きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2007.4.8 神奈川県真鶴岬




2007.5.8(火)


 日本詩人クラブの2005、2006年度理事会の解散会が神楽坂で開かれました。神楽坂は詩人クラブにとって意味深い処。「神楽坂エミール」を会場として20年ばかり、いわば神楽坂時代≠フ思い出の地であります。そんな面もあって幹事さんは神楽坂「鳥茶屋」を選んだようです。
 最後の理事会は12日の総会に向けての話や事務所設置の進捗状況が話し合われ、大きな問題もなく終了。あとは、これも最後の懇親会に移りました。

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 懇親会後の記念写真です。このうち3人が留任しますけど、あとは全員解任。解任が決まっている皆さんは本当に嬉しそうでした。気持はよーく分かります。900人近い会を支えるボランティアは、それぞれの部署でそれぞれの責任があります。その重圧から解放されたときの喜びは、私も経験がありますからよーく分かるのです。解任の皆さん、お疲れさまでした!
 で、私は留任組。今回で辞めさせてもらおうと思っていた時期もあり、本当のところは解任させてもらいたかったのですが、諸般の事情で残留になりました。決まったからにはあと2年、微力ですが全力を尽くします。ご指導、ご教示のほどをよろしくお願いいたします。

 本当は理事会の前に事務所の見学に行くことになっていたのですが、私だけ行けませんでした。急用が入って小田急線に乗れたのが16時前。17時半には神楽坂に到着しましたけど、18時からの理事会に間に合うのが精一杯という状況になってしまいました。でも、見学会は予定通り行われましたので、事務所内部の寸法付き図面は入手できました。これからレイアウトや備品を考えなければなりません。
 住所はまだ発表できません。仮契約の状態です。本契約になり次第、詩人クラブHPとここでご報告します。

 それでは皆さん、12日の総会でお会いしましょう! そうそう、会場の東大駒場では「駒場博物館」でイタリア展をやっています。入館無料ですから、そちらを見学のあとにおいでになるのもよろしいかと思います。



詩誌『つむぐ』3号
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2007.4.10 東京都新宿区
集プレス発行  1300円

<目次>
青山晴江…10
詩    影法師 10            二月に 10
     六月十五日の記憶 11       夜明けに 11
     さがしもの 12
エッセイ・原風景−町の片すみで− 13
李承淳…14
詩    春が来たら 14          冬が来たら 14
     冥王星の話 15          挽歌 16
エッセイ・朴龍侮告l 翻訳を通じてのこの一冊 17
石井真也子…18
詩    行商人(ある男との出会い) 18   言葉が 19
     詩は 20
エッセイ・未明、海へ 21
高良留美子…22
詩    梨 22              もう秋だ 23
     バスの座席に 23         背中 23
     風のなかへ 24          死んだ鳥 24
エッセイ・アテネの母性主義 25
阪本若葉子…26
詩    ふるさとの道 26         死骸の猫 27
     夜がくる時 28
エッセイ・三つの病気と生きて 29
しま・ようこ…30
詩    宿る灰 30            休日・午後6時 30
     冥い星 31            おしえてください 32
エッセイ・記憶の不意打ち 33
新川和江…34
詩    千度呼べば 34          ひといろ足りない虹のように 34
     花ばな 35            五月ひとり 35
     なみだ 35            別れたばかりの頃…… 36
     ひとつの愛を 36
エッセイ・
innocent 37
関 和代…38
詩    私の結城と民話−化け地蔵− 38  柳屋ポマード 40
     にらの花 40
エッセイ・穀屋のモッチャン 41
滝 和子…42
詩    記憶 42             朝に 42
     六月 43             橋を渡る 43
     「い」の字 44
エッセイ・母からの手紙 45
田中憲子…46
詩    柘榴 46             香魚 46
     月 47              耳鳴り 48
エッセイ・うたごえ喫茶 49
田中眞由美…50
詩    忘れられていた物たち 50     ねじれ 50
     蚯蚓 51             蒔かれるもの 52
エッセイ・地域で生きるということ 53
徳弘康代…54
詩    月食 54             キョウコおばさん 54
     梛(なぎ)の木へ 55        水不足 56
エッセイ・カモン山で椎の実拾い 57
とよだ さなえ…58
詩    草の名前 58           蚊と蝿 59
     猫の存在 60
エッセイ・私の初産 61
中村 鈍…62
詩    赤い花 62            ラベンダー畑 62
     千のかざぐるま 63        教室 64
エッセイ・生き延びるための物語を 65
渚 真樹…66
詩    世田谷区桜新町一丁目十六番地 66 中国雲南省斗南村 67
     午後のカーネーション 68
エッセイ・畑の春秋 69
原田克子…70
詩    ありふれた末裔 70        頭蓋を見た指 70
     母が 71             輪を辿る 72
エッセイ・「森の家」に住む 73
平木たんま…74
詩    白い雲 74            ウミシダ 74
     わが家 75            オンブバッタの腹話術 76
エッセイ・宮沢賢治の童話はおもしろい 77
瑞生千枝…78
詩    夾竹桃 78            記憶 78
     初めて海を 79          土の中から 80
エッセイ・早月川の瀬音 81
向井千代子…82
詩    その夜嵐が吹き荒れた 82     河口 82
     反転 83             ヴィシャス サークル 84
エッセイ・わたしが空飛ぶ鳥なれば 85
安川登紀子…86
詩    回復 86             栗子 86
     ざくろ 87            気の遠くなるようなもの 88
     至福 88
エッセイ・私と声と 89
山下 桂…90
詩    ゆめのつづき 90         街の中で人間に出会ったら 90
     あした あさって 91       むすんでひらいて 92
     こんにちは 92
エッセイ・ことばのゆくえ 93
渡辺みえこ…94
詩    どくだみ 94           老木は葡萄の房をたらし 94
     故郷 95             洲崎吉祥寺門前町茶屋 95
     貝は 96
エッセイ・日本語の時制と主語 97
・執筆者名簿…99
・『つむぐ』へのおさそい…100
・後記…102
.                題字 向井二郎
表紙写真・作品(百人地蔵
(ジェネズ))針谷仁巳   表紙デザイン 並木有里



 忘れられていた物たち/田中眞由美

壁の隙間から差し込む朝日の中で
きらめいていた 埃

勝手口から流れ込んできた
お隣りの 夕食の匂い

うす暗い部屋の中に
電気の傘でできた円錐形

叱られて飛び出して
外から覗いた 雨戸の節穴

ほんの偶然に存在していた物たちが
今 きっちりと囲まれた家の中にいる私にささやく

戻る事のない「時」が
私の中で 重みを増してくる

 それぞれの「忘れられていた物たち」があって、現在の「きっちりと囲まれた家の中にいる私」がある。それらの懐かしいものたちは「戻る事のない『時』」であるからこそ大切なもので、年々その「重みを増してくる」。そんな風に受け止めると、この作品はある程度の年齢にならないと創り得ないし、また理解できないかもしれません。特に「重み」はそうでしょうね。なんでもない「きらめいていた 埃」や「電気の傘でできた円錐形」がある時、ふッと思い出されて、何か重要なものを失った感覚に囚われることがあります。小品ながら、人生のそんなあわいを描いた佳品だと思います。



詩誌『しずく』23集
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2007.3.31 埼玉県新座市  300円
田中眞由美氏方・しずくの会発行

<目次>
時の集積/木原まさお 4          いのち/木原まさお 6
窓をあけて/小野道子 8          ひととき/小野道子 10
奏でる/小林明代 12            あの街に/小林明代 14
麦の群生/羽賀ちふみ 16          月のナイフ/羽賀ちふみ 18
よりどころ/福地信子 20          現在進行形/福地信子 22
笑顔/小泉幸子 24             ふたつの旅/田中眞由美 26
ひかりのなかで/田中眞由美 31
命への想いと科学への疑念 田中眞由美詩集『指を背にあてて』を読む/狩野敏也 34
詩の発芽のままで/井坂洋子 37
あとがき 40



 現在進行形/福地信子

これから出来てくる
新しい過去のために
今は過去の話はしたくない

どんなに嫌いでも
変えられない過去は
消滅のない存在だから
心の中に占める部分を
なるべく静かに
思い出さないように生きたりして

どんなに淋しい日でも
心の中を空っぽにして
自然と悠久の時をお手本にして
あせらずに自分らしさを求めて
今日を潔く生きて行ければ

ひとつの行動を始めたら
今日ひとつの行動を完了する
明日はすべてが過去になる
今日を充実した過去にするために
現在はいつも進行形で!

 第1連の「新しい過去」という詩語に魅了されました。過去は常に古いものという潜在意識があったのですが、日々、時々刻々の過去は、確かに新しい。過去に対する私の固定観念を打ち砕いてくれました。それに対応しているとも云える第2連の「変えられない過去」という言葉にも思いを新たにさせられました。過去が変えられないのは当り前ですが、「新しい過去」があることによって過去の大事さを改めて認識させられたのです。それらを受けて第3連、最終連があるわけですけど、「明日はすべてが過去になる」というフレーズも良いと思います。作者の「現在はいつも進行形で!」という締めに励まされた作品でした。



個人詩紙『おい、おい』43号
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2007.1.6 東京都杉並区 岩本勇氏発行 非売品

<目次>
詩 見る・見ない
  ある
エッセイ パターンと化して



 ある

今日も仕事がない
明日も仕事はないだろう
今日も金がない
明日も金はないだろう

今日ないものが
明日ある筈がない

今日も希望がない
明日も希望はないだろう
今日も爽快さがない
明日も爽快さはないだろう

今日ないものが
明日ある筈がない

ない
ない
ない

もうじき子供が
小学校から帰ってくる
「何かない?」と
オヤツをねだるだろう
その時キ然と
「あるよ」と
言って
午前中の買い物
10本人り二百五円の特売アイスクリームを
ほらよ と
手渡してやるのみだ

 「仕事」も「金」も、「希望」も「爽快さ」もないし、あるのは子どものお八つの「10本人り二百五円の特売アイスクリーム」だけだ、という悲惨さを描いていますけど、不思議に暗さはありません。精神的な余裕すら感じさせます。子どもがいるということが読者の私に安心感を与えるのかもしれません。それと「10本人り二百五円」という具体が可笑しさをたたえているように思います。



個人詩紙『おい、おい』44号
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2007.2.6 東京都杉並区 岩本勇氏発行 非売品

<目次>
詩 ままなる
エッセイ 元祖フリーターの伝(一)



 元祖フリーターの伝(一)

 一九七三年頃のことだったと思う。
 それまで一日だけで辞めてしまった仕事とか持ってもせいぜい三ケ月の仕事を繰り返していた私は、その朝も井の頭線の西永福の駅で新雇主を待っていた。クルマでやって来た男は、後部ドアを示し、いきなり現場直行ということになった。私は常套的に、まず事務所へ行ってそれから面接をしてという段を描いていたのだが、そこからしてヘンだった。途中で私と同じ若いモンを二人、やはり駅頭で拾った雇主は霞が閑のビル群の中へ運んでいった。

 ここだと言う。男が指し示した広いガラス窓は地上十数階の所にあった。ここをやれと言う。室内清掃じゃなかったのかという声が三人から出てきた。まあ、いいから、いいからという曖昧な返事が反ってきた。
「この間やって来た運動部の連中なんか、文句一つ言わずホイホイやってたぜ」
 三人のうち一人は、淡々と窓枠に片手を掛けると虚空に突き出た幅二十センチほどの足場に立ち、実に淡々とガラス窓の外側を布切れで拭き始めた。で、もう一人は最初から断固として拒否、と言うか尻込みした。そりや、そうだ。地上十数階の高さだ。落ちたら…確実…死ぬ。しょうがないなあという顔の雇主は、自ずと順番的に私の顔を見た。私は、と言えぼ、勿論落ちたくはないが、勿論キャッシュも必要としていた。私は窓枠を掴んだ片手を絶対離すもんかと固く決意するユトリもなく、寂しい足場に立ちオザナリ的に拭き始めた。下を見ると……! 真っ逆様のイメージが……! 先に仕事を始めていた一人は、慣れた手つきで、ナント、窓枠に片手を掛けることもなく励んでいるではないか!!

 夕方、淡々は明日も来ると言い、尻込みは一銭も手にすることなく明日は来られないと言い、私は、と言えば「明日はちょっと用事があるので……」と口を濁し、「あの、今日の分、日払いで……」ということになった。バイト代は半日分だけ渋々の体で手渡された。
 その日は夜になっても緊張のあまり、両の腿がいつまでも火照っていた。その火照り具合を言葉通りの「人生紙一重」として今でも憶えている。

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 こちらはエッセイの全文を紹介してみました。原文は40字改行ですがネットでの読みやすさを考慮して、ベタ、空行入れとしてあります。
 この伝が「一九七三年頃」であることに注目する必要があるでしょう。今から30年以上前のことです。仕事の現場も内容も知らされずに連れて行かれたのです。しかも「虚空に突き出た幅二十センチほどの足場に立」っての作業です。その反省から労働法や労働安全保安法の改正があったはずですが、規制緩和という美名のもとに元の木阿弥。その当時の「若いモン」の一人である私も、この30年の退行を阻止できなかった憾みを感じさせられました。



個人詩紙『おい、おい』45号
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2007.3.6 東京都杉並区 岩本勇氏発行 非売品

<目次>
詩 役付き
  M
エッセイ 元祖フリーターの伝(二)



 役付き

育ちのいい人は
それだけで重きを置かれ
それだけで一段上に見られ

育ちのわるい人は
それだけで軽く見られ
それだけで一段下に見られ

育ちのいい人は
死ぬまで世間知らずで

育ちのわるい人は
死ぬまでチンピラ扱いで

育ちのいい人も
育ちのわるい人も
死ぬまで役割分担

誰のための役割分担?

 最終連の1行がよく効いています。「育ちのいい人」「育ちのわるい人」はそのまま受け止めてもよいでしょうが、私には二極化の喩にも思えます。その二極化は誰によって、「誰のため」に行われているのか、そこを考えさせられました。下の極の者は兵隊になれ! と考えるのは穿ちすぎでしょうか?



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