きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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百日紅(さるすべり)




2007.4.13(金)


 第3回日韓文学交流「詩の祝祭」が開催されます。事務局の飯嶋武太郎さんから拙HPでの掲載許可が出ましたので下記に「ご案内」を載せます。日本側80名募集とのことですから、早めに申し込まれた方がよいでしょう。


 第3回日韓文学交流「詩の祝祭」のご案内

主 催 日韓詩人文学交流協会、財団法人韓国文学振興財団
後 援 日韓文化交流基金、駐日韓国大使館韓国文化院、日本現代詩人会、ソウル詩壇、千葉県詩人クラブ、千葉県歌人クラブ、阿部商会株式会社
発起人 秋田高敏、飯嶋武太郎、伊藤淳子、大島ふさ子、川本京子、中村日哲、なべくらますみ、水崎野里子、港敦子、楊原泰子

開催日時 平成19年7月28日(土)
受 付 12時30分
開会式 13時00分〜13時30分 挨拶および日韓の詩の現状報告
    13時30分〜14時30分 韓国詩大の朗読(20人)
    14時30分〜15時30分 両国の歌、新内、尺八、フルート演奏、詩吟、日本舞踊、歌謡曲
    15時30分〜16時30分 日本詩人の朗読(30人)
閉 会 16時30分
懇親会 16時30分〜19時

場 所 アルカディア市ヶ谷(私学会舘)4階「鳳凰」の間
     住所 〒102−0073 東京都千代田区九投4-2-25 Tel 03-3261-9921(代表)
      最寄り駅JR、都営新宿線、有楽町線、南北線「市ヶ谷」駅より徒歩2分

募集参加人数100人(日本80人、韓国20人)
参加費 詩の祝祭のみ参加    3,000円(合同詩集1冊進呈)
    詩の祝祭と懇親会に参加 10,000円
    合同詩集参加者は別途  5,000円

    参加費を5月10日までに下記口座へ振込みをお願いします。
    千葉銀行 佐原支店 口座番号(普通)3495326 口座名 日韓詩人文学交流協会

詩の朗読 30名募集
 対訳日韓合同詩集を作りますので、作品は題字余白を含め1行25字30行以内とし、簡単な略歴(所属団体、詩集名等)を添え、返信用葉書とともに5月10日まで事務局へ作品をお送りください。
 なお、当日参加できなくても詩集掲載のみの参加(5,000円)も可能です。

 日韓詩人文学交流協会 事務局 飯嶋武太郎



詩誌『馴鹿』46号
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2007.4.10 栃木県宇都宮市
我妻洋氏方・
tonakai発行 500円

<目次>
*作品
同道…齊藤新一 1             泡粒…入田一慧 5
海の見える街…矢口志津江 9        琥珀のとき/雲をつかんだ話…和氣康之 14
白磁と林檎…和気勇雄 17          早春/春/夏…大野 敏 19
百姓…村上周司 21             時代…青柳晶子 23
我はカマツカ…我妻 洋 25
*橇−同人エッセイ欄−
影たち…青柳晶子 12
*連載ルポ−野の川を辿る(15)−
鶴田川…我妻 洋 27
後記
表紙 青山幸夫



 早春/大野 敏

未だ緑の還らぬ河原の遥かを
くゆり立つ疎林がみえている。
砂地には一むらの乾いた葦が残されている。
足元の砂に触れれば、手が冷たさに吸われていく。
波形の砂紋に残る鷺の足跡は、
鳥の足の黄色い冷たさを感じる。

風に吹かれながら、早春の太陽が昇っていく。
雲の腹が紅色に暖まり、
月が桃色に膨らんだ。

ばら色に染まり、輝きながら、
幽かな砂上の霜が、
消えていく。

 昔から春や早春は多くの詩人にうたわれてきましたが、この作品は一味違います。構成は「手が冷たさに吸われていく」ほどの冷たさから「幽かな砂上の霜が、/消えていく」までの暖かを順に伝えています。比喩も独特です。「鳥の足の黄色い冷たさ」、「雲の腹が紅色に暖まり、/月が桃色に膨らんだ。」などが佳いと思います。特に「風に吹かれながら、早春の太陽が昇っていく。」というフレーズには魅了されました。太陽は風になど吹かれません。しかし地上からはあたかも風に吹かれているように見えるのです。この視線の面白さ、スケールの大きさには感動しました。新しい「早春」の詩と云えましょう。



詩誌『木々』35(終刊)号
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2007.4.25 東京都小平市
小林憲子氏方・木々の会発行 700円

<目次>
<扉> 谺…鈴木 亨 1
<鈴木 亨 作品抄>…4
港にて 石田家 手術 俳句少々 雁の渡り 柳架 ひと日 七十路・八十路
[詩論]「海の幸」−青木繁と蒲原有明…14
<鈴木 享 年譜>…21
[追悼文集]
去りにしひとを…新川和江 28        鈴木亨さんと八木重吉…森田 進 30
鈴木亨先生に導かれて「砧」の会から…村尾イミ子 31
鈴木亨先生を偲んで…岩井礼子 33      無念…伊勢山峻 34
鈴木亨先生 追悼…川田靖子 35       鈴木先生と雨情祭…小林憲子 36
忘れ難いキーワード…立川英明 37      「大洗の会」の思い出…所 立子 38
鈴木先生を追悼して…中山直子 39      シンガポールのドリアン…原利代子 40
さようなら鈴木さん…比留間一成 43     懐かしい記憶…春木節子 44
感謝の気持あふれて…山本みち子 45     詩の論客…弓削緋妙子 46
正統四季派抒情 最後の旗手…菊地貞三 48
 <写真>鈴木 学
玄冬…菊地貞三 51             冬の薔薇…来栖美津子 52
木々…柳内やすこ 53            悼・鈴木亨先生…久宗睦子 54
冬の告別…中山直子 55           白桃…宮城昭子 56
悼「木々」によせて…内山登美子 58     二つの全集…服部光中 59
風宿る…伊勢山峻 60            幽明の境い目に…川田靖子 62
一枚の写真…天野さくら 64         初冬…小林憲子 65
夜更けに佇ちて…越路美代子 66       したたか…菊田 守 68
ひとり居の…宮田澄子 69          短詞四つ…比留間一成 70
筑後川…松本知沙 72            声…山本みち子 73
ビオラが鳴っている…細野幸子 74      Kに…原利代子 76
如来使…舟木邦子 78            雪の日の客…松沢 徹 79
グリーティングカード…関野宏子 80     青い鱗…石渡あおい  81
主婦の劇場…岡田壽美榮 82         片鱗の碧い芽…弓削緋妙子 83
秋…石井真智子 84             石…伊藤桂一 85
「木々」の終刊について…伊藤桂一 86



 谺/鈴木 亨

近くて 遠いひとから
遠くて 近いひとから

さまざまな谺の渦にかこまれて
うずくまる たそがれ

あそこの横丁を歩いていそうなひと
見知らぬ異国で朝を迎えたはずのひと

さまざまな谺がうたう
暗いうた 愉しげなうた

焼けのこった堡塁で銃身に
もたれるようにして また

どんな夢に今宵は逢うのだろう
とりどりの距離の 星々のもとで

 <詩集『星条旗』(二〇〇二年)より>

 昨年12月に88歳で亡くなった鈴木亨氏の追悼号であり、かつ終刊号です。鈴木さんの近影が載せられ、交遊のあった詩人たちの追悼文が鈴木さんの遺徳を偲ばせています。私は2001年に日本詩人クラブで講演なさったのを遠くから拝聴した程度の関わりしかありませんでしたが、そのお人柄に接した感動をいまだに持ち続けています。
 紹介した作品は扉詩です。第7詩集まであるうちの、『星条旗』は第6詩集。人と人との「谺」をうたった、追悼号・終刊号にふさわしい作品と云えましょう。改めてご冥福をお祈りいたします。



個人詩誌『魚信旗』34号
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2007.4.15 埼玉県入間市 平野敏氏発行 非売品

<目次>
橋物語
怪談の巻 1     精霊の巻 4
老後の巻 6     望郷の巻 7
奇蹟の巻 8     光明の巻 9
後書エッセー 10



 橋物語 
老後の巻

あっという間に青春の木の橋を過ぎて
いま老いの石橋のたもとでたじろいでいる

振り返れば霞の向こうで花火が終わって
幕間
(まくあい)は夢現(ゆめうつつ)と放心の入り乱れ
帰り道のない橋を渡ってきたのだから
川下
(かわしも)はつつがない流れになっているものだとばかり思っていたら
桜橋の真ん中で寿老人のような亡霊が道をふさぐ

老後は安泰だと思うなかれ
この先も生きるということは搾られとおしで
しまいには文字どおり骨皮の老悴
(ろうすい)になるのだが
それでもよいかと言問いながら杖をかざす

それはいやじゃ約束が違う
ならば不吉な桜橋を捨てて
永代の橋を渡って行こうじゃないかと身を翻す
見れば川下
(かわしも)へは観光船がのどかに走っていて
生の残照がやさしく差し込んでいる
魂のこびと
(5文字傍点)を育てあげるまでは老ける訳にいかない
花便りにうつつをぬかして右往左往している暇はない

そうこうして迷いるなかにも
いつしか橋の在りかを探すはめになっていた
これから渡らなければならない有意義な橋を
生の最後まで静かな交感を得られるためにも
遠い頂点へ渡るためのものでもない奇橋でもない
まして年寄り苛めの世を捨てるための橋渡りでもない
(くら)い川下(かわしも)が見渡せる質実な石橋を

 今号では全ての作品に「橋物語」というタイトルが付けられ、その下にサブタイトルがあるという構成でした。橋から想起される作品群はなかなか趣があって、面白く拝読しました。ここでは「老後の巻」を紹介してみます。「青春の木の橋」、「老いの石橋」という対比自体にどういう意味があるのかと思って拝読しましたら、最後で「溟い川下が見渡せる質実な石橋」とありましたから、あぁ、そうなのかと納得しています。それまでに通過しなければならない「不吉な桜橋」は、「老後は安泰だと思うなかれ/この先も生きるということは搾られとおし」なのだということも納得。現実をある意味では茶化しながらも作者の憤りが感じられます。「年寄り苛めの世を捨てるための橋渡り」なんてやりたくもありませんけど、この先はどうなるか判りませんね。考えさせられました。



個人詩誌if15号
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2007.4.15 広島県呉市   非売品
ちょびっと倶楽部出版・大澤都氏発行

<目次>
石碑 1                  石碑 そして悪いことが起きる 2
切ったはずの契約が 3           夢で 4
練る 5                  いやね 8
音のない増水 9              うるさいテレビ 10
まあるい まあるい 11           シリーズ わたしの伯母ちゃん その二
ちょびつれづれ



 夢で

 女性が小説を書いていた。タイトルは『○○の魚たち』だった。
 これが夢だとわかっていたし、本の内容も「これは詩のネタにてきる」と思った。だか
ら起きあがって忘れないうちにメモを取ろうとした。
 悪夢を見てはいけないと灯りをつけたまま寝ていた。体を右に向けて横たわっていた。
そこから見える室内の様子がはっきりと見える。起きあがった、と思ったら夢だった。
 今度こそ目覚めようと、「えい! えい! えい!」と体を起こそうとした。室内の様
子がまた見えた。安堵したらまた夢だった。それを何度も繰りかえした。
「えい! えい! えい!」
 本当に、現実に、確実に目覚めることができた。わたしは過呼吸になっていた。まだ強
い眠気もあり、夢に引きずりこまれそうだった。台所の冷蔵庫をのぞいたら梅酒の寒天が
あったので食べた。感触の違うものを触ったり、何かを食べると夢を断ち切ることができ
るからだ。
 こたつに人り、パソコンを立ち上げたときには、メモの内容はどこかへ飛んでいた。バ
クが食べてくれたのだろうか。先日ギャラリーで見た絵に「眠るバク」がいたがバクが寝
たら誰がバク自身の悪夢を食べてくれるのか心配したばかりだった。

 今号では夢の詩が多くありましたが、紹介したこの作品は極めつけのように思います。「感触の違うものを触ったり、何かを食べると夢を断ち切ることができる」ということは初めて知りましたし、作者固有のものかもしれませんけど、妙に納得できます。最後の「眠るバク」も面白いですね。そうか、バクは「バク自身の悪夢」も食べているのか!
 楽しんだ作品ですけど、実はそうではないのかもしれません。起き上がろうと「何度も繰りかえ」すことには何か別の意味があるようにも思えます。そこまで踏み込む必要はありませんが、気にはなります。



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