詩集』
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2007.4.8 東京都新宿区
土曜美術社出版販売刊 1400+税

<目次>
詩集『声のない哀しみ』より
大水のあと(中学一年)・10       坂道・10               弟(中学二年)・11釜・11
境内・12               つばめ(中学三年)・12         黄昏・13午睡・14
夜・14                踏切り台・15             雪の夜に(高校一年)・16
夜のなかから・16           黒い土・17              妹に・18
声のない哀しみ(高校二年)・19     失われた明るさ・19
詩集『野の腕』全篇
序――村野四郎・20
 T
風・21                野の腕・22              梢よ・23
死者への手紙・24           地上・25               怒りの底深く・25
川迄くると・27            黙っているもの・28          河・29
怒る夏・30
 U
此処で・31              一つの夜・33             その時から・34
秋 T・35              秋 U・36              冬の恋・37
野の道で・39             おやすみ・40
 V 最初の児に
ひとつの生・41            月日・43               場所・44
詩集『少年・オルガン』全篇
少年・45               オルガン・46             海・47
小鳥・48               回転ブランコ・49           猫を捨てる・50
一日を・51              あじさいの夜・51           かすかなすきを・52
冬の日・53              絵・54                夕陽のなか・55
草食動物・56             兎・57                野の秋・58
野菊・59               水引草・59              祭りのメルヘン・60
みどり児・61             租母・62               ハンカチ・63
詩集『母の掲げた水』より
 T
芽吹かない・64            呼び名・65              昼下がりの幸せ・67
赤まんまの花・68           ドドメ・69              芹の話・70
母の掲げた水・71           白い食物の集団・72          万年筆見つけて・73
 U
左足だけの靴・75           靴・76                地球の裏側で・77
ある遺作展・78            優しい顔・79             父の時間・80
小さく古くおわす・80         苦痛にすら忍従して・81        猫だけが・83
猫のいた庭・84
 V
栴檀の木の下で・85          白い月見草・86            富有柿・86
公園の休日・87            葉が積もる・88            枯葉の街・88
詩集『花びら降る』より
 T
帰ってきた日・89           黒いマント・90            アメリカから・91
人形館・92              隠れ黄・93              一日は始まったばかり・94
手抜きの手巻き・95          洋梨・96               隙間・97
最後の一日の夕暮に・98
 U
花びら降る・99            すみれ色の空・99           栴檀・100

パンジー・100.            夢の力・101.             山帽子・102
水の上にいる・102
.          夏の児・103.             湿地帯・103
 V
松林の異様な赤さ・104
.        雨の音・105.             栴檀の葉が・106
半世紀・107.             街・108.               あとがき・108
詩集『伐られる樹』より
帯文 新川和江・110
 T
芙蓉のような・110
.          アール・ヌーヴオー・ガラス館・111.  カーテン・112
不在のそと・113.           テーブル・114.            位置・115
そこのソファに坐っていただいて・116
 U
誰もみなかった・117
.         昼間子供の眼のなかを・118.      視線・119
靴をはいて・120.           日曜日・バス・121.          留守の庭・122
柄杓の水・123
 V
檜葉(ひば)の樹・124
.         商店街・125.             ブルーフレーム・126
花の芯・127.             花の盛り・128.            花の気配・129
晴れる・130
.             怒濤の桜・131.            樹だけが・132
松林のなかの窓・133.         伐られる樹・134.           あとがき・135
エッセイ
愛と喪失の悲しみ 吉原幸子詩集花のもとにて 春≠ヨの思い・138
.      絵塾の先生・141
絵のなかに詩をみる・144.       現代詩の失くしもの・捜しもの・145.  谷川俊太郎さんとの一時間半・148
夜具・150
.              詩人の妻―岡田ゑいさんのこと―・152. 夢―詩集の―・154
あすなろの日々・156
解説
石原吉郎 曽根ヨシ『野の腕』・162
.   中村不二夫 夢見る力の源泉・166
年譜・174



 柄杓の水

柄杓の柄は黒く
柄の先のアルミの器は
黄色く陽に光っていた
赤ん坊を背負った
あなたのお母さんは 野道を
こんな風に歩いて来たのだ

同級生のその人は
水を掲げた手の方に
体をかしがせて
右足を少し引きずるようにして
私の前を歩いてみせた
恐ろしく遠い年月の向こうで
水を満たしたバケツの重さに
母の体は右に傾いている

戦争が始まっていた
〈行軍〉という体育の時間の
野道での休憩中に
母の提げたバケツの水を飲んだ
少年がそこにいる

それ故に
罰を受けて立たされた
少年の体の中でも その日
水は かけがえのない水分として
吸収された

悲痛に赤い粒々の高梁飯
(こうりゃんめし)
少年の底なし井戸の胃に落ちていく日
少年の渇いた喉を柄杓の水が流れ過ぎた

あの水はうまかったと 今しがた
山の湧き水を飲んだ
初老のその人は言う

 著者の作品は詩誌『裳』で拝見していますが、今回はじめて纏まった形で読むことができました。1966年の『野の腕』から2004年の『伐られる樹』までの5冊の詩集のほぼ全容が判ります。紹介した作品は最新詩集『伐られる樹』に収められています。実はこの「母の提げたバケツの水を飲んだ」というモチーフは何度も出てきます。1994年の第3詩集『母の掲げた水』の「母の掲げた水」、1999年刊第4詩集『花びら降る』中の「すみれ色の空」などにです。それだけ思い入れもあるようですし、曽根ヨシ詩の骨格となっている詩と言っても良いでしょう。
 第1詩集以前の『声のない哀しみ』は1952年に群馬県教員組合文化部編集の詩集だそうで、中学一年から高校二年までの作品が収められています。早くから詩を書いている人はいますが、このように纏められているというのは珍しいことだと思います。その面でも曽根ヨシ研究には欠かせない1冊と云えましょう。ご一読をお薦めします。



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