きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
百日紅(さるすべり) |
2007.4.20(金)
先日来、実家で一人暮らしをしている父親から庭に除草剤を撒いてくれと頼まれていましたので、今日、行ってみました。行く前には電話をして、行くことを伝えようとしましたけど、、、出ない。何度電話しても出ない。これは聴こえていないと思いました。以前からそんなことがあったので、今日は実家に行って実証してみせました。携帯から電話して、聴こえていないことを確認させたのです。本人はびっくりしていましたが、まぁ、86歳じゃしょうがないわな。音の変わりに光で知らせる電話もあるようですので、それを買ってやろうかと思っています。
本人のびっくりはびっりでいいんですけど、私にとっては衝撃的な場面を目撃した日でもありました。私が部屋に入って行ったことも気付かずに縫い物をしていたのです。小さく背中を丸めて…。昔は弟分もかよってくるようなヤクザな親父だったのに、、、。一人暮らしですから縫い物ぐらいするのは当り前なんですけど、一瞬、息が止まってしまいました。女性からすれば、そんなことぐらいで、と思われるかもしれませんが、私は根が古い男なんで、一瞬たじろいだという次第です。
そんなこともありますから同居を勧めてはいるんですが、ガンとして言うことを聞きません。そういうところは昔と変わっていませんけどね。逆に一人暮らしをしているせいで老化が防げていることも事実です。そんな個人的な父子関係を見ていて、日本の高齢化社会の一端をも感じていました。
肝心の除草剤撒布は30分ほどで終了。15Lほどで撒き終わりました。以前は自分で草むしりをやっていたようで、除草剤を使うのは今回が初めて。そんなところにも老化が現れているのかもしれません。
○詩誌『SPACE』73号 |
2007.5.1 高知県高知市 大家氏方・SPACEの会発行 非売品 |
<目次>
詩
飽食の川底で/葛原りょう 2 旅/中原繁博 4
白い朝/近澤有孝 6 舞踏家のうつ病/弘井 正 8
母/山川久三 10 私の/中口秀樹 12
§
夜の爪 ほか/ヤマモトリツコ 30 無名抄/南原充士 36
未来の思い出 ほか/内田紀久子 40 ハーフカス/安田藤次郎 42
愛/広田 泰 44 影/山下千恵子 45
§
人生の青い中也よ(一)/豊原清明 64 漂白/かわじまさよ 66
多忙は神様/片岡千歳 68 詩人/あきかわ真夕 70
ROAD KILL/塚本敏雄 72 台所俳句/中上哲夫 74
缶詰/指田一 76
詩記 おなじひとつの空の下に/山崎詩織 27
エッセイ
ささやかな証だけれど…/山沖素子 18 笛子の道中旅姿12/萱野笛子 20
立ち昇る音/内田紀久子 22 忘られぬ芙美さん/さたけまさよ 24
リレーシナリオ『SPACE・泣き声あげる』
VOL1「惑い」/豊原清明 14 VOL2「小説家」/大家正志 16
評論 連載Y『<個我意識と詩>の様相』〜日本人の自我意識と詩(6)〜/内田収省 46
編集雑記 78
表紙写真 無題(制作・指田一)2006年 鉄、鋤、枝、着物ほか 50×70×40
ハーフカス/安田藤次郎
鹿児島から沖縄へ鹿児島へ沖縄へ
県内のニュースを視なければ
鹿児島へ
ナハが気になる
沖縄へ
異常だ 手廻しチャンネルならこうはいかんだろう
・・・・・
マスタル、ハーフカス、アルヨ
闇の中から目だけギョロつかせてささやいてくるポン引き
インド西岸アラビア海に面する鉄鉱石積出港旧ポルトガル領
ひょっとしたらホントかも
マスタル、ハーフカス、アルヨ
だまされても だまされても懲りなかった
・・・・・
俺をリキ人と呼んだ
あばた面のあの老人
そうだとも あのなつかしい流球の血が俺には流れている
普通語を、共通語を、標準語を使え
金の卵になる俺達の首に
方言罰の札が揺れた
島口(シマグチ)から大和口(ヤマトグチ)ヘ
加那(かな)よ天川(あまかわ)
こんな心地よいひびきの言葉が世のどこにあろうか
父国沖縄、母国日本
俺は半沖縄(ウチナンチュ)人、半大和(ヤマトンチュ)人
ナハが気になるのだ
*ハーフカス…混血
*ナハ…………沖縄のことを私の島では総じてナハと言う (例)沖縄民謡…ナハ唄。沖縄本島…ナハ
*マスタル……マスター
*リキ人………昔の南西諸島の住人に対する蔑称
*加那よ………古典琉球舞踊の題名
*天川…………古典琉球舞踊の題名で「加那よ」の後に続けて踊る
*島口…………方言
*大和口………標準語
沖縄にも鹿児島にも行ったことがなく、作品の半分も鑑賞し切れていないかもしれませんが、「父国沖縄、母国日本」という言葉にハッとさせられています。「母国日本」はよく使う言葉ですけど「父国沖縄」の代わりに、たとえば私の生まれ故郷の「父国北海道」という言い方をするだろうか? そういう言い方はしません。それだけ「半沖縄人、半大和人」と言う「俺」の思いは深いのかもしれません。
「島口から大和口ヘ」という表現はおもしろいなと思いました。島の言葉(口)、大和の言葉(口)という意味なんですね。方言、標準語なんて言い方よりずっと暖かみを感じます。いずれにしろ沖縄について考えさせられた作品でした。
○詩誌『るなりあ』18号 |
2007.4.15 神奈川県相模原市 荻悦子氏他発行 300円 |
<目次>
荻 悦子/未草 1 * 飛行船 3
鈴木正枝/ひとりの重さ 5 * 予約日 7
氏家篤子/冬の箱 9 * 帰り道 11
あとがき
飛行船/荻 悦子
投げた花が
と
手帳に書き付け
薄手のジャケットをはおった
肩と袖に皺が寄るが
かまわずに鞄を持った
たくさんの他人の窓
芽吹きはじめた木々
雲が丘に重なり
雨上がりの早春の大気は
プラチナめいて
ひきしまっている
深い羊歯の谷と
炎を上げながら
流れてくる溶岩
その島へ飛ぼうと
空港に向かう
声が追ってくる
遠いあの
母や係累というものの声
僕のかわりに花が着くはず
車のハンドルをしっかり握り
前だけを見た
飛行船が進入してきた
空に低くゆるゆると
軟体の
のどかな膨らみ
僕はやみくもに叫んだ
投げた花がそのまま愛になるなんて
思うな
拙HPでは初めて紹介する詩誌で、横浜を中心にした女性3人のグループです。どうでもいいことですけど、拙HP索引の詩誌欄で初めて「る」が埋まりました。ひとりでニンマリしています。
紹介した詩は「投げた花が/と/手帳に書き付け」たところ作品が始まり、最終連で回帰するという構造になっていて、作者の柔軟な思考回路が判ります。表面的に解釈すると「僕」は「その島へ飛ぼうと/空港に向か」い「飛行船」に乗ろうとしているのですが、「たくさんの他人の窓」や「母や係累というものの声」が出てきますから、逃避とも考えられます。しかも乗ろうとしている飛行船は「軟体の/のどかな膨らみ」を持っている。これは謂わば軟弱な精神を表しているのかもしれません。その反語として最終連が強くなっているようにも思います。詩は解釈ではなく鑑賞するものですが、そんな読み方をしてみました。作品としてはおもしろいと思います。
○詩誌『方』133号 |
2007.3.31 仙台市若林区 今入惇氏方・「方」の会発行 500円 |
<目次>
時評 <一九○七年> 小説のわらい歌のかなしみ…笹子喜美江…表紙裏
詩
因果…木村圭子…2 障子の小窓から…大沼安希子…4
赤い実…梢るり子…6 雲と狐…北松淳子…8
ハンノキ林に囲まれて…笹子喜美江…10 白いけむり…日野 修…12
祈念……高澤喜一…14 ガラスの星雲…砂東英美子…16
善人尚以て/我が道を行く/例えば 林檎…神尾敏之…18
食/もみじ…高木 肇…20 とどきますか/ひとしずく…佐々木洋一…22
果実…柏木勇一…24 山想/再会/世は事もなし…今入 惇…26
エッセー 模倣の皮…梢るり子…28
「「方」の半世紀を語る会」顛末記…29
あとがき…30
住所録…裏表紙
再会/今入 惇
地下鉄駅のホーム
雑踏の流れに抗って行く
白髪の長身痩躯
彼ではないか たしかに彼だ
年初とつぜんの訃報
お別れの会で対面したばかりの肖像
故里へ帰ったのではなかったか
海の見える故里へ
何年かつづいた秋の山行
山麓のランプの宿の温泉に浸り
日が暮れれば酒を酌み
非日常の二泊三日
あっというまにドアは閉ざされ
電車は暗闇に向かい加速する
ところでつぎに会えるのはいつになるか
しばらくはそちらで待っててくれまいか
「年初とつぜん」亡くなった「彼」との邂逅。その彼の故郷は「海の見える」ところ。彼との付き合いがどんなものだったかは第3連で簡潔に語られ、彼という人間像が見事に浮かび上がってきます。最終連では「しばらくはそちらで待っててくれまいか」と呼びかけて、いずれ「そちら」へ行く身を達観していると云えるでしょう。一字一句に無駄がなく、深く人間を語り人生を語る、勉強させられた作品です。
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